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働く人のメンタルヘルス

2015年12月20日
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働く人のメンタルヘルス(10) 労働組合が強い味方に
代々木病院精神科科長 天笠崇

労働組合の組織率は年々下がり続けています。2014年6月末の推計で17・5%になりました。しかし、働く人のメンタルヘルスにとって、労働組合が果たす役割はますます重要になっています。

「継続」2倍差
労働政策研究・研修機構が13年に発表した調査(図)では、メンタル不全になった場合、労組の有無によって「就業の継続」に約2倍もの差が生まれていることが示されています。正社員、非正社員とも同じ傾向です。


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労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」(2013年11月)から

A事業所で働き、労組の仲介で来院した患者さんを5人同時に受け持っていたことがあります。3人目の受診が始まった頃、労組の役員2人に話を聞く機会がありました。
A事業所ではかつて、精神科受診者が出たらまず休職となり、その後は間違いなく退職に至っていたとのこと。「何とかしたい」と考えた労組では頭を悩ませ、経営側への働きかけを通じて職場の衛生委員会に労働者側委員を2人出せるようになりました。
労働者側委員は、厚生労働省の「復職支援の手引き」や「パワハラの予防提言」が出ていることを産業医に説明。私が受け持った1人目の患者さんの復職にあたっては、復職判定委員会を組織するなど復職支援プログラムが整備されました。
その後、私は職場内講演会に2回招かれました。参加した経営側衛生委員が「私の目の黒いうちは職場のメンタルヘルス対策をしっかりやる」と従業員を前に宣言するのを見て、私も目頭が熱くなりました。現在、5人の患者中1人は通院を終了。2人は元気に職場復帰を果たし、2人は休職せずに通院・就労しています。


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労働法制の改悪反対を訴える労働組合員の人たち

地方センター
労組がない場合でも、心の病を抱える労働者が個人加盟のユニオンに加入し、団体交渉を通じて復職した例もあります。椙談窓口としては「働くもののいのちと健康を守る全国センター」の各地方センターも心強い味方です。

「職場の助け合い」
精神科医になったばかりの1980年代後半。私は統合失調症を抱えたCさんの主治医をしていました。
職場の上司から「先生、職場復帰可能の診断書を書いてください。後はうちで面倒をみますから」と頼まれました。「良くなっていない状態なのに大丈夫?」と驚きましたが、Cさんは職場に復帰。実は、「Cさんの不足分の働きは周囲の同僚がカバーしてくれた」と後で耳にしました。これには当時ある種、感銘を受けました。
この十数年来、日本の職場環境どんどん悪化しました。「職場の助け合い」も消えつつあります。心の病を抱える人は、相当良くならないと職場に戻れないのが現実です。
働く人メンタル不調の多くは職場で生み出されるもの。職場の努力で予防し、病を抱える人を支援することも可能なはずです。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年12月20日付掲載


メンタルの症状を抱えた労働者を、「後はうちで面倒をみますから」「○○さんの不足分の働きは周囲の同僚がカバーする」なんて暖かい職場だったらうれしいですね。






最終更新日  2015年12月20日 16時27分42秒
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2015年12月16日
働く人のメンタルヘルス(9) 療養・復職に制度活用
代々木病院精神科科長 天笠崇

職場のメンタルヘルスに関連して利用可能な制度を紹介します。
治療や療養のため休職せざるをえない場合、まず、会社の年次有給休暇や休職制度を必ず確認しましょう。


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業務外の理由による病気や負傷の場合、傷病手当金制度が利用できます。健康保険や各種共済組合などの被保険者が療養中の生活保障を受けられる制度です。意外と知られていません。休業期間が3日間を超える時に適用され、同じ病名や負傷の場合、1年半まで受給可能です。
業務上の理由による病気や負傷の場合は、労働災害保険給付が受けられます。精神疾患が「業務上」と認められるのは、おおむね発症前6カ月間に「業務による強い心理的負荷」があった場合です。労災の認定には半年ほどを要し、認定率は3割程度であることにも留意が必要です。
万一失職した場合でも、手続きをとっておけば傷病手当金が切れた後に失業給付を受けられます。
長期の通院が必要な場合、医療費の自己負担額を軽減する自立支援医療制度を利用しましょう。精神障害者保健福祉手帳もあります。
通院後1年半たっても障害が残る場合には、障害年金を受けられることが多いです。複雑な支給申請手続きが必要ですので、年金事務所で事前に相談することをお勧めします。


【利用可能な主な制度】
制度手続き概 要
傷病手当金制度健康保険、共済組合業務外の疾病。標準報酬日額の2/3を支給
高額医療費制度健康保険、共済組合、国民健康保険自己負担額の限度額を超えた分の払い戻し
労働災害保険給付労働基準監督署業務上の疾病。自殺が対象になる場合も
精神障害者保健福祉手帳市区町村税金の控除、障害者雇用枠での就労など
自立支援医療制度都道府県(申請は市区町村)、政令市長期入院の場合、自己負担額の軽減
障害者職業センターセンターや支所復職・リハビリ支援など


労基署に相談
メンタル不調を生み出す職場の労働条件、いじめ、嫌がらせなどをなくしていく上で、労働組合の役割が大切です。しかし、組合のない職場も少なくありません。都道府県労働局や事業場を管轄している労働基準監督署の活用も考えましょう。
労働局や労基署には専門の相談員が配置されており、労働者、事業主からのあらゆる相談を受け付けています。
復職支援のためには、リワーク(復職)プログラムやリワークデイケアが提供されています。

【復職プログラムの活用例】
軽躁(そう)状態とうつ状態を繰り返し、出勤困難だった双極2型障害(そううつ病)のBさん。治療を続け、生活リズムと体力を取り戻し、人と交流しても症状がぶり返さない力をつけたところで、障害者職業センターのリワーク(復職)プログラムを利用しました。
本人、専門の担当者(臨床心理士)、医師の私が「3者協議」。軽躁状態とうつ状態を反復していた経過を振り返り、「職場のためと思って奮闘してしまいすぎると軽躁状態になり、その後うつ状態になっていた」と確認し合いました。
復職にあたっては上司も交えた「4者協議」をもち、上司が“躁転サイン”のチェックを担当してくれることになりました。復職して半年。一度、軽躁状態になりかかったのですが、上司からの指摘と担当者の助言で乗り切ることができました。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年12月13日付掲載


傷病手当や高額医療費は比較的よく使う制度なので、勝手がわかっていると思いますが…。
労災保険や保健福祉手帳による税金の控除、障がい者職業センターでの復職・リハビリ支援などは知りませんでした。
使える制度は最大限活用しましょう。






最終更新日  2015年12月16日 23時26分55秒
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2015年12月11日
働く人のメンタルヘルス(8) 過労自殺を防ぐために
代々木病院精神科科長 天笠崇

脳卒中や心筋梗塞など身体的原因による「過労死」は徐々に減ってきています。しかし、「勤務問題」を原因・動機とする自殺は年間2200人前後と横ばいです。1990年代後半以降、過労や職場ストレスに起因する「過労自殺」が社会問題化しています。
自殺という残念な結果にならないために、どんな工夫が必要でしょうか。


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こんな工夫を
昇進、転勤、配転、リストラはメンタル不調のリスクとなりえます。人事に関わる変更がある際、十分な引き継ぎや申し送りをして移行ストレスを減らすのはもちろん、職員教育の中にメンタルヘルス問題を必ず入れる工夫をしましょう。
長時間過重労働をなくすことはいうまでもありません。義務化された「長時間労働者に対する面接」や12月から義務化されたストレスチェック制度の活用も大事です。
精神疾患にかかる前や自殺行動に至る前に、多くの人がハラスメント(嫌がらせ)、家族の病気、介護など、仕事や生活上の出来事を経験しています。そうした出来事に対する対処力を向上させる教育・研修も有効です。


変化に気づく
本格的な病気になる前に、ほぼ100%の事例で何らかの心身の変化がみられます。本人も周りも早めに変化に気づくことが自殺予防につながります。職場よりも家族の方が心身の異変に早く気づけることがありますが、職場の同僚や上司が先に気づくこともあります。本人の同意を得て、職場の相談窓口や精神科医の受診につないでいきましょう。
▽身辺を整理する▽「死にたい」と口にする▽アルコールや薬物を乱用する▽慢性疾患の治療を怠る―といった「自殺のサイン」があります。サインに気づいたら、時宜を失わず上司や健康管理スタッフにつなぎましょう。

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【断酒で自殺リスクを除く】
自殺未遂に及んだAさんは、労働組合の仲間と一緒に私の外来に来ました。診断はアルコール依存症、それによるうつ状態でした。
Aさんは子どもの頃に母親が自殺。Aさん本人は飲酒と飲酒によるトラブル続きで離婚し、その頃から飲酒量がさらに増え、うつ状態が悪化しました。酒気帯び出社や遅刻が増え、上司に強く叱責されたことで、総合的な自殺リスクが閾値(しきいち=境界値)を超え、自殺未遂に至ってしまいました(図)。自殺リスクのどれかを除くことができていれば自殺未遂は防げていたかもしれません。
Aさんは受診後、断酒を決意。1カ月後にはうつ状態から抜け出て職場関係も改善し、その後は自殺未遂行動に至らずに仕事を続けています。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年12月6日付掲載


閾値(しきい値)って用語は、パソコン関連ではハードディスクが壊れかけているかどうかを示す値としてよく出てくる用語ですが…。
一般的には、かなり疎い用語です。
家族でも、職場の同僚や上司でも、変化を早めに気づいてあげて対応するのが自殺予防になります。


「死にたい」と口にするという直接的な事はもちろん、「身辺整理」なんて、普段は片付けが苦手な人がやりだしたら要注意ですね。






最終更新日  2015年12月11日 21時01分00秒
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2015年12月02日
働く人のメンタルヘルス(7) 4つのCで業績アップ
代々木病院精神科科長 天笠崇

職場での心の健康づくりを進める上で、四つの“C”が大切です(図)。Cはケア(care)の頭文字です。
使用者の責任
(1)セルフケア=従業員が自分でケアしやすいように、職場が教育・研修の機会を提供し、支援する
(2)ラインによるケア=上司が部下の職場環境を改善し、相談に応じる
(3)事業場内スタッフによるケア=産業医、衛生管理者・推進者、人事労務管理担当者などが対応する
(4)事業場外資源によるケア=外部専門機関が提供する従業員支援プログラム(EAP)などを活用する
厚生労働省が2000年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表してから15年が過ぎました。指針も改定され、職場におけるメンタルヘルス対策は徐々に進んではいます。しかし「何らかのメンタルヘルス対策に取り組んでいる」と回答した企業は、13年の調査で、大企業を中心にまだ6割にとどまっています。
労働契約法の08年の改正で、労働者に対する使用者の安全配慮義務(5条)が法律に初めて明記されました。
「四つのC」の推進も、使用者(経営者)の責任です。
職場での心の健康づくりの成否は、使用者(経営者)の姿勢にかかっています。会社の経営方針や年度計画の中にメンタルヘルス対策の具体的計画を盛り込むよう、労働者の側から働きかけましょう。


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経営左右する
企業や組織が業績を上げるには、企業や組織自身が健康でなければなりません。かつて、メンタルヘルス対策が企業経営に及ぼす影響について考えていた経営者は、ほとんどいませんでした。しかし時代は変わり、今や「健康職場」の実現が企業経営を左右する重要な要素になっています。
米国の国立労働安全衛生研究所(NI0SH)が提唱している「健康職場モデル」でも、労働者の健康と組織の業績は相反するものではなく、相互に作用し、両立するものだと指摘。組織の健康には、会社の経営方針、組織風土、管理方式が重要な決定要因だとしています。


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職場のメンタルケアについて学ぶ様子。右端が筆者=中島映像教材出版のDVD「ワークショップから学ぶSST」から

睡眠の量と質
ある総合病院の衛生委員会の助言者として私が関わった時のこと。各職場の労働ストレス要因とストレス状態・うつ状態などについて、経年変化を追跡調査したところ、睡眠時間が短く、睡眠の質が落ち、ストレス対処法に問題があるほど、メンタル不調の発生につながっていることが分かりました。
この結果を衛生委員会で議論。看護師長・主任のほぼ全員、新入職看護師全員を対象に、睡眠の量と質、ストレス対処力の改善をターゲットにした対策プログラムを提供しました。その結果、年間の休職者率が5年連続で減少し、同規模の法人の中で最小に。新人看護師が年間1~2割も離退職していたのに対し、3年間離退職者ゼロになりました。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年11月29日付掲載


企業や組織が業績を上げるには、企業や組織自身が健康でなければなりません。
そのためには、その構成要素である労働者本人が健康でなければならない。






最終更新日  2015年12月02日 21時43分47秒
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2015年11月28日
働く人のメンタルヘルス(6) 職場に応じた予防対策
代々木病院精神科科長 天笠崇

メンタル不全や過労自殺をどう予防するのか。三つ、ないし四つの予防段階があります。
▽1次予防=病気そのものにかからないようにする
▽2次予防=病気を早く発見し、適切に対処・治療する
▽3次予防=再発を防ぎ後遺障害が残らないようにする
健康を保持するだけでなく増進する活動を「0次予防」と呼び、これを加えると四つの予防になります。

ストレス要因
1次予防では、職場を活性化させ、労働環境を改善する方策がポイントです。
メンタル不調の原因となるストレスには、「長時間・過重労働」「パワハラ」「努力の報われない仕事」などがあります。「成果主義」によっていずれのストレスも悪化します。こうしたストレス要因の制御が大切です。
2006年に労働安全衛生法が改正され、長時間労働者に対する医師の面接指導が義務付けられました。常用労働者が50人以上いる事業場が設置する衛生委員会でも実情を調査・審議します。
厚生労働省は今年5月、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を公表しました。対策として、就業規則の改定による懲戒処分との連動などが示されています。


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チェック制度
非正規雇用者の割合は、14年10月時点で4割を超えました。非正規雇用では労働に見合った賃金が得にくく、「職業生活全体の満足度」も正社員に比べ低くなっています。「ワーキングプア」が増えている30代の婚姻率は正社員の半分です。
「同一価値労働・同一賃金・同一処遇」をめざす労働法制の改革は、予防の観点からも必要です。
今年12月、ストレスチェック制度が導入されます(図)。メンタル不調を未然に防ぐ対策として、過重労働、裁量性の低さ、職場の支援状況の調査が事業者に義務付けられます。
チェック項目は、職業性ストレス簡易調査票57項目が推奨されています。「労働ストレス要因」を追加調査し、高ストレス状態とストレス要因の関係を明らかにできれば、職場に応じた対策がとれます。


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時短で効率もアップ
メンタル不調による休業率が新規に年間3%に達していた事業所では、私も産業医として関わり、発生率を0.5%に減らしました。
まず衛生委員会で休業の要因を分析。職場ごとに時間外労働時間リストを提出してもらい、どう減らすか討議を重ねました。長時間労働が顕著な職場には職場巡視を実施し、職場長から労働実態を聞き取りました。
具体的には▽必ず代休を取得させる▽職務分担を見直す▽繁忙期に定年退職者を臨時職員として雇う▽他部署から応援を派遣する―などの対策を講じました。今年度から、超勤した翌日午前の半日時間休制度を創設しました。疲労の蓄積が解消され、効率が上がったとの声も聞いています。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年11月22日付掲載


メンタル不調の原因となるストレスには、「長時間・過重労働」「パワハラ」「努力の報われない仕事」が…。
でも、事業所自らが取り組むってなかなか困難。
第3者委員会や労働組合による取り組みが必要。






最終更新日  2015年11月28日 19時15分21秒
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2015年11月27日
働く人のメンタルヘルス(5) 職場復帰成功のカギは
代々木病院精神科科長 天笠崇

メンタル不調者の職場復帰を成功させるカギは何でしょうか。
症状が十分回復してから本格的にリハビリを開始します。症状の回復と障害(能力)の回復は別です。一般的には、症状の回復より障害(能力)の回復の方が後になります。
体力、気力、脳力、仕事力をリハビリで十分回復させます。症状が回復した時点で、病前の能力の何割くらいまで回復したか、自己評価してもらいます。握力測定もします。
復職・休職者支援プログラムやデイケアをできるだけ利用してもらいます。
発症(再発)した場面や状況で再発しやすいので、再発予防対策を立てることが重要です。そのため、認知行動療法や社会生活技能訓練(SST)を受けてもらうこともあります。
職場に支援プログラムが整備されていない場合、国の施策について情報提供し、プログラムの整備をしてもらいます。
復職後の時期に応じて外来通院間隔を微調整し、職場の上司や産業医と連携を図ります。


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五つの段階で
厚生労働省は2004年、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を策定し、09年に改訂版を出しました。
そこでは五つのステップが示されています。
(1)休業開始・休業中のケア=上司や産業保健スタッフなどによる早い段階でのケア
(2)主治医の復帰可能性判断=支援の本格的スタート
(3)職場復帰支援プラン=一人ひとりの休職者に合った計画を作成
(4)職場復帰の決定=最終的に職場復帰可能かは職場側が判断
(5)復帰後の追跡調査
厚労省の調査によると、職場で強い不安、ストレスを感じる労働者は約6割、「メンタルヘルス上の理由で連続1カ月以上休業または退職した労働者」がいる企業は7・6%(07年)にのぼります。一方で、職場復帰した労働者がいる企業割合は55%(12年)、職場復帰支援プログラムが整備されている企業割合はわずか12%(同)です。
職場復帰の状況は、まだまだ満足できるものではありません


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「躁転サイン」に気づく
そううつ病を抱えた患者さんの場合、躁(そう)・軽躁状態が高く長いほど、うつが深く長くなる傾向があります。患者さんはうつがつらく苦しく、出勤困難になります。
「躁転」(躁になること)を防ぐことがとても重要です。
睡眠時間が短くなる、声が大きくなる、表情が豊かになる―などが躁転のサインです。患者さんごとにいつも同じ場合が多いです。
躁転サインに周囲の人が先に気づくことができれば、躁転を防げます。こうした工夫で、複数回休職していた患者さんが復職し、職場定着に至った事例がたくさんあります。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年11月15日付掲載


うつ病、躁うつ病から回復したからって、すぐに働けるわけではないんですね。
まずは体力づくりからですか…。気力、脳力(能力ではない)、仕事力を回復を、地道に根気よく。






最終更新日  2015年11月27日 20時43分59秒
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2015年11月13日
働く人のメンタルヘルス(4) 三つの療法組み合わせ
代々木病院精神科科長 天笠崇

適切な治療と休養が確保できれば、心の病の多くは必ず軽快するといっていいでしょう。薬物療法、精神療法(心理療法)、生活療法(社会療法)の三つをうまく組み合わせることが重要です。
▽薬物療法=副作用の少ないさまざまな薬が開発されています▽精神療法=認知行動療法や対人関係療法などがあります
▽生活療法=ストレスの原因となる職場や家庭にある原因をみつけ、なくしたり減らしたり影響をできるだけ少なくしたりします
例として、うつ病の治療と経過のあらましを紹介します。(図)
初めてうつ病にかかった「初回うつ病」の場合、日本人のデータですと、回復するまでに6~7カ月かかります。つまり、それくらいの休養期間が必要かもしれません。


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再発防止策も
良くなったり悪くなったりする病気の初期と回復期の時は、ご本人にとって非常にきつく感じる時期です。従来、自殺のリスクも上がるとされてきました。回復しても、6~9カ月は治療を継続し、薬も飲み続け、再発予防療法や維持療法を受けていただきます。
良くなったと思ってすぐに治療をやめると、10年間の追跡調査で2人に1人が再発します。再発防止策をとることで、再発を4人に1人に減らせます。
回復期には波があるのが大事なポイントです。波を小さくし、穏やかに良くなっていくようにしたいものです。
うつ病が良くなっていくといっても、「反応」「寛解」「回復」には違いがあります。皮膚の傷に例えると、徐々に出血量が減ってきたのが「反応」、かさぶたができて止血した段階が「寛解」です。
「寛解」に至っても無理は禁物。かさぶたがなくなって「回復」に至っても、まだ傷跡は残っているかもしれません。再燃、再発しやすいとされるうつ病について、こんなふうに理解していただければ分かりやすいでしょう。
「回復」以後が、いよいよ本格的なリハビリでず。


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薬はいや?
薬物療法に使われる薬は向精神薬といわれ、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、気分感情安定薬、睡眠薬などがあります。薬さえ飲んでいればかなり効果があるという方も少なくありません。
最近は精神科の薬に対する否定的なキャンペーンがあったりするせいか、「薬を使いたくない」という患者さんもいます。できるだけ希望に沿って、治療を組み立てています。
精神療法と生活療法でいろいろな工夫をしたけれども経過が思わしくなく、薬の使用を希望されて「寛解」「回復」に至った患者さんもいます。初回うつ病の場合、「回復」に至り、職業生活機能が病前水準に戻ってから9カ月間、服薬を継続すれば、服薬を徐々に減らしてやめることも可能です。


「しんぶん赤旗」日曜版 2015年11月8日付掲載


「適切な治療」はともかくとして、「適切な休養」は一般の感覚で言えば「せいぜい2週間から1カ月」と思いがちですが違うんですね。
「初回うつ」の場合で、6~7カ月の休養が必要になるのですね。
患者の回りの人も、大らかな気持ちで接してあげましょうネ。






最終更新日  2015年11月13日 21時38分11秒
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2015年11月08日
働く人のメンタルヘルス(3) 不調発見のポイントは
代々木病院・精神科科長 天笠 崇

精神科の病気の種類は多種多様ですが、厚生労働省の疫学調査研究によると、働く人がかかりやすいメンタル不調には、次のようなものがあります。
▽うつ病(有病率2・4%)
▽特定の恐怖(同2・4%)=高所・閉所・先端恐怖症などを含む
▽アルコール乱用(同1・5%)
▽全般性不安障害(同1・1%)開特に不安でないものにも不安を感じる
▽社会恐怖(同0・9%)=社交恐怖とも呼ばれ、人前で話したり、文字を書くことなどに対して恐怖を感じる
このほか、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、パニック障害、双極性障害(そううつ病)且型などが続きます。
普段と比べるそれぞれの病気の症状はさまざまです。どの病気であれ、最も重要なのは「本来の本人、普段の本人と比べ、変化が感じられる」ということです。
私は、ご本人や家族、職場の上司や同僚が心の不調に気づく上で大切な点を「なやみのみちへ」の頭文字を使って整理し、診療や講演の機会に紹介しています(表)。ぜひ、チェックしてみてください。
正確な診断を同僚や部下のことを普段からよく知っているかー。職場環境がとても重要です。
近年、仕事上で能率・能力低下がみられると、何でも発達障害に結び付ける事例が多くなっています。うつ病の場合、人との交流や、明るく元気に前向きな営業ができず、ちょっとこもり気味になったり、欠勤したりします。実際に診察してみると、発達障害ではなく、うつ病だったという人の方が圧倒的に多い。治療方法を誤らないためにも、専門医による正確な診断が不可欠です。


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メンタル不調に気づいたら、まずは専門医の診察を受けましょう

本人も、周りの人も、こんなことに気づいたら注意しましょう
【な】泣き言、愚痴を言う
【や】辞めたい、退職したい
【み】ミスやトラブルが多い
【の】能率や能力の低下
【み】乱れた勤務(遅刻、早退、欠勤)
【ち】長時間労働
【へ】変化している(普段の本人と比較して)

「プラス」の変化も要注意
心の不調は、マイナスの変化だけに表れるものではありません。
一見「プラス」にみえるものもあります。
「時々遅刻する」という傾向があった女性社員の例では、ある時点から遅刻がなくなり、それどころか少し早めに職場に来るようにさえなりました。それに気づいた上司が事情を聞くと、「睡眠障害のため夜眠れず、早く職場に出るようになった」とのこと。専門医の受診を勧め、うつ病が分かりました。

双極性障害2.jpg型では、「睡眠時間を削るほど元気だ」という様子に気づき、軽躁(そう)状態が分かる場合もあります。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年11月1日付掲載

【な】【や】【み】【の】【み】【ち】【へ】のチェック項目で、自分だけでなくまわりの人もチェックできるのですね。
双極性障害の場合は、プラスにも表れるので注意が必要です。






最終更新日  2015年11月08日 13時08分29秒
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働く人のメンタルヘルス(2) 簡単な自己診断テスト
代々木病院・精神科科長 天笠 崇

メンタル不調を予防するためには、一人ひとりがセルフチェックして、早めに病気に気付くことが大事です。
「うつ状態」「うつ病の疑い」を自らチェックする方法には、「CES-D」や「QIDS」などが知られています。質問数が多く版権の問題もあるので、今回は産業医や総合診療医用に開発された簡単な自己診断テストをご紹介します。
(表)


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構造化面接法
“構造化面接法”と呼ばれるこのテストでは、質問項目1と2で一つ以上の「○」があったらABCに進みます。計五つの質問のうち「○」が三つ以上なら、うつ病が疑われます。
もっとシンプルな「三問法」もあります。
(1)この1カ月間、気分が沈んだり、憂欝(ゆううつ)な気持ちになったりすることがよくありましたか?(2)この1カ月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがありましたか?(3)そのことで、あなたはいま助けを必要としていますか?
答えがすべて「はい」なら、うつ病を疑います。(1)(2)だけ「はい」でも、うつ病のスクリーニング(ふるい分け)には役立ちます。

気持ちは何点
さらに単純な「ワンクエスチョン法」も知られています。
「この1週間のあなたの気持ちの状態を表すと、何点くらいでしょうか?普段気持ちが落ち着いているときを100点とすると、どれくらいでしょうか?60点を合格点と考えてみてください」
59点以下でうつ病を疑います。

うつを疑ったら?
うつを疑ったら、どこを受診すればいいのでしょう。精神科のほか、敷居を低くするため、神経科、心療内科を掲げるところもあります。医師選びは、精神科の研修を受けているか、安心感があり患者の質問に面倒がらずにこたえてくれるか一などが大事です。薬物療法だけでない治療や環境調整も必要。職場のメンタルヘルスの場合、職場環境、仕事内容、制度利用など心理社会的要因にも関心を持っている医師かどうかもカギです。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年10月25日付掲載


「うつの自己判断テスト」の○×のフローチャートは便利ですね。
「気持ちは何点?」ってのは、ずっと落ち込み状態になっている人は、なかなか点数をつけづらいのではないでしょうか。






最終更新日  2015年11月08日 12時15分46秒
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2015年11月07日
働く人のメンタルヘルス(1) 誰にでも発症する可能性
代々木病院・精神科科長 天笠 崇

私が勤務する代々木病院では、今年の春、「労働精神科外来」をスタートさせました。
メンタル不全をもたらす要因はさまざまです。しかし、患者さんの病気を診ていると、3人のうち2人は職場に原因があるとみられます。そうした患者さんを受け入れたい―。
これが全国でも珍しい専門外来を新設した理由です。

右肩上がりに
日本では近年、メンタルヘルス(心の健康)と関連した労働災害が急増しています。
2000~14年度を比較すると、精神障害の労災申請件数で約7倍、認定件数で約14倍になり、右肩上がりです。そのうち自殺は、申請で2倍、認定で5倍程度の増加です。(グラフ)
この労災統計は氷山の一角です。統計と実態の隔たりは大きく、労災申請のハードルがまだ相当に高いのが実態把握の障害になっていると、私は思います。


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いじめが1位
労働精神科外来が目指しているのは、患者さんはもちろん、勤める会社にとっても役に立つ「ウィン・ウィン」の解決の道筋を見いだしていくことです。「働くもののいのちと健康を守る東京センター」や過労死弁護団ともタッグを組んでいます。
患者さんたちを診ていると、「長時間・過重労働」「ハラスメント(嫌がらせ)」「努力の報われない仕事」が広く深くまん延していることが分かります。
これらが職場のメンタル不全の原因のほぼ9割をカバーするのではないでしょうか。
都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる相談では、12年度には「いじめ・嫌がらせ」が相談内容のトップになりました。新しい労働ストレスとしてはびこっていることを実感します。
職場は戦場といってもよく、対処法を身に付けてうまく立ち回らないと、誰でもがメンタルの不調に陥りかねない時代です。そうした時代を生きる上で、役立つ情報を紹介していきます。


働く人のメンタルヘルス001.jpg

“パワハラ”が原因
労働精神科外来に来院された50代のAさんは、大手企業のSE(システムエンジニア)。診断はうつ病でした。
会社で2回目の「業績改善プログラム(PIP)」を受ける直前に、出勤できなくなったとのこと。1回目のPIPの内容を思い出すにつけ夜眠れなくなり、うつ病を発症したようでした。
過度なノルマを課して達成度評価の面談を繰り返し、未達成を確認し指摘することがPIPの目的です。労働者自ら退職しない限り延々と続きます。実態は、上司のいじめ、嫌がらせでしょう。近年、こうした“パワハラ”がらみの患者さんが増えています。

「しんぶん赤旗」日曜版 2015年10月18日付掲載


仕事が過密になる昨今。だれでも精神障害を発生する可能性はあります。
個人のストレス発散の限界を超えた過密労働は是正すべきです。






最終更新日  2015年11月07日 19時27分52秒
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