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アンフェアだが関係をよくするためのヒント

 アンフェアだが対人関係をよくするために心がけたいことがある。

 人からお願いされたことはできるだけ引き受ける。しかし自分でできることは人にお願いしない。

 このことの前提として自分ができないことは人にお願いしていいということがあるのだが、この話をあるところでしたら、おおっとどよめきが起こった。で、さらに、世の中の人が誰もがこんなふうに思ってたらうまくバランスがとれるだろう、といったら、はぁ~とため息が。

 お願いされたことを引き受けること自体は必ずしもむずかしいことではないが、引き受ける時に、私はこのお願いを引き受けたのだから、あなたも私のお願いを聞いて、と思うところからめんどうなことになることが多い。相手はそのような期待に応えてくれるとは限らないからである。

 このように相手が期待通りの応答を返してくれなければ心がざわついたり、いらいらしてしまう。ふと思ってしまう。僕はずっと、あなたの要求にはYesと答えてきて、一度たりともNoといったことはなかったではないか、なのに、あなたは僕が要求した時に、きっぱりと、Noというではないか、これってアンフェアではないか、と。

 Noといわないことで相手を自由にさせていると思うところが問題。こんなふうに思う時、二人の対人関係の構えは対等だとはいえない。立場が変われば容易にわかるだろう。自由にさせられたら、自由ではないということが。自由な人はただ自由になるのであり、他の他の人に自由にしてもらうことはない。

 自分が努力したことについては認められようとは思わない。しかし、他の人の努力のあとは極力見つける。

 私はこれだけがんばったのに気づいてもらえなかった、と嘆かないということである。髪の毛を短くしたとか髪型を変えても気づいてもらえないということがある。

 シンプルに考えたい。気づいてもらえないのならこちらからいうしかない。「髪型変えたんだけどどう思う?」というふうに。なぜ、それをいいだせないのか。こちらからいうと負けと思うからである。対人関係は勝ち負けではないのだから、仲良くしたいのなら負けたっていいではないですか、と助言しても拒む人はある。

 次に引くケースも基本は同じである。哲学者の中島義道が次のような話も引いている(『ひとを<嫌う>ということ』角川書店)。自分のなまりを恥じていたある小学生が日頃はなまりがあることを隠していたのだが、ある日の国語の授業で朗読した時ついなまりが出てしまった。教室中の者がどっと笑った。

 それからその子は学校にこなくなった。見かねて担任の教師が家庭訪問をすると、その子はこういった。「あの時、先生までも笑った。絶対に許せないと思った。自殺しようと思った」。先生にとってはすべてが意外であり、ショックを受けた教師はその場で涙を流し、「許してくれ」と頭を下げた。

 この国では「どんなに傷ついたかわからないのか!」という声にみなが平伏してしまうという構図があるがこれはおかしい、と中島は指摘する。他人がどんなに傷ついたかわからないのがあたりまえなのだから、言葉を尽くしてわからせるように努力すべきだが、このように叫ぶ人はその努力をしない、と。

 人を傷つけたかもしれないという可能性には絶えず敏感でなければならない。しかし、人間は心ならずも誤りを犯すということはある。自分を傷つけた人を黙って断罪しても、問題は解決しない。カウンセリングにおいても、私はなんてかわいそう、こんなふうな思いをさせるあの人はなんてひどい人なの、という話に終始するだけでは、問題は少しも解決しない。

 七年半無言電話が毎晩かかってきたという先生を知っている。ある日、ふとある教え子の顔が頭に浮かんだ。いつもかけてくるのはあの子かもしれない、と思い当たった。いつものように電話がかかってきた。受話器をとってもいつものように無言のまま。先生は思いきってたずねた。「○○君?」電話口の向こうから返事があった。「はい」

 無言電話を先生にかけたところで、たしかにそのことで先生は嫌な思いをするかもしれないが、必要なことは先生に「直接」自分が先生の言動の何で傷ついたかを主張することである。

 人からひどいことをされたからといって、それと同じことをやり返そうとは思わない。

 反発されるのを覚悟で、そんなのは大人げないですよ、といったら思いがけず、たしかに、と納得してもらえ驚いたことがあった。やり返したらきっとやり返されるであろう。誰かがこの悪循環を断ち切らなければ関係は変わらない。その誰かは、彼(女)ではなく、あなたである。


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