はやぶさ2の冒険 竜宮城の玉手箱をつかめ② スターウォーズの要塞だ
はやぶさ2の冒険 竜宮城の玉手箱をつかめ② スターウォーズの要塞だ「最初にクレーターが見えた。映画『スター・ウォーズ』に出てくるデス・スターのようだと思った」宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査チームで航法誘導制御を担当する吉川健人研究開発員は、探査機はやぶさ2が近づいて撮影した小惑星リュウグウの第一印象を、SF映画に登場する宇宙要塞(ようさい)に例えました。リュウグウに到着して喜ぶ探査チームの中心メンバー=2018年6月27日、JAXA相模原キャンパス◆“当たり”さらに近づいて見た全体形状は、そろばん玉そっくり。地球から遠目の観測で予想していた「ほぼ球形」とは似ても似つかない姿です。この形から、過去に高速自転していた可能性が浮上。別の天体との衝突など、小惑星の形成・進化のメカニズムを知るヒントが得られると科学者たちを興奮させています。炭素が豊富で有機物や水があるだろうと、めざしたリュウグウ。航法カメラや近赤外分光計で観測すると―。表面は極めて暗く、炭素の存在量が多い可能性が高まります。しかし水を含む鉱物の兆候はみられず、表面がカラカラに乾いていることが判明しました。表面に含水鉱物が見つからなかったことについて「予想外だったが、結果としては“当たり”だ」と観測を担当した北里宏平会津大学准教授。地球で同じ特徴の阻石(いんせき)が見つかっていないことを強調します。「われわれが手にしたことがないものが今回、試料回収で手に入るかもしれない」一方、ライバルである米国の探査機オシリス・レックスが今月3日に到着した小惑星ベンヌでは、全域に水を含む粘土鉱物が見つかりました。形状はそっくりですが、リュウグウの表面は全体が均一に見えるのに対し、ベンヌはまだら模様。小惑星の個性の多様性がうかがえます。はやぶさ2が撮影したリュウグウ(JAXA、東京大学など提供)◆貴重情報小惑星は、形成の過程でドロドロに溶けた惑星や月と違い、太陽系の誕生当時の環境をタイムカプセルのように記録した“太陽系の化石”です。過去に探査機が訪れた小惑星は少数ですが、探査のたびに太陽系の謎を解き明かしてきました。小惑星物質そのものを地球に持ち帰って分析すれば、望遠鏡の観測や唄石にはない貴重な情報が得られます。はやぶさ2が回収をめざす試料の量はわずか0・1グラム。どんな秘密を解き明かすのか、期待が高まります。吉川真JAXA准教授は言います。「行ってみないとわからない。未知の世界に踏み込んで行くことが、小惑星探査の醍醐味(だいごみ)だ」(つづく)「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年12月28日付掲載小惑星の探査。実際にリュウグウに到着するまで、そろばん玉の形をしてるって思ってもみなかったのだから。それはそれで、楽しみですよね。