2012/02/10(金)08:47
はじまり:はじまりのひと 2
はじまりのひと 2
~祈り~
「おはよう」
穏やかに微笑んで、ゆっくりとひざをついて墓石と視線を
あわせます。
つんだばかりの花束をそっとたむけると、静かに手を組みました。
墓石のまわりに咲く花々がかすかに揺れるのをみて、
屋敷の主人は目を細めます。
すぐそばには、水をくんだバケツがありました。
やわらかなタオルを水にひたし、固くしぼって石をふきます。
まわりに生えてる雑草を適度にぬくと、目の前の石が少し喜んだように
思えました。
自然に生えてる草花はぬきません。
「あんまり奇麗にしてしまうと、君は寂しがるからね」
みちばたに咲く草花に、あまり手を加えられていない
原生林。まだまだひょろりとした若木。
そういったものをとても喜んだ妻の笑顔がよぎります。
木と花と水と光と、晴れ渡る広い空に両腕をいっぱいに広げて
笑っては、はしたないとよく怒られていました。
つづく