離れて暮らす親の介護 阿久津美栄子⑬ 終末期をどうすごす?
離れて暮らす親の介護 阿久津美栄子⑬ 終末期をどうすごす?先が見えない介護にも、必ずゴールがやってきます。それは大切な家族との別れの時でもあります。別れを見て見ぬふりするのではなく、しっかりと向き合えれば、家族みんなで良い最期の時間を迎えることができます。看取り(みとり)をする終末期をどうすごすか?後悔しない介護の重要なポイントです。意向を聞こう終末期には、介護をされる親との意思疎通が難しくなります。親の意向を聞けないまま看取りを迎えると、後悔が多く残る介護になってしまいます。そうならないよう、介護が始まる前や介護の初期など、まだ親の意向を聞けるうちに、終末期の医療や看取り期の過ごし方を親と話し合えると良いですね。話し合う点は、▽延命治療を望むか、▽要介護者が判断できなくなった時に誰が代わりに判断をするか、▽病状や病名の告知を望むか、▽どのような場所(自宅、病院など)で最期を迎えたいか―などです。家族間で意外にトラブルが多いのが、看取りの時期の積極的医療への考え方です。話し合った内容は、ほかの家族やきょうだいとも共有しましょう。休業は末期に離れて暮らす介護では、看取りの時期の時間の使い方にも工夫が必要です。連載4回目でも触れましたが、介護の初期には介護休暇(1年に最大5日間)や有給休暇を“小出し”に取得すると良いでしょう。まとまって休める介護休業(介護対象1人につき93日まで、3回まで分割して取れる)は、看取りの時期に取得し、親子で大切な時間を過ごすことをお勧めします。介護休業を介護の初期に使ってしまい、終末期に後悔したり、介護離職に陥るケースもあります。時間に限りのある遠距離介護では、時間を有効に使うことが欠かせません。別れを悲しむ大切な人と死別すると、深い喪失感に襲われます。この悲しみが癒えた時が、本当の介護の終わりではないでしょうか。悲しみは自分だけで抱え込まず、できるだけ人と共有しましょう。大声で泣いたり、故人の思い出を語り合ったり…。信頼できる場で受け止めてもらい、感情を整理するなかで、悲しみを少しずつ受容できるようになります。自分に合った方法で、あせらず、ゆっくりと悲しみを癒やしましょう。◇向き合うことがつらいため、多くの人が避けて通りがちな終末期。私は親との別れを見て見ぬふりをしてしまい、親と過ごす最後の時間を自覚しないままの看取りになってしまいました。介護中の人、これから介護をする人には、やがてくる看取りの時期を見すえて、親との時間を過ごしてほしいと思います。13回続いた連載も今回で最終回です。私の介護体験を振り返って、「あの時、あれば良かった」と思った情報や対処法を紹介してきました。少しでも、悔いのない介護をしてほしいと願っています。(おわり)(NPO法人 UPTREE代表理事)「しんぶん赤旗」日曜版 2019年9月1日付掲載阿久津さんの新刊『家族の介護で今できること。』介護の始まりの時期にしぼった「貝体的な初動案内書」です(同文書院900円)親の介護にも必ず終わりが来るってことです。いわゆる天寿ってことですが、病気で苦しみながら亡くなるのか、眠るように亡くなるのか…。それぞれですが、介護する人がその悲しみから癒えた時が本当の介護の終わりなんですね。