祠:喜び 16
祠:喜び 16 ~ペア~ 渚と航の結婚式が終わった翌日に、乃亜とノエルの結婚式が 執り行われました。 前日に式を挙げたばかりの花嫁と花婿が、仲人となり、 挨拶をします。 『慌しいわね』 いろんな人に言われたものの、ノエルの公演旅行のスケジュールが 迫っていました。 式を挙げるなら、この教会でというのは乃亜の強い希望でした。 ノエルも親しい人たちに囲まれてあげる結婚式が、 嬉しくもあり気恥ずかしくもありました。 式を挙げた数週間後には、乃亜とノエルは豪華客船のロッジで 二人仲良く話していました。 豪華客船は、二人の結婚のお祝いにと義兄がプレゼントしてくれた ものでした。 ハネムーンをかねての公演旅行なので、花嫁を気遣ってくれたものでも あるようです。 船のロッジの上で、乃亜とノエルは大きな箱を取り出して 開きました。 四角い箱の中には、小さなガラスのコップがふたつ並んでいます。 お互いひとつずつ手にとって、しげしげと眺めました。 「これ、航さんと渚さんの二人で創ったものですって」 「綺麗だね」 航は、ガラスの工芸品を創る仕事をしています。 今ではずいぶんと注文も増え、売れっ子作家となっています。 航と渚は二人で、図案を考え、大まかな作業は航がしましたが、 渚も一緒に作業に参加したのだそうです。 図案は、太陽を見上げる黒兎と、月をみつめる白兎です。 美しい色彩と細やかな工芸に、二人はしばし見惚れました。 「大切にしないとね」 「二つでひとつだもの」 乃亜とノエルは、顔を見合わせて微笑みます。 大事に四角い箱にしまうと、日差しが強くなってきたからと 船室へと戻っていきました。 青々とした海とどこまでも広がる青い空に、白い鳥が 一羽、船を導くかのように悠々と飛んでいました。 おわり ****************************ご愛読ありがとうございました(^^)すっかりシリーズ化してしまった『祠』。次の物語もすぐに、アップしていけそうです。引き続き、どうぞよろしくお願いいたしますv