■レビュー内容
「尚隆に比べれば、お前は屑だ」
清廉潔白で誰からも慕われ尊敬される人物、そんな人の近くにいたいとは思わんなぁ。だって、いつ自分が非難されるともしれんし、完璧な人間ではいられないんで…。延麒が斡由を問い詰める場面、斡由の化けの皮がボロボロと剥がれていく、自身の正義は微塵も疑ったことがなかったのに、実際民を思っての行動は本物だったんだろう。異を唱える者がいることがいかに大切かってことでしょうか…。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
延王登極から20年。荒れていた国土は緑を増やし、人も増えつつあった。延王が即位するまでに、前王梟王崩御から16年がかかった。それは、延麒も延王も胎果であったためだった。延麒、蓬莱での名は六太は、応仁の乱の京で戦火に焼け出された家族に口減らしのため、十歳余りの子が山に捨てられたのだった。死の間際、蓬山に迎えられるのだった。その後、蓬山で暮らすのだが、麒麟の役割を知るにつれ王を選ぶことに嫌悪感を抱くようになり、蓬山を逃げ出し、蓬莱へ。それから三年、戦国時代をさまよい、瀬戸内の小さな国の跡取り小松尚隆に王気を見出し、蓬山へ帰還するのだった。
確実に国力を回復する雁州国だったが、国力の回復を優先したため雁州国の官吏は未だ前王朝が任じた官が大半を占める。延王は、州候から主だった権力を取り上げ、各州に牧伯を置き政務を監視させたのだった。そのようなやりようが反感を招かないはずはなく、とうとう元州に謀反の疑いが生じるのだった。
そんな折、延麒が更夜という者に誘拐されるという事件が起こる。更夜は元州射士で元州候の令尹斡由の部下だった。延麒と更夜には面識があった。十八年前、夜半に妖魔に乗る子供を見かけた延麒は、妖魔を操る子供に驚き声をかけ更夜という名を与えたのだった。その後、斡由に拾われ、斡由の命令で延麒を元州に招いたのだった。
斡由は、延麒に政治に興味のない王に代わって自身が上帝位となることを要求するのだった。そんなことには応じられない延麒は、戦が始まることを覚悟、更夜と敵になることを憂慮するのだった。延麒は赤索条で角を封印され、牧伯の驪媚が人質に取られ容易に逃げ出すことはできなかった。
元州州宰白沢が使者として玄英宮を訪れ、元州謀反が発覚する。延王は成笙を禁軍左軍将軍に据え元州へ向かわせる。元州と通じているであろう光州候の官を全て朝廷に召し上げ懐柔し、元州を孤立化させる。さらに、光州州師を解散させ、成笙に道中に兵と役夫を募れというのだった。
禁軍左軍7千5百は、元州に到着する頃には3万に膨れ上がっていた。成笙は延王の指示通り、元州頑朴を包囲し、漉水に堤を築くのだった。斡由は王師の数の多さに驚き、光州からの援軍もないことに動揺する。しかし、降伏しようとはせず、言葉では民のためと言い、自身の失敗を認められないでいた。
延王は、延麒を救うため単身、元州兵に紛れ込み頑朴に潜入する。驪媚は、延麒を延王のもとに返すため自身の命と引き換えに延麒の赤索条を切るのだった。延麒は、驪媚の意志を無駄にしないため、血に酔いながら必死に頑朴からの脱出を図るのだった…。