2006/10/17(火)00:08
「雨の中の光(第2話)」
「雨の中の光(第2話)」
まるで燃え盛る炎に馬車で突っ込むように昇は「どうしたの?おばさん」と聞いた。
その一言で、美咲の怒りは頂点に達した。「だいたいあんたなんかにおばさん呼ばわりされる筋合いはないわよ!うちの上司といい、いまどきの高校生と言い、なんで私の周りはこんなにバカばっかりなのかしら!私の何を救ってくれるのよ!どいつもこいつもわけのわからない事ばっかり言って、こんなんだから日本はこれからもおかしくなってくのよ!」
昼間の込み合ったcafeの中で、立ち上がって顔を真っ赤にしながらそう叫んだ美咲は、自分のトレイを持って、残りかけのフィレオを口に突っ込んで返却口へと進んだ。が、あまりに強引に進んだせいか、近くのテーブルにバッグの紐が引っかかり、「きゃぁっ!」という声とともに、すごい音がしてトレイがひっくり返り、そこら中にランチの皿やグラスが散らばった。。「もうー!」と言いながら、狭い店内で駆け寄るスタッフと一緒にトレイを片付け、振り返ると、昇が少し悲しい目でこちらを見ているのが見えた。
「くっそぉ。もう2度とあの子とは話さない。」そう呟きながら、美咲は急いでオフィスへと帰った。
こんな日は大抵ついてないんだよなぁ。。という美咲の予感は的中し、午後の仕事は客先からのクレームはくるわ、書類のミスで上司に怒られるわ、担当への電話を忘れてしまうわ、散々だった。「あーついてない。」自分のマグカップを洗いながら、呟いたちょうどその時、同期の真紀が通りかかった。「どうしたの、そんな不満そうな顔して。」何気なく声をかけた真紀の言葉が、美咲の心の傷に塩をすり込んだようで、美咲は眉を寄せて睨み返した。真紀はちょっと後ずさりながら「えっと、この後ラーメンでも食べに行かない?」ととっさに提案した。
ラーメンという言葉に反応した美咲は、眉を寄せたまま口元をゆるませて、「ラーメン。いいわね。」と言った。「そ、そう。そしたら美咲は何時に終わる?」できれば、今日は遅くなる、と答えてくれ、と祈りながら聞いた真紀の期待もむなしく、「もう終わり。行こ行こ。」と笑顔で答える美咲に、真紀はちょっとだけため息をつきながら、「そうだね。。」とひきつって答えた。
「そうなのよ。ホント頭にきたんだから。」ラーメンをすすりながら真紀の予想通り美咲が一方的に話すのを聞きながら、真紀は相槌をうった。
「そのノボルくんともうちょっと話してみればよかったのに。」と真紀は言ったが、美咲はムキになって、「いや。もうどこかで会っても絶対無視だな、あいつめ!」と、チャーシューをほおばりながら言った。「大体、私のどこが悲しい顔なのよ。」そりゃそうだ、と真紀は思ったがこれ以上話を長くしたくなかったので黙っておいた。
その時、軽快な音楽に乗って、美咲の携帯にメールが届いた。。。それは昨日別れた彼からだった。。
(明日へつづく)