■レビュー内容
「風と木の詩がきこえるか、青春のざわめきが…」
完結しました。ハッピーエンドになるはずもなく…。少年ジルベールを描く物語としては、最後はこうならざるを得ないでしょうねぇ。最後まで愛憎劇というか、憎しみと悲しみと不幸の連続で、救いようのない話だった。序盤は、性の多様性とか、愛や性は自由なんだみたいなのがテーマかと思ったが、後半は二人が男の子同士という意味はほとんどなかった。
「面白いか」「おすすめか」と聞かれれば、否と答えざるを得ないが、竹宮センセーの作品なら、「ファラオの墓」「イズァローン伝説」の物語物や、SF物の「地球へ」や、ファンタジー物の「私を月まで連れてって」とかをおすすめします。ただ、1巻の寺山修司の解説に『「風と木の詩」以後と呼ばれる』とあるように、この作品が少女漫画史に一大事件を起こした作品であることは間違いない。少女漫画史を批評するのであれば必読の作品だろう。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
セルジュとジルベールとの仲を仕事先に密告され、セルジュは仕事を失ってしまう。必死で仕事を探すが、ダルニーニが裏で手を回しセルジュに仕事を与えなくしていた。次第にセルジュは追い詰められていく。
ジルベールは公園でボナールと再会する。二人を屋敷に住まわせ面倒を見始めるが、人の世話になることを潔しとしないセルジュは楽しそうにしているジルベールを置いて、自身の部屋へ帰って行く。それを知ったジルベールはボナールのもとを離れセルジュのもとへ戻る。
セルジュは、ジルベールを支えきれなくなって行く。仕事を見つけることが出来たセルジュだったが、それに耐えられないジルベールに、ダルニーニの魔の手が伸びる。ジルベールはアヘン中毒にされてしまう。
徐々にやつれていく二人を助けようとパトリシアはパスカルをパリに呼び寄せる。パスカルはセルジュにジルベールと距離を置くことを進め、パトリシアはパトゥール子爵家も存亡の危機にさらされていることを告げる。セルジュはなすべきこと考えることが重なり、ジルベールの変化に気付くことが出来ない。
ジルベールの変化に気付いたパスカルが部屋からアヘンを見つける。売人の男が貴族に売り渡すため、アヘンで正気を失っているジルベールをパリから連れ出そうとしていた。正気を失っているジルベールは、馬車にいる男がオーギュストと思いこみ、馬車に轢かれてしまう。翌朝、ジルベールは瀕死の状態でセルジュの元に戻り、息を引き取る。
ジルベールの死から精神を病んでしまったセルジュを、パスカルとパトリシアは懸命に看護する。パトリシアはパトゥール子爵家に手紙を出すと、アンジェリンがやって来る。アンジェリンは、セルジュのために子爵家を管理し待っているとパトリシアに告げる。パトリシアは、セルジュの回復の望みを、パトゥール子爵家での思い出に託す。
パトゥール子爵家に戻ったセルジュは、父の日記とピアノに再会、そしてピアノを弾き始め…。