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カテゴリ:経済問題
経済学の原点
毎年10月はノーベル賞の発表があり、今年は医学・生理学賞と物理学賞で二人の日本人が受賞したことは周知の通りだ。 ノーベル賞には経済学賞もあり(正確にはスウェーデン国立銀行賞)、今年の受賞はプリストン大学のアンガス・ディートン氏であった。 受賞理由は、彼の貧困と健康・福祉に関する分析への貢献ということであった。 彼は長年貧困や幸福をどのように測定するのかという指標作成の問題に関わってきた研究者であり、地味ではあるがかなり重要な経済学上の仕事をしてきている(俺自身の不勉強で彼のこういう貢献については今回の受賞で初めて知った)。 ディートンは日本語訳になっている著作『大脱出』という本も著していて、貧困問題や所得格差が発生する根本問題を考察しているスケールの大きな学者であるという印象だ。 (蛇足だが、この本のタイトルは同名の映画を意識して彼自身が付けたようだが、日本で知られている同名の映画は『大脱出』ではなく『大脱走』と訳されている。スティーブ・マックイーン主演の1963年の映画だ。ちなみに『大脱出』と訳されている映画は2014年に公開されたA.シュワルツネッガーとS.スタローンのほうだが、この映画と本書は関係ない。しかもこの作品はかなりの駄作だった(と俺は思う(^^;))。 また、彼はSNAの枠組みを考案したリチャード・ストーンという経済学者(SNAの業績で1984年にノーベル経済学賞受賞)の弟子でもある。 我々人間社会の経済活動をどのように測定するのかという問題は、貧困や所得格差の状態を把握するための最も基本的な問題であることは言うまでもない。 驚くべきことに、実は経済学の最も基本概念の一つである「資本」でさえ、きちんと測定するのは極めて難しく、正確な量に関しては多くの問題がある。 その意味でも、ディートンが格闘してきた貧困や格差の問題は、経済学の原点中の原点であると言うことができる。 ご賛同頂けるならクリックをお願いします。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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