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2012/06/21(木)08:46

祈りの人:癒し人 9

【物語】祈りの人:癒し人(12)

祈りの人:癒し人 9  ~約束~ ここの生活にも慣れ、業務でもすっかり慣れた頃、 リィは信に月夜の散歩に誘われました。 今日は、満月だということもあり、いつもより外の様子が 華やいでいるようです。 精霊たちのささやき声が聞こえてきそうな、薬草園を 二人は歩きます。 とりとめのない話をしていると、信が立ち止まって、 懐から小さな包みを取り出しました。 「リィさん、よかったら、これ…」 「何?」 今日は、リィさんの誕生日だからと、真っ赤な顔をする信を 見て、リィも真っ赤になって受け取りました。 「ありがとう、開けてもいい?」 「どうぞ」 ドキドキしながら、包みを開けると、小さなセレスタイトがついた 首飾りでした。 「かわいい…」 月の光にかざして、リィは瞳を煌かせます。 その様子をぼうっと眺めていた信は、決心したかのように 口を開きました。 「リィさん、俺と一緒になりませんか?」 リィは驚いて、信を眺めます。 それから、以前信とした会話を思い出して、リィは真っ赤になりました。 「あ、あの、私…そんなつもりじゃ…」 「わかってます」 信は、リィが世間話のような気持ちから発した言葉だと、 ちゃんとわかっていました。 ですが、リィの言葉をきっかけにして、自分の想いを再確認したのです。 「すぐじゃなくて、いいです」 考えてみてくださいと、困ったように微笑みます。 「ありがとう、私…」 「あと、これだけ伝えておきたいのですが」 ずいぶん前に、町でリィに声をかけたのは自分であること、 リィが足を怪我するきっかけをつくったのは、自分だということを 告白しました。 その話をリィは黙ってじっと聞いていました。 「だから、もし、許せないなら…」 「ふざけてたの?」 ふざけて自分に声をかけたのかと問いかけるリィに、 信は黙って首を振ります。 当時、山から下りてきたばかりでした。 初めての町に戸惑い、岩の上に立っているリィに声を かけましたが、突然岩の陰に隠れてしまったので、 ふられたのだと思ってしまったのです。 岩から落ちて怪我をしたのだとは知らずに、 その場を去りました。 「あなたが、可愛かったので、知り合いになれればと…」 聞いてもいないことまで白状されて、リィは思わず噴出しました。 楽しそうに笑うリィの手に自分の手を重ねます。 信のあたたかい手のぬくもりを感じながら、リィも口を開きました。 「知ってたわ、全部」 ここに来る前に、ミカエルとラファエルから事情を全て聞かされていました。 信が怪我のきっかけになった人物であるということも、 その男性が自分の指導につくのだということも。 それでも良いかと問われて、行くと決めたのはリィでした。 「ちょっと、怖かった」 「すみません」 しゅんとうなだれる信の頬に、リィは軽くキスをしました。 「私もね、信さんと同じ気持ちよ」 そのまま、信の肩に自分の頭を乗せます。 リィの頭に、信は自分の頬を寄せて、しっかりと抱きしめました。 月の光がちらちら踊り、夜露にぬれた草花が、 宝石を煌かせるように光ります。 大きく風が吹いて、まるで大きな龍が駆け抜けていくかの ようでした。 つづく

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