沼田まほかる著「9月が永遠に続けば」を読みました。
前回「猫鳴り」がよかったので、続けて沼田まほかるさんの作品を読んでみました。こちらはホラーサスペンス大賞を受賞したデビュー作です。長編ですが、展開が面白く、次はどうなって行くのか気になってなかなか途中で止められませんでした。登場人物の設定がとても詳しいのでその人の立場や人柄を読みとりやすかったです。人間関係の複雑さ、もつれあう恋愛関係は、ちょっとありえないようにみえますが、一見普通に見える人が実はいろいろな問題に悩んでいる事を上手く表現している作品です。他人に言わなければわからなかった秘密がもれてしまい、知らなければ良かった事を知ってしまった苦渋があちこちで出てきます。突然ゴミを捨てに行ったまま失踪してしまった息子さんを待っている間に、主人公の佐知子の別れた夫の再婚相手の娘とその娘の交際相手が亡くなってしまう。息子さんは無事に帰れるのか、誰が2人を死なせたのか、最後まで読んでみると、意外な展開に驚きました。息子さんは父母や父の再婚相手やその娘の事をいろいろ知ってしまった時の苦悩は大変だったのによく耐えて頑張ったなと思いました。医師である別れた夫は精神科とはいえ患者さんと恋愛関係を持つのは問題だなあと思ったりして読みました。この本は読むのには面白いですが、私はあまり好きではないです。かなり過激な表現には戸惑いました。それぞれの人物についてこれほどまでに細かく描写した小説は今までになかったなと思います。主人公の気持ちも息子さんの失踪の前後でかなり変わったようです。主人公は息子も帰ってきて未練のあった別れた夫と完全に心が離れて、再婚相手の娘の死についても区切りがついて、最期は新たな恋愛の始まりで終わって、読んでいる方も納得の出来た終わり方でした。この本はかなり衝撃的な話ですが、沼田まほかるさんを知るにはいいのではと思います。