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日常・・・

日常・・・

第三章 【各地での脅威】

「その扉を開けるには、暗証番号の入力が必要だ・・・サーフ、頼む」
マックスは説明をすると、コンピュータ担当のサーフが自身のバッグからコードを取り出し、
それを暗証番号を入力する機械に繋いで、もう一方を自身の小型PCに繋いだ。
手際よくPCを操作するサーフに見とれる一同。
「それっていくらくらいしたんだ?」
へブリックが問う。
「ざっと・・・百万くらいかな・・・」
「ハハ、俺なら数台買えるな」
「お前の給料はいくらなんだ」
サーフ、ヘブリック、そしてG.E.の会話が進む中、サーフが口を開いた。
「大体調べて分かりました。最初に4987035と入力してください」
マックスはサーフに言われるままに、その番号を入力した。
「入れ終わった」
「次に・・・えっと・・・089315と入力してください」
マックスが入力を進めた。
すると不意に、扉が下から上に動いて開き始めた。ゆっくりと開くシャッターに、全員が見とれる。
ネイオは前方を見た。
すると扉と同じ広さの幅で、壁には赤いレーザーのような光が、床と平行になって走っていた。
「何なんだ・・・ここは?」
スコットがつぶやく。
灯りはその、赤い光しかなく、あたりは赤く光っている。
「進むしかないだろう・・・」
マックスが進み始めた。
そのとき、銃声が響いた。
それに一同は銃を構える。すると光は消え、真っ暗な空間になった。
目が慣れてきて目を凝らすと、熟練者のデックスが拳銃を上に向けて構えていた。
「何をやってる!ばれるだろ・・・」
マックスの言葉は、途中でかき消された。
「監視カメラだ・・・それと一緒にここの動力も切れた」
その言葉に一同は凍りついた。
既に監視されている・・・そのようだ。
「とりあえずカメラがなくなればこっちのものだ・・・各自ライトをつけろ。前に行く」
マックスは手持ちの懐中電灯をつけると、前に進み始めた。
ネイオ、スコットもそれに続く。
「ネイオさんよ・・・暗いな」
「知るか・・・暗いけど」
ネイオとスコットは歩いていると、マックスが止まっているのが見えた。
「マックス様。何で止まるんすか?」
「スコット。これを見ればいいだろ」
スコットは前を良く見た。すると、壁で前方がふさがれていた。
「あ、やべぇな・・・」
スコットはうなだれた。
しかし、よ~く見ると・・・取っ手があるではないか。
「マックスさん。これでこうすれば」
すると壁が、厳密に言うと扉が開いて、下に向かう階段があった。
扉を開けたと同時に天井のランプも点灯し、見晴らしがいい。
「お、スコット様は凄いぜ」
自画自賛のスコットを後ろに追いやると、続いてネイオがマックスの横に来た。
「マックス、ここを降りるか?」
「当たり前だ」
冷たい声でマックスは言うと、階段を下りていった。
ネイオも続く。

スコットは最後尾を歩いていた。
時折、前を行くキットが止まって邪魔になるが、けっこう安全な位置だ。
しかし、最後尾だと一人だけ敵に襲われた時皆に気付かれない。
ひっそりと犠牲になる・・・悲しい運命である。
スコットは、人一倍周囲を警戒していた。
「!」
スコットの肩に何かが当たった。
「誰だ・・・」
振り向こうとするが完全に押さえ込まれた。
必死で振り払おうとする。
「スコット、落ち着け」
途端に声が響いて、スコットは我に帰った。
同時に、前にいる隊員達もスコットのほうを振り向く。
見るとスコットの肩に手を当てている短髪の男と、その後ろには若めの男が立っていた。
ネイオは直感した・・・。
「カルロス!?」
叫ぶネイオに、マックスは問いかけた。
「カルロスとは誰だ?」
「カルロスは四年前のリッカー襲撃の際に、島から脱出した生き残りの一人だ。
その後ろのがユアンで、カルロスと同じ経歴を。久しぶり、カルロス、ユアン」
ネイオは数段上にいるカルロスたちに手を振る。
「久しぶりだな」
「久しぶり」
カルロスとユアンは話すと同時に、下に降りてくる。
ネイオは問いかけた。
「何でここにいるんだ?」
その問いにはカルロスではなく、ユアンが答えた。
「ソニック最高司令官という人から連絡があって・・・今日、この時間にマイアミのこの場所に集合と・・
そしてリッカーを倒してほしいという・・・そしたら皆、来て・・・」
「そういうことか」
ネイオは頷いてみせた。
マックスが言う。
「だったらこの隊と一緒に行動するということか?」
「そういうことだ」
カルロスが低い声で返す。
マックスは手招きをすると歩き出した。
「面倒な奴」
スコットは歎いた。




その頃日本では、既に夜に突入していた。
しかし、道路に車が途絶えることは無い。そこらの灯りで明るい。
今、スクランブル交差点を一斉に人が歩き始めた。
その中に旅行に来ていたアフタショットがいた。
彼もカルロスたちの仲間なのだが、時期悪く、日本に旅行に来ていた。
空港を目指していたが、今日ではとても間に合わない。
「ったく、タクシー拾えねぇのかって」
一人ぼやくが聞く耳を持つものはいない。
アフタショットはひたすら歩いていた。




「また扉だな・・・」
パイロットだったクロウは嘆く。
しかし、暗証番号をまたもやサーフが先ほどの手段で入力してあけた。
サーフが重大なことを言い出した。
「しまった、この扉もさっきの入り口の扉も・・・十五時間で完全に閉じるらしい。セキュリティの性質上そうなんだ」
サーフの言葉に一同は黙り込んだ。
しかしネイオが口を開いた。
「行こう!十五時間なんて長い。とっとと施設を破壊するぜ!」
「おぉー!」
スコットが大きく拳を突き上げ叫んだ。
「いこうぜ」
ネイオはマックスの腰を叩いて、前へ進み始めた。
すると長い階段が続いていたが、視界は開けて駅のホームのようなところへ出た・・・。
しかし、駅のホームみたいなので広いのは広いが、壁に囲まれているのは確かだ。
「地下鉄かよ?」
スコットがつぶやく。
ネイオは興味本意で少し歩み出る。
すると、少し行くと線路が走ってるではないか。
見ると、鉄製のトロッコが十両編成で待機してあった。
「このトロッコに乗って施設に行くんだ。ここから距離にして・・・約一キロだ。行くぞ」
マックスはサーフを先頭に乗せ、自身も一両目に乗った。
ネイオは三両目に、スコット、カルロス、ユアンと共に乗り込んだ。
しばらくしてトロッコはゆっくりと走り出した。
トロッコの走っている線路の脇は壁だ。頭上には電灯があって明るいが
両脇は壁だ。地下鉄を連想させる。
すると、カルロスが話しかけてくる。
「ネイオ。お前は階級、どこまで上り詰めたんだ?」
「ん、俺か?俺は中佐だ・・・」
「このスコット様は少佐だぜぇ。いいだろ。元犯罪者がよ」
スコットの言葉に、前後のメンバー達は、ネイオたちに視線を向けた。
「犯罪者?」
T・カウの甥、カルが疑い深げに問いかけた。
ネイオはカルを紹介する。
「あ、カルロス、ユアン。これはT・カウの甥でカルって言うんだ」
その言葉にユアンは驚いた。
「カウの・・・・・・話は聞いたことがあったが・・・本当?ネイオ?」
ネイオは頷く。
カルはやり取りに気付いた。
「お前が叔父の・・・」
「すまなかった。叔父を殺してしまって・・・」
カルロスは頭を下げた。
しかしカル本人はまったく気にする様子も無かった。
「いいんだ。叔父は自分勝手に犯罪の道に走った。自業自得。これがふさわしい」
そういうとカルは、一番後ろの荷物置き場の車両に行った。
そこではルークが荷物にもたれて寝ていた。
「叔父のことを・・・少しは思え」
ルークはカルに投げかけた。しかし、カルは全くもって聞く耳を持たない。
「俺はあくまでも特殊部隊員。叔父の犯したものを、許すつもりは無いね。」
ルークはそうですか、と呟くと再び眠りに着いた。




その頃、日本は深夜なのだが警察関係は大きく騒いでいた。
閉店後の大型デパートで、従業員が殺害されたという情報が入ったのだ。
パトカーが出動して、そのデパートの周囲を陣取る。
その周りには、十数名の野次馬がいる。
その付近を、偶然アメリカ人が歩いていた。
かなり若いだろう。黒い髪だが、所々白く染めた部分が見受け取れる。
「何だ?何があったんだ?」
早速、その男は数多い野次馬の中に入り込んだ。
黄色いテープを超えないように気をつけながら目を凝らす。
警察の一段が中に入っていくのが見受けられた。
その男は一旦野次馬の塊の中から出た。
ドガ
肩がぶつかった。
「ああ、すいません」
ぶつかった相手は声をかけ立ち去ろうとする。
男も受け流しかけた。
しかし、かえってきたのは流暢な英語だ。
ここは日本。
こんな完璧に英語を喋れるものがいるだろうか。
男は顔を上げて、相手を確認してみた。
ぶつかった相手は金髪で長髪のアメリカ人であった。
「お、同士だ」
相手はつぶやいた。
それは前述のアフタショットである。
アフタショットは若い男に話しかけた。
「大変だぞ。ここで殺人があった。数年前までは安全大国とか言われてたのに・・・日本」
アフタショットは悠々と語る。
「あ、お前名前は?」
男は口を開いた。
「ジェシー。ジェシー・スィムス。ニューヨーク生まれ」
「俺はアフタショット。過去を知りたきゃ調べろ」
偶然出会った二人は、流れで握手を交わした。




「おお・・・」
マックスがつぶやいた。着いたようだ。
前方には壁がある。終点だ。
「いや~長旅だったな~」
「そんなにかかってないだろ」
ネイオは突っ込む。
「こら、気を引き締めろ。・・・あそこに扉がある。そこに行こう」
マックスは降り場から、数十メートルはなれたところにある扉を指差していった。

一同はその扉の前に立ち、サーフの暗証番号解読を待った。
解読され、扉が上に開く。
一同が入ったとき、扉は閉まった。
「おい、閉まっちまったぞ」
スコットが慌てたように叫んだ。
「大丈夫。内側には開閉装置がある。そこで操作をすればいいんだ」
サーフは解説する。
で、はいったのはいいが、薄暗い廊下が続いていた。
ざっと二十メートルはある。
幅は三メートルほどで広いが、やっぱり十五人、いや十七人の男が通ると狭い。
「なんなんだ・・・銃を構えろよネイオ」
「構えてる。スコットも気をつけろよ」
そんな会話をしながら二人は、最後尾を歩いていた。
廊下も終わり、ホールに出た。
かなり広いホールで、受付の窓口がある。
しかし、人の姿は無い。
「しなびてるな」
ヘブリックがつぶやいた。
大きなホールの正面には、また通路があった。
「けっこう複雑だな」
「その通りだ。ここはレベル1。下にも階があって、レベル5まであるんだ」
マックスは報告書を手に解説をする。
ネイオは納得をする。
「じゃあ、とてつもなく広いんだな」
「そうだ」
マックスは頷く。
「ひぇ~、想像していたのと違うわ・・・」
スコットが慌てて汗を拭いた。
「よし、これから二つの班に別れて行動する。まず俺の班。ルーク、G.E.、セフテン、
スパン、デックス、カーギー、エルバトフス。これが俺の班だ」
呼ばれた面々は銃をリロードしたり、気合を入れたりした。
「で、もう一つは余りの、ネイオ、スコット、キット、サーフ、ヘブリック、
エージェン、カルだ。あ、カルロスとユアンもそっちの班だ、話し相手がいたほうが気が楽だろう」
「心遣い感謝する」
カルロスの礼のあと、マックスは間を置いた。
「そしてそっちの班の班長は、ネイオに務めてもらう」
マックスはネイオを指で示した。
ネイオは驚いた表情をみせた。
「俺かい?」
「お前だ」
マックスは言い続けた。
スコットは羨ましそうな表情でネイオを見る。
ネイオは見かねて言った。
「お前は副班長な」
「いぇーい!ネイオ様最高ー!」
スコットはとんで喜んだ。




ホールでそんな事が起きている時に、レベル2にある研究室で実験の様子を眺めていたアローンは、行動を起こした。
「この実験は成功のようだ・・・あとはマニュアル通りにやるか」
アローンは自らの腰にある、一見普通の拳銃を取り出した。
そのとき、扉が開いて部下が入ってきた。
「あの、アローン管理人。この件についてですが・・・」
そこまで言ったとき、部下は上司に撃たれた。
銃から発射された弾丸が、部下の胸に撃ち込まれる。
アローンはその部下を持ち上げると、部屋を出た。

部屋を出ても、すれ違うたびに部下を殺害した。
事務室に入り込み、大量の部下を拳銃で撃ちぬいた。
しかし、アローンは躊躇もしなかった。
最初に殺した部下の死体を、事務室に近い廊下に面している部屋に投げ入れると、殺害した
者たちを一人ずつ同様のことをした。
アローンは何も感じないかのように、同じ作業を続けた。
そして最後に残った、大量の棚がある部屋に倒れている者を持ち上げた。
しかし、そのとき遺体の目がきらっと光って、アローンの肩に噛み付こうとする。
しかし、アローンは予測していたかのように遺体を放ると、別の銃で肩を撃ちぬいた。
「けっ、早いんだよ。速度が」
異体は動かなくなったが、未だにうめき声を上げている。
アローンは地下でもつながる衛星電話を取り出す。
「・・・マニュアル通りにやった。俺は脱出するぞ、あとはお前さんたちの部下を待つまでだな」
『ああ、既に着いたと連絡があった。』
相手の男は冷たくそう言い放つ。
「遭遇しないように隠れながら移動する。なんせ機能停止って言ったんだろ?」
『いったさ。そうでもしないとダメだったからな』
「とにかくその連中には、我らがウイルスの脅威を見せ付けてやるさ。」
『同感だ。また連絡してくれ』
電話を切ると、アローンは何処かへ向かっていった。



「俺達はレベル5まで降りて作業をする。ネイオたちはレベル2の事務室に管理室がある。
そこで状況を確認してくれ。よし、行くぞ」
マックスは、自らの班を引き連れて、先に下に降りていった。
残されたネイオ達もレベル2に向かうため、奥の階段を使うことにした。
「ネイオ。俺達は邪魔にならないか?」
カルロスが銃を構えながら聞いてくる。
「大丈夫。邪魔にはならないよ。それどころか、かなりの戦力になる」
「その通り。ネイオさんの言うとおりだ。この俺もそう思ってるぜ」
スコットは自分を指差しながら行った。
カルロスとユアンは、安心した表情をみせた。



レベル5・・・マックスたちが向かう階である・・・ここのある一室・・・
先ほどの実験のように、青い液体が入っている大きな水槽があった。
しかし、中にいるものだけは違った。
筋肉むき出し、しかも頑丈、大きな爪、恐ろしい顔、鋭い歯・・・とてもこの世の物とは思えない。
長さは・・・五、六メートルほどだろうか・・・それが何本かのケーブルでつながれ水槽内で浮いている。
その水槽でも、周りから絶え間なく泡が吹き出していた。
しかし、その泡がぴたりと止んだ。
途端に水槽内の怪物は目を開いた。
そしてものすごい勢いで水槽から飛び出すと、その部屋の扉に体当たりを始めた。
大きさもさることながら、なかなか俊敏である。
なんか体当たりを続けるうちに、扉は壊れた。
その怪物は巡回を始めたのである。


そんなことを知らないマックスたちはレベル5まで降りてきていた。
「さっきまでは電気があったが・・・心なしか薄暗い・・・」
薬剤担当のカーギーがつぶやいた。
「そう思うな。ここには何があるか見るだけだから」
マックスが落ち着いて言う。
しかし、何があるかといっても何も分からないのである。
そのとき、ガムを噛んでいるルークが頭上を見た。
頭上の天井は細かい網目の金網だが、それが動いた気がしたのだ。
ルークは目を凝らす。網目が細かくてその上が見えない。
最後尾に居るので、他のメンバーは先に行っている。
「ルーク!早く来い」
デックスの渋い声が響いた。
ルークはチラッとデックスの方に目をやったが、すぐに頭上の方に目を戻す。
頭上を見ながら、後退して皆の所に戻る感じで進んだ。
「ルーク、何してる」
エルバトフスとカーギーがルークの方向に向かってきた。
ルークの頭上の金網は大きく動いた。
「来るな!逃げろ!」
ルークの大きな声が響く。
エルバトフスとカーギーはこちらに向かって走ってくるルークを見つめていた。
すると、ルークがいた辺りに、天井を破って先ほどのこの世の物とは思えない怪物が降りてきた。
ルークはエルバトフスとカーギーを追い越すとすれ違いざまに
「逃げるんだ」
と一言言った。
二人はルークの声と迫ってくる怪物を見て、一目散に逃げ出した。
一方先に行っていた残りのマックスたちも気付いた。
「リッカーだ・・・」
この世の物とは思えない怪物・・・その名もリッカー。
シリーズではお馴染みの怪物・・・そして脅威である。
「皆逃げろ!」
マックスの声でメンバーたちは一目散に逃げ出した。
デックスとルーク、G.E.は途中で扉に逃げ込んだ。
その扉の前をリッカーは通過する。前方のマックスたちを追っていた。
マックスは先頭を逃げていたが、先を見て仰天した。
廊下が終わっていた。
しかし、希望はあった、廊下の最後には扉があったのだ。
マックスは大急ぎでその扉を開けた。単純な押し引きタイプだ。
扉を押してマックスは飛び込んだ。
その後に隊員たちがなだれ込む。
しかしカーギーとエルバトフスは無理だった。
遅れている二人はそこまで行くまでに、リッカーに追いつかれてしまう。
カーギーは途中にある扉に逃げ込んで、エルバトフスも追った。
薬剤の入っている重いバッグを背負っているカーギーは部屋に逃げ込んだ途端、そのバッグを投げた。
すると、何かガラス棚に当たって、バッグの中身や棚に合ったものが散乱した。
しかしカーギーは気付かずその部屋の奥に逃げ込んだ。
追ってエルバトフス入ってくる。
しかし、部屋に入り込む寸前。
エルバトフスはリッカーの前足の強靭な爪で、背中を引っ掛かれてしまった。
「うぐぅ!」
勢いで部屋に入り込んだエルバトフスは、足で扉を閉めた。
リッカーの体当たりが聞こえるが、しばらくすると諦めたようで何処かにいったようだ。
しかしエルバトフスの深い背中の傷の影響で、だんだんと痛みを増してきた。
それを見かねたカーギーは、奥から出てきて話かけた。
「大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか!」
エルバトフスはキツイ言葉を発する。
「分かった・・・仕方ない、奥に扉があって別の部屋とつながっているようだから、
そこからマックスたちのところにいけるか試してくる。そこにいてくれ」
エルバトフスはOKサインを出した。
カーギーは奥に行って、扉を開けたようだ。
するとカーギーの声が聞こえた。
「エルバトフス!そこらに俺のバッグがある。鎮痛剤が入ってる!青い液体のだ。
それを自分で注射してろ!そうすれば痛みは和らぐ!」
エルバトフスは近くに散乱している薬品に近寄った。
青い溶液・・・これか?
エルバトフスは七本ある青い溶液を見つけた。
「どれが鎮痛剤だよ・・・」
エルバトフスは数多い注射器で迷った。
二つの形状の注射器があるが、どっちとも中にあるのは青い溶液だ。
エルバフスは腹を決めた。
―全部打ち込んでやる・・・―
エルバトフスは、青い溶液が入っている注射器を、自分の体に全て打ち込んだ・・・

レベル1からレベル2までは階段で降りた。
廊下を歩く。
ネイオたちは、事務室に向かっていた。
しかし、廊下という廊下に、回りは扉だらけだ。
事務室は一向に見受けられない。
「どこにあるんだ・・・くそが!」
スコットが連射銃を振り回す。
ネイオは策をとる事にした。
「よし、スコット、そんなに何かしたいのなら誰か一緒にと見回りに行ってきてくれ」
「了解ですぜ。えーと・・・誰にしようか・・・」
スコットはメンバー達を見回す。
するとユアンが手を上げた。
「僕が行きましょう」
「決まりだな。ユアン、一緒にあっちの方に行こうぜ」
スコットはそういうと、ユアンを引き連れ、別方向の廊下に行った。
「大丈夫なのか、あれで」
カルロスがネイオに聞く。
「大丈夫、スコットは特殊部隊員なんだから。多分大丈夫。・・・多分ね」
ネイオは声を小さめにして言った。




「ふーん。十六なのか。で、日本の文化か・・・」
アフタショットはソファに腰掛け、腕を組みながら言った。
先ほどのジェシーという若者の住むアパートに上がりこんでいるのだ。
「そうです・・・って、そろそろ寝ません?もう夜中の・・・」
「寝ない。てか寝れないよ。相変わらず時差ぼけじゃい」
アフタショットはソファに深く腰掛け、テレビのリモコンを探した。
「あの、じゃあ俺寝ます。明日も早いんで」
「おやすみ。学校、遅れるなよ」
そうアフタショットが言うと、ジェシーは奥のベッドに入った。
アフタショットはテレビをつけた。
夜中なんでくだらないTVショッピングの出ている局が多いが、一つの局だけはニュースをやっていた。
見ると、先ほどデパートの従業員が殺害されたというニュースを臨時でやっている。
「けっ、ここじゃ何を言っているのかわからねぇや」
そういうと、偶然リモコンのボタンに手が触れ、音声が英語に変わった。
「お、何でだ?」
押したボタンは音声切り替え。主音声と副音声が切り替わったのだ。
運の強い男だ。
アフタショットはそれに聞き入っていた。




「何、エルバトフスがか?やばいな、そこに行って助けるぞ」
マックスがカーギーの話を聞いていった。
カーギーはマックス達のいる部屋に辿り着いたのだ。
既にルークたちも一緒にいる。
「でもリッカーがまだいるかもしれないぞ。そう簡単に動けるか?」
神経質のスパンが言う。
「エルバトフスはそこにいるんだ」
マックスは皆を引き連れ、部屋を出た。



「さ~、ここはどこでしょうね、ユアンさん」
スコットがある部屋の扉を開けながら言った。
「知らないよ」
ユアンの冷たい返事が帰って来た。
スコットは納得のいかない顔をすると部屋に入っていった。
結構広い部屋で、その部屋の壁にはもう一つ扉がある。
この部屋には主に棚が並べてある。
「同じような部屋ばっかりだな。俺はあの扉の向こうを見るから・・・お前はここにいてくれ」
スコットはユアンを指差しながら言う。
ユアンは手で「了解」と示し、銃を構えた。
スコットは慎重に扉を開けた。
「おい、部屋だ・・・何かあるかもしれないから見てくる。お前待っててくれ」
ユアンに言うと、スコットはその向こうの部屋に入っていった。
残されたユアンは部屋の巡回を始めた。
あるのは棚。しかし間隔が広いため歩きやすい。
そのとき、ユアンは微弱な声に気付いた。
「グ・・・グ・・・グ・・・」
小さい声だが、そんな声が聞こえてくる。
ユアンは辺りを見回す。
すると床に倒れている男がいた。
顔は青く、生気が感じられない、しかし唸っている。
「おい、大丈夫か?何があった・・・」
そこまで言ったときだった。ユアンは4年前の痛ましい記憶がよみがえった。
・・・まさかゾンビか?・・・
その男が瞬時に立ち上がり、ユアンの体を倒した。
ユアンは勢いで、棚と共に倒れこんだ。嫌な予感は的中した。
足の裏の数センチ先に、あの男がいる。
右足のズボンが、倒れた拍子にめくりあがっていた。
そしてそいつはユアンのその右足をつかんだ。
「ああぁ!」
ユアンの右足に噛み付いた。
「くそ・・・」
ユアンは何とかそいつは振り払おうと足をふるわせる。
そして拳銃を取り出し、そいつの頭を撃ちぬいた。
その瞬間に男は力なく落ちこぼれた。
ユアンは一気に起き上がる。
「はぁはぁはぁはぁ」
恐怖で息が上がっている。
そして自分の右足に注目した。あいつに噛まれ、出血が酷かった。
何とか立ち上がるが右足に力が入らない。
そのときスコットが戻ってきた。
「大丈夫か、ユアン!?今銃声がしたが!」
ユアンは急いで、めくれあがっているズボンを下げて傷口を隠した。
スコットはユアンの足元に倒れているものに注目した。
「あ・・・ゾンビか・・・」
いつもは騒がしいスコットが静かになる。
「大丈夫か、噛まれてないか?」
スコットはユアンに近づいてくる。
ユアンは迷った。
「ああ・・・」
ここで噛まれたというべきか・・・隠すべきか・・・。
そしてユアンは言った。
「大丈夫だ、噛まれてない」


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