天を生み、地を生み、海を生み・・・。
森羅万象を生み出した神は最後に、
この世界を支配するものとして、人間を生み出した。
しかし、神の知恵を授かった人間と言えども、
その肉体は、野獣より弱く、その心はうつろい易く、
幾度も滅びの危機を迎えた。
人間の未来を案じた神は、
彼らを補う為に、大いなる力を与えた。
<獣>セルであった。
歴史と言われる記憶の黎明期から、
人類は、<獣>セルと共にあった。
<獣>セルとは、人間と共にあり、
人間の意志により、人間の能力を飛躍的に高める生物。
人間が身に着ける前の<獣>セルは、鉱物と見まがうような存在。
だが・・・。
人間に触れた<獣>セルは、姿を変え、
秘められた能力を人間に与える。
<獣>セルさえあれば、人間は自身より重いものを持ち上げ、
大空を自由に飛翔出来た。
しかし、その時代は幕を閉じた。
どこからか流れ出した<霧>が、
世界を覆った時、
<獣>セルと共に繁栄した世界は変貌した。
濃密な<霧>に包まれた時、
従順に従っていた<獣>セルが、人間に反旗をひるがえしたのだ。
<獣>セルは意思を持ち、単独で人を襲った。
人に装着した<獣>セルは、人の心を支配し、邪悪な獣にした。
神は人間を見捨てたのか・・・。
文明は崩壊した。人類は黄昏の時代を迎えた。
<霧>から逃げ延びた人間達は、
辺境の地で身を寄せ合うようにして生きていた。
希望の残り火を、
僅かな心の支えとして・・・。
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