祠:灯台 8
祠:灯台 8 ~夜~ 「今日で、この灯台も役割を終えるのかと思うと不思議な気分ですね」 灯台で珠子がしんみりと呟きました。 潮風と海の音、月と星の煌きの中で敏哉が微笑みます。 「寂しい?」 「そりゃそうですよ、ずっと一緒だったんですから」 敏哉が珠子の手を取って、夜の散歩に出ています。 すでに新しい灯台の建設も終わり、明日の記念式典に 前田家はそろって出席するのです。 どこから見つけてきたのか、新しい灯台の守人は、 優しそうな夫婦と賢そうな子供を二人もった四人家族でした。 近隣の人、役場の人と交代で見張りながら、 灯台での仕事にゆっくり慣れていくのだそうです。 すでに役場での話し合いで会った事がありますが、 明日、正式に灯台の仕事を引き渡すことになります。 折り目正しい夫婦の様子に、珠子も敏哉も好感をもちました。 何かも順調に進み、灯台の記念式典が終った数週間後には、 平和記念公園の式典が開かれる予定でした。 それまでに、平和記念公園の管理人としてやることがたくさんあります。 学と華の息子夫婦はすでに新しく建てた家に住み、 やはり、バンガローの管理人としてすでに働いています。 息子の学は、これを機に保育園の職員を辞めました。 平和記念公園に訪れた人たちへ提供する、キャンプや野外活動の 企画を役場の人たちと進めているようです。 華も活き活きとし始め、そんな両親を子供たちも楽しんで 手伝っているようでした。 「聖に感謝しなきゃならんな」 「癪ですけどね」 ぺろりと舌をだす珠子に、敏哉が愉快そうに笑います。 それから、夜空を煌々と照らす灯台を見上げて、 二人はそっと手を合わせました。 船が無事に帰って来れますように 二人が灯台の仕事をするようになってから、一度もかかしたことのない 二人だけの習慣でした。 海を渡る船たちに 居場所を知らせる一筋の光 暗い海の彼方へと 届けとばかりに明かりを照らす 帰ってこいよと投げかける 淡く輝く橙が 家族の想いを投げかける 帰ってこいよと投げかける ボーっと遠くで船の汽笛が聞こえ、敏哉と珠子は、 顔を見合わせて嬉しそうに微笑みました。 おわり***************************************ご愛読ありがとうございました(^^)次の物語も下書き中ですので、すぐにお目見えできるかとv次の物語でも、お付き合いくだされば幸いです♪にほんブログ村 ↑いつも応援ありがとうございます!今日も良い一日をvHappy&love