■レビュー内容
「カマドウマが住みついててくれてよかったかも」
三者三様の別れがあり、次の出会いも感じられます。なんだが、風太は浮かれすぎ、泰はやっちまったなぁ~。佳乃は、まだまだ道のりは長そうですが…。花火大会の一日の人間模様は見どころですね。濃い話の連続なんだけど、読後に爽快感があるのは何故なんでしょうか。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
父の一周忌で山形を再訪するすずらは、父の妻陽子が他の男と結婚を前提に交際していて法事にも出席せず、施主を幸が務めることに。それを聞いたすずは、なぜ怒ってくれないのかと幸と口論になってしまう。
法要が終わり、陽子の連れ子だった兄弟の一人和樹は、すずに葬式の時に騒いでしまったことを謝る。すずは、自分が陽子や和樹と智樹を嫌っていたことが和樹には伝わってしまっていたのだと気づき、幸との口論の時、自分の気持ちばかりだった自分に気づくのだった。
千佳の勤めるスポーツ用品店の店長浜田が、横浜でデート中の幸を見かけ彼氏が裕也の退院時の写真に写る小児科医の椎名だと言う。椎名が結婚していて別居中だと言うことを知っていた千佳は、写真を見せ佳乃とすずに相談する。そこに幸が帰宅、写真が見つかっていしまい幸と佳乃が口論になってしまう。佳乃は男の都合に振り回されている幸が気に入らず、幸は事情を知りもしないで正論を言う佳乃が気に入らない。
鎌倉の花火大会の日、湘南オクトパスのメンバーは美帆の父が出す漁船で海から花火を見ことになっていた。最近、裕也のことが気になっているすずは、裕也が来ないことにがっかりする。お菓子の買出しに出たすずと美帆は、裕也が浴衣を着た少女と歩いているところを目撃する。二人は、楽しいはずの花火を悲しい気持ちで見るのだった。訳ありの交際に悩む幸は、帰りがけにアロマテラピーの院内講習会に出ると言う泰之と会う。幸は、その講習会に飛び入りで参加する。行きつけの飲み屋で花火の日イベントに行くはずの佳乃は、融資担当の坂下係長の急な残業のお供で、イベントに行けなくなってしまう。不満たらたらな佳乃だったが、温和で仕事が出来なさそうな坂下の仕事ぶりに感心する。
裕也が試合形式の練習に参加、誰もが以前の裕也との違いにショックを受けていた。自宅に帰ったすずは、幸と買い物に出かける。幸は、すずの部屋のカーテンを変えようと言うのだが、すずは父の病室のカーテンを思い出すから使っていないと言う。陽子が病室を全く訪れない代わりに父に付き添っていて、病状が悪化するにつれ閉められた病室のカーテンの中ですずの時間は止まってしまったのだった。すずは、店の前を通りかかった風太を見つけると、裕也のことを聞く。風太だけが裕也を見る目が違っていたことに気づいていた。風太は、裕也が試合の最初の5分で義足の右足でのコントロールをあきらめ、左足でボールを触っていたと言う。そのことには全く気付かなかったすずは、風太のキャプテンとして洞察力を褒める。すずは、風太と話して少し前向な気持ちになるのだった。
椎名は、小児がんの最先端医療を学ぶためアメリカに行くこと、けじめとして病を患る妻とも離婚することを幸に話し、アメリカに一緒に来てほしいと言うのだった。幸は、師長から新設の緩和ケア病棟への異動を打診され、死と向き合う患者と家族を支える仕事が出来るかどうか悩んでいた。自分のやりたかったこととは何だったのか自問する幸は、椎名の申し出を断る。自分にとってもすずにとっても、止まっていた時間が動き出したのだと感じるのだった…。