『ハチミツと父上様』その2
1~3月のクールで最も楽しめたドラマは、倉本聰脚本の『拝啓、父上様』。倉本聰が1975年に手がけた大ヒットドラマ『前略おふくろ様』を踏まえた作品です。東京に行くならば、そのドラマの舞台となっている下町に行かねば!福岡へ帰る日、「浅草」から総武線に乗り「飯田橋」を下車。かつては芸者が行き交う花街として栄え、多くの文化人が訪れた「神楽坂」へ。今では商店街として賑わっている神楽坂のメインストリート。200メートルほど歩いたところには「毘沙門天(善国寺)」があります。神楽坂のシンボルである毘沙門天は、ドラマで一平(二宮和也)と時夫(横山裕)が最初に出会ったり、一平とナオミ(黒木メイサ)のデートの待ち合わせ場所だったりとドラマの中でもシンボル的存在。お寺の中には「二宮くんへ」と書かれた絵馬がずらりと並んでいました。横丁に入ると石畳の風情ある路地裏の風景が残っています。初めて来た場所なのに、なんとも懐かしい気分に浸れます。神楽坂を久しぶりに訪れた倉本聰が(以前は花街で遊んでいたそうだ)、移り変わっていく街の様子を見て「早く書かないとこの街がなくなっちゃう」と思い、3ヶ月で脚本を一気に書き上げた『拝啓、父上様』。(連続ドラマで撮影前に本が出来上がっていたというのも、珍しい話です)皮肉なことに、先日神楽坂で大きな火災があり、石畳に面した昔ながらの家6軒ほどが無くなってしまいました。そこは僕らが歩いた路地裏でした。倉本聰が危惧していたことに、火災という不幸な事故が追い討ちをかけてしまうことになってしまいました。とりわけ下調べして訪れたわけではなかったんですが、思った以上に撮影ポイントを発見できて、2人で「ニヤリ」としてしまいました。一平が通うレトロな雰囲気のコインランドリー。八千草薫が猫と戯れていた坂道。一平が「料亭 坂下」へ向かう路地裏。「坂下」の入り口である黒塀。一平が乗る車の駐車場である公園の一角。「坂下」の裏口として使われている「別亭 鳥茶屋」の入り口・・・などなど。少々歩き疲れて、毘沙門天と並ぶほどドラマで登場する「カナルカフェ」でお茶の時間。というわけで、今回の旅は『ハチミツとクローバー』と『拝啓、父上様』の撮影地を訪ねる旅となりました。福岡に戻り、書店で『拝啓、父上様』の脚本本を購入し、ドラマを1話から見直しています。今日の名言 「ドラマは子宮で泣かせて、睾丸で笑わせろ」倉本聰