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日常・・・

日常・・・

リッカー (最終章)

最終章【帰還へ・・・】

メンバー達は走って逃げた。
「ここまで来れば大丈夫だ・・・」
先頭の隊長が言う。スコット、ネイオ、マニー、カプランの順に立ち止まった。
「くそ・・・拠点予定の建物がゾンビに占領されているとは・・・」
カプランが重い荷物を降ろして嘆く。一番疲れているのは彼であるだろう。
「恐らくあそこ以外にもゾンビはいるだろうな・・・いや、怪物の餌になるか・・・。とりあえず、どこを目指す・・・?」
マニーが質問する。残った五人の答えは一致した。
「海岸を目指す」
ネイオがそれを代弁した。もちろん、反対の意を示すものはいない。
一同は海岸を目指して、周りを警戒しつつ歩き出した。

・・・・・・それから二時間、まだ海には辿り着けない。
「やっぱり・・・海はそう簡単に・・・方角すら分からない・・・」
カプランはそうつぶやいて下を向いた。ネイオはカプランの重い荷物を持ってやろうとカプランに近づいた。
すると、あることに気付いた。
「隊長・・・これ・・・」
地面を指差す。見ると、地下通路に入るための出入り口があった。
「これは・・・ははっ、助かった。海は近いぜ」
「出口の方じゃないといいんだが・・・」
マニーは不安を語った。しかし、すぐにその不安は消えた。

「・・・・・・あっ、波の音がするぞ」
カプランが叫んだ。それは、四人にも聞こえてきた。穏やかな波のうつ音が。
「こっちだ!」
隊長は音のするほうへ走り出した。残りも笑顔で走り出す。
予想は当たった。
しばらく走ると、一面は青い海が広がっていたのだ。
「た・・・助かった!」
スコットは笑顔で言う。ネイオもそれを見て笑い出した。
「よし、あそこにあるのが俺達が乗ってきた船だな。カプラン、荷物をネイオに預けて、発進準備にかかってくれ」
カプランはネイオに荷物を渡すと、古い木の港を駆け出し、奥にある船まで言った。
それをほかの隊員達は歩いて追う。しかし、カプランが船に、操舵室に入ったとたんに叫んだ。
「う・・・うわぁぁ!」
ただ事じゃないと判断し、残りの隊員達は船へ走った。
「どうした!?」
そして中を見ると無残な光景が広がっていた。
裏切り者のO・Bの死体が操舵室の壁にぶつけてあった。その衝撃で操縦桿など、大切な物まで壊されていた。
「裏切り者の末路はこれか・・・」
マニーがつぶやく。しかし、ネイオが訂正する。
「裏切り者じゃない・・・哀れな犠牲者ですよ・・・」

どんよりとした空気の中、隊長がある提案を出した。
「おい、あれに乗って帰れるか?」
隊長が指したのは前の調査隊が乗った、大きな船だった。その調査隊はもういないだろう。
「あれでなら・・・いけるかも」
ネイオも賛成し、皆は立ち上がってその船を目指した。別の木の港を使って停めており、上にある乗り場ではなく、船からジェットスキーなどを出すところの扉が開いていた。
恐らく低い港なので上の乗り場から降りられなかったのだろう。
中に入ると車、ジェットスキー、ボートなどが格納庫に。上に上がっていくと船室などがあった。
そして、さらに上がっていくと甲板に出られる扉も見つけた。近くに操舵室があるのでカプランはそこにいき、隊長は下の倉庫の確認を、ネイオ、スコット、マニーは広いほうの甲板に出た。
広いほうの甲板にはコンテナがとてつもない数、敷き詰めてあった。
「なんなんだ・・・このコンテナの数。まるで迷路に迷い込んだみたいだ・・・」
スコットはそうつぶやきながら、中を確認した。
「おい、ネイオ、マニー。中はとてつもない数の火薬だぜ」
「俺も確認した。こいつら島を吹き飛ばす気で来たようだな・・・」
ネイオはコンテナを見ながらそう呟く。
「おい、俺、ちょっと奥のほうまで見てくる」
マニーが叫んだ。マニーは敷き詰められたコンテナの脇をゆっくりと進んでいった。
スコットは火薬の種類を見た。
「これは・・・大爆発とまでは行かないぞ・・・。それほど大きくない爆発を起こす種類の火薬だ」
「お前、火薬とかミサイルとかには詳しいな」
「ふん、スコット様をなめるんじゃない」
そのとき船のスピーカーから声が聞こえた。誰の声だ?カプランである。
「早く出たいだろ。今から出発させる」
この声を聞いて安心した。
「これでこの島ともおさらば出来る」
そう思った。実際、船も動き出した。
しかし、そのときスコットが砂浜のほうを見た。目を疑った。
「まさか・・・あいつだ!!」
そう、奥の砂浜からあの未知の生物が駆けて来たのだ。
「マニー!早く船に!!」
ネイオは精一杯叫んだ。しかし、敷き詰められたコンテナが邪魔で声が届かない。
怪物のほうは浅瀬まで入った。そして大ジャンプをした。
ちょうど水面ギリギリの船の側面にしがみついた。そして速いスピードで側面を登ってくる。
側面を登りきって甲板に顔を出したそれは、大きく一吠えした。
そして船の甲板の先まで来ていたマニーは甲板に上がってきた怪物と遭遇した。
「くそぉ・・・」
マニーは何とかいり込んだ甲板を利用して逃げることにした。ネイオとスコットは先へと走った。
ようやく、2人は逃げるマニーを見つけることが出来た。
しかし、ちょうどその時怪物が頭上からジャンプしてマニーの上に飛び乗った。
大きな爪で彼の背中を引き裂く。
「くそぉ!・・・早く中に入れ!!俺はいい!・・・」
マニーは体を喰いつかれながら叫んだ。
「・・・・・任せた!」
ネイオとスコットはそう叫んで振り向くと、甲板から船室の中へ入る扉まで走った。
「・・・・・・・・・・・・すまないボーク・・・先に逝かせて貰うぜ・・・」
マニーは最後につぶやいた。
無駄だと分かってむけたハンドガンはやはり跳ね返され、顔の上で奴が吠えたところで自ら目を閉じた・・・。


室内への扉を目指して、コンテナの中をネイオとスコットは走った。
背後からは、既にもうコンテナの上を飛びながら怪物が追い駆けて来る。
そして、追いつかれる寸前に扉まで辿り着き、扉を閉めた。
一般的な押しドアなので、面積が狭く、怪物は勢いよく両側の壁にぶつかった。
スコットは念のため鍵を閉めた。意味はほとんどないのは承知うえでの行動だ。
中に入って階段を駆け上がってカプランのいる操舵室へといった。
「カプラン!やばいぞ!」
「分かっている、ここから見えた。あの怪物が乗ってきた・・・」
操舵室は一つ高いところで、両側ガラス張りなので両方の甲板がよく拝見できる。
「しまったな・・・室内は安全だろうな・・・」
スコットが聞く。
「とりあえず、このまま行っても・・・アメリカに怪物をお土産するだけだ。どうするか・・・」
そのとき、ちょうど隊長が入ってきた。
「事情は分かった。あいつを海に落とそう・・・」
「何を言ってるんですか!さっきのより大きい。銃が利かないのは分かっているはず・・・」
ネイオは反論するが、隊長にはそれなりの考えがあった。
「あいつには確かに意味がない。しかし、追っ払うことは出来た。追っ払って海に逃がすんだ。スコット、あの強力な銃を使え。カプラン、操縦を頼むな」
隊長の案に、ネイオは賛成した。殺すのは無理でもそれは可能だ。と判断した。
そのとき、怪物が操舵室等を飛び越えて、狭い反対側の甲板に飛び移ったのが見えた。
「いまだ!あっちは狭い!行くぞ!」
ネイオ、隊長、スコットは急いで階段を降り船室などの室内から前方の狭い甲板へ出た。
「運がいいぜ。奴は甲板ギリギリのところにいる」
スコットが言った。3人はじりじりと近寄る。
そして隊長の一言で攻撃を開始した。
「発射だ!」
三人の銃からいっせいに銃弾が発射される。ようやく気付いた怪物は吼えた。
しかし、圧倒的な銃弾に圧倒された。あの素早い怪物が隙を付かれて押される。
三人は休まず銃弾を発射した。そして、ついに怪物は悲鳴を残し甲板から落下した。
「よし・・・」
スコットが呟く。
「やったか・・・」
ネイオはそういって確かめに行こうと歩みだしたが、隊長が止める。
「待て、ここは俺が確認する。お前達はそこにいろ」
隊長は自分で確認したかったのだ。犠牲を出してしまった罪悪感に押され。
そして、先の手すりから下を見る。波が見えた。そして怪物は見えない。
「よし・・・やった・・・」
隊長は振り向いた。そして、喜びを込めて二人に報告した。
「怪物は落下したようだ。ここからじゃ確認できない。やったな」
ネイオとスコットは安心のため息をついた。そして隊長は二人の下へ歩き出した。
しかし、その時だった。怪物が側面を伝って登ってきたのだ!
隊長は振り向き、そして銃を抜いた。しかし、怪物は顔を伸ばし下半身が完全に甲板に上がらぬ状態のまま隊長をくわえて、首を振り、海に放り出したのだ。
ボーク隊長が悲痛な声をあげて海へと消えてゆく。
「うそだろ!」
「ネイオ、逃げろ逃げろ!」
意表を付かれたネイオとスコットは、対応も出来ぬまま船内に戻った。
扉を閉めてネイオは喋りだした。
「くそ・・・隊長までもが・・・」
「・・・なんで隊長はあの怪物がいることに気付かなかったんだ?」
「船の前方の側面って曲がっていて、上からじゃ完全に側面が見えなかったんだろ。だから怪物がしがみついていても分からなかった・・・たぶんこうだろうな・・・」
二人は無意識のうちにカプランの元へ行った。操舵室に入るとカプランは震えていた。
「早く逃げようカプラン。船を止めて・・・」
ネイオはカプランに素早く命じた。何か案があるようだ。
「そして俺達が乗ったように下の格納庫の入り口を開けてくれ。そこから脱出しよう」
「賛成一票。何でそれを早く言わなかった?」
「隊長の作戦が、一番正しいと思ったからさ・・・」



そして、一同は格納庫に来た。いい船を捜す。
「ネイオ!小型ミサイル発射装置があったぞ!あ、ロケットランチャーのほうじゃなくて、ちゃんとした組み立て式・・・砲台って言ったほうがいいかな?」
スコットはそれを持ってきた。ちょうどいい船が見つかった所だ。
「おい、クルーズじゃないんだぞ」
ネイオとカプランが選んだ船はモーターボートで運転席が先にあり、後方は広めに作られている船だ。座席もある。
「それを乗せるためには最適な速い船だぞ」
カプランが言う。スコットはランチャーを船に乗っけて、自身も乗り込んだ。カプランはエンジンをかけてネイオは最後に乗り込んだ。
「発進だ!カプラン!」
ネイオが言って、モーターボートは発進した。スコットはランチャーの組み立てもままならない。
そして格納庫から飛び出すと、船から離れていく。
「あの化け物は・・・?」
怪物はコンテナの上でマニーの死体を食っていた。ネイオはそれを見て頭に血が上った。
「くそ野郎・・・!スコット、まだ組み立て終わらないのか・・・!」
スコットは船の後方に後ろ側に発射できるように組み立てていた。
「よ~し、これで前へ進みながらも発射できるぜ。さて、早く撃とう・・・」
スコットは解説をしている途中だが、ネイオにどかされた。
「ほら、お前はあっちに・・・。弾はどのくらいある?」
「あんまり積み出せなかったから三発。これしかない」
「仕方ないな・・・俺が撃つ、どいていろ」
ネイオは顔を近づけて標準をあわせた。
そして、「ドン!」という音と共に、ミサイルが飛んでいった。
しかし、そのミサイルはコンテナの上にいる怪物を大きく外して青い空に向かっていった。
「くそ。スコット。次の弾を・・・」
スコットはネイオを押しやると標準を合わせて、間髪いれずすぐ二発目を放った。
しかし、これまた空を切った。
さらに不運なことに怪物がこちらに気付いたのだ!
コンテナの上で、モーターボートのほうを睨んでいる。距離は遠いものの確認は出来る。
「ちくしょう。外したぜ」
「なもん見なくても分かる。だからお前はミサイル射撃が下手と言われるんだよ!」
「何を言う。お前より俺のほうが近かったんだぞ!当たる可能性は俺のほうが高い・・・」
スコットとネイオが口喧嘩を始めた。それを聞いていたカプランは怒鳴った。
「早く撃て!どっちでもいいから。あいつ、こっち来るぞ!」
いつもとは違うカプランの怒鳴り声に二人は驚いた。
ネイオは状況をよみ、スコットに譲った。
「お前を信じよう・・・さぁ、早く撃て」
スコットは一世一代の大仕事を任されて、気を引き締めた。これを外したら、船のスピードに頼るしかない。
スコットは目を閉じ、意識を集中させ、完全に標準をあわせた。
「行け!」
そうスコットが言って完全な発射をした・・・と思われた。
しかし、発射した瞬間、波に船が傾いて、ミサイルは下の方に向かっていった。
「やべぇ、下すぎた・・・」
「カプラン、全速力で逃げろ!」
ネイオの言葉にカプランは対応した。エンジン音が大きくなった。ネイオはチラッと振り返った。

着弾寸前。

しかし、外れるのは明確だった。そして怪物はコンテナの上から海に向かってジャンプをした。
その瞬間だった。
標準を外れ、下のほうへ向かっていったミサイルは船のコンテナに着弾したのだ!
コンテナの中の火薬に熱と衝撃が加えられ、そのコンテナの火薬は爆発して一瞬にして大きな船は大量の火薬の影響により、ジャンプした怪物をも飲み込む大爆発を起こした。
一瞬すさまじい炎が燃え上がると、不気味な煙を残して大破した大型船が浮かび上がった。
怪物の姿はどこにも見えない。

「・・・やった」
三人は歓喜に満ち溢れた。
そして、モーターボートは薄っすらと見えるアメリカ本土に向かっていったのであった・・・。


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