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明日の風の吹く場所から・・

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[一行の物語] カテゴリの記事

全49件 (49件中 1-49件目)

雨の粒。

今日。やっと一年の仕事が終わり、明日からはしばしの休みだ。というのに、外は雨。ひっそりと静かな事務所を出る時にも窓を打つ雨の音がして、車へ向かって少し走っただけで身体はしっとりと雨に濡れてしまった。けれど、今こうして暖かいカフェの中にいて、全面ガラス張りの窓から街灯に照らし出された雨を眺めていると、少しだけ幸せな気持ちになれる。それはやっと雨宿りの場所を見つけた小さな子猫のようだ。パスタを食べた後、ホッと一息ついているとコーヒーが運ばれてきた。今日は多めにミルクを入れて飲むことにした。バックに静かにかかるジャズの定番。けれど、ぼんやりと雨の町を眺めながら自分の頭の中に流れてきた音楽は、サザンオールスターズの「ミス・ブランニューデイ」の始まりに流れるシンセサイザーの音だった。宇宙の中で電子の弦をはじくような軽快なそのリズム。高い空からに水の粒がスローモーションのように落ちてきて、それが虹のような七色の輝きを放ちながらはじけ、一瞬で煙のような水しぶきになって空中の中に消えていく。心の中が何か暖かいもので満たされていき、ほんのりと染まる朝焼けに恋をした日々を思い出す。ほんのわずかに暖かい風が、冷えてけだるい寝起きの身体を優しくなで、まるで身体の表面の細胞がプチプチとはじけるように新しい自分を生み出そうと目覚め始める。ふいに一瞬の風が僕の前で渦を巻き、花びらが美しい輪を描き舞い上がる。僕は知る。この風も花びらも、僕への一つのメッセージなんだと。心を澄ませば聞く事のできる物語なんだと。”一粒の雨さえも、心に虹をかけられるんだ”と。

Dec 29, 2007

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空

久々に空を見上げて、太陽の光を浴びる自分を知った。工場の向こうにの太陽は絵の具の黄色に灰色を間違って混ぜてしまったように少しだけかすんでいて、けれど空を包み込んでいた。飛行機雲が何本か太陽に吸い込まれていってまるで子供の絵のようにまっすぐな線が空を切り分けていた。いつもと変わらない夕暮れ時といつも変わり続けるその空を見つめて僕の記憶は逆さまに回り始めるねえあの頃僕は何を見つめていたんだろう。ねえあの頃の僕は君に何を伝えようようとしたんだろう。ねえあの頃の僕たちはどうやって生きていこうとしてたんだろう。誰かが言った。「変わるっていう事は、何かが終わり、何かが始まることなんだよ。」

Apr 1, 2007

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月からのこぼれもの

雨上がりの夜の、しんとした月を見ていると、いつも涙が出そうになる。。どんなに世の中がくすんでいても、僕の心が汚れていても、その月はまるで、いつか子供の頃に見上げた、まっすぐで、透き通った瞳を思い出させる。あれから何年経ったのだろう。。一体どれだけの人と出会ったのだろう。。どれだけの数の喜びと悲しみが僕の心に降り積もっていっただろう。。生まれた町からトオクハナレ、人波にもまれ、街はいつも形を変え、凍えて歩く僕の横を、夜の空気を引き連れて、排気音という名の車が通り過ぎていく。いったいどのくらい僕はその月を見つめていただろう。。月から零れ落ちた不思議な光は、いつしか僕の空っぽの心を満たし、やがて悲しくこぼれていく。ねぇ。僕の心は誰かに優しくできているかな。。まっすぐに何かに向かって生きていけるかな。。熱くて、はじけそうな心を思い出せるかな。。カッコ悪くても思いっきり笑える瞳は残っているのかな。。僕は一体何を求めているんだろう。あの月に優しく微笑むことができたなら、それだけでいいはずなのに。。

Dec 9, 2006

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景色と人生。

名古屋はちょうど雨が降ってやんで、久しぶりに綺麗な虹が見えた。僕の大好きな写真家であり、エッセイストの星野道夫さんがこんな事を言っていた。。アラスカの圧倒的な星空を見上げて、もしこんな星空が東京の夜にも広がっていたなら、きっとどんな若者でも空を見上げ、今の自分の人生を振り返ったりするのではないだろうか。はっきりと覚えていないけれど、そんなことが書いてあった。毎日の生活の中で見つめるもの、聞こえるもの、そして感じるもの、そのすべてで僕らは作られている。それは、好むと好まざるに関わらず圧倒的な力で、僕らの想いを支配するのだと思う。”もしこの、本当にわずかな時間で消えてしまう、奇跡のような虹を見つめられたなら、きっとそれを振り仰いだ後の一歩は、僕の今までの人生とは違う一歩になると思う。”

Sep 9, 2006

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優しい泉。

淡い黄色の毛皮のその小熊は、深い、エメラルドグリーンの山の中をたった一匹で歩いていました。もうずいぶんと歩いてきて、両手両足の裏はすっかり土で黒くなり、切り株で傷つけたところがヒリヒリ痛みました。遥か頭上でさえずる鳥の声は小熊の耳には入らず、暖かな木漏れ日も小熊の心を暖めることはできませんでした。崖から吹き上げてきた風が小熊の厚い毛皮を揺さぶり、小熊は熱いため息をつきました。木々の隙間から青い空を見上げ、風に混じるにおいに鼻をひくひくさせた時、小熊は遠くの水の音を聞きました。それはほんのかすかでしたが、確かに水の流れる音です。きっと川があるに違いない。小熊は走り出しました。引きずるようにしていた足も軽やかに、急な坂を駆け上り、小さな川にたどり着きました。土手を滑り降りて、そのまま小川へと飛び込んだ小熊の周りで、ざっぶん～、とたくさんの水が跳ね上がりました。ブルンと身体を震わせてから、その小川を上っていくと、綺麗な木々に囲まれた光さす小さな泉が現れました。小熊はその水を口に含み、自分の顔を泉に映してみました。そして涙を落としました。亡くなってしまったお父さんや、お母さんの顔を思い出したのです。ぽたぽた、と涙が流れ、そのたびに泉の顔は見えなくなりました。けれど、小熊は少しずつその泉から力をもらっていることを感じました。お父さんが、お母さんが、僕の中に生きている。。。小熊はそう思いました。そして声を聞きました。「大切なのは、あなた自身よ。」小熊は、泣いていた顔をそのまま泉にうずめました。どれくらいたったでしょう。。やがて顔を上げた小熊の瞳は新しい輝きで、光っていました。おしまい。

May 17, 2006

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深い深い夜の闇の中で。

どこまでも続く闇の中を僕の心はさまよっていた。ベッドの中から抜け出した魂が行くあてをなくし、僕の古いアパートを屋上まで駆け上がり、明かりの少ない路地裏にたむろする数人の若者を見下ろした。やがてどちらに行くか少しまよった末、その魂はオレンジ色の明かりを放つ街灯の続くレンガ並木へと向かった。地下に高速の走るその道を大きく横切って、いつも駐車場に行くときに曲がる小さな交差点の信号機を過ぎ、その先の居酒屋の明かりを見下ろし、小さな川とその横に咲く一本の桜の木を眺め、動物たちの眠る動物園へと向かう。坂を上っていくと、たくさんのマンションの明かりがまぶしかった。なぜ人はこんなに誰かのことを想い、そしてその想いが届くかを確かめたくて夜の空をさまようのか。。もし僕に涙が流せるなら、その涙が光になって夜の街に降り積もればと思う。もし僕にあたたかな言葉があるのなら、その言葉が優しい風になって、この街を吹きぬけたらと思う。もし僕に耐えられないような苦しみが襲い掛かったなら、それがすべてあの闇の中を流れる川の中に消えていけばいい。そう思う。”誰かを想うこと。それは永遠の優しさを探す魂の旅なのかもしれない。”

Apr 13, 2006

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空間。

交差点に立っていて涙が溢れてくることがあります。空へ続く坂道を見上げて叫びたくなることがあります。橋の欄干によりかかって、幻の雪を見ることがあります。人はどうして、目の前の空間にすら意味を感じてしまうのでしょうか。それが好きな人と一緒に見た景色ならなおさらでしょう。誰にもわからなくても、形では表せないものでも、そこに存在した二人の想いがいつまでも残っている。。そんなことってあるんじゃないでしょうか。”君と見るこの景色があるなら何もいらない。”（倖田來未：you　より）

Apr 7, 2006

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桜・・さくら

飯田橋の外堀のそばで満開の桜を見た。雨が近づき、灰色の空気の中で、幾本もの桜が、時折の風に少しずつ放たれていく花びらを追いかけていた。外堀を見下ろすと、雪が積もるように花は咲き、溢れるように花は散る。乱れ飛ぶ花びらのひとつひとつに誰かの心が宿っていて、艶めかしい夜の光の中で、迷い、流され、やがて水面にその身体を落とす。。”どうして桜の花はこうも人の心を映し、その想いをかりたてるのだろう。。”

Apr 2, 2006

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高橋瞳のアルバムから。

先日借りた高橋瞳のアルバム”ｓｙｍｐａｔｈｙ”を聞いていた。その最後に”１６”という曲が入っていて、これが身体中の細胞が、まるで昔の自分を思い出しているような、そんな懐かしくて悲しい響きをしていた。その歌詞はこんな感じだった。　自分をいい人と思うための涙　嫌われない笑顔そんなものいらない　たとえデタラメでも真実だけ欲しい　いつか傷つくことを知っててもまるで綺麗な色紙をカッターナイフで切り裂くような、とがった鋭い心が、ひしひしと伝わってくるようだった。いつかのあの日を思い出した。。悲しい目をして怯える子猫のような、どうしようもなく何かを掴みたくて、それでもとめどなく透明な瞳に戻っていくようだった。”幸せ”を求める日々が、喜びや楽しさを生み、そんな生活もいいな、と思う。。それでもやっぱり凍える夜と痛いほどの雨と風の後の、差し出された手の温もりを感じてみたい。「それって本当の色の付いた生き方じゃないのかな、と時に思う。」

Mar 23, 2006

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細い細い月。。

いろいろあって会社は休み。いつしか空は暗くなって、遠くの高層ビルに明かりが灯り始めた。部屋から出て、狭い路地から西の空に月が見えた。まるでカミソリで指を切ったときに滲んだ血のように、薄く、鋭く、少しだけ淡く闇を切り取っていた。。その月のとがった先の部分がなんだか心に突き刺さっているようで少しだけ泣きそうになった。ぼんやりと立っている間にも闇はどんどん深さを増し、月はどんどん細く、鋭くなっていった。”これから夜が始まる。それは少しのワクワクと、あの月のような危うさをそっと孕んでいた。”

Mar 2, 2006

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昇り始めた月を眺めて。

割ったばかりの卵から溶け出してきたような月が、高速道路の連なる街灯の向こうに浮かんでいた。なんでだろう。誰かがこの月を見てると思うと心が温かくなる。そして月が話しかけてくる。少しだけ首を傾けながら。。そうして駐車場からの帰り道。空に浮かぶ星を真上を向いて見つめながら歩いた。そうやって歩くとなぜだろう、子供のころに返った気がする。”子供のころは星空はすぐそばにあった。自分の身体の一部だった。”重なる家の屋根の向こうに高層ビルがまたたいていた。あの景色の中で得たもの。うなるような星空の中に置いてきたもの。そのすべてがしずくになって僕の心に流れ込んでくるような夜だった。それはきっと素敵な人に出会えたからだと思う。

Feb 17, 2006

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青いＴシャツ

そのＴシャツは深い青色をしていた。そのＴシャツを着ると僕はまるで、僕の中に明るい空が溶け込んできたようで、なんだかとてもいい気分になる。だから好きな人ができると必ずそのＴシャツを着るんだ。”その空が彼女の心に光を差すことを願って。”

Feb 12, 2006

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空と水たまりとモノクローム

昨日に引き続き旅人モードで書いてみました。・・・゜゜゜％。。。・・・次の町が近づいてきていた。ずっと足元ばかり見て歩いていたら、その足元の大きな水たまりに青い空と白い雲が映っていた。驚いたことに、僕は突然景色に色がついていることを思い出した。掘ったばかりの土のような、こげ茶色で覆われていた僕の心は、見るものすべてをいつしかセピア色に変えてしまっていた。すべての景色が、まるで過去の一こまのように、もう取り戻せない過去へと向かっていった。けれど、その水たまりに映った空の中心から、青い色が広がり始めた。ゆっくりと、少しだけ濃い青色、対照的に真っ白な雲、そして水たまりの周りの土の色、緑の草、そして町の家々、それはまるで山の中の霧がゆっくりと晴れていくように、ぼんやりとしたスピードで僕の視界を色づけていった。地面からほんのわずかの高さの草の緑、小さな黄色い花、そして土手の茂みの強い緑、それらはいつしか見ている僕の目の中に飛び込んできて、一体になった。町の家は、まるで一軒ずつの人々の声が聞こえそうなくらい、それぞれの家族の暖かさまでもが伝わってきた。今までこんな空の下を歩いてきたんだ。。あの白い雲は一体どこから来たんだろう。。？僕はまったく知らなかった。。”過去に捕われた瞳は世界をモノクロに変えてしまう。未来への想いが湧いてきた時、初めて世界は色と意味を持ち始めるんだ。”水たまりを越えて湿った土を踏みしめた。僕の小さな一歩の跡が、くっきりとそこには残っていた。。

Jan 12, 2006

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空の下を旅して。

写真の中の空を眺めていたら、まるで自分が旅の途中にふと立ち寄って、景色を見ているような。。そんな錯覚の中に落ちていた。・・゜゜%。。・・気がつくとまた、広い草原を眺めていた。町から町への旅をしていると、なぜだろう、その町その町の記憶よりも時にその間の何もない景色や、空の色や、雲の形を、妙に鮮明に覚えていたりする。どこまでも続く空の下で、一面の枯れ草の中に大きな木が一本立っている。それはよく見ると、まるでアライグマが今まさに走り出そうとしている瞬間のようにも見える。頭を下げ、背中を丸め、足をそろえて次の瞬間にはその身体は大きく前に飛び出していくのだろう。。一本で立つ木が僕はなんとなく好きだ。それは一人で旅をしているせいかもしれないし、その一本だけで生きている姿に自立性を感じ、その強さに憧れているのかもしれない。これはあまり人には言えないかもしれないけれど、一本で立っている木を見ると、なぜだろう話しかけたくなってしまう。「お前はどんな人生（木生？）を歩んできたんだい？」きっと大変なこともあったろう？そんな困難を一つ一つ乗り越えてきたお前は何でそんなに柔らかで優しそうなんだい？”今まで流した涙はもう乾いたのかい？それともお前の心の一部になったのかい？”木は決して答えない。だから僕は旅を続けるんだと思う。

Jan 11, 2006

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空の色の物語２

今日も昨日に続いてＨＡＢＵさんの写真のひとつから物語を作りました。昨日の夕焼けから少しだけ時間が経ったような、そんなお話。－－－もうすぐ日が暮れる。。空の色は深く青紫色に変わり、天空の３／４以上は、もう夜の世界へとその姿を変えていた。わずかに何かを惜しむかのように、地平線のそばだけがぼんやりと明るい。すっかり暗くなり、もう家の影に何があるのか見分けることはできなくなってしまっていた。夜の世界に押しつぶされるように小さくなる夕陽を見ていると、僕まですっかり小さくなってしまったようで、少しだけ悲しくなる。そして。街灯がともり始め、家の明かりがともる。それらはまるで生命の灯のようにどこか頼りなげで儚い。どんなに明るくしていても、その灯りはいつかは消えてしまうことを知っている。けれど、儚いからこそ懸命に輝き、ひと時の幻だからこそ美しい。そんな遠い町の灯が僕に教えてくれた。”生きることに意味があるんじゃないんだ。生きたことがそこに意味を作り出していくんだ。”荒野からの乾いた風が身体の横を通り抜け、まるで早く来いとつぶやくように古いロッジの扉を揺らした。

Jan 10, 2006

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空の色、心の癒し。

たとえばどうしようもなく身体が重くて、誰とも話がしたくなくて、それでも誰かが恋しくて、書くことも、描くことにも元気のない日。それはありふれているけれど、本人には苦しくて、新年の志に少しも近づけないまま寝床で午前中を終えたりすると、すっかり自分に自信がなくて。そんな自分を何とかしたくて、喫茶店に行った。そして久々に写真集を見た。そして今一番心に溶け込む写真を探した。それがこれ。そしてその写真の中に飛び込んで、物語を作った。。－－－゜゜゜゜゜%。。。。。－－－暮れかかる黄金色の空は、まるで人の耳には聞こえない周波数の音を発しているように、同じく黄金色に染まる僕の身体に巨大な何かを確実に投げかけていた。線路のそばに立った僕の頬に当たる風は昼の生ぬるい暖かさと、夜の冷気とを中途半端に含んでいて、少しだけ気持ちが悪かった。その空気の中には、眠り始めようとする草と土の匂いが含まれていて、何かを名残惜しむような、懐かしむような想いを僕の心の中に蘇らせていった。ずっと線路と小さな駅舎を眺めていたら、汽車が走ってくる音が聞こえた。けれど、一瞬後にはそれが幻であることに気づく。きっとそこにある空気が含む記憶のようなものが、僕の心の中の何かをそっと動かしたせいだと思う。平衡感覚を失いそうな、刻々と変わる夕陽を眺めていると、どうしようもなく人恋しくなってきた。それはどんな理屈にもかなわない、身体の細胞の一つ一つが誰かの暖かさを欲しているせいだと思う。”それは一日の終わりという小さなサヨナラへの、　ささやかな抵抗なのかもしれない。。”

Jan 9, 2006

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窓から見える雪。

どうして窓から眺める雪は、あんなにも美しくて、ゆっくりと降るのだろう。外にいる時の、冷たく、向かってくる強さや厳しさ、そして押さつけるようなプレッシャー、そんな全てが窓の中には届かない。まるで、雪の持つ優しさだけを切り取ったように、静かに、あたたかく胸に突き刺さってくる。不思議。人の心を覗く時にも、こんな窓があったらいいのに。優しさだけが切り取られて、誰かの胸の中に届けばいいのに。

Dec 18, 2005

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空気の中の記憶。

誰かの家のそばを通った時、それはすぐそばを車だったり、歩きだったり、時には電車でその人の家のそばの駅を通っただけでも、突然その人のことが思い出されることがある。それはまるで空気の中にその人との記憶が宿るように、何の前ぶれもなく心の中に蘇ったりする。きっとその場所の空気が、自分の心の奥深くに眠っていた記憶を、コツコツ、と叩いて思い出してみて。とささやくんだろう。それはまるでドラマの１シーンのよう。”人はきっとそんな人生のドラマの再生のカギを、空気の中にも感じることができるんだ。”

Oct 24, 2005

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透明な時間。

どこまでも青くて雲ひとつない、そんな空を見つめていて、高い高いビルの上から町並みと、行きかう車や、人々や、遠くのベイブリッジを見つめる。。それは手が届きそうで届かない場所。このまま一陣の風になって、あそこまで行けたなら。高いビルの向こうをカラスが４，５羽飛んでいた。そのカラスをじっと眺めていると、一瞬その背中に飛び乗ったような気分になることがある。それは単なる幻なんだけれど、自分がカラスになって、地上を見下ろしているところを、なんとなく想像してしまう。きっとすごい速さで建物が近づいてきて、ゆっくりとその前を旋回するんだろう。そして、遠くに見えるベイブリッジや、工場地帯があっという間に視界の隅に消えてしまう。公園で遊ぶ子供たちや、自転車で急ぐ少女や、渋滞する車の列を見下ろして、きっとあのカラスと同じ目を僕はするんだ。好奇心一杯で、それでいて少し悲しげで、生きていく意味を探すようなそんな目を。”世界が回り始める。想像力の翼に乗って。。”

Oct 23, 2005

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明日への一歩。

友人が新しい世界に飛込んでいきたいという話をしたのは、ちょうど自分が会社を辞める事を決心した時と同じころだった。自分が散々迷った末に初めて電話をしたのが、彼女だった。久しぶり。から始まって、会社の話をしていたら、「偶然ね」と彼女は言った。私も次にやることをちょうど考えていたところなの。テレビのある番組を見てから、自分の本当にやりたかった方法の実現の仕方に気がついたのだという。そして、そのお店の募集の面接に行くことにしたのだという。お互いにそれぞれの将来への夢を話し、これから先の人生を思った。それからもうすぐ１ヶ月がたつ。そして今日電話したら、もう彼女は１２月から東京で働く事が決まったのだという。もとから行動力のある彼女だったけれど、もう住むところまでほぼ決まったらしい。５畳の部屋にキッチンの着いた狭い部屋でとりあえず生活を始めるそうで、そのたくましさと力強さに感動した。そんな風にして、今の想いをそのまま人生にぶつけながら生きていきたい。心からそう思った。そして、自分の中での明日への一歩がはっきりとした形になって、赤茶けた大地を走り始めた。”必ず。。”心の中の少年は青い空に向かってそう呟いた。

Oct 17, 2005

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帰省。

法事があったので実家に帰っていた。広島県の呉市というところに我が生家はあって、ひさびさに帰って少し懐かしかった。呉の町は最近”大和記念館”と言って戦艦大和の記念館がなかなかの人気で、少しなかり元気になっていた。毎日高校まで通った電車に乗り、駅でバスに乗りかえる。小さなバスにおそろしくたくさんの人が乗っていて、おまけに金髪の若いおねえちゃんがバスの入り口に座り込んでいる。そんなとこに座ろうとよく思いついたな、というようなステップのところだから、当然乗ってくる人の邪魔にもなるが、おばちゃんたちはたくましくて、”ちょっと。整理券が取れないよ”と言って、何気なく乗り込んでいる姿に感動した。。広島はもともとガラが悪くて（仁義なき戦いの町だもんね）あちこちで喧嘩があったり、不良がたむろしていたが、それはあんまり変わってないのかもしれない。けれど、そんな様子がまたなんとなく懐かしくて、ちょっぴり嬉しいのは、故郷から遠く離れたせいなんだろうなぁと思う。”人が懐かしく思い出す事は、本当に些細な日常の出来事で、それはプラスでもマイナスでもなんでもない。ただその何気ない風景がどうしようもなく人の心を癒してくれることってあると思う。”

Oct 16, 2005

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元気のない時。

少しだけ疲れた友達に会った。今週は体調をくずして休んでいたのだという。その瞳を見た時に思った。今はきっと次の何かへの成長をしている時なんだ。決して慌ててはいけないよ。秋が来て冬が来て、そうして春がやってくるように、次の季節が回ってくるにはきっとたくさんのエネルギーがいるんだ。体調をくずしていたって、心が不安定だって、それはきっと次のジャンプのために今大きく沈み込んでいる時なんだ。大きく上がったり下がったりしながら、人も自然も成長していくんだ。ね。

Oct 15, 2005

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マッチの炎。

毎日気が遠くなるほどのたくさんの出来事があって、たくさんの言葉たちが自分に降りかかってきて、時にはその言葉や誰かの思いに埋もれそうになって、すっかり肩を落して歩いてみたりして。。それでもまるでマッチを擦った時のような、一瞬の圧縮から解放されたような輝きを、闇の中に放つ夕焼けを見たとき、あぁ。まだ自分にもこんな感性が残っていたんだなぁ。。と嬉しくなる。そして、”そのすぐに消えてしまう炎のような夕陽が、まるでマッチで火を付けるように、僕の心に小さな炎を残していく。”

Aug 29, 2005

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潮の香りと墓参り。（帰省中その３）

潮の香りがした。父方の墓は海のすぐそばにあって、その墓参りに行には海沿いの道を通らなくてはならない。朝のまだ日が昇りかけくらいに、いつも僕たちは海沿いの道を墓へと急ぐ。たくさんの島の浮かぶ瀬戸内を右手に見ながらのドライブはいつも気持ちよくて、墓参りの思い出にはいつもこの海が一緒だ。一つ一つのカーブや、小さな丘や、田舎の駅、壊れそうな橋、火力発電所、みかん畑、小さな漁港、もう何年も変わらない景色だ。その道を通って僕らは墓へと向かう。潮の香りと一緒に。僕は思う。”もし先祖の人達に気持ちが伝わるなら、きっと素敵な海の景色を一緒に見てるんだろうな。”

Aug 15, 2005

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空の声、山の声（帰省中その２）

僕はあちこちの土地に行って空を見上げるのが好きだ。「この空は君のいるあの空と繋がっているんだよね。」とドラマなんかでは言うけれど、そんな恋人のいない僕は、この空が、いつも住んでいる街の空とこんなに違うなんて驚きだ。と考えてしまう。広島の空はなんだか少しだけ哀しい。その青は美しいけれど、完全な青ではなくて、あまりのたくさんの事を知り過ぎてしまった青だと思う。人々の絶望や、弱さや、不安や葛藤、人の心はこんなにも美しいのに、けれど、こんなにも弱い。その言葉だけではない、どうしようもなかった事実を知り過ぎてしまった空なのかもしれない。この空を前にすると、ちょっとだけ胸が苦しくなって、大笑いするのがちょっとだけためらわれる。。たくさんの雲達が集まってきて、そんなことないよ。すっかり元気だよ、と話しかけても、どうしてもその空の奥にある”やるせなさ”がじっとりとした空気を通して伝わってくる。それはもしかしたら、僕が広島の歴史について持っているイメージや、自分自身の勝手な思い出を空に映し出しているだけなのかもしれない、とも思う。そして、ちょっとだけ弱気になったそんな時は、少しだけ目を落として、そこに広がる山々の緑を見詰める。そうするとその緑の葉っぱ達がこう呟く。”過去の記憶も大切さ。でも今の情熱なしには決して明日は作れないよ。それだけは絶対忘れないで。。”そうしたら、少しだけ笑顔になって、僕はもう一度青い空を見上げるんだ。

Aug 14, 2005

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大地の記憶。（帰省中その１）

13日から16日まで広島に帰省していました。実家ではインターネットが使えないので、4日間を思い出しながら日記を書いています。。－－－－少年は家から遠く離れた駅の前に立っていた。それが日本のどのあたりにあるのか、少年にはよくわからなかった。ただ夏の暑い太陽の名残が、もう暗くなった駅前のロータリーから沸き上がる熱気から伝わってきた。それはまるで一日の記憶を地上がゆっくりと吐き出しているように、少年には感じられた。駅前のビルをぼんやりと眺めていると、新しい建物はほんの数えるほどで、他のコンクリートのビルはもうかなり古いものばかり。ところどころのアーケードやネオンを支える鉄の棒はもうすっかりさび付いて、いつ壊れてもおかしくないくらいだ。見回すと、きっと完成当時は綺麗であったろう銅像や、使い古されてしまったベンチ、でこぼこの舗装道路は、時の流れを少年に感じさせた。大地にも記憶がきっとあるに違いない。そう少年は思った。この大地の上でたくさんの人が笑い、泣き、走り、苦しみ、生き、そして死んでいった。華やかなネオンが町を彩っても、きらびやかな祭りが開かれていても、恐ろしい事件や争い事が起こっても、太古から続く人々の思いはこの大地の上で繰り広げられ、やがてこの大地へと積もっていったに違いない。”僕の思いもいつかこの大地に積もっていくんだろうな”少年はそう思って、なんだか嬉しいような、哀しいような、少し不思議な気持ちで街灯の灯りに照らされた灰色の大きなレンガを見下ろした。。

Aug 13, 2005

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花のように。

高山植物の花達。霧に煙る岩と木々の間に、天使が落とした虹の涙のカケラのよう。一枚ずつの花見らはまるでカミソリの刃のように薄く、その小さな命の中に鮮やかな色を宿している。まるでアイスコーヒーにクリームを上から垂らしたときのようにゆっくりとからみつくように雲の水蒸気が身体を包んでいき、遠くの頂きも、さっきまでの人影さえも、もう見えない。そんな中で、その岩のそばの小さな庭で咲く花達はあまりにも美しく、まるで魔法の森に迷い込んだように、僕の現実味と、平衡感覚とを取り去ってしまった。このかすかな美しさはどこから来て、どこへ行くんだろう？この短い命は誰が認め、誰の心の片隅へと残るだろう。そのか細い茎と花びらを誰が愛すのだろう。小さな花と手のひらを見ていたら、自分の心臓の音が聞こえてきた。”大切なのは人生の山の頂を極めることではない。その山の中でのほんの些細な出逢いをどれだけ愛することができるかだ。。”

Aug 12, 2005

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雨の糸。

その雨はまるで糸のようだった。静かに静かにその雨は空から舞い降りて、ただただ真っ直ぐに地面へ、駅の階段へ、歩道橋へ、そして待ち合わせの小さな噴水の池にたどり着いた。駅前の雑踏はその雨のカーテンにすっかり打ち消され、色さえも、時間さえもその雨の糸は消し去ってしまいそうだった。噴水の前に立って、白黒のチェックの傘を持った僕は、空を見上げた。さっきまでの糸の雨がまるでスローモーションのように粒となって、僕の鼻の上に落ちてきた。かすかに雨の音が聞こえてきた。。僕が顔を駅の出口に戻したとき、彼女が改札を通り抜けるのが見えた。僕は少しだけ、恥ずかしくて傘を目深にしてみた。けれど、彼女が黄色に大きな赤いチューリップ模様の傘を開いて左右を見回した瞬間に、僕は身体中の血液に色がついて循環を始めたのを感じた。景色は彼女の周りから突然色づき始め、さっきまでグレーだと思っていた駅の壁の色も、木々の緑も、ティッシュを配る女の子も、行き交う車や人たちも、突然色を放って彼女の登場を歓迎した。そうなんだ。。僕は思った。”恋は世界の色を変えるんだ。そして僕の血の色も温度も。”笑顔の彼女がゆっくりと僕の傘のそばに近づいてきた。

Aug 11, 2005

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少女の涙。

ある女性の目を見ていたら、なんとなく浮かんできた不思議な物語。。－－－瞳の奥の無邪気な光を集めた、引っ込みじあんの少女サンディーの物語。。サンディーにはパパとママがいた。３人暮らしだったけれど、家の中でいつも自分の居場所が見つからず、どこかおびえて過ごしていた。パパやママの知らない自分の力をどうすればいいのかわからずに。だから友達もあまりいなかった。サンディーは家の裏の大きな木の穴に住む野ウサギと話をする事だけが楽しみだった。サンディーはたくさんの事を野ウサギと話した。野ウサギもたくさんの事をサンディーに教えてくれた。遠い世界の話、深い森の中のおきての話、遠い山に住む動物の話、世界中を飛び回る渡り鳥たちの話、透明で甘い香りのする泉の話、そんないろんな事を野ウサギは教えてくれた。サンディーはいつもそれを目を丸くしながら聞いていた。いつもいつも暗くなるまで話を続け、このまま夜にならなければいいのに、とサンディーはいつも思っていた。けれどそんなある日、大切な野ウサギが車に引かれて死んでしまった。。サンディーにとっては世界中にもう朝が来ないと言われたと同じくらいに衝撃的な出来事だった。もう生きていけないかもしれない。。そう思った。けれど、誰もその野ウサギを振り返ろうとはしない。悲しくて、悲しくて、悲しくて。。それを誰もわかってくれなかった。ただ一匹のもぐらだけが一緒に涙を流してくれた。うちの人たちも、近所の友達も誰もそのうさぎの死を気にも止めなかった。。サンディーは家の庭にそのうさぎを埋めながら涙を流し、行きようのない怒りが胸の奥からこみ上げてきた。その怒りはやがて少女の家に、近所の家に、と火をつけた。そして道路の車たちをひっくり返した。。知らない間に使ってしまった少女の力。そのことに最初は気づかなかったサンディーも、やがて家の燃える炎の匂いと、家の中から聞こえた悲鳴に驚いて顔を上げた。すぐ近くにまで火が近づいて来ていた。サンディーは驚きと悲しさで、泣きながら火の中へと飛び込んで行った。あっという間の出来事、その数秒後にどっかーん。。どっかーん。。と音がして家々の火が吹き飛ばされるようにして消えた。後には焼け焦げた柱や家具の残骸、そして家族が残った。庭にはひっそりとうさぎの墓が立てられていた。けれど、サンディーはそれっきりいなくなってしまった。サンディーがどこへ行ったのか、誰も知らなかった。。”とっても悲しい事。それは思いを伝えられないっていうことだと思う。”彼女が次の人生を生きた時、たくさんの人の笑顔に喜びの涙を流せたらいいのに。。そして本当の優しさとまっすぐな瞳を持つ誰かに強く抱きしめられたらいいな、と思う。

Aug 9, 2005

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プロローグ

そのペンダントは銀でできた古い刀の形をしていた。歴史を動かす心の鍵はいつもすぐそばにあって、けれど気づかなければただの首飾りになってしまう。人の心って不思議だな、と思う。たくさんの人の思いを一瞬で吸収してしまうこともあれば、こんなに近くにいる人の言葉さえ伝わらないこともある。雪の降りつもる森の中の村に彼女は住んでいた。その村の冬は長く、冷たく、厳しかった。彼女の心の中にも、静かに雪が降り積もるかのような、寂しさと、堅くなな思いとがいつしか同居していた。その村の春は短い。一斉に草木が芽生え、花が咲き始めるとすぐに季節は夏へと移っていく。そして、つかの間の夏の笑顔がやがて秋の収穫へ、そして長く凍てつく冬へと景色は移ろっていく。彼女の瞳は、決して南の国の人の持つ事のない透き通った冷たさと、その奥の激しい情熱と、今にも消えてしまいそうなオーロラのような光の帯をほんのわずかに宿していた。彼女は村を一望に見渡せる丘に立ったときにいつも思った。私は一体何のためにうまれてきたのだろう。。幸せな家族とあたたかな暖炉。それ以外にやらなければいけない事がきっとあるに違いない。ずっと昔に湖のそばで見つけたそのペンダントだけが彼女の生きていく誇りになっていた。私にはきっと大切な役割がある。。きっと。。大地や森や空気までも震わせる物語はこの小さな村から始まる。。”誰もが心のストーリーを持っている。人生というステージの上で。”

Aug 8, 2005

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銀河鉄道。

東京から名古屋への最終の新幹線。深夜の新幹線に乗るといつも現実とは離れた世界へと舞い上がってしまいそうな、そんな気分になる。。宇宙を旅して回る銀河鉄道があるんだよ。と言われても、きっとふーん。そうなんだ、とうなずくことができると思う。街の灯りがゆっくりと近づいてきてはすごいスピードで後ろへと流れていく。その景色と夜空の間には境がなくて、どこからどこまでが地面なのかわからなくなる。列車はやがて上昇を始め、時間は逆に過去へと回り始める。そのまま車内は無重力となって、離れた席で眠っていた女の子が宙をゆっくりとさまよっている。街の灯りは星座の灯りへと変わり、さっきまで見えていた月がクレーターが見えるくらいにぐんぐんと近づいてきて、そしてやがて通り過ぎていく。地球から見たら、きっと流れ星に見えるんだろうな、と思う。宇宙の中を光の速さで駆け抜けるのは気持ちがいい。けれど、やっぱり人が恋しくなる。帰る場所を探してしまう。例え遠くに見えているだけでも、あれが地球だよ。と言われるとそれだけで嬉しくなる。走り続ける宇宙の中は限りがなくて、狭い地球や、国境や、限りある命、その限界があることがとてつもなく魅力的なことに思える。宇宙を旅しているといろんなことに気づかされる。カバンの奥に君からの手紙を見つけたよ。それは本当に些細な日々の出来事が書いてあるだけなのに、僕には君のことが今までよりずっとずっと近くに感じられた。まるですぐそばで話しかけてくれているみたいに。今までにないくらい離れているのに。”人の思いって光よりも速く空間を駆け抜けるんだと思う。。”

Jul 31, 2005

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夕焼けの絨毯。

夕陽が落ちた後、いつも空は名残押しそうにそこに今まで太陽がいた後を残そうとする。それはまるで夕焼けの絨毯のように、帯となり、今落ちていった夕陽を追いかける。けれど、決して夕陽はその絨毯の上には戻ってこない。決して帰らない今日という日。どんなに素晴らしく、どんなに美しくても、その日を取り返すことはできない。そんな一瞬の時の糸の上を我々は歩いている。今日はどれだけ人に優しくできただろう。今日は誰の笑顔を作っただろう。今日は何に感謝ができただろう。。今日は誰の涙をぬぐうことができただろう。果てしない旅を続ける宇宙船地球号の上で、宇宙の長さに比べれば一瞬のまたたきの一生を持つほんのわずかな光を放つこの小さな自分が、少しでも誰かの心を照らせばいいと思う。

Jun 22, 2005

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月と海。

いつもの駐車場からの帰り道。丸い月はいつもなぜかセンチメンタルな香りに包まれている。そしてなんとなく書き始めたのが、この物語。－－－月に向かって、「一番仲のいい、心の落ち着く友達は誰ですか？」と聞いたなら、きっと月は“それは海です”と答えると思う。夜の月はあんなに明るくて、綺麗だけれど、動物達も、人も、朝までは一緒にいてくれない。昼間の月は白くて空のえくぼのようだけれど、よーく見ないと見つけられない。月はいつも笑っているけれど、実はとってもさみしがりなんだと思う。だからずっと見つめてくれて、優しく呼吸を合わせてくれる海のことが、月は好きでたまらない。夜の海は月の鏡になる。誰にも見せない月の横顔を海だけが知っている。けれど、海は月をなぐさめたりしない。それが月を哀しませることを知っているから。海はなんにも話さないけれど、月の呼吸も、優しさも、寂しさも知っているから、静かな波の音で月にメッセージを送る。僕はずっと君のことを見てるよ。ずっとずっと。今からも、これからも。もうすぐ満月。明日の朝にはきっとどこかの海にそっと静かにこの月は沈んでいくのだろう。誰にも知られない様に、そっと海に涙を溶かしながら。”あなたはあなたを見つめる大切な人の心の波の音が聞こえますか？””あなたのことをそばにいるだけで嬉しいと思ってくれる言葉のいらない親友はいますか？”

Jun 20, 2005

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夕陽と渡り鳥。

昨日庄内川の橋を渡るときに、一羽の渡り鳥を見かけた。群れに遅れをとってしまったのか、青い空の下で懸命に翼を上下にはためかせている。夕陽の写真を撮って、それを見ていたら、その彼のことを思い出した。人々は楽しく語らい、きっと自分の群れもごこかで羽を休めているに違いない。なのに自分はこの空の下で一人（一羽）。美しい夕焼けさえも、さみしさの中では凍り付く。目指すもの、生きる力、仲間達。そんなことを今思い浮かべているんだろうか。。今日の一行物語。”夕陽は世界のすべてをオレンジ色に変える。そのオレンジは時に残酷で、甘くて、情熱的だ。なぜなら、今生きている瞳に映るからだ。。”

May 29, 2005

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満月の声。

家路についたのが９時半ごろ。救急車と２回もすれ違い、たくさんの車の列に並び、都会の喧騒に埋もれ、排気ガスを吸い込み、カーラジオを聞く。毎日の生活はどんな魂を持った人にも同じように訪れる。そして、街路樹の向こう側、ふっと見上げると満月が光っていた。それはまるで外灯のように、都会のネオンに負けないくらいの光を放っていた。真っ白で、真ん丸で、なんだか誇り高く見えた。今日の一行物語。”都会の中で見上げる満月。その気の遠くなる営みに、都会の光がかすみはじめる。。”そしてもう一行。”闇に穴を開けたような満月の白さで、自分の魂にかぶったほこりを洗い流せたらいいのに。。”

May 24, 2005

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一瞬の出会い。

新幹線でとなりに座っていた女の子は航空会社志望の就職活動中の女の子だった。面接でどう答えよう、という相談にのっていろいろと話をした。本当の問いかけを自分の心に行えば、そういう意識、想いがにじみでてきて相手（面接官）にきっと伝わるという話をした。別れてから思った。彼女のように、人の話をしっかりと聞いて、素直に自分を見詰めていますか？成功するかわからない困難に自らの意志で立ち向かっていますか？ひたむきですか？しっかりと目の前の人を見ていますか？人生はいつも一瞬の出会いと別れの中にあって、まるで星達の中を光速で飛ぶ宇宙船のよう。気がつけばすべては後ろへと飛び去ってしまう。たくさんの星達の中で、僕はどれだけの人に出会うことができるだろう？今日の一行物語。。”僕らは光速で生きている。いくら目を開けても前が見えない時、それでも時は流れていくんだ。”

May 21, 2005

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＝＝＝虹・虹＝＝＝

今日の昼間、皆さん空を見上げる機会ありましたか？名古屋では雲の浮かぶ空で、太陽の周りに二つの虹がかかっていました。工場を出た時に気づいて、すっごい嬉しくなって、思わず車を止めて、写真を撮って、また少し進んでまた止めて写真を撮って。。と気がついたらすごい数の写真を携帯で撮ってました。なんかしあわせだったー。それでその時思った。きっと今の時代の人達は自分も含め、あー綺麗だな。で終わるシーンかもしれない。けれど、ずっと昔の戦国時代とか、三国志のころとかだったら、これは何かの兆し！と言ってきっと町中大騒ぎになると思う。けど、今の時代でもきっとこの虹は何かのしあわせの印なんだろうな、と思う。時代がいい方向に少しずつ動き始めてる。。そのプロローグなんだ。と思えて、それでもっと嬉しくなった。今日の一行物語。”あんな風になりたい、と思わせる人とは、すべての出来事を明日の幸せへと繋げていける人のことである。”

May 11, 2005

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天使の雲。

最近の空はたくさんの天使が飛び交っているような美しさだな、と思う。仕事の途中に車に乗る前にふと空を見上げて、たくさんの雲が自由に飛び交っている様子を見ていると、それだけで、自分までもがそこにいるようで嬉しくなる。もし翼があったなら、と思ったら、翼のような雲に出会った。今日の一行物語。”誰にでもある白い翼を解き放つのは、強い眼差しと自分を信じる少しの勇気。”

May 10, 2005

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陽の当たる場所。

誰かと一緒にいる時、すごいあったかな気分になることってありませんか？それはきっと共有する空間が気持ちいいからだと思う。そしてそこには温度と、色と、密度があると思う。そしてその空間を生み出すのは、そこにいる人なんだよね。今日の一行物語。”あたたかな空間、それは人の想いと祈りが生み出す。”

May 9, 2005

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君がいるから。

誰かといるから、自分がいる。そんな一行。”もしも世界にたった一人になったなら。。僕は言葉も、表情も、そして優しささえも忘れてしまうに違いない。。”

May 6, 2005

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オアシス。

ココロがなんだか乾いた時、それに気づいてもない時、どんな人に会いたいかな、と考えた。。”会って話すとココロの中に水が溜まる。そんな溢れる何かを与えられる人になりたいな。”

May 5, 2005

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ＧＷの空。

空の上に雲が自由に絵を描いているころ、地上の僕はたった一つの小さな心のキャンバスさえ自由にできないでいた。。

May 2, 2005

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夜に。

下弦の月と灯りの消えたビルが瞳の中に映る。風のない時の湖面のような時間が静かに、静かに過ぎて行く。

Apr 27, 2005

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夜風。

仕事を終えて、車の少なくなった通りを歩く。夜風が気持ちよくて、ほんのりとした笑顔になる。。今日の一行物語。”昼の街には季節がない。夜の風と空だけが、本当の季節と今の自分を教えてくれる。。”

Apr 26, 2005

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山に囲まれて。

自宅から７０ｋｍくらいの可児市の喫茶店に行ってきました。そこでセミナーがあるということで、とても楽しかったのですが、その行く途中でずっと暗い道を走りました。ラジオを消して窓を開けると、風を切る音と、虫の声が聞こえます。なんだか懐かしい気持ちになりました。。今日の一行物語。”真っ暗な道を走っていると、空と大地と木々が、僕を優しく包み込んでくれる。まるで子供を包み込む母の子宮のように。。”

Apr 25, 2005

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運命。

たくさんの質問を、悩み事を人に相談し続ける人がいる。けれど、多くの悩みは本当は自分の心でしか解決できないんだと思う。今日の一行物語。”人には運命がある。だからこそ、自分の思いを大切にしないといけない。”

Apr 23, 2005

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通学風景から。

朝の通勤の時に、信号待ちをしている凛とした女子高生を見た。風に向かって、しっかりと前を見る姿がなんとなく若さ故の危うさや、希望や、理想、を思わせた。少しいい気分になって作った一行物語。。”人の表情はかくも　もろく敏感にできている。だからこそ空気を振るわせて思いを伝える事ができるんだと思う。”

Apr 21, 2005

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出会い。

セミナーの後の懇親会に参加した。初めて会う人、２回目の人、その中で不思議だなと思ったこと。今日の一行物語。”新しく知らない人に出会う　その知らない人が新しい自分を教えてくれる。”

Apr 18, 2005

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桜と過去と未来と心。

突然ですが、今日から一行詩を始めようと思います。きっかけはテレビのＣＭで、”神は人を創り、人は物語りを作る”の一言から。そういうのってなんかいいな、と思って。そして今日の一作。舞い散る桜は今を過去へと押し流し、過去になった今は未来の心を癒す。

Apr 17, 2005

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[一行の物語] カテゴリの記事

雨の粒。

空

月からのこぼれもの

景色と人生。

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深い深い夜の闇の中で。

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桜・・さくら

高橋瞳のアルバムから。

細い細い月。。

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空と水たまりとモノクローム

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潮の香りと墓参り。（帰省中その３）

空の声、山の声（帰省中その２）

大地の記憶。（帰省中その１）

花のように。

雨の糸。

少女の涙。

プロローグ

銀河鉄道。

夕焼けの絨毯。

月と海。

夕陽と渡り鳥。

満月の声。

一瞬の出会い。

＝＝＝虹・虹＝＝＝

天使の雲。

陽の当たる場所。

君がいるから。

オアシス。

ＧＷの空。

夜に。

夜風。

山に囲まれて。

運命。

通学風景から。

出会い。

桜と過去と未来と心。