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カテゴリ:【物語】祠
祠 8 ~習慣~ 島に来た時は、まだまだ病院通いがやめられず、 薬も一日に何度か服用していました。 それが、ひとつ、またひとつと減っていったことに 喜びを隠せません。 健人の両親に薬とは別のもの、身体に良いとされるカプセルを勧めてくれたのも、 楠家の人たちでした。 それと同時に、環境や心、意識が体に与える影響なども 少しづつ伝えてくれました。 体に良いことを生活のなかに少しとりいれることで、 ずいぶんと変わることをゆっくりと教えてくれました。 「康人君、ありがとう」 こうして、朝日の中をランニングしていることは、 まるで夢物語のようでした。 康人は、ぷいっとそっぽを向いて呟きます。 「俺が教えたんじゃねーし!」 「あ、照れてる」 「うっせ!」 笑いながら二人でどつきあってると、 浜辺で散歩しているおじさんが見えてきました。 「こうおじさーん!」 「わたるだ!航!」 最初の頃に、福子さんが、こうちゃんと呼んでいるのを聞いてから、 健人は、すっかりそう呼ぶのが気に入ってしまいました。 本名を聞いた今でも、こうおじさんと呼んでいます。 「また、誰か船に乗せるの?」 ガラス細工の仕事の合間に船を操って、 島と島との間を行き来します。 手が空いている時は、人を乗せることもよくあることでした。 「お前のお客を乗せるんだよ」 健人の頭を大きな手でなでて、笑います。 「誰?お母さん?」 「お前のお姉さんだ」 健人の様子をたまに見にくる両親かと思って尋ねた 健人は、嬉しそうに顔を赤くしました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.03.14 08:53:34
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