きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

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知って役立つシリーズ

2020年11月08日
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テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き⑧ すべての言葉しみじみと

ボクに「ことば」に対する真摯な想いを教えてくれた中西龍さん。
NHKアナウンサーの大先輩だ。大河ドラマ「国盗り物語」「にっぽんのメロディー」のナレーション。「みんなの茶の間」のDJ。その独特の語り口は、「中西節」と呼ばれた。




詩心たっぷりに
中西さんは、放送に詩心(うたごころ)を添えたいと思っていた。
「歌に想い出が寄り添い想い出に歌が語りかけるそのようにして歳月は静かに流れてゆきます」。「にっぽんのメロディー」冒頭の決まり文句は、詩心たっぷりのコメントとして、いまも記憶に残っている。中西さんのことを知らない人も、このフレーズを口にすると、「ああ、聴いたことがある」という。
中西さん自身も「ああ、あの頃、中西とかいう名前のアナウンサーが、そういえば、こんなことを言っていたな」と想い出のよすがにしてもらえたら倖せだと言っていた。
よすがどころか、いつまでも忘れられないことばになっている。それは、その場限りの軽口ではなく、アドリブで適当に場つなぎしたわけでもなく、やはり心底からの詩心を感じられたからだろうと思う。
『精魂込めて』。中西龍さんのことば遣いは、まさにそれだった。一字一句をあだやおろそかにしない。丁寧に丁寧に『音声表現』していた。放送で紹介するお便りも、いわゆる「読み流し」などもってのほか。恭(うやうや)しく押し頂くように読んでいることが、音声からわかった。
中西さんが大切にしていたのは良寛の言葉。「すべての言葉はしみじみというべし」。相手の立場に心づかいがないと、しみじみと言えない。自分の心がやさしさに充ちていないと、しみじみと言えない。沈黙の値打ちを知っていないと、しみじみと言えない。
世の中、右を向いても左を向いても雑音騒音だらけ。情報は氾濫し、知りたくないこと、知っても少しも役に立たないこと、むしろ害になることで、落ち着きないことはなはだしい。大声で物を言わないと、自分の言葉がかき消されてしまうと考えられがちだが、そういう世の中だからこそ、せめて言葉だけは、しみじみ取り交わしたい。それが中西さんの想いだった。
中西さんの発することばは、抑制の効いた「しみじみした物言い」だった。
小さな事柄、日常茶飯事の中から、なにげないことを見出し、ことばにしていた。

音楽ある話し方
簡単なことを言うのに理屈っぽく聞こえる人には、その話し方に音楽がないから。
難しいこともやさしく味のある話し方をする人には音楽がある。心に残る話し方には、独特のリズム、音楽がある。それも「騒々しくない程度に際立つ音楽だ」と、中西さんは言う。魅力的な話には、相手を喜ばせたい、飽きさせたくない、程よいサービス精神がある。
上手な話し方はない。
誠実な話し方はある。中西さんこそ、誠実な話し手であった。ことばを慈しむ話し手であった。
その足元にくらいはたどり着きたいと、ことば磨きを続けている。
元NHKエグゼクティプアナウンサー(おわり)

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年11月8日付掲載


放送に詩心(うたごころ)を添えたい。
世の中、右を向いても左を向いても雑音騒音だらけ。そういう世の中だからこそ、せめて言葉だけは、しみじみ取り交わしたい。
NHKアナウンサーの中西さんの想い。






最終更新日  2020年11月08日 09時37分34秒
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2020年11月02日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き⑦ 「沈黙」が想いを引きだす

聴くためには聴かないことだ。前回、全身で聴くことを強調した舌の根も乾かぬうちに、この人は、何をわけのわからないことを言いだすのかと思わず、最後まで読んでみてほしい。
相手の話を聞き逃していることが、いかに多いことか。聴いているようで聴いていないのだ。

失敗のはずが…
ボクも新人の頃、アナウンサーは質問するのが使命とばかり、事前に質問項目を必要以上に用意し、自分の質問ばかりに気をとられて、相手の答えなど耳に入っていなかった。
ところが、ある時、目からウロコが落ちるようなことがあった。ゲストは言語治療士として、長年活躍している木内哲子さん。最初に予定していた質問をしたものの、湯水の如くことばが出てくる木内さんに、15分間の番組中、ひとことも口を挟むことができなかったのだ。
アナウンサーとしては失格だと落ち込んでいたら、担当ディレクターからは「おまえが下手な質問しないのがよかった」と変な褒められ方をした。ゲストの木内さんも「きょうは思いっきり話せた」と上機嫌。
そうなのか!これまで聴こう聴こうとしていたが、聴かないことも聴くことなのだと目が覚める思いがした。コを聴いて十を知ればいい」と悟った。もちろん「一を聴いて十を知った」気になってはいけないと肝に銘じながら、その後も相手にスイッチが入ったら、邪魔をせず、ひたすら聴くことにしている。




ひたすら待って
緩和ケアというと、がん末期の、いわゆるターミナルケアを思いがちだが、医療そのものが、患者の痛みや辛さを緩和するのが目的なのだから、ある意味、医療の原点と言える。
緩和医療一筋に歩んできた素晴らしい人格の医師がいる。大津秀一さんは、日本では極めて珍しい「早期緩和ケアクリニック」を開いている。
大津さんが、緩和ケアで重視しているのが「沈黙」だ。「沈黙」が、相手の多弁を誘発することのほうが多い。ひたすら聴くことに徹する。問いかけに対して明確な答えが出てこなくても気にしない。
優しくしすぎない。同情しすぎない。気休めを言わない。相手の絶望に完全に寄り添うのは難しいという意識を持つことが、言動に表れる。「お気持ちはわかります」のような生半可なことばは出てこなくなる。中途半端な励ましは意味をなさない。自分にしか自分は救えないと、沈黙が相手に気づきを与える。
黙って相手が話したくなるのをひたすら待つ。ただし傾聴するとき、必要以上に深刻にならないことだ。かといって必要以上に明るくならないことだ。
横に並んで座り、相手に少し身体を傾けるようにする。自分の意見は差し挟まず、相手のことばを反復するようにする。「いたいですね」「つらいですね」「しんどいですね」…気持ちを支えることばが大事。
本気で聴いてくれている人には、本気で話してくれる。うわべだけのことばではなく、表情や口調も含め、まさに全身で聴くのだ。

元NHKエグゼクティプアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年11月1日付掲載


こちらから話しかけて、相手の言葉を引きだすのも一つだが…。
逆に、あまり語らずに、相手に思いの丈を語らせるのも一つ。
メンタルケア、緩和ケアでも同様の心構えが必要だということ。






最終更新日  2020年11月02日 08時08分20秒
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2020年10月29日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き⑥ 全身耳にして話を「聴く」

人の話を聴くということは、耳だけでなく全身で聴くものだと思う。
「聞く」という字には、耳が一つだけ。「聴く」という字には、耳と目と心が入っている。十四の心があるという人もいる。
あちこちの「ことば磨き塾」では、これまでも「聞く」と「聴く」の違いについて、それぞれの意見を出し、ずいぶん話し合ってきた。

流すか味わうか
あるお寺でのこと。説明する若い僧の話は「聞く」。説法する熟練の僧の話は「聴く」。
ある学校でのこと。若い教師の話は無意識に「聞く」。校長の話は意識して「聴く」。いずれも、ふつうに聞いて聞き流すのと、しっかり聴いて腑に落ちるの違いだろうか。
ある会社でのこと。「イナバウアー」とあだ名される上司がいた。会議中、荒川静香のイナバウアーのように身体をそらし寝ているから、その名がついた。だが、この上司、肝心なときにむっくり起きて的確な指示を出す。取るに足らないことは聞き流し、肝心なことだけ聴き取る能力があったのだろう。
妻の話は98%スルー。聴くふりして聞くなんて人もいた。真剣に聴くと疲れるから、相手の身になりすぎないようにしているなんて人もいた。
「聞く」とは、勝手に耳に入る。自分本位で、自分の目的に合うことだけを聞く。聞きかじる。話を味わっていない。
「聴く」とは、能動的に全身で相手を想うこと。奥底にあるもの、奥行きにあるものを感じる。余韻や余白を味わうこともできる。
いまだけ、ここだけ、あなただけの話を聴くために、相手目線で、徹底して受け止め、相手の理解につとめる。全身を耳にして、ひとことも聴き逃さないようにして、相手の心に自分の心を合わせるようにする。




「つもり」を排除
キャスティングプロデューサー、奈良橋陽子さんと対談したことがある。
奈良橋さんは、その名前のごとく、人と人、世界と日本の橋渡しをしてきた。渡辺謙さんを「ラストサムライ」起用への橋渡しをし、彼をハリウッドスターに押し上げた。菊地凛子さん、真田広之さん、別所哲也さん、小雪さん…、多くの日本人俳優を、海外で認められる俳優にしていった。
彼女は「話したつもり、聞いたつもり、わかったつもりの会話が人と人とのコミュニケーションを難しくさせ、誤解を招く」という。「つもり」を排除しているから、どんなことにも先入観を持たない。「全力」で相手を理解し、許し、尊重する。だからこそ、人の美質を見抜き、国の枠にこだわらず、「橋渡し」ができるのだろう。
自分の思いが強すぎると、人にゆだねたり、人の話を聞けなくなったりする。
コミュニケーションの原点は、「真剣に話し、しっかり聴くこと」だと言う。つまり、伝えたいことを全力で話し、全力で聴くということだ。
それは「自分の魂から相手に向かって一筋の光が届き、相手は心を開いてその光を受け取るイメージ」という奈良橋さんのことばは深い。
元NHKエグゼクティプアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年10月25日付掲載


「聞く」と「聴く」の違いについては良く語られますね。
「聞く」は動物でもやっているが、「聴く」は相手の想いを受け止めるということで、人間だけのものって感じはあります。
「聞いたつもり」「思い込み」を排除することが大事ですネ。






最終更新日  2020年10月29日 08時12分28秒
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2020年10月20日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き⑤ 通販番組に学ぶ「本気度」

伝えただけで伝わっていないことが、なんと多いことか。せっかく口にだしたのに、相手に届かず、宙に浮いたままだったり、途中で落下してしまったり、これでは、ことばがかわいそうだ。ことばは、扱い方しだいで、こわれやすい。傷つきやすい。丁寧に丁寧にやさしく、取り扱う必要がある。

伝える・伝わる
「伝える」と「伝わる」。「え」と「わ」の一文字の違いが大きい。この違いがわからず、伝えたつもり伝わったつもりの人が多い。
「伝える」と「伝わる」を比較してみよう。
「一方的か双方向か」「自分目線か相手目線か」「事務的か心に響くか」「発信か受信か」「主観的か客観的か」「相手の理解に関係なく話すか、相手が理解したことを自分も理解するか」
ことば磨き塾でもいろんな意見が出たが、一番わかりやすい例えは、「片想いか両想いか」だった。自分の想いだけでなく、相手の想いも感じながら伝えれば伝わる。
ことばをボールに例えたら、やみくもに投げず、キャッチャーの構えているところに、ちゃんと投げるようにする。ボールを受け止めてもらったことまで確かめる。そうしたら、ことばは伝達される。
テレビショッピングで知られるジャパネットの前社長、高田明さん。彼も「伝える」と「伝わる」は違うという考え方に基づいてプレゼンをしてきた。
高田さんの購買意欲をかきたてるプレゼン能力はすごい。早口だし、声は甲高いし、佐世保訛り(なまり)はあるし…でも伝わる。その気になる。ことばが印象に残る。
他人事で話していないからだろう。自分が使ってみての実感を飾らぬことばで伝えるから「本気度」がある。感動を分かち合いたいという思いが原点にある。




「お絵描き話法」
説明が具体的で細かい。五感に訴える。大事なことは繰り返す。これらを、自らを駆り立てて、相当に「意識」して伝えている。「想い」のバトンを渡すトークなのだ。
聞き手の気持ちになって、頭の中にあるキャンバスに絵を描くように話す。これを「お絵描き話法」というそうだ。
「デジカメも600万画素になったら、こんなに大きく伸ばせるんですよ。毎月1枚、こういう大きな写真を1枚作ったらね、1年に12枚。これをお子さんに残してあげたらね、大変な宝物になりますよ。お孫さんやお子さんの運動会の姿をきれいに残せるんですよ」
高田さんの説明は、常に使う人の立場に立っている。
難しい専門用語はなるべく使わず、自分が使っている姿を容易に想像できるわかりやすい描写で、商品の魅力を語るのだ。
「お客様は機能や使い方ではなく、『その商品を買ったら、自分の生活がどのように豊かになるのか』に興味がある。だからこそ、商品で生活がどのように変わるのかを具体的にイメージできるように工夫している」と高田さんは語る。
コミュニケーションは、受け手に「価値あるもの」と認めてもらうことで、初めて受け入れてもらえる。自分の言葉を「相手にとって価値あるもの」にするために、受け手の心のキャンバスに絵を描くようにわかりやすく話すといい。
元NHKエグゼクティブアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年10月18日付掲載


通販会社の「話法」。僕としては、高田さんの「ジャパネットたかだ」は「売らんかな」「安かろう悪かろう」のイメージが強いですが…。
「伝える」の意志を「伝わる」に実現することは、日本共産党などの活動でも参考にすべきことが多いと思いました。






最終更新日  2020年10月20日 08時26分28秒
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2020年10月17日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き④ 何気ない一言にも気配り

人間は、ことばという素晴らしい道具を持っているにも関わらず、ことばについて考えることは、ふだんはなかなかない。
日頃から考えることで、引き出しから、どういうことばを選べばいいか判断することができると思う。
身近によく使うが、似て非なることばについて、私が各地で開いている「ことば磨き塾」の塾生たちと考えてみた。




一文字違いだが
例えば「企て」と「企み」。一文字違いだが、比較検討してみると、ずいぶん意味合いが変わってくる。
「悪企みというように、策を弄して、怖いイメージがある」「企みは、公にしない秘密。企てはポジティブ」「企みは、ドッキリ。サプライズ。企ては建設的イメージがある」「企みは『陰』。企ては『陽』」「目的が何かによって『企み』になったり『企て』になったり」「どちらもウラを感じるから苦手。ふつうに『企画』『計画』がいい」
次は、「美しい」と「きれい」についても比較してみた。
「一本のバラだと『美しい』。たくさんの花だと『きれい』」「『美しい』は和のイメージ。『きれい』は洋のイメージ」「『美しい』は重みがある。『きれい』は軽い」「美しいときれいでは、感情の量が違う気がする」「ことばにできないほど『美しい』と思うが、『きれい』はすぐことばにできる」「高倉健のたたずまいは美しい。男性にも使える」「災害ボランティアが町を『きれい』にする姿は『美しい』」「美しいは『内面』も見て言うが、きれいは『外面』だけ」「美しいは的を絞るが、きれいは幅広く使う」
さらに「好き」と「愛してる」について比較検討した。
「『好き』は責任を伴わないが、『愛してる』は責任を伴う」「『愛してる』は言う方も言われる方も重い」「『愛してる』はエネルギーの高いことば」「『好き』は短期的。『愛してる』は長期的」「好きの対象は多いが、愛してるは限定的」「『愛してる』は口にすると、うそっぽいし安っぽいから、めったに言わない」「子どものいる前では『好き』。夫と2人だけだと『愛してる』」「好きと言っても問題ないが、愛してると言えば問題が発生する」「愛してるには執着がある。独占したい」「残念なところも含めて愛するのが慈愛の心」

場面で違う意味
これまで何気なく口にしていた「ことば」が、場面場面で、いろんな意味を持っていることに気づく。ことばを使うとき、気を配るようにしたらいいと気づく。
ただ「きれい」と言えぽいいというものではない。
ただ「美しい」と言えばいいというものではない。
ただ「好き」と言えばいいというものではない。
ただ「愛してる」と言えばいいというものではない。
相手の想いを汲み取り、掬い取り、そこで相応しいことばを選んで使う。
ことばを作り出した人間が、自分たちを生かすことばを使う。そのことがこれまで以上に大切になってゆくような気がする。
元NHKエグゼクティプアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年10月11日付掲載


たった一字違いでも、まったく違ったイメージ、違う意味をもつ言葉。
例えば「企て」と「企み」。「美しい」と「きれい」。
そして「好き」と「愛してる」。
確かに、「恋」が「愛」に変わっていく瞬間っていうのは飛躍だと思う。






最終更新日  2020年10月17日 07時45分48秒
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2020年10月12日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き③ 「心の扉」はボタンで開く

ポイント
▽相手の気持ちに寄り添い、思いに耳を傾け、共通項を探す
▽構えを取り払ったとき引き出しが開く

インタビューすることは多々あれど、インタビューされることは、あまりない。先日、「FMヨコハマ」の番組に出演してきた。
国際文化アナリストで幸福研究家の目崎雅昭さんがホストを務める番組だ。
目崎さんは、ことばの引き出しを開けるのが上手だ。そのうえ、引き出しの中を整理してくれるのがうまいのだ。

つい素になって
「素朴な疑問ですが…」といいながら、まさに素朴なことを質問されると、こちらも素になって答えてしまう。
「素朴な疑問ですが、優秀なアナウンサーとそうでないアナウンサーは、どこが違うんですか?」「一概に良しあしは決められないが、ことばの引き出しをたくさん持ち、臨機応変に使えることかな」と答えた。
そうしたら目崎さんは、「滑舌の良さや声質でもなく、上っ面でない生き方がアナウンスに反映される。魂をことばで変換してみせるアーティスト」と分析してくれた。うれしいことこの上ない。
ことばの引き出しを開けるには、心の扉を開けることが大前提。
ドンドンドンと、大きな音を響かせ、思いっきりノックしても逆効果。聞こえるか聞こえないかくらいのノックでは、無反応。ノックの仕方は難しい。
だが、ふと気づくと、突然、扉が開くときがある。扉の前にいることを、ノックや大声で伝えなくても、感じてもらえばいいのだ。
例えば「いままで行った場所でいちばん印象に残っているのは?」とか「また訪ねてもいいと思う場所は?」と聞いても、なかなか思い通りに答えが返ってこない。そんなとき、「ボクを連れて行きたいところは?」と尋ねた瞬間、相手のスイッチが入ったことがあった。



耳傾ける共感力
心の扉には、「気持ちいいボタン」がついている。このボタンをうまく押せたら、扉は開く。相手のいつもと違う微妙な変化も見逃さず、それを口にすると、気づいてもらったうれしさに、一気に緊張が解け、心の扉が開きやすくなることがある。
相手の気持ちに寄り添うことが、心の扉を開けてもらう第一歩。自分をできる限り抑えて、相手の思いに耳を傾け、自分との共通項を探す。そういう「共感力」が、気持ちいいボタンの場所探しに役立つ。
くだんの目崎さんは、ボタン押しの達人だったのだ。それも相手に気づかせず、さりげなく押すのだ。
野球の世界で「ピッチャーの球の出どころがわからない」という。投げる球が事前にわかってしまったら、バッターに狙い球を絞られてしまう。
ストレートかカーブかシュートか…投球フォームで相手にわからないようにしたら、バッターは予測できないから、あらかじめ構えることができない。
聞く人も答える人も構えを取り払ったとき、引き出しが開いて、会話は弾む。

元NHKエグゼクティプアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年10月4日付掲載


心の扉には、「気持ちいいボタン」がついている。このボタンをうまく押せたら、扉は開く。
自分をできる限り抑えて、相手の思いに耳を傾け、自分との共通項を探す。そういう「共感力」が、気持ちいいボタンの場所探しに役立つ。






最終更新日  2020年10月12日 13時13分36秒
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2020年10月11日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き② 生活の中で「有難う探し」

「有難(ありがと)う」と言えば批判を浴びる世の中になってしまった。なにか歯車が狂ってしまったようで、嘆かわしい。
新型コロナウイルスの感染リスクを背負って働く人に感謝の意を示そうと、「有難う」と言ったら、「美談にすり替えているのか」と批判を浴びたそうだ。いったい人の心はどうなってしまったのか…。

本来は「有難(ありがた)し」
だが、ちょっと待って。「有難う」の本来の意味をはき違えているから、こういう批判が出てくるのだ。
つい先日、20歳の東大生に「有難う」ってどんな意味があるか知っているか質問してみたら、キョトンとしていた。ボクが改まって聞いたので、彼も考えあぐねて「特別なことがあったときに言うんですよね」と答えてきた。
「もう少し考えてみて」と、その場では保留にしたのだが、紙上で回答しよう。
「有難う」は「有難し」。あたりまえのことは何一つないという意味。感謝の念を表すことでもあるが、どんなことも「あたりまえ」と思わないよう自分に気づきを与えることばだ。
コロナ禍の中、あたりまえにできていたことができなくなった。人と人の触れ合い。芝居を観ること、音楽を聴くこと。外を自由に出歩くこと。これまでの「あたりまえ」をコロナウイルスが奪ってしまった。人間に気づかせるために…。
だから、感染リスクを背負いながら働く人にも、ただ単に感謝するだけでなく、「存在」そのものの有難さに思いをはせて口にしているのだから、なんら批判を浴びることはない。
「有難う」は、どれだけ口にしても足りないくらい。だって「有難いこと」は無数にあるのだから。




言い惜しまずに
ボクが主宰する「ことば磨き塾」で、「有難う」ということばを、どんなふうに使っているか聞いてみた。
話のきっかけ、困ったときのつなぎ、雰囲気をよくする、距離が縮まる、緩衝材になる、受け入れる…有難う効果の受けとめはまちまちだ。
だが、実際に有難うを口にしているかと言うと、さにあらず。言わなくてもわかると思い、言い惜しんでいることが多い。
「有難うの神さま」と言われる小林正観さんは、「朝起きて、有難うを100回言うと、脳は有難うを言いたくなる現象を100個探し出そうとする」と語っている。
有難うを言いたくなる現象が起きているわけではないのに、なぜ有難うなのか、脳はその理由を探ろうとする。目にするものすべてに対して「有難う探し」をする。
「つらい」「悲しい」「つまらない」と言えば、脳はその理由を探す。「有難う」を言い続けたら、脳はずっと「有難う探し」をしているから、感謝神経が磨かれていく。
「有難う」の対極にあることばは「あたりまえ」。まばたきをする、手でコップを持つ、歩ける…。どんなことにも「有難う」を言っていれば、人生が好転してくるはずだ。日常生活の中で「有難う探し」をしてみてほしい。
元NHKエグゼクティブアナウンサー

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年9月27日付掲載


コロナ禍の殺伐とした社会で、「有難う」って言えることを探すのは難しい感じですが…。
「つらい」「悲しい」「つまらない」ことはたくさんあっても、それだけにこだわっていれば、落ち込むばかりです。
「有難う探し」をすると、心がポジティブになりそうです。






最終更新日  2020年10月11日 07時34分56秒
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2020年10月10日
テーマ:言葉の魅力(70)
村上信夫のことば磨き① 心の使者を遣わすように


むらかみ・のぶお=1953年、京都生まれ。元NHKエグゼクティブアナウンサー。「おはよう日本」「ニュース7」などを担当。2001年から11年にわたり、NHKラジオの「声」として活躍。現在、「うれしいことばが自分を変える」をテーマに全国各地で講演。「ことば磨き塾」を主宰。文化放送「日曜はがんばらない」に作家・医師の鎌田寛さんとともに毎週出演。著書に『人は、ことばで磨かれる』(清流出版)など。
http://murakaminobuo.com

はっきりくっきり字幕スーパーが現れた。
NHKを辞めようかとどまろうか逡巡(しゅんじゅん)していたとき、脳内に「ことばの種まき」という字幕スーパーが現れた。その時点では、その意味するところが判然としなかったが、ことばの神様に自分のするべきことを教わった気がした。そのことばに導かれるようにしてNHKを退職し、全国を回ってうれしいことばの種まきをするようになった。




武器ことば横行
ことばという道具は、誰しも自由に使うことができるが、その取扱説明書は、どこにもない。その都度、自分で考えて使うしかないのだが、ほとんどの場合、無意識に不用意に使っている。
だから、思いもよらぬことで誤解されたり、相手を傷つけたり、伝えたつもりが伝わっていないことが、往々にして起こる。
ことばは時として武器になる。人を傷つける刃(やいば)になる。特にコロナ禍の中、武器ことばが横行している。
マスクをつけないで電車に乗っていると「マスクをつけろ!」と怒鳴られる。県外ナンバーの車でスーパーに買い物に行ったら「コロナをまき散らすな」と追い出されそうになったそうだ。
「東京は、諸悪の根源だ」と口を滑らせた知事もいた。旅行の自粛の呼びかけをするとき「マズイところに来てしまったと後悔してもらえばいい」と強い調子で言った知事発言は炎上した。一方で、「会いたいからこそ、今は会わないようにしませんか。それが収束を早めます」と訴えた県には、「すてきなメッセージが心に響いた」と賛意が寄せられた。非常時こそ、リーダーたちのとっさのひとことが問われる。
カタカナことばも乱発される。爆発的な患者増加と言わず、オーバーシュート。都市封鎖と言わず、ロックダウン。感染者集団と言わず、クラスター。
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、政府や専門家が、国民に呼びかけるとき、なぜか「カタカナ語」を常とう句にしてきた。
国民をけむに巻くために使ったのではと疑念を持つ人もいた。不都合な真実を伝えない意図を感じてしまう人もいた。パンデミックのように、一言で危機感が伝わりやすいカタカナ語もあるが、誰もが理解しえないカタカナ語を乱用するのはどうかと思う。
ちなみに、オーバーシュートは、本来は為替相場などで「景気の実態から外れた行き過ぎ」を指す経済用語だったが、転用された感がある。

コロナの悪巧み
古来、日本人は、まるで心の使者を遣わすように、人の立場や心情に思いを巡らせてきた。結果、素晴らしい「思いやりのことば」を使ってきた。その感性はどこへ行ってしまったのか…。だが、そのDNAは受け継がれているはずだ。コロナウイルスのたくらみに乗せられて、武器ことばで人間社会を分断させてはなるまい。
時代はことばをないがしろにしている。ことばは、いま瀬戸際。ことばの取り扱いに気を配りながら、いまこそ、ことば磨き。

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年9月20日付掲載


言葉は、誰しも自由に使うるが、取扱説明書があるわけではない。
古来、日本人は、まるで心の使者を遣わすように、人の立場や心情に思いを巡らせてきた。
言葉は力を持っていて、人の生き方に働きかける。






最終更新日  2020年10月10日 08時10分07秒
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2017年02月19日
おのみさの麹 醸され生活 其の7 おとなの味わいで

酒かすを使った簡単でおいしいレシピをいくつかご紹介します。
◇スパイシーチキン
①ポリ袋に〈酒かす20グラム、塩麹小さじ1強、カレー粉小さじ1/2〉を入れてよく混ぜます(酒かすが固いときは電子レンジで10~20秒加熱)。一口大に切った鶏むね肉1枚を入れてもみ込み、冷蔵庫で一晩寝かせます。
②フライパンを中火で熱し油を入れて鶏むね肉(焦げやすいので注意)を妙め、あらかた火が通ったら一口大に切ったピーマン5~6個と一緒に妙め合わせればできあがり。
鶏肉がしっとり柔らかく、スパイスが効いていて食べやすいので男性にウケが良いようです。水分も出ないのでお弁当や、持ち寄りパーティーに持参してもいいかと思います。

◇トリュフチョコ
お次はお酒好きな方へのバレンタインにぴったりな酒かすチョコ。
チョコレートを粗く刻み、湯煎や電子レンジで加熱して柔らかくします。チョコレートと同量の酒かす(柔らかい酒かすならチョコレートを増やす)も電子レンジで加熱して柔らかくします。両方をよく混ぜて団子状に丸め(板チョコ1枚で約8個分)、回りにココアをまぶして冷やし固めるだけ。ラム酒入りのチョコのような味わいです。ワインやウイスキーのお供にいかがでしょうか?

◇デイツプいろいろ
お次もお酒に合いそうな酒かすディップです。酒かすとクリームチーズを同量、よく混ぜたものに好きな具材を混ぜ込みます。
ドライフルーツ(混ぜてから一晩置きしっとりさせる)、あんこ+バター、たらこ、刻んだ高菜漬けなどなど。
トーストした食パンなどに添えてはいかがでしょうか?
クリームチーズは10秒くらい電子レンジで加熱するか、常温に置いて柔らかくしてください。

◇ごまクラッカー
クラッカーも作れます。〈小麦粉100グラム、酒かす30グラム、塩麹小さじ2、ゴマ大さじ1〉をポロポロになるまでよく混ぜます。〈オリーブ油20グラム、牛乳20グラム〉をいれてさらに混ぜ一つにまとめます。ポリ袋などに入れて、袋の上から薄く(厚さ約2ミリ)のばします。袋を切って取り出し、適当な大きさに切ります。170度のオーブンで焼き色がつくまで15~20分焼いてできあがり。ほんのりチーズ風味。おやつにもお酒のおつまみにも。



【レッツ麹醸され生活】
塩麹は手元に
酒かすとみそは冷蔵庫の奥に入れていつでも使いやすく!



酒かすをまぜるだけで、おとなの味わいのデザートに変身

無理なく使う
酒かすは冷蔵庫で3カ月、冷凍庫なら1年もちます。常温に置けば茶色く熟成し、野菜や肉、魚の粕漬けに最適です。冷蔵庫にスタンバイさせておくといつでも使えて便利。無理なくおいしい、麹に醸された食生活を送ってください。(おわり)
(麹料理研究家・イラストも)

「しんぶん赤旗」日曜版 2017年1月29日付掲載


酒かすは冷蔵庫で3カ月、冷凍庫なら1年ももつのですね。
お味噌、酒かす、塩麹。ちょっとの工夫で、大人の味わいのデザート。いや、おつまみも。






最終更新日  2017年02月19日 07時00分21秒
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2017年02月17日
おのみさの麹 醸され生活 其の6 酒かすで肌つるり

以前立ち寄った、麹(こうじ)屋の女性販売員さんの肌がとてもキレイだったので秘訣(ひけつ)を伺ったところ―。
「お店を立ち上げた時はとても忙しくて睡眠不足だったのに、お客様にサービスでお出ししていた、酒かすをたっぷり入れたかす汁を毎日飲んでいたら肌荒れもせず、いつもより肌の調子が良かったんです。それ以来、毎日かす汁を飲んでいるんですよ」と言うのです。それを聞いてうらやましくなり、私もまねして、自宅のみそに酒かすを1/3ほど混ぜ込み、みそ汁を作って飲み、麹美人を目指しております。

栄養たっぷり
酒かすとはお酒のとになる醪(もろみ)を搾ったあとのカス。カスとはいえほんのり甘くておいしい上、麹の栄養分がたっぷりと詰まった極上のカスです。板状のもの、ぼそぼそした塊のもの、まだお酒が搾れるくらいにしっとりしたもの、茶色く熟成したものなど、見た目もいろいろ。
お酒の種類と同じだけの酒かすがあるので、高価なお酒の酒かすはやはりそれなりのお値段です。大吟醸酒の酒かすは香りがフルーティーでそのまま食べてもおいしい。トースターで焼くと(お好みで砂糖をふりかけて)チーズのような風味になりますのでそのままおつまみにもなります。お酒好きな方でしたら、好きなお酒の酒かすを買うと間違いないですね。



【酒かすキムチ鍋】
酒かす…30g
白菜キムチ…100g
だし汁…200ml(昆布5cmと水200mlなど)
塩麹…適量

【酒かすシチュー】
酒かす…30g
スープ…150ml(スープの代わりにソーセージやベーコンのだしでも!)
豆乳(または牛乳)…100ml(豆乳は過熱しすぎると分離するので最後に投入!)
塩麹…適量

※レシピは目安です。お好みで調整してくださいね。
※酒かすはアルコールを含んでいます。お酒に弱い方や車の運転をされる方は、十分ご注意ください。



酒かすと豆乳でキムチの辛さがまろやかで優しい味わいになります

辛さが和らぐ
私が好きな酒かすの食べ方は、酒かすキムチ鍋。だし汁に豚肉や野菜や豆腐を入れて煮込み、最後に〈酒かす十白菜キムチ十豆乳〉.を加えるだけです。キムチと酒かすのW発酵食品で体にいいし、汗をかくほど体が温まります。辛いものに酒かすと豆乳を加えると辛さが和らぎますから、苦手な人はお試しください。
もう一つは酒かすシチュー。洋風スープの素(もと)などで鶏肉や根菜を煮込み、最後に〈酒かす+豆乳(牛乳でも)〉を加えます。
ホワイトソースに似た味わいになるので、ルーがなくてもシチュー風のものがすぐにできます。アサリの缶詰を加え、薄めにのばすとクラムチャウダi風ですよ。塩気が足りない時はもちろん塩麹で調整してください。
酒かすと液体を混ぜる時は、耐熱容器に入れて電子レンジで10~20秒くらい(固いときはさらに10秒ずつ加熱してください。加熱しすぎるとはじけることがあるので注意)加熱すると酒かすが柔らかくなるので、そこに温めた液体を少しずつ混ぜると混ぜやすいですよ。
次回はパーティーにも使える酒かす料理をりご紹介いたします。
(麹料理研究家・イラストも)

「しんぶん赤旗」日曜版 2017年1月22日付掲載


酒かすキムチ鍋は、豚も入れると豚キムチでお酒のあてにもなりそうです。






最終更新日  2017年02月17日 14時58分54秒
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