■レビュー内容
「おれなんてバカ、嫌い、しか聞いたことないですよ?」
ご近所トラブルは、何となく解決です。安達原の鬼と絡めた、こういった日常と非日常を交錯させる物語の構成は相変わらず上手いですね。葉月との順調ぶりは前振りでしょうか…、なんだかまたしても騒動の予感。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
憲人は、安達原を前に主人公が人の振りをする鬼であることが気になる。仲間や先輩にどう思うか聞いて回る憲人は、上京したじいさまにも相談する。じいさまは、教え子のバスケの試合を見に来たというのだが、もう一つ苦情の手紙の事も気にかけていたのだった。
じいさまは、母冴子が苦情の事で参っていると言い、事の次第を憲人に話す。憲人の同級生の母親が、自分の息子が有名企業に入りながら馴染めず退職したことから、能楽者としても俳優としても有名になった息子を持つ家庭に嫉妬したのではないかという。友人だがそのことは知らなかった憲人は、人の心に宿る闇を考えずにいられなかった。
そんな中、憲人は、連雀の同僚の一言にひっかかる。悪意のある言葉ではなかったのだが、以前より劣等感を抱いていたこともあり、その同僚と気まずくなってしまう。憲人は、自分の中にも鬼が住んでいて、それは些細なきっかけで現れるのだと気付くのだった。
憲人は、安達原も終わり、道成寺の準備にまい進するなかで、葉月との交際も順調に感じていた。そんな中、松山の舞台で地元の後援者の座敷に誘われた憲人は、そこで小太郎にそっくりな芸者千代鷺を見かける。帰京した憲人は、千代鷺が小太郎の血縁者なら道成寺に呼びたいと、再度深川へ出かけていくのだが…。