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12月3日「ムツばあさんの花物語 秩父山中・段々畑の日々」(2002年8月放送の再放送)
埼玉県秩父市吉田町太田部楢尾、嘗ては林業と養蚕で栄えた集落も、両産業の衰退と共に若者が出て行き、残された高齢者も山合に開かれた斜面での畑仕事はきつく、一人一人と村を去り、5年前には5戸・9人の小さな集落となってしまった。 其処に住む小林公一さんとムツさん老夫婦は、先祖代々耕して来た畑を閉じながら、そこに花やモミジを植え続けて来た。 「使えなくなった畑を放っておくのは申し訳ない。せめて花を植えて山に還したい」「村に誰もいなくなっても、人が訪ねてきた時花が咲いていたら、どんなに嬉しかろう」自然の音に耳をすませ、つつましく生きるムツさん夫婦の日々を秩父の四季の中で見つめた作品でした。 12月4日「秩父山中 花のあとさき ムツばあさんの秋」 日本の原風景が広がる奥秩父の山中、荒川の源流域だ。5年前の放送では、NHKディレクターとムツさんとのやりとりが人間味に溢れて微笑ましいものがあったが、生活の場としての現実は厳しく、9人いた住民も7人に減っていた。 小林ムツさんも今年は84才、2006年9月には夫の公一さんを亡くして元気が無くなり、体力も落ちてしまっていて、山の斜面を切り開いて作った山道の手入れは4人1組で行うのだが、ムツばあさんは他の皆の様には動けなくなっていた。 看病に追われ手を抜いた花畑は、蔓に覆われ藪と化してしまっていた。又、イノシシに荒らされないように、囲いをしていた最後の畑を見に行くと、柵は壊されている。しかし、「自分達人間が、イノシシ達の食糧となる木などを切り倒して炭を焼き、跡地に杉ばかりを植え、山の動物達の食糧を奪って来た。だからイノシシも可哀想だ」と意外なことを口にし、最後の畑も山の自然に返す時期が来たのだと、山桃の苗木を植えるのだった。 そして、冬を過ごす体力と気力に限界を感じ、昨冬は長野市で過ごして早春に吉田太田部集落に戻って来たのだが、本年夏には脳梗塞で入院生活してしまう。 昨秋、山に戻すために植えた山桃がムツばあさんの背丈を超える位に育っているのに・・ それでも10年以上費やした努力は報われ、亡き夫と共に植えたモミジが大きく育ち、美しく秩父山中の風に揺れ、今秋も見事な紅葉を見せていた。 日本の山地は林業の衰退で荒れ放題、田園も休耕田が雑草地と化したままの処が多くなっている。持続可能な環境社会とは言われながらも、後継者も無く回生は難しい様にも見えます。 秩父山中で生活する一組の老夫婦の5年間の暮らしを季節毎に追ったドキュメント番組で、以前好評を浴びた「ターシャからの贈りもの」同様、自然に対する人間の関わり方を考えさせてくれる秀逸な番組でした。 ターシャばあさんも前回ドキュメントでは、丹精込めて維持して来た花畑を自然の雑草地に返そうと、段々と世話するのを止めていたのが印象的でありましたが・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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