日銀によるミニバブルの崩壊
日銀によるミニバブルの崩壊日銀の黒田総裁がデフレから脱却するために行なった今後2年間での約270兆円もの「異次元の金融緩和」は、ただのバブル政策ではないかと以前このブログでも指摘したが、やはりそのような兆候がこの2ヶ月間でハッキリしたように見受けられる。図のように、黒田総裁が異次元緩和を発表した4月4日以降、日本の株価(日経平均)は上昇を続けたが、5月22日の1万5,627円をピークに急落し、先週木曜(6月13日)には、遂に4月4日時の水準である1万2,634円をも下回るところまで落ち込んでしまった。翌金曜日には若干回復したものの、今後どうなるかは全く分からない状況になっている。数日前に安倍首相が発表した「成長戦略」第3弾?なるものの中身が、かなりしょぼかったことから、今回の下げ基調につながっているとすれば、今後の日本経済の構造改革や規制改革は進まないと見なされて、更に落ち込む可能性があるだろう。「インフレ期待」に働きかけてバブルを起こそうとした金融政策は、開始からわずか2カ月余りで弾けて振り出しに戻ってしまった。日銀が4月以来行なってきたことは、大量の円で市場をかく乱しただけだということになる。これは、もともと日本経済の規制改革を長いこと怠ってきたことの現れであり、ゼロ金利のもとで金融政策を無理に行なっても、実体経済には殆ど効果が無いということを示している重要な証拠ではないだろうか。おまけに、円を安売りしてデフレを無理やり止めても、実体経済が改善して所得が増加するようなことが無ければ何の意味も無い(というか、スタグフレーションになる危険がある)。もっとも、いわゆるアベノミクスを支持している人々は、効果が現れるのは半年から2年だと言っているので、まだ様子を見続ける必要があるのかも知れないが、株価だけではなく、国債価格が暴落するなどという最悪の事態がその間に来なければいいと思う。図に示されているように、日本の株価は、世界の株価指数、とりわけアメリカの株価(ダウ・ジョーンズ平均)に引きずられて変動しているというのが常識的な見方だと思うが、注目しなければならないのは、この間アメリカの株価は、日本ほど落ち込んではいないということだ。リーマンショックの時もそうであったが、今回も世界経済でより落ち込みの激しい先進国は日本となっている。これもまた、日本の実体経済でなんら目新しい改革が進んでいないことの結果が反映しているからではないかと感じる。すなわち、多くの先進国では、危機に直面した時には何らかの改革を行ない、キッチリと痛みを伴う作業を行ない、それがマーケットに評価されて株価が戻って来るということを繰り返している。独り日本だけが、90年代の初頭にバブルが崩壊して以降、大量の不良債権を抱え込んだ日本の金融機関の改革を怠り、あるいは遅らせ、97年から98年に日本の金融機関が続々と破綻する中でも、結局しっかりとした実体経済の改革を行ない得なかったのではないか(その典型例が、92年に顕在化したいわゆる住専の破綻処理を先送りして不良債権を肥大化させ、96年に公的資金を6,850億円投入して国民に負担を押し付け、民間金融機関にも負担を分担させて、結果として農協自体(信用農業協同組合連合会:信連)を救済したことだろう)。既得権益層をどこまでも守ろうとする日本の体質は、その後今日に至るまでなんら変わっていないのではないだろうか。そのような構造的沈滞がグローバル競争の中で見透かされれば、当然日本経済及び政治への国際的評価は下がらざるを得ないだろう。日本が行なうべき経済政策は、既にいろんな人がいろんなところで言っている通り、抜本的な規制改革、構造改革以外には無い。具体的には、農地分野、雇用規制、社会保障改革に始まり、電力・エネルギー、金融、通信・放送、医療・福祉、教育などサービス関連分野を中心に数多く存在している。その改革に伴って、税体系や公務員制度の改革、議員定数の削減なども不可欠になるだろう。政府は、余計な「成長戦略」などを行なわず、既得権益層となっている分野の規制改革と肥大化した公的部門の縮減だけを行なえばいいのだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。