のり弁当の誠意
のり弁当というのは数ある弁当の中でもっとも誠実で控え目な性格であるといえよう、今日の昼につくづくそう思った。 まずは写真をご覧いただきたい 通常○○弁当と言えばもっとも重要なお総菜がその○○に当てはまる、とんかつ弁当ならその弁当の最も大きい比重を占めるのがとんかつである、から揚げ弁当と言えば“から揚げ”がメインである。 しかるに“のり弁当”と称する以上“のり”が最も消費者の購買意欲をそそるお総菜であるべきで、我々は“のり”でご飯を食べたくてそれを購入するのが本来の姿なのだ。 しかし、写真で分かるように、鮭、ちくわの天麩羅、鶏のから揚げなど弁当のおかずとして十分主力足りうる総菜が乗っかり、メインであるべき“のり”を覆い隠している、いずれも一枚ぺらっとご飯に張り付いている“のり”なんかよりもよほど魅力的である。 ここまで豪華な脇役をつけても敢えて“のり弁当”と主役を“のり”と断言するには余程の勇気がいることなのではあるまいか、もし日本語を若干解する程度の外国人に実物を見せず名前だけで弁当を選ばせたらどうだろう“のり弁当”を選択するものは絶無だろう、そこまで極端な例を持ちいなくとも“のり弁当”の響きは“シャケ弁当”よりも“から揚げ弁当”にも魅力に乏しかろう、だからこそ“のり弁当”と胸を張る勇気をたたえたい。 外国産の肉を国産と偽り、あるいは賞味期限を改竄してまで暴利をむさぼる嘆かわしい輩の多い世の中で“のり弁当”の控えめさは痛快の極みである。 さらに良心を感じるのはその価格にある、本日の“のり弁”は380円であり一般的なのり弁よりはやや高価であるが380円である、サケの切り身など安売りでも一切れ100円程度はするのである、から揚げにしても同程度の大きさのもので5~6個で300円程度はしよう、それをこの価格で販売するのは良心という他ない。 手間も普通の弁当よりも多くかかる、たとえばとんかつ弁当、とんかつを揚げる手間のほかは盛り付けだけだ、容器にキャベツの千切りを敷き揚げたとんかつを切ってのせる、付け合わせのポテトサラダを隅にのせご飯を盛り真ん中に梅干し、ソースのパックを入れて出来上がり・・・とまあこんなものだろう。 今日ののり弁は揚げ物だけで二種類、ちくわの天麩羅と鶏のから揚げ、鮭の切り身を焼ききんぴらごぼうもあった、ご飯を盛り際も出来うる限り平らになるように留意しなくてはならない、さもなくば鮭やちくわの据わりが悪い。 丁寧に盛ったご飯の上に均一に醤油で湿した鰹節を敷き詰める、その上にメインの“のり”を敷き綺麗に揚げ物を並べ付け合わせの柴漬けを隅に乗っける、きんぴらごぼうも崩れないよう注意を払い盛り付ける。 地味だが手間の掛った仕事だ。 事故米という残留農薬などが多く含まれ食用にしてはならない危険だという米を長きにわたり食用として販売し多くの利益を収めた業者がいたという、“またか”という感は否めないがそれら“偽装”を生業として恥じぬ人たちは“のり弁”を大いに見習うべきである。 “のり弁”は正直に生きていてもしっかり商売にはなっているのだから・・・・・・。