昼酒のらおじさん
昼酒のらおじさん真夏、猛暑だ。正午ジャスト、きんまるはお昼を食べようと、駅前の餃子チェーン店に入った。店内はすでに超満員になっている。さすがは評判店だ。カウンターに一つだけ席が空いていたので、そこにもぐり込み座った。カバンの置き場もないから、膝の上におく、キュウクツこのうえない。お客のほとんどはガテン系だ。頭にはタオルを巻き、ニッカボッカに地下足袋だ。駅舎の改修工事をやっているので、ちょうどこの店が、飯場の食堂状態になっているのだ。ガテン軍団は、ワッシワッシと餃子をほおばる。ラーメンをガブガブとすする。ニラレバ炒めを慌ただしくかき込む。ガテンオーラが店内に渦巻いている。ところが妙に違和感のある空気が流れてきた。店の一番奥にある特等席のテーブルだ。いた!のらおじさんだ。そこだけ空気がちがう、のんびりと時間が止まっている。他のテーブル席はどこもガテン軍団が、窮屈そうに四人がけで座っている。ところが、のらおじさんは何の遠慮もなく、たった一人でテーブル席を独占しているのだ。こんなに込んでいるのに、良い度胸というか、無神経というか、相席にはさせずと、テーブル中に新聞を広げている。のらおじさんは、餃子をつまみにビールの大ジョッキでちびちびやっている。みんなが汗して働いている時間に、のんびり昼酒だ。のらおじさん、リタイア後の時間をどう楽しもうと勝手だが、なにもこんなに混んでいる店で、それをやるのはちょっと違うと思う。それも、ガテン軍団にとっては貴重な昼休みだ。のらおじさん、少しは空気を読んで、ラッシュタイムをずらせて来てもいいのではないだろうか?リタイアしてほうけたせいか、一般社会の空気とは充分にずれているのだから、せめて、来店時間もずらしてほしいなああ。♪チャンチャン♪