きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

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カラスっておもしろい

2018年10月03日
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カラスっておもしろい④ 学習能力 数も個体も分かっている
杉田 昭栄

カラスが人間の顔写真を見てそれぞれの違いを巧みに識別することは、先週紹介したとおりである。ところで、このような実験をとおして研究室で次のようなことが話題になった。
カラスは家族や地域のカラスが集まりさらに大きな集団、つまり群れを形成する。
素朴な疑問として、カラス同士で顔なり、容姿を認識しあっているのだろうか。これは考えとして自然の流れであるが、誰も実験をやっていなさそうである。それじゃ論より証拠とばかりに基本実験をすることとした。



(写真1)

(写真2)

どんな向きでも
人間の顔写真識別実験と類似した方法をとるが、実験するカラスは便宜上カラスAとする。識別されるカラスは№1と№2の2羽のペアである。カラス№1の頸より上の写真を、前、横、斜めなど6アングルほど、さまざまな角度から撮る。同じくカラス№2の写真も撮る。(写真1)
まずは、カラス№1、カラス№2の正面から撮った写真で行う。この場合、カラス№1の写真の蓋を破ると餌が得られるようにした(写真2)。
1日10回選ばせる実験を行い、カラスAの写真で蓋をされた器を9回以上選ぶようになったら学習成立とした。
その後は、カラス№1の横向きとカラス№2の斜め前左顔のペアというようにランダムに組み替えて、器を置く位置も変えて実験を行った。その結果、カラスはどのような向きであろうがカラス№1の写真を選ぶようになった。さらにカラス№1の写真を追加し、その未経験の写真を用いても判断できた。
このことは、どんな向きでもカラスAは認識できていることを示唆する。この研究は、始めて日数もあさく、これからが勝負であるが、あれだけ群れをつくるカラス同士がそれぞれ個体認識をして、その上でコミュニケーションや社会性を持っている可能性がある。
このことに関しては、カラスは他のグループの個体間の優劣を観察の中で理解し、群れの合流の際の自分の立ち位置を判断できるという報告がある。まさに、カラスは様子をうかがいながら個体認識とそれへの関わりを考えることができるのである。



(写真3)

(写真4)

多い・少ないは
そんなカラスにさらなる試験をこころみた。かなりの思考力があることが分かったので、今度は多い数と少ない数などの数的概念を有しているのかを試してみた。実験手法は、カラスの回答がしやすいように、餌箱の蓋にさまざまな数のシンポルをランダムな位置に印刷し、数の多い方に餌を入れて提示する方法である。
シンボルの数は2個から12個とし、同じ数でも印刷場所は不定とした。実験は、2個と5個でトレーニングを行った。つまり、5個模様がついている餌箱に餌を入れ、2個模様がついた方は空とした(写真3)。カラスが5個のシンポルの餌箱を選ぶようになったら、組み合わせを4個と5個、6個と8個、7個と5個というように変えていく。出された二つの餌箱の蓋のシンボルを見て、多い方に餌があるということをカラスが学びとる場合は、どのような数の組み合わせを提示されても、多い方を選択することになる。
結果は、どうかというと数の比較ができたのである。例えば、4個と5個では5の方(写真4)、5個と7個であれば7の方を選ぶのである。
やはり数量の概念が備わっていると考える。



(写真5)

このような知的行動ができるカラスに人々は畏怖の念を抱き、神の使者としての八咫烏(やたがらす)など古くから神事に登場させてきたのも自然のことと考える。(写真5)
(宇都宮大学名誉教授)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月28日付掲載


カラスってやっぱりかなり賢いんですね。
八咫烏(やたがらす)など、神の使いとして祀られてきたことも納得。






最終更新日  2018年10月03日 12時52分10秒
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2018年09月29日
カラスっておもしろい③ 知恵者 道具をつくる
杉田 昭栄

さて、先週までは、カラスの子育てのほほえましい親子の姿、また自然界の中で命を育む困難へ直面する姿を紹介した。先週の駅構内に営巣したカラスの雛はなんとも切ない結果になってしまったが、似た状況になっても逆に「やった、やっぱり知恵者」と思うくらい、うまく子を育てることもある。
これは、自然豊かな河川の中州で観察したカラスの親子の話である。



写真1 成長して空を飛べるようになった子ガラス


写真2 貯食するカラス

子を見捨てず
巣立ちが近い子ガラスが嵐で全部巣から振り落とされた。飛翔力がまだない育ちの時期であった。中州だから犬猫の心配はない。子ガラスたち4羽は中州の草むらに身を隠し生きている。親ガラスは地上の子をちゃんと見守るのである。
子ガラスがまだまだ生きる生命力があると思えば、親ガラスは見捨てるどころか、地上の子ガラスにセッセと餌を運ぶ。こうして、餌を運ばれた雛ガラスは少しずつ力をつけ、まずは低い枝に飛び移り、さらに力がつくと、次の高い枝に飛び移る。(写真1)親も、逆境に落ちた子を見捨てず、少しずつ力のつく段階に合わせて高い枝へと徐々に誘導するのである。
前回あまりにも残念なことを書いたので、こんなことも多くあることを伝え、育ったカラスの賢さに話題を変える。
カラスの知的な行動として道路にクルミを置き車に礫かせて殻を割る行為、余分な餌を隠して保存する貯食する行為などが知られている。(写真2)
一方、外国では餌の昆虫を穴から引き出す道具をつくる、カレドニアガラスも広く知られている。実はこのカラス、嗜のとどかない器の水面に浮かんでいる餌を器の水かさを上げ餌にたどり着くことや、針金でフックをつくり、それで餌を吊り上げる思考もできる。(図1、2)
さて、外国のカラスばかりでなく日本のカラスの知力について著者の研究室が行った実験で紹介していく。



図1 シリンダーに重りを入れ水かさを上げ、餌を取ろうとしているカラス


図2 針金の先端を曲げて作った“道具”で筒の中のモノを引っ張り上げるカラス


人の顔の一部を隠してカラスが認識できるかを実験

顔写真の識別
著者らは顔写真の識別実験を行うことが多い。したがって、顔写真AさんとBさんや他の顔写真の識別ができることは、さまざまな機会で紹介している。本稿では、目や口など顔の一部をマスキングしても識別ができたことを紹介する。
マスキングしない場合は、10回試行中で9~10回は餌の入っている正解の顔写真を選べたことは当然である。ところが、一度覚えると、マスキングしても、10回試行中で9~10回は餌の入っている正解の写真を選ぶことができるのである。
このように顔の部分的な情報からカラスが判断するポイントとして目と鼻、あるいは口と目など考えられるが、組み合わせを含めこの研究は現在も進行中である。面白いことに、写真のように6組の写真の組み合わせのうちで顔を3分割した最後の組み合わせでは、学習が成立しなかった。このことから、各部位とともに輪郭などの要素も識別情報には重要と考えられる。
人間の顔を認識するかどうかは、アメリカガラスでも報告されている。
たとえば、カラスに攻撃的な人の顔については直接攻撃された経験を有するカラス以外に、同じ地域のカラスや攻撃されたカラスの子にも、その人が有害であることが認識されるのである。
こうしてみると、認識からコミュニケーション、さらには論理的思考で道具を考えるなど、カラスの知的行動は生態学、動物行動学の面から見てもまだ奥が深い。
(宇都宮大学名誉教授)
(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月21日付掲載


カラスは、道具を使ったり、マスキングした人間の顔を見分けたり、かなり賢いのですね。






最終更新日  2018年09月29日 14時18分59秒
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2018年09月17日
カラスっておもしろい② 巣立ち 育つまでに潜む危険
杉田 昭栄
先日、山口県で2歳の男の子が自宅近くで突然行方不明になり、3日後に無事発見され、日本中が「よかった」と思うニュースがあったのは、みなさんの記憶にあたらしいことと思う。

運か早い者勝ち
子どもは思いがけない行動をとり、危険とも直面する。今回は、命を繋ぐ水がある小さな沢にじっとしていたことが幸いしたとか。本当に良い意味での多くの偶然の巡り合わせで命が繋がっているのだと思う出来事であった。実は、カラスの観察をしていると、小さな命が育つ中には、今回のニュースと同様に思いがけない危険がある。
カラスは一繁殖期に2~5個の卵を産む。先週は4羽の雛が育つ巣を紹介しているので数について多くは語らない。いずれにしろ親ガラスはひたすら餌運びや巣の手入れに余念がない。



巣を見守る親/はばたくカラスの雛

巣の子を見守る
当然、一度にすべての雛を満たすほどの餌は運べない。たいてい1回で1羽の雛のおなかを満たしてやるだけの餌を運ぶのがせいぜいだ。親が餌を運んできた気配を感じると、雛たちはいっせいに大きく口を開きながら頭を持ち上げる。親から餌を口にいれてもらえるのは親が着巣したそばの雛など、その時の運か、早いもの勝ちのようなものだ。餌にあずかれなかったものは、がっかりしたかのように力なく頭をたれる。
ところで自然の豊かな地方の町は餌を探すといっても生活生ごみが豊富に集中していない。それなりに餌を見つけるのに時間がかかるようである。このとき、どちらかの親が必ず巣を視界にいれて見守っている。したがって、巣は意外にどこからでも見えるような場所に作ることが多い。
今回の場合も人工物に巣を作っているが、その位置は周囲の建物から見えるようで、親鳥は駅舎の屋上、近くのビルの屋上、電柱などから巣をよく見ている。当然のことであるが、カラスは子どもに携帯など持たせることもない。自らの感覚が子どもの様子を捉えられる範囲で行動し、子を見守っているのだ。
こうして育った子ガラスに巣立ちの時期がやってくる。今回、観察しているカラスの子たちも、身丈をのばし、羽ばたきの真似をしだした。さらに、巣から出て作業橋を歩きまわることや陸橋の端から顔をだし、下の線路を覗きこむことを始めた。
筆者は大きな不安を感じた。



巣を出てウロウロする雛たち


巣の下の線路を覗く雛たち

線路の上に営巣
実は、カラスは巣立ちが極めて下手な鳥であり、とんでもないことがよく起こる。飛翔力がまだないくせに飛びたがるのである。枝が無数にある大きな木に作った巣からなら落ちても下の枝につかまることもできる。しかし今回の場所は落ちたら電車が往来する駅構内の線路の上である。
元気よくヤンチャに育っていそうな雛たちは、狭い作業橋の上をパサパサと羽ばたきの真似ごとをしながら歩き回る。状況は、相当に危険である。何時、線路に落下(たぶん雛たちは飛んだつもり)してもおかしくないのである。
不安は的中した。1日間を置いて観察に行ったら4羽いるはずの雛が3羽しか確認できない。もしやと思い高架橋から降り、線路周辺の草むらを双眼鏡で探したら子ガラスの死体らしきものがあった。やはり、巣立ちを失敗したのである。
実は、その後1週間で残る3羽も同じ運命をたどった。営巣場所が自然ほど包容力のある場所ではなかったのか、命はつながらなかった。あらためて、命が大きく育つまでの幸運を考えさせられるできごとであった。
(宇都宮大学名誉教授)(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月14日付掲載


都心部では鳥類で食物連鎖の頂点に立つカラス。そのカラスの世界でも雛どうしの生存競争が。カラスが巣立ちが苦手な鳥って知りませんでした。






最終更新日  2018年09月17日 11時23分49秒
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2018年09月15日
カラスっておもしろい①
子育て 雄と雌が共同 優しく

杉田昭栄

近頃、児童虐待とか育児放棄とかのニュースが報じられる。悲しさをこえ、悲惨でなんともやるせない気持ちになる。当事者の心理は筆者の推察をこえる複雑で深いものがあるのだろうから、そのことについて語るつもりはない。
ここでは、筆者がつきあいの深いカラスの子育てをとおして、親の子への実直な関わりを考える。

じつくりと観察
カラスの巣の観察は、毎年に近い頻度で行っていたのだがここ数年は他の仕事の忙しさにかまけて遠ざかっていた。ところが、今年はじっくりカラスの巣を観察する機会に恵まれた。4月の中ごろ、まったく知らない方から電話がはいった。
この時期、多くは、電話口にでなきゃよかったという内容が多い。例えば、カラスが家の庭木に巣をつくったので処理してほしいなど、有害鳥獣対策処理業者と間違えている感である。だから、その電話にも相当に用心しながら対応した。
だが話をきいているうちに、何やら親切心が電話から伝わってきた。話は次のようである。カラスの巣の観察に恰好な場所があるとのこと。
その場所は、宇都宮駅から東北線下り方面の三つ目、氏家駅の西口と東口を繋ぐ高架橋の脇についた作業用補橋とのことであった。
高架橋の上から覗けるとのこと。カラスの巣は仰ぎ見ることが多く、上から覗ける場所なんて希である。毎日通うには少し遠いが、まずは電話の主と日程調整をして現場に出向いた。



夫婦で子育てするカラス

ハシボソガラス
駅前で電話の主Iさんと待ち合わせ。Iさんは、毎朝の散歩で巣の存在に気が付かれたとのこと。うれしそうに私をカラスが見える陸橋を渡るための階段の最上段まで案内してくれた。わざわざ、電話をくれただけのことはある。カラスの巣のなかがよく見えるのだ。
種類はハシボソガラスである。
大いにこの場所が気に入って1日おきに通うこととなった。おそらく、艀化して10日は過ぎている雛の頭部が四つみえる。巣の大きさは外枠60センチメートルくらい、中心の巣床という動物の毛など敷き込んで柔らかくなっているところが半径15センチメートルくらい。その巣床に4羽の雛が身を寄せ合っている。
親鳥が餌を運んでくるのが待ちきれないとばかり大きな口を開き頸を持ち上げては、支えきれなくなり「カックン」頭をたれ巣に臥す。まだまだ頸を支え続ける力がないのである。
4羽の頭がオルゴールの音色を打つ板金のように交互に頭を挙げては、「カックン」と頭をたれる姿は可愛い。



高架の上の巣。中の様子がよく観察できる


子どもの上に羽を広げて日陰をつくる

きれい好きな鳥
カラスの子育ては雄と雌の親が共同で行う。抱卵は雌が行うが、艀化後の育雛は共同である。15分間隔のときもあれば30分間隔のときもあるが、交代で雛の餌を探してくる。雛は大きな口を開け親がその口に餌を入れ込む。
その後は雛の羽つくろい、巣の手入れと思われる仕草など忙しく動き回る。そして、雛がお尻を持ち上げ糞をしそうになると器用に雛の排泄口からまさに押し出され、落下寸前の糞をくわえとり、捨てに巣から飛び去る。だから、カラスの巣には糞がない。極めてきれい好きな鳥である。
ところで野生の生き物にとっては、嵐や今年のような酷暑も受け入れていかなければならない。ある日差しの強い日、雌親は少し羽を大きく広げ日傘をつくり直射日光から雛を守っていた姿は、当たり前と思いつつも親鳥の優しさをつよく感じ、こうあれと、思わず人間界の悲しい子育てのことが脳裏に浮かんだ。
 
(宇都宮大学名誉教授)
(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月7日付掲載


ハシボソガラスといえば、街中に普通に暮らしているカラス。
ガアガアといううるさい鳴き声に似合わず、意外ときれい好きなんですね。ヒナの糞が巣に落ちる前にくわえて外に捨てる。すごい技である。






最終更新日  2018年09月15日 18時41分37秒
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