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cozycoach@ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…

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遠くへ行きたい
2025.06.07
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カテゴリ:カテゴリ未分類
  スパルタは、ペロポネソス半島のラコニア平原に位置します。
 アテナイと並ぶ古代ギリシアの代表的都市国家即ちポリスです。
 ”スパルタ 古代ギリシャの神話と実像”(2024年12月 文芸春秋社刊 長谷川 岳男著)を読みました。
 1000におよぶポリスが乱立する古代ギリシアにおいて、軍事大国として君臨していたスパルタについて、その盛衰を詳しく紹介しています。
 紀元前11世紀ごろ、この地に侵入したドーリア人が先住民を征服し奴隷化して形成しました。
 スパルタ人はドーリア人の一派で、エウロタス河畔に居を定めました。
 自らを強固な支配身分の共同体として結合し、他の従属的な諸身分を抑える戦士団の共同体をつくりました。
 スパルタ人が支配する従属民には、ヘイロータイという奴隷身分とペリオイコイとよばれる半自由民身分がありました。
 紀元前7世紀から前6世紀半ばまでに、リュクルゴスの制といわれる軍国主義体制を作り上げました。
 紀元前5世紀のペロポネソス戦争でアテナイを破って、ギリシアの覇権をにぎりました。
 ペロポネソス同盟の盟主となり、アテナイを破って一時期はギリシア世界に覇を唱えました。
 少数の市民が多数の奴隷と半自由民を支配するため、厳しい軍国主義体制をとりました。
 長谷川岳男さんは1959年神奈川県生まれ、上智大学大学院文学研究科を単位取得退学しました。
 専門は西洋古代史です。
 2000年に鎌倉女子大学児童学部非常勤講師となりました。
 2004年に同学部助教授、2006年に准教授を経て、2011年に教育学部教授となりました。
 2019年に東洋大学文学部教授となり、現在は人間科学総合研究所客員研究員を務めています。
 スパルタ教育という言葉はよく知られていますが、言葉の由来は古代ギリシャのスパルタにあります。
 スパルタでは、軍隊の兵士を育て上げるために子どものうちから厳しい訓練をしていました。
 このスパルタ教育という言葉を生み出した、スパルタというコミュニティが本書のテーマです。
 なぜスパルタは強国として君臨することが可能だったのでしょうか。
 それを支えた社会とはいかなるものだったのでしょうか。
 元祖スパルタ教育は、なぜ必要だったのでしょうか。
 スパルタはラコーニアーとメッセーニアーを治めましたが、支配地には城壁等はありませんでした。
 スパルタの陸軍は最強だ、というのが当時のギリシア世界の常識でした。
 攻め入ることは自殺行為に等しい、という認識が浸透していたからといいます。
 スパルタが弱体化してレウクトラの戦いで敗れるまで、侵入できた軍隊は存在しませんでした。
 プラトンは、その体制はまるで兵営におけるもののようだと述べました。
 強健な兵士を生み出すために、社会全体がポリスの厳格な統制下にあるというイメージが強かったのです。
 紀元前5世紀末以降、熱烈な支持者により理想の社会として高い評価を受けました。
 これがその後の西洋世界で、一貫したイメージとなり賛美者を生み出してきました。
 その意味で、スパルタはある種のブランドと化したといます。
 古代ギリシア世界は、西洋文明の源流と見なされてきました。
 最終的にローマの属州となる紀元前2世紀後半まで、専制君主制が生まれず多数のポリスが林立していまsた。
 ポリスでは市民が政策などを合議で決め、戦争の際に市民自らが武器を執って戦いました。
 スパルタ人たちは、ギリシアでは珍しい肥沃な平野を擁するラコニア地方に居を構えました。
 紀元前8世紀より周囲への拡大を始め、前7紀末までにギリシアのポリスで群を抜いた領土を得ました。
 前6世紀半ばには、リュクルゴスの改革で一連の国制や社会の改革を断行して国内の安定を得ました。
 北隣のテゲアや東で国境を接するアルゴスで優位に立ち、ペロポネソス半島の最大勢力となりました。
 前6世紀の後半に、多くのポリスとギリシア史上初めてペロポネソス同盟を結成して盟主となりました。
 その名を高めたのは、ペルシア戦争でした。
 紀元前5世紀初めに、オリエント世界で大帝国を築いたアケメネス朝ペルシアがギリシアに侵攻しました。
 一回目の戦いは、アテナイが撃退しました。
 二度目の戦いでは、スパルタがギリシア連合軍の総大将を務めてペルシアに勝利しました。
 しかしアテナイがデロス同盟を結成して、スパルタの強力な対抗勢力となりました。
 紀元前430年代末に、ペロポネソス同盟とデロス同盟がギリシア全土の全面戦争に突入しました。
 スパルタは30年近く続いたこの戦争に勝利し、名実ともにギリシアの覇者の地位を得ました。
 紀元前4世紀に、ペルシアの支援を受けたコリントス、テーバイ、アテナイなどと戦争に突入しました。
 最終的にはペルシアと和解して、その王を後ろ盾としてギリシアでの覇者の地位を維持しました。
 その後も他のポリスとの抗争が絶えず、紀元前371年にはテーバイに敗れました。
 覇権を喪失すると、それまで国力を支えていた肥沃なメッセニアも独立してしまいました。
 かつての勢威を取り戻すことは困難になり、紀元前321年にはマケドニアに敗れました。
 紀元前3世紀以降、国政改革を実施して、アカイア同盟、マケドニア、共和政ローマと戦いました。
 セッラシアの戦い、マンティネイアの戦い、ナビス戦争に敗北しました。
 この時期に、名実共に独立国家としての地位を失いました。
 そして、紀元前146年にローマがスパルタを含むギリシア全土をローマの属州に組み込みました。
 ただし、アテナイとスパルタは、かつての功績から一定の自治権を認められました。
 スパルタは紀元前4世紀前半までギリシア随一の軍事大国として君臨し、名声は外国にまで及びました。
 その強さの理由として注目されたのが、産まれた時から始まる元祖スパルタ教育でした。
 他のポリスでは教育は個人的でしたが、スパルタでは公的な形で義務として実施されました。
 教育を受けることは、市民資格を得るために必要とされました。
 親は子どもの成長への関わりを制限され、新生児は年長者たちによる身体審査がありました。
 7歳になると本格的な公教育が始まり、集団生活に入りました。
 20歳で成人しても、集団生活が続きました。
 優秀とされた者は、騎兵隊とよばれた王の親衛隊に選抜されました。
 競争は30歳まで続き、30歳になってようやく解放されました。
 この間、厳しい肉体的な鍛錬などが競争を通して徹底されました。
 これにより、強健な肉体、したたかさ、対応力、団結心、服従、愛国心、知性が培われました。
 市民は生業に就くのを禁じられ、成人後も軍事教練などを日課とした戦闘の専門家集団でした。
 必要な生産物は、所有地で労働に従事する隷属農民から得られていました。
 幼少から徹底した訓練を受け、成人後も軍事訓練に明け暮れました。
 スパルタは、プロの兵士から成るポリスのため強国として名を轟かしたと認識されてきました。
 ところが意外なことに、英語のSpartan Educationには、体罰を含む厳格な教育という意味はないといいます。
 単純に、スパルタでなされる教育を指す言葉として使われています。
 日本では、スパルタは明治初期に認知されていました。
 今日的な意味でのスパルタ教育という言葉は、第二次世界大戦前から存在しました。
 広まったのは、石原慎太郎氏の著書、”スパルタ教育”(1969)によるところが大きかったといいます。
 ベストセラーとなりましたが、スパルタにおける教育を扱ったものではなく、スパルタヘの言及もありません。
 これを契機に、スパルタとは関係なく広く我が国でスパルタ教育なる語が用いられるようになりました。
 しかしスパルタに関する情報は、数は多いが謎が多く彼ら自身が書き残したものはほぼ皆無に近いです。
 それゆえ、現実のスパルタ社会の内情を正確に伝える情報が少ないです。
 スパルタに関する本は、大きなクェスチョンマークのみを記した一頁の本となると言われます。
 最近の研究は、新たな手法を駆使した考古学の成果をもとにその社会の考察が進められています。
 これにより、先入観を乗り越える可能性が開け、スパルタの現実を理解する動きが高まりました。
 そこで本書は、スパルタの現実と共に視野を広げて、何が特異でなぜそう考えられたかを分析します。
 ひるがえって、我々が有する価値判断の基準を再認識してみたいといいます。
 そこには、現代世界が抱える様々な問題を改めて考えさせる要素が多く見られるからです。
 本書では、日本ではほとんど紹介されていないスパルタとそれを取り巻く世界を説明しています。
 そして、現代の社会を改めて考え直すヒントが提供されています。
はじめに スパルタ教育の元祖/第一章 テルモピュライの戦い/第二章 スパルタ人の創造 「元祖」スパルタ教育を中心に/第三章 エウノミア(Eunomia) 秩序ある世界の成立/第四章 ギリシアの覇者 スパルタの対外関係/第五章 リュクルゴス体制のほころび/第六章 スパルタの黄昏/第七章 永遠のスパルタ ブランド化への道程/おわりに/参考文献リスト/あとがき





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Last updated  2025.06.07 08:12:24
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