はじまり 74
はじまり74 ~祝祭~ この国での年に一度の大祭を上回る活気と熱気が、町の中を 渦巻いていました。 新国王の戴冠式に続き、国王と他国からやってきた 王妃の結婚式です。 みんな広場に集まって、美しいと評判の紅き鳥の姫君を 一目見ようと押し合っていました。 白い鳥のシンボルを描いた旗と紅き鳥をシンボルに描いた 旗が町のいたるところで、はためいています。 「間に合ったでしょうか」 人の波をぬって、ソウがクローディアとシキのもとにやってきました。 二人は振り返ってソウに手を振ります。 「まだみたいよ」 「もうすぐだろう」 それはよかったと笑んで、二人の隣に立ちます。 何しろ今日は良き日、伸びに伸びていた新国王と王妃の 初のお目見えです。 式の後には、新郎新婦が馬車に乗って町をまわるのは この国のしきたりでした。 「アカネ姫、落ち着いてるようだったわ」 クローディアは呟いて、シキの肩にもたれかかります。 クローディアの肩を抱いて、シキは、薄い金髪に顔をうずめました。 「キール国王も、ずいぶん立派に成長しておいでだった」 緩やかに笑んで、顔をあげて三人で笑いあいます。 歓声があがり、城のテラスからキールとアカネが姿を 見せました。 花吹雪が飛び散り、みないっせいに拍手をします。 おめでとう、おめでとうというたくさんの祝福の嵐の中で、 キールはアカネに素早くキスをしました。 群集の間で、また歓声があがります。 まわりにいる人たちと一緒に拍手しながら、クローディアが 言いました。 「私、キールと結婚しなくて良かったわ」 しみじみとした物言いに、シキとソウはくすくす笑います。 「そうですね」 「大変だったけれど、思い切って国をでて良かったね」 シキはクローディアのあたまのてっぺんに口づけて、 晴れやかに笑います。 キールとアカネの幸せそうな姿を見届けてから、 身を翻し、三人はどこかへと去っていきました。 おわりご愛読ありがとうございました(^^)