夕張北高79年3年D組ホームルームHP　ブログ＆掲示板

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  ブログの一旦終了と、Facebookへの移行

  ブログの一旦終了と、Facebookへの移行既に一昔前になってしまったブログブームもだいぶ落ち着いて、最近ではFacebookだとかツイッターだとかのほうがポピュラーになった様相を呈しています。本ブログも、これまで夕張北高3年D組ホームルームとして10年以上続けて、だいたい一月に一回ペースで書いてきましたが、最近はFacebookでの不定期のつぶやきというかボヤキというか、そっちの方が頻繁になってしまったので、そろそろそちらに全面的に移行しようと思っています。Facebook上での俺のHNは以下の通りです。Ichihash Masharry https://m.facebook.com/ichihash.masharry?refsrc=https%3A%2F%2Fja-jp.facebook.com%2Fichihash.masharrypこのHNは、俺が指導してた留学生達がよく間違えて俺の名を呼んでいた中から、適当なものを選んで付けたニックネームです(^^;;。これまで長らく愛読して下さった読者の方は、宜しければFacebookのほうにお越し下さい。もしFacebookは利用しない、する予定がないという方は、お知らせ頂ければメルマガとして内容を配信いたします（なんと無料で！当たり前か(^^;;）。お手数とご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。これまでのご愛読、どうもありがとうございました。また、Facebookやその他の場でお会いできる事を楽しみにしております。敬具北高1979ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2016.03.12

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  謹賀新年

  明けましておめでとうございます。既に三が日が過ぎてしまいましたが、改めて新年のあいさつを申し上げます。昨年は、日本内外を取り巻く情勢がかつてなく不透明な状況となり、国際秩序の維持の点でも、日本経済の発展の点でも、国家財政の状況の点でも、そして大学運営の点でも、多くの国民が一層不安を抱く年だったように思います。この状況は、今年もまた継続されていくだろうことが予想されますので、厳しい時期がしばらく続くだろうと危惧しますが、何とか状況を突破できるようにしたいものだと思います。個人的にも、昨年はいろいろと大変なことが起きまして、今年は何とか変革をもたらす一年にしたいものだと思っています。皆さんにおかれまして、昨年にも増して実り多い年であることを願っております。今年もどうぞよろしくお願いします。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2016.01.03

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  政治家が触れない財政問題

  政治家が触れない財政問題巷では（というか多くのマスコミは）軽減税率のことばかりを話題にしているが、もともと税収が足りないからということで消費税を上げたにもかかわらず、その「痛税感」を緩和するためだの、低所得者を救済するためだのという綺麗事のために軽減税率を導入するというのは、実際の小売等の現場でいたずらに課税処理の事務量を複雑かつ膨大にするだけで、軽減した税額以上に社会的コストを増加させて殆ど何のメリットもないのではないかと危惧している。そんなに増税がダメならば、そもそも消費税を上げなければいいのだから、公約を撤回して消費税を据え置きにすればいいではないか。また、そんなに低所得者への援助が必要であれば、一定の給与水準以下の世帯には給付金を支給するほうが、よっぽど制度としてスッキリしている（すなわち、消費増税でしっかり課税し、給付金できちんと支出するほうが制度として優れているだろう）。大蔵省の主税局に在籍経験のある片山さつき議員によれば、現行法においては、給付金は低所得者間に格差があっても一律にしか支給できないのでそれでは不十分なのだというような説明をしていたが、その法律を変更する議論をすることは重要な政治家の仕事のはずだ。今回の軽減税率が導入されると、例えば、マクドナルドの店内でハンバーガーを食べると外食になるので軽減税率の対象とはならないが、マクドナルドの店外にテイクアウト（あるいは宅配）にすると食料品となって軽減税率の対象となるんだそうだ。こんなバカげた制度を導入して現場を混乱させて、一体何の意味があるのだろうか。そんなこともあって、俺は「軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明」というのに賛同しておいた。それにしても、もっと重要な財政の基本問題が語られていないのは、政治家（及び官僚）が意図的に触れないようにしているとしか思えないのだが、下記の図のように、日本財政の構造的問題は社会保障費の支出がずっと税収を上回っている状態だということであり、この不足分を穴埋めするために借金をし続けているということなのだ。図では青または緑のラインが税収を表しているが、紫の棒グラフは社会保障費の支出を表している。（統計の出所が違うので青と緑のラインとでは若干額が異なっているがどちらも税収を表している。）財政全体の合計金額は赤のラインだが、これと青の差額は国債（水色の棒グラフ）＋雑収入等ということを意味している。つまり、既に1999年辺りから、税収と社会保障支出は逆転した関係になっていて、15年以上も赤字の状態が続きそれを国債という借金で補てんしているということなのだ。国債という借金は、将来世代（我々の子供、孫、ひ孫等の世代）への増税と同じだ。この問題を解決するには、（1）税収を増やすように今課税する（2）社会保障費を減らす（3）その両方をやるのいずれかしかない。どの選択も相応の負担という痛みを伴うものばかりだが、少子高齢化が極端に進む日本においては避けられない道ではないか。この負担を将来世代に先送りして、自分達だけ豊かな暮らしを享受している状況は、もっとよく考えてみる必要があるだろう。この問題こそが日本財政の本丸であるはずなのに、落選を恐れる政治家はこの問題を正面から議論しようとしないかのように見える。もしそうだとしたら、彼等はもはや政治家などではなく、議員報酬とプチ権力の獲得を目指すだけのただの選挙ゴロではないか。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.12.19

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  大手携帯電話会社の詐欺的商法について

  大手携帯電話会社の詐欺的商法について先月、大手携帯電話会社のA社との契約が2年経過したということで、解約することとした（そもそもなんで2年縛りで解約を自由にさせないのかということ自体も大きな問題だと思うが、今それは置くとしよう）。解約したのは、10月3日の土曜日、買い替えに出かけた電器店からA社に電話をし、その場で解約を要請した。実は9月に解約しようかと思っていたのだが、A社のショップに電話をして尋ねると、解約月に解約しないと、通常通り使用料（1万円近くか）が発生してしまうのだと言うから10月まで待つことにしたのだ。ところが今月になって、先月分の使用料として8,245円もの請求が来て驚いた。内訳は、LTEフラット：5,700円テザリングオプション：500円手数料・諸費用：2,000円その他であった。10月は実質2日間しか使用していないのに、いくら何でもこの請求は高過ぎるので、お客様センターというところに電話をして、この無茶苦茶な契約内容と客への無案内について問い合わせた。すると、「10月1日にのみ解約すればLTEの料金はかからない」のだと言う。そんなこと初めて聞く話だし、2年前に店頭での口頭説明（もちろん形式的には契約書を前に）で言われていたとしても、普通は覚えているはずがないのではないか？電話料は日割り計算となるが、LTEフラットとテザリングオプションとやらの使用料は固定料金で、1日を逃すとその料金がかかってしまうという説明だ。それなら、殆ど通常の電話料が請求されるのと変わらず、9月に解約してもよかったということになるではないか！こういう素人の無知や聞き逃しに付け込んで、不当に金額を請求するやり方は、詐欺的商法と言わずに何というのだろう？どうにも腑に落ちないので、俺のようなクレームをつけている顧客は他にいないのかと尋ねると、「そういうお客様も時々おられます」と電話口のオペレータは正直に認めていたが、こんな商売のやり方を、名の知れた一部上場の日本の大手携帯電話会社が堂々と行っているというのは、大変な問題なのではないだろうか。日本の弁護士や消費者センターなどは、こういう独占企業のやりたい放題こそ法的に問題にすべきなのではないか？過払い金返還請求などという金融機関虐め（しかも憲法第39条に違反する法律の遡及適用の疑いさえある）などで、2割もの成功報酬を取ってなどいないで、まっとうな公正取引を行なわせて欲しい。この問題は、必ず何らかの形で訴え続けてやろうと感じたのであった。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.11.10

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  経済学の原点

  経済学の原点毎年10月はノーベル賞の発表があり、今年は医学・生理学賞と物理学賞で二人の日本人が受賞したことは周知の通りだ。ノーベル賞には経済学賞もあり（正確にはスウェーデン国立銀行賞）、今年の受賞はプリストン大学のアンガス・ディートン氏であった。受賞理由は、彼の貧困と健康・福祉に関する分析への貢献ということであった。彼は長年貧困や幸福をどのように測定するのかという指標作成の問題に関わってきた研究者であり、地味ではあるがかなり重要な経済学上の仕事をしてきている（俺自身の不勉強で彼のこういう貢献については今回の受賞で初めて知った）。ディートンは日本語訳になっている著作『大脱出』という本も著していて、貧困問題や所得格差が発生する根本問題を考察しているスケールの大きな学者であるという印象だ。（蛇足だが、この本のタイトルは同名の映画を意識して彼自身が付けたようだが、日本で知られている同名の映画は『大脱出』ではなく『大脱走』と訳されている。スティーブ・マックイーン主演の1963年の映画だ。ちなみに『大脱出』と訳されている映画は2014年に公開されたA.シュワルツネッガーとS.スタローンのほうだが、この映画と本書は関係ない。しかもこの作品はかなりの駄作だった（と俺は思う（^^;））。また、彼はSNAの枠組みを考案したリチャード・ストーンという経済学者（SNAの業績で1984年にノーベル経済学賞受賞）の弟子でもある。我々人間社会の経済活動をどのように測定するのかという問題は、貧困や所得格差の状態を把握するための最も基本的な問題であることは言うまでもない。驚くべきことに、実は経済学の最も基本概念の一つである「資本」でさえ、きちんと測定するのは極めて難しく、正確な量に関しては多くの問題がある。その意味でも、ディートンが格闘してきた貧困や格差の問題は、経済学の原点中の原点であると言うことができる。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.10.25

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  日本の政治家、裁判官、憲法学者らの重大責任について

  日本の政治家、裁判官、憲法学者らの重大責任について国会に珍しく大勢の人々が押し寄せ、安保法制の問題が注目をあびていたのは周知の通りだ。彼等には大変申し訳ないが、この騒ぎは殆ど無意味だったかのようにこの法案は衆参で採択された。これは当然のことであったと俺は思う。なぜなら、前回も書いたように、日本の安全保障問題はこの50年間全く矛盾した状況が続いてきていたのであって、今回の安保法制はその法的整備の一環に過ぎない。国会前に集結している人々がヒステリックに「戦争に巻き込まれる」と叫んでるのとは全く関係なく、日本が今回の法整備で戦争になることはまずない。むしろ、日本は既にいろんなところで邦人が誘拐、殺害されている上に、原油の輸送上様々な海賊行為に遭う危険性に直面している現実がある。海外での邦人の活動が暴力行為により危険に晒される時に、日本の自衛隊は本当に救出に向かわなくていいのか。また、隣国が勝手に領土の占拠をしたり、国境付近でエネルギー資源の掘削を実力行為に訴えた時、その行為をなんら阻止しなくて日本の安全や国土を守れるのか。今後益々グローバル化する世界の現実の中で、日本の安全保障の体制が憲法と明らかに矛盾する状態を放置することは全く望ましい事ではないのは、あまりにも明らかだ。実際問題として、形式的に憲法違反となってしまう自衛隊を解散できないならば（日本の全ての政党が自衛隊を容認している）、憲法のほうを実態に即して改正することは、かなり重要な政治家の責任であり、また司法上及び学問上、現在の不健全な法治国家としての状況を正すように指摘することが裁判官や憲法学者の役割ではないのか。国民生活を危険に晒してまで現行憲法の矛盾を死守しなければならないと（さもなくば、今すぐにでも戦争になるかのように）主張する甚だしい本末転倒は、政治家として、知識人として、重大な責任放棄である。実態に合わせて憲法を改正するぐらいの事で、日本が戦争を開始するわけがないし、まして軍事国家になるなどと考えるのは時代錯誤も甚だしい。もう少し、未来の日本人の英知を信じるべきだろう。むしろ、今国会では、このままではますます破たんが明白な社会保障費をどうするのか、財政の健全化はどのように行うのか、アベノミクスなどという愚作の結果放置されている景気低迷をどうするのか（雇用は増加しつつあるものの賃金が伸びておらず、総労働投入が伸びていないという指摘がある）、シリアなどの難民問題のような事態が万が一アジアで起きた時日本は一体どう対応するのか、これらの様々な問題のほうが、よっぽど重要で緊急な問題だったはずだ。これらの問題を脇に押しやり、国民の関心を覆い隠してしまったという意味でも、二重三重に政治家、裁判官、憲法学者（そしてマスコミ）達は罪深い。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.09.20

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  原爆許すまじ2015

  原爆許すまじ2015終戦70周年目の平和祈念式典が今日広島市で行われた。毎年、この日が来る度に、世界平和の状況と日本の現状を顧みて、その酷さに愕然とする思いがする。平和式典は、1954年から現在のような形式で毎年に行われることになったはずである。当時、マーシャル諸島にあるビキニ環礁でアメリカが繰り返し行っていた水爆実験によって、日本の第五福竜丸（船長　久保山愛吉）が被爆するという事件が発生し、それを契機に高まった原爆反対運動を背景に恒例として行われるようになったのだ。この式典自体は、平和への思いを新たにするセレモニーであるから、多くの人々が世界平和を祈念しにやってくるのはいい。だが問題は、被爆から70年経って、少しでも核兵器廃絶に世界は近付いたのだろうかということであり、あるいはまた、戦争のない安定した世界平和に近付いたのだろうかということだ。残念ながら、その答えはノーだと言わざるを得ない。特に、日本及び日本人はこの戦後70年間、この問題について一体何をやってきたのかと思う。これは、日本の政治家だけではなく、官僚、科学者・学者、学生など各界の関係者の責任だと俺は思う。本気で世界平和を実現しようとするならば、見たくない現実から目を背けるのではなく、むしろ惨い現実の問題に個別に切り込まねばならない。その問題とは、例えば以下のようなことだ。・アメリカの原爆投下は、ニュルンベルク裁判（1945）における国際軍事裁判所条例第6条に照らしても、その前のハーグ陸戦条約（1899）に照らしても、一般人民（非戦闘員）の無差別殺戮であり、明らかな戦争犯罪War Crimeであることを、関係する国際会議の場でしっかり主張し、世界に認めさせること。・「侵略戦争」の定義をハッキリさせ、日本だけではなく、アメリカ、イギリス、オランダ、ベルギー、フランス、ロシア等がパリ不戦条約（1928）以前から、植民地支配（及び奴隷貿易）を行なってきたという事実によって、全て侵略戦争として定義しうることを主張する必要があること。また19世紀後半から20世紀初頭の帝国主義時代だけではなく、それ以前の有史においても中国、トルコ、スペイン、ポルトガル、ドイツ等も他国への「侵略戦争」を繰り返してきていたという事実を認めさせること。・アメリカ、中国、ロシア等をはじめとする大国の軍備拡張の現状と核兵器をはじめとする兵器開発の現状の研究と分析。・国連をはじめとする多くの国際機関、国際政治の場において活躍する人材育成を戦略的に行うこと。また実際に国際紛争を解決するための多くの国際会議でのイニシアティブを発揮すること。・中国の尖閣諸島への圧力や挑発、また南沙沖の国境線付近での海底掘削などの具体的な国際的係争事案にどのように対応するのか。・韓国の竹島の実効支配、ロシアの北方領土の実効支配、これらの領土問題をどのように解決するのか。・北朝鮮の拉致問題及び弾道ミサイル発射問題、核兵器開発疑惑にどう対応するのか。・イスラム国で現に日本人の人質が惨殺されたことに対して、また類似する国際誘拐事件に対して、どのように対応していくのかの戦略研究をすること。ざっと挙げただけでもかなりの問題が未解決のままだ。これらの問題は、核兵器とは直接関係のないものが多いが、核兵器が絡まなくても（日本が関係する）国際紛争事案は数多く存在しているのだ。武力によらない世界平和の実現は、もちろん大いに結構なことだが、武力や暴力に訴える勢力が数多く存在している世界の現実の中で、具体的に上記のような問題を含めて、どのように世界平和を実現していくのか、またそこに貢献できる人材をどのように育成・輩出していくのか。そういう本質的な問題と正面から向き合って答えを提示するのでなければ、世界平和など決して訪れるはずがないではないか。願っていたり祈っているだけでは、決して世界の平和は訪れない。きれい事ではない、厳しい現実から逃げずに向き合うことこそが平和構築の第一歩ではないのか。そういう観点から日本の戦後70年を振り返った時、祈ったり嘆いたりすること以外できないとしたら、平和ボケも甚だしいと非難されても仕方があるまい。それほどまでに、日本の戦後の平和構築努力は幼稚なままであるというのが、おそらく事実だろう。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.08.06

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  姫岡玲治氏の死去

  姫岡玲治氏の死去今月、姫岡玲治こと青木昌彦氏が死去した。既に、著名な経済学者達が追悼のブログや記事などを発表しているので、今更俺のような者が何かを言う必要性も意味もないが、個人的には彼が元左翼だったこともあって、考えるところがあるため、少々認めておきたいと思う。青木昌彦氏といえば、近代以降の日本で唯一と言っていい国政を揺るがす大衆運動、60年安保闘争を組織・扇動し、国会突入を行なった全学連（全日本学生自治会連合）の執行部役員として、唐牛健太郎、西部邁らと共に知られた伝説的人物であった。当時彼等が結成した左翼組織は、既存の日本共産党とは異なる、自発的な個人の連合体を目指した共産主義者同盟（ブント）であった。Wikipediaによれば、「東大在学中に姫岡玲治の筆名で執筆した論文「民主主義的言辞による資本主義への忠勤－国家独占資本主義段階における改良主義批判」は、共産主義者同盟の理論的支柱となり、「姫岡国独資」と略称された。」この「国家独占資本主義」というのは、当時マルクス経済学を勉強してた学生なら必ず知っていたであろう言葉であり、俺自身が80年代に大学に入ってもまだキーワードとして時々使われていた言葉だ。これは、もともとレーニンが「帝国主義論」の中で指摘した「腐朽しつつある資本主義の形態」という資本主義段階を表わす言葉であり、後期段階の資本主義は、一部の資本家が市場を独占状態に支配し、それが国家権力と結びつくことで（国家と独占資本を併せて）国家独占資本主義になるという世界観（資本主義史観）なのだ。彼らの発展段階説によれば、この国独資が他国を侵略することで帝国主義に至るというイメージだったが、国独資そのものは終戦後の日本（帝国主義を放棄した日本）でも生き残っており、それこそが現代日本の革命における打倒対象だという理屈だった（はずだ）。ところが、周知の通り、実際の歴史はそんなに単純なものではなかった。それだけではなく、頼りにしていたはずの共産主義なり社会主義なりが、ソ連や中国での大弾圧を生むような政治体制だったと明らかになるにつれて、左翼運動は急激に弱体化した。そのような中で、青木氏はアメリカに渡り、後にノーベル経済学者を受賞するハーヴィッツのもとで数理経済学を学び（アローに師事したと思っていたがハーヴィッツだったのね）、正統派経済学者として転身を図った。但し、俺の理解では、彼のゲーム理論的な枠組みで探ろうとしていた社会像は、各社会固有の組織がなぜ、そしてどのように誕生するのかということで一貫していたのでないかといことだ。つまり、彼が若かりし頃かかわった左翼運動の中で、同じ国独資となっていた各国の資本主義がなぜそれぞれ固有の歴史を有しているのかという問題意識と基本的に変わっていなかったのではないだろうかと思っている。そこが、彼の経済学が比較制度学派と呼ばれるようになった原因なのだろうと思う。実際彼の幾つかの著作では、日本独自の組織とその意思決定の在り方、その結果生み出される社会の独自性の分析を行なっている。このような問題意識は、当時のマルクス経済学を学んだ者達の多くが共有していた問題意識ではないかという気がする。少なくとも、俺自身が経済学の領域で勉強させてもらっているのは、彼と（おそらく）共通する問題を明らかにしたいと思っているからだ。青木氏は、マルクス経済学の発展段階説のような戯画的な単線的発展論ではなく、かと言って、正統派経済学のような数理整合的な構造だけで分析もできない、もう一段複雑な社会構造そのものに肉薄しようとしていた戦後を代表する日本の知の巨人の一人だったことは間違いない。個人的にも、実は青木氏には思い出がある。俺が京大の修士学生だった80年代後半、彼は経済研究所の教授として着任されていた。彼が開講していた大学院向けの講義のシラバスには、「この授業では高度な数学的手法を前提して行なう云々かんぬん・・・」というような内容のことが書かれてあり、他の院生が俺のところに来て「青木さんって、学生に来てほしくないってことなんじゃないかなぁ？」と言って苦笑していたことを思い出す。無論、そのシラバスを読んだ俺は、恐れ多かったので彼の授業を受けることはなかった（笑）。今にして思えば、思い切って門を叩き、青木先生の経済学や社会科学に対する考えを聞いておけばよかったという気がする。彼の冥福を祈りたい。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.07.25

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  良い子はごまかしをしてはいけません～安全保障法制を巡る議論

  良い子はごまかしをしてはいけません～安全保障法制を巡る議論この間、安保法制を巡って何やら騒がしい。日本の安全保障の現状を、子供達にきちんと伝えられる大人がどれだけいるのだろうか？大人子ども劇場（舞台中央で、大人と子供が何やら話をしている。）子供「人に嘘を言ったり、事実をごまかしたりすることはいけないことだよね？」大人「そうですよ。人を欺いたり、物事をごまかすようなことをしてはいけません。」子供「日本は戦争をしないと世界に宣言しているの？」大人「そうです。日本国憲法の9条2項で、日本は軍隊も持たず、戦争もしませんと言ってます。そう社会の時間に習ったでしょ？」子供「じゃ、自衛隊というのは軍隊じゃないの？」大人「あれは自衛のための組織なので、軍隊というよりは救助部隊という感じかな。。。。」子供「でも、自衛隊って陸海空とあって、アメリカ軍と合同で戦車や機関銃で演習をやっているって習ったよ。」大人「まぁ、それは日米安保条約というのがあって、その条約で日本はアメリカから守ってもらったりしているからね。。。」子供「日米安保条約というのは、集団的自衛権の一環じゃないの？だって、何かあった時はアメリカに守ってもらうだけなくて、日本も協同して一緒に戦うんでしょ？一緒に戦うってことは、集団的自衛権の行使ってやつじゃないの？」大人「うぬぬ。。このクソガキ(^^;。。　それは一応、個別的自衛権の範囲内で運用することになっているんだよ。この辺は難しいからね。。。」子供「じゃやっぱり自衛隊って軍隊なんだよね。だって米軍と一緒に戦うんだから。」大人「戦うといっても、戦争をするわけじゃないんだ。あくまでも日本の国や日本人を守るために戦うんだよ。」子供「機関銃や戦車や飛行機を使うんだから同じじゃん！なんだかごまかしのように聞こえるなぁ。ごまかしちゃいけないってさっき言ってたのに。」大人「。。。。」子供「でも憲法で軍隊を持たないって言っているのに、自衛隊を持っているのは、世界に嘘をついていることになるんじゃないの？」大人「これは政治の問題だからね。子供の君にはまだ分からないんだよ。。。。」子供「あ！またごまかした！」大人「いいから、早く帰れよ。。。　でも、日本を守るには自衛隊は必要だからね。。。」子供「だったら憲法のほうを変えたらいいんじゃないの？戦争はしないけど、自衛隊は持ちますって。」大人「だから自衛隊は純粋な軍隊とは言えない面があるんだよ。。。」子供「それは嘘だよ！あれは軍隊じゃん。憲法では軍隊は持たないって言ってるのに、自衛隊を持ったり日米安保条約を持っているのは、明らかに嘘を世界に言っていることになるよ！」大人「あ、あのな、おじさん用事を思い出したから、またな。。。」（大人退散する）ここまでお読みの方には明らかな通り、日本の安全保障の基本問題は、この子供によって指摘し尽くされているのだ。すなわち、1950年8月10日に、GHQの都合で朝鮮戦争有事のために警察予備隊(その後の自衛隊）を結成したその時から、日本は明らかに日本国憲法に違反しているのだ。こんなことは子供でも分かることであり、この65年間にわたり日本はずっとこの問題をごまかして嘘をつき続けてきているのだ。従って、この問題の根本解決は以下の二択しかない。A:日本国憲法を変える（第9条の削除を含む）またはB:自衛隊を解散し日米安保条約を破棄する※もちろんB案の場合、日本の国土、日本人の生命及び財産をどのように守るのか、全く不明である。自分の国の憲法も実態に応じて変えられない国の、どこが民主国家と言えるのか。明らかな矛盾とごまかしを抱えたまま、65年以上にもわたって日本内外を欺き続けて解釈改憲で矛盾を拡大している政治こそ、立憲主義の形骸化であり、法の支配を無視する蛮行であると言えるだろう。この責任は、与党はもちろん、無責任な左翼小児病的主張を繰り返す野党にもある。敗戦後70年経った今、責任を持った信頼できる政治が行える国に、いい加減日本は脱皮したほうがいい。子供にさえまともに説明できないごまかしの政治はもうやめるべきだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.06.18

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  日本の図書館は原則24時間オープンにすべきではないか

  日本の図書館は原則24時間オープンにすべきではないか出張に出かけた際や休日の仕事において、一番困ることの一つが、外で長時間自習できる場所が殆ど無いということだ。（休日の場合は、無論自宅での作業が可能だが、それでも時々息が詰まったりするので、気分転換を兼ねて外で仕事をしたいと思うことも少なくない。）仕方がないので、喫茶店などでノマドワーカーの如く出かけてみることになるのだが、喫茶店でのノマドワーカーは社会的にそれほど肯定的に受けられてはいない上に、コーヒー一杯で何時間も居座っているのは店にとっても迷惑だと感じる（追加注文をしても何となく気まずい気がするし）。だいたい東京だと喫茶店自体がいつも混雑しているので、長居できる雰囲気ではないことも多い。俺も一般の客として喫茶店に行く場合、何時間もそこで仕事をしている感じの客にはあまりいい印象を抱かないのも事実だ。結果として、喫茶店を転々としてしまうなどということも珍しくない。言うまでもなく、本来なら、こういう学習の場を提供するのが公立の図書館や資料館のはずだ。だが、日本の図書館や資料館というのは極めて使いづらい。だいたい長時間の自習を目的とする者を排除していることが少なくない（そう言えば昔、ある区内図書館で自習していたら「ここは自習目的はお断りしています」と注意されたことがあったな）。開架図書等の閲覧だけが至上目的のようにされ、時にはカバンや筆記用具の持ち込みも制限され、静粛な環境の保持が強く要求される場所。国公立の大学の図書館などは、他大学等からの紹介状が無ければ部外者はそもそも入ることさえできない（おそらく京大の図書館が唯一の例外だ）。短時間の閲覧はおろか、長時間の自習などもってのほかという具合なのだ。しかし、それは本来おかしくないだろうか？公立図書館というのは、図書の閲覧をさせるだけが目的ではなく、国民の学習活動を支援することが本来の目的のはずではないのか。図書館法の第三条八項には、「社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。」とある。また、日本図書館協会の「公立図書館の任務と目標」の第1章3項には、「図書館の利用」として、「住民は，図書館の利用を通じて学習し，情報を入手し，文化的な生活を営むことができる。」とある。その住民が予備校生であれノマドワーカーであれ、図書館を利用して学習することは、本来の図書館の精神に合致するばかりでなく、むしろそれを促進・支援すべきでさえあるはずなのだ。そのような精神に基づくならば、図書館業務というのは、本来コンビニエンスストアと同じように24時間オープンにして、学習者を支援すべき体制を整えるのが筋だと感じる。24時間オープンとすると、治安だの盗難だのの懸念が表明されるだろうが、コンビニで出来ていることを図書館業務に応用すれば済むだろう。また、必要に応じて、利用者からは少しの料金を徴収するシステムを導入すればよいだろう。先月アメリカのミシガン州立大学の図書館に行って一番驚いたことは、図書館の中で飲食可能であり、更に、討論もできるような環境になっていることだ。もちろんネットの使用も自由だし。私語が厳禁なフロアーは別スペースとなっており、学習に集中したい場合には、そちらのスペースを利用すればよいシステムになっている。つまり、まさに一日中図書館にいても過ごせるような環境になっているのだ。本来、国民の学習を支援し、知的水準向上に貢献すべき公立の図書館というのはこうあるべきなのではないだろうか。大学の図書館も、原則一般国民に公開し、自習室としてであれ会議利用としてであれ、どんどん国民に利用してもらってこそ公的機関だと思う。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.05.05

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  日米大学院事情

  日米大学院事情先月末にアメリカミシガン州にあるミシガン州立大学やウエスタンミシガン大学を訪問した。アメリカの大学院生（修士学生）も、日本の大学院で博士課程に進学する可能性があるかどうかを探ることが目的だった。一般的に言って、アメリカの大学及び大学院の授業料は日本の大学の3倍から10倍ほどであると言っていい。日本の国立系大学は現在年間約60万円程度なのに対し、アメリカの大学は（州立や私立の違いがあるが）年間約150万円から400万円ほど（15,000~35,000USD）となっている。従って、費用面だけで比較すれば、日本の学位取得にかかる費用は圧倒的に安いということになる。また、現在、アメリカの大学院で博士号を取得するには、5年以上かかると言われており、10年以上かかることも珍しくないと考えられている。それに対し日本の博士課程は通常3年間なので、この点でも格段に学位取得にかかる時間コストは安いと言えるのである。この資金的、時間的コストの優位性から、日本の大学院で学位を取得することも、アメリカで学位を目指している学生達にとって決して悪い話ではないのではないかと考えたのが我々の訪問の動機だ。だが、今回訪問してみて分かった最大の違いは、その競争システムと研究助成のシステムの違いだった。アメリカの大学院では、博士課程に行く学生には、定期的な資格審査試験（通例5月と8月と聞いた）が厳格に行なわれ、その審査にパスした院生のみが奨学金を取得できるメカニズムとなっている。奨学金を取得出来れば、授業料等の学費は免除される上に、TA（教育アシスタント）及びRA（研究アシスタント）の機会が与えられて、そこでの授業補助や研究補助活動に給料が支払われるから、それによって日々の生活費は十分に賄うことができるというシステムになっている。審査にパスできなければ、再度チャレンジするか、別の大学院に移るか、博士号取得自体を諦めるかという選択となる。基本的にそのルールは単純で、成績優秀者のみが勝ち残るようにデザインされているという印象だ。これに対し、日本のシステムは、かなり複雑で分かり難い。3年の博士課程に入学する場合、まず外国人と日本人及び在留外国人で、奨学金の申請と授業料免除のやり方が異なる。日本人にとっては、奨学金と授業料免除は原則別々の申請となり、基本的に成績優秀な経済困窮者のみに与えられるという原則となっている。外国人が入学する場合、各国の日本大使館から推薦してもらうやり方、進学しようとする日本の大学から推薦してもらうやり方（それも特別枠と一般枠というのがある）、更に、進学後に応募するやり方の三通りほどある。この審査にパスすれば、文科省からの奨学金が与えられることになる（しかも、その学生の渡日及び帰国旅費も支給される）だけではなく、授業料や入学金も原則免除される。この審査（国費留学生選抜と呼んでいる）を通るならば、日々の生活費として月額14~15万円ほどの金額が支給されることになっているので、日本で生活をしていくには何とかなるはずだ。その上、入学後は（大学にもよるが）TAやRAの機会が別途用意されているので、それに採用されれば、授業補助や研究補助の手当てが支給される（但し、その額はアルバイト程度のものなので少額である）。従って、総合的に考えるならば、日本の研究助成の在り方も決して悪くはないのだが、問題はその選抜の仕方が複雑で不明快なうえに、数としては極めて少数しかこの国費留学生にパスしないということだ。アメリカの大学院でも、結果として少数の院生しか奨学金を取得できないのかも知れないが、そのルールは基本的にシンプルなので分かり易い。他方、日本の奨学金支給の在り方は、複数の経路があるにもかかわらず、それぞれの経路の採用数が少数な上にルールが必ずしも分かり易いものとはなっていない。そのようなことから、今回の訪問でも、結局説明を聞きに来てくれた院生達には、日本で学位取得を目指すには、どこかリスキーで不透明な印象を与えたのではないかと感じる。もし、本気で日本の大学をグローバル化しようとするならば、この辺りの基本的な教育研究上の支援の在り方を、もっとシンプルで能率的なものに変えて行く必要があるだろうことは間違いない。※もちろん、今回の話を実現していく大前提としては、日本の大学のレベル（特に社会科学系）を格段に引き上げる必要があるということは言うまでもないことだ。グローバルランキングで100以内の世界の諸大学に在籍する学生達が、100位に遠く及ばない日本の地方大学になど、普通は見向きもしないはずだから、問題は単に授業料の低さや奨学金の充実度という話ではないのだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.04.12

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  保守という名の保身主義

  保守という名の保身主義現在の日本に蔓延している社会的な病理は、保守という名のただの保身だ。こういう視点で日本全体を眺めてみれば、右から左から、政治家やお役所から大学まで実に多くの組織や団体が、この原理によって動いているということがよくわかる。そこに流れているのは、ただの保身であり、既得権益の盲目的保護なのだ。しかもこの病理は、政党、大学、役所、病院、協同組合、公社などの、いわゆる公的機関ほど重症だと思われる。ひとつの例は、自民党や民主党という日本の政党である。自由主義的な経済政策から社会主義的な政策までを主張する政治家が、自民党（民主党）という一つの党に在籍して人々に「政策を問う」などというのは、殆ど漫画的事態であるし、これほど国民を馬鹿にした政治的態度はないではないか。TPPの実現によって消費者利益を拡大しようとする政治家と、農協等の生産者利益を温存しようとTPPに反対するする政治家が、一つの政党に寄り合って国民に「政策」を問えるわけがないのだが、自民党あるいは民主党という大きな政党の公認を受けることで議員としての当選（という保身）だけを優先している結果、こういう出鱈目な状況が出現している。政治家にとっては、政策の実現などどうでもよく、自分の当選のことしか眼中にないということがよく表れている。また、共産党や労働団体にしても、不透明な幹部の選出方法に加え、守ろうとしているのは一部の「正規社員」という名の既得権益者のほうであり、実際に熾烈な競争にさらされている非正規労働者、非常勤、パートタイマー等々という次代の担い手になるべき労働者層ではない。（大学においては、非常勤講師は研究者としてさえ認知してもらえず、国や民間が支給する競争的資金の獲得に応募する資格さえ与えられてないという事態がある。しかも、多くの大学人はこれを問題にさえしていない。）イエとムラの掟を守ることに長けてきた日本人は、狭い組織や団体の中で、特定の権限を与えられたリーダーや幹部が、自分達の権益を守るべく行動し、裁量的行動で進もうとする。それが時に不透明性や隠蔽体質に繋がり、組織腐敗を発生させ、システムの崩壊をもたらす。グローバルな時代に、そのようなイエとムラのローカルな行動原理は全く通用しないということを、既に多くの人達は気付いているではないか。必要なのは、徹底した競争原理と透明でフェアな手続き、ルール、そして人々の流動化なのだ。この競争原理と透明化（見える化）、流動化を最も恐れる者達。それが、現在の既得権益者達であり、彼等は政党から公社から役所から大学まで、多くの組織に蔓延っていると言っていい。彼等は常に「格差の拡大」「差別の蔓延」「伝統の破壊」を許すなと訴え、国民一般が被害を被るかのような主張をするが、被害を被るのは彼等自身だけだということを熟知しているのだ。彼等の意識は、自分達の既得権益を何としても守るというただの保身でしかなく、格差の真の解消や伝統の真の保守ではない。むしろ、沈滞化し固定化されている現在の格差や差別の構造を、徹底した競争とイノベーションで破壊し、流動化をもたらすことによって彼等の既得権益分が多くの国民の利益として還元されるのだ。だが、現在の日本の政治家から大学までただの保身主義によって毒されてしまっていて、本当に必要な勇気ある改革などは全くできない状態になっている。これが今の日本社会の病理の根源だ。余談だが、この病理の症例は他にもある。・橋下徹氏のような政治家が登場し、彼の主張する改革程度にさえ多くの政治家や評論家がヒステリー反応を起こしてバッシングしている状況。・原発事故の問題が特定されたにもかかわらず、何年にもわたって原発を稼働できないでいる政治家と電力会社のルール無視の態度と、それを是認しているマスコミ報道など。これらは殆ど治癒不能だと感じる。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.03.01

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  世界の歴史は組織暴力の歴史だ

  世界の歴史は組織暴力の歴史だ「イスラム国」と称する犯罪者集団が、邦人の人質2人を殺害し、それをインターネットで配信するというショッキングな出来事が起きた。この問題は、現在の日本が抱えている幾つもの問題を投げかけている。第一に、日本は、邦人が外国で誘拐され殺害されても、何ら実効ある措置で反撃することができない国であるということ。第二に、日本は、外国の一部犯罪者集団が、誘拐及び脅迫によって活動資金を獲得している（誘拐ビジネス）という現実に無自覚であること。第三に、日本は、世界の現実が組織暴力の均衡によってかろうじて平和が保たれていることを完全に忘却している（平和ボケ）ということ。第四に、日本人は、宗教が組織暴力の原因になり得るが、他方で応報感情を抑え込むための救済のイデオロギーとなっているという複雑な成り立ちを、あまりよく理解していないように思われること。第五に、日本人は、世界の組織暴力が、常に暴力を正当化できるイデオロギーを求めていること、従って、宗教や社会主義という「正義」が容易に利用されるということを、よく理解できていないように思われること。戦後70年間、日本が奇跡的に平和を維持してこれたのは、憲法9条があったからなどではなく、世界最大の組織暴力を行使できるアメリカと日米安保条約を締結していたからであり、彼らの核の傘の下に組み込まれていたからに他ならない。残念ながらそれが現実だ。そして、このような状況に日本が置かれたのは、第二次大戦に負けた後の本当にたまたまの偶然であったと知るべきある。世界の至る所で、実は多くの暴力や犯罪が行なわれており（アメリカもヨーロッパもそれほど安全ではない）、それを防ぐために事前の諜報活動と事後的に犯罪を抑え込む組織暴力を行使しているのが「通常の国」の常識であり、「金持ちケンカせず」的に、話せば分かるとばかりに平和ボケで麻痺した感覚で近付いても、犯罪者集団に利用された挙句に最悪の結果となってしまうだけなのだ。世界平和を実現するのは、残念ながら憲法9条ではない。この絶対平和主義的思想は、何をされても降伏して受け入れようという危険思想でしかない。「降伏したとしても不服従を貫くのだ」というガンジー張りの不服従運動を、本気で国是と出来るのかどうかは、極めて怪しい。なぜなら、自分の子供や愛する人が人質となり殺害されることがあったとしても、本当に何の反撃も抵抗もしないでいられるかどうか、自分の身に置き換えて考えてみれば相当程度疑わしいと気付くからだ。もしも、本当にそのようなことが可能であるならば、軍隊はおろか、警察組織でさえも日本には不要だということに行きついてしまうだろう。これではただの無法者国家になることは明らかだ。憲法9条的な絶対平和主義が、いかに危険で達成困難な絵空事の理屈であるかがよく分かるだろう。犯罪者集団の組織暴力を、国家の組織暴力によって封じ込めるという力の均衡による現実こそが、「平和」の実態であり、歴史の真実であるというのが、グローバル社会での常識である。好むと好まざるとにかかわらず、我々はそのようなグローバル社会に生きて行かざるを得ない。そろそろ過保護に守られた状況から目を覚まして、実効ある措置の採れる独立国として、日本及び日本人は自立するべきであろう。それは、組織犯罪や暴力を未然に防ぎ、また封じ込めるという覚悟を持つことであり、いかなる組織暴力による脅しや攻撃にも対抗できる用意をするということでもある。これは無論ある種のリスクを引き受けることではあるが、無防備のまま無抵抗に国民を人質として差し出してしまう危険よりもはるかにましのなのではないか。それがグローバル社会に生きて行くということの意味であると俺は思う。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.02.08

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  日本の大学は文系こそ大改革すべきだ

  日本の大学は文系こそ大改革すべきだ以前書いたことだが、改悪された労働契約法によって、大学の非常勤講師を5年雇い止めにすると発表した早稲田大学を首都圏の大学非常勤講師組合は2年前に刑事告発した。この問題は、池田信夫氏も指摘していた。俺もFBで主張したが、これは非常勤講師の問題ではなく、大学の常勤教員の問題であり、現代に蔓延るれっきとした雇用差別なのだ。ほとんどパフォーマンスの上がっていない常勤教員を、教授なら年収約1,000万円前後で雇いながら、他方で年収約300万円程の非常勤講師を労働契約法を盾にとって実質上解雇しようとしているというのが、問題の本質だ。この常勤教員達が非常勤講師の3倍以上のパフォーマンスを上げているというのなら、割に合うコストだということになるが、おそらく実態は全く違う。労働経済学者の橘木俊詔氏による本などでは、相当酷い経済学部の実情が指摘されている。また、17年も前には、火の玉の研究で知られていた物理学者大槻義彦氏によって、とりわけ大学の文科系が問題だということが指摘されていた。これらの指摘は、日本の大学の常勤教員（とりわけ、いわゆる文系の教員）の多くは、殆ど何の業績も上げられておらず、非常勤講師の3倍以上ものパフォーマンスで働いているとはとても言えない実態を示しているのだ。俺自身が、大学に身を置く者として、また経済学者の端くれとして、そのような実態は非常によく分かる。そして、このような実情は、実のところ、俺が大学に入学した80年代から、いやおそらく戦後の新制大学に移行して以降半世紀以上にわたって、殆ど何も変わっていないのではないだろうかと思うのである。俺が大学に入学した頃の経済学の先生と言えば、一生に一度大作と言われるような優れた研究書を著せば良いというような風潮があったように思う。だがそれも、今にして思えば、その著作によって世界的な経済学者達と渡り合えるほどの鋭い問題提起や新発見があるのならまだしも、殆ど誰も読まないような日本語で小さな出版社からひっそりと自費出版のような形で出版して正当化しているというのが、圧倒的多数だったのではないだろうか。そんな著作で、マルクスだのケインズだのと語ってみたところで、世界の誰からも相手にされるわけがないのは目に見えていたはずなのだ。かたや理系では、戦後華々しくノーベル賞を受賞する研究者がコツコツと誕生し（数学の分野でもフィールズ賞を受賞する研究者が出て）、アジアでは最多の受賞者を誇る国となって、日本の科学技術の水準の高さを証明しているというのに、文系（ないしは社会科学系）は、まるで世界で相手にされていないというのが実情だ。例えば、大学の世界ランキングを総合で見れば、日本の大学はトップ50位までに東大や京大が入っている。経済学のカテゴリーだけで見ても、一応東大や京大はトップ50に食い込んでいることになっている。ところが、この指標は「評判」を取り入れたものとなっているため、研究水準の客観性が必ずも正確には反映していない可能性がある。そこで、論文の引用数等によるより客観的な指標で、社会科学系に絞ってランキングを見ると、アジアの中でさえ日本は東大しかランクインしていないことになる。いかに日本の社会科学系の水準がお話にならないかが見て取れる。にもかかわらず、大学教員数は戦後ずっと増加しているのだ。つまり、いかに文系の学部は生産性の低い学部であるかということになってしまうのだ。昨年、文科省はスーパーグローバルなどという恥ずかしい名前の付いたプロジェクトを全国の大学に呼びかけ、応募大学の中から37ほどの大学をトップ型と牽引型として選抜した。そして、トップ型は、10年後に世界ランキングのトップ100位に入ることを目指すのだという。これらの大学は、当然理系も文系も両方含まれている。だが、本気で国際競争に勝てる大学を作るには、理系よりも文系の学部における抜本改革こそが必要なのだということはもはや明瞭だ。またそれなくして、世界のトップ100など夢のまた夢だと知るべきだ。そう言えば以前、リクルート事件で有罪となったリクルート社の創業者、江副浩正氏は生前自らの潔白を主張する著書で大学改革の必要性を訴えていた。彼の主張によれば、日本で必要なのは教育改革よりも、むしろ大学改革であると。特に、実学を教えない文系学部の問題や、学部間の定員を弾力的に変更しようとしない問題点を指摘していた。彼の指摘は、まさに正しかったのだと思う。そして、日本では理系もさることながら、文系の人材育成こそが重要だと考え、リクルートのような会社を起業したのだと思われる。日本の大学では、理学部ではサイエンティストを、工学部ではエンジニアを、医学部では医者を輩出する学部として、ほぼ認知されていると言っていいが、文系では、経済学部からエコノミスト？、法学部から弁護士や検察官？、文学部から文芸評論家や作家？が輩出されているとはとても言い難い。文系の学部がジェネラリストを育てる学部だとしたら、これほど多くの学部は要らないはずなのだ。（平成26年5月現在、日本の大学は国立86校、公立86校、私立603校の合計775校だ。）日本の大学の主要問題は、文系の学部にあることとその数の多さにあることはいよいよ明白であり、その抜本改革こそが日本の大学の国際化の第一歩なのだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.01.12

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  Happy New Year, 2015!

  明けましておめでとうございます。昨年は（も）、酷い経済政策とまずい政治と様々な偽りによって、多くの国民が翻弄されました。今年は、皆さんにとって実り多き年であることを願っています。I wish you and your loved ones health, happiness, peace and prosperity in the new year!ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2015.01.05

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  不必要な国政選挙とまともな政党・政治家の不在

  不必要な国政選挙とまともな政党・政治家の不在多くの国民が感じているように、今回の選挙は必要なものとは思われない。もともと三党合意で消費税の延期があり得ることを取り決めていて、それに基づいて消費税増税を延期したにも関わらず、安倍首相は突然解散を強行したのだ。この選挙には、700億円がかかるという。そんな金があるなら、もっとまともなことに使えよ、と誰もが感じていることだろう。アベノミクスは、このブログでもさんざん言ってきたが、株価が上昇した以外、景気は回復しているとは言えないし、円安によってエネルギー価格は上がるし、彼らが叫んでいたデフレ脱却だのという物価上昇は起きていないしで、ハッキリ言って失敗ではないのか？だが、世論調査では、自民圧勝で300議席を超える勢いの予想だという。おそらく自民党が勝つのだろう。これは、自民党に対する信頼というよりも、野党及び日本政治に対する不信ということなのだろうと俺は思う。要するに、国民は、もう今の日本の政治や政治家にドッチラケていて、まともに相手をする気が起きないのではないのか。結局、投票率の高い老人票、地方票がせっせと投票所に行き、昔からのよしみで自民党を応援し、他方、若者や無党派層は、政治に対する無力感や虚脱感から棄権するという構造なのだろう。次の選挙も、高い投票率は望めないかも知れない。それにしても、今の日本の政党や政治家にまともな勢力がいないというのは、驚くべきことである。自民党が余裕を見せて、無茶苦茶なことをやってもいいと驕ってしまうのも当然なのかもしれない。正論を主張する政治家が殆ど見当たらないからだ。正論とは、以下の諸点だ。・消費税を延期するなら、社会保障費は減額する方向で調整する。・社会保障費を維持・改革するなら、消費税を引き上げる（おそらく現状維持なら10％以上）・TPPを推進し、消費者の利益拡大を図る。・雇用の流動化を促進し、正規社員と非正規社員の身分制を根絶する。・規制産業の大幅緩和で景気を回復する。財政政策は当面行わない。・集団的自衛権は行使する。・原子力発電所は再稼働する。・国会議員及び地方議員、公務員数は大幅削減する。これらの政策は、今の政治家は殆ど主張しない。なぜなら、誰も自分を支持してくれないと感じるからだ。政治家は、自分が当選するかどうかという行動基準で動き、国民は、自分達に我慢や痛みを強いる政治家を応援しようとはしない。これが、大衆民主主義の大きな弱点だ。誰も、国の危機的な状況を突破するために、きつさを正面からとらえようとはしなくなっている。日本政治はものの見事にこの低位均衡状態にはまり込み、かなり病状は末期的だと感じる。追記：予想通りの低投票率（52.66％）の中で行なわれた衆議院選挙だが、自公政権が大騒ぎした割には、公示前の326議席とほぼ同じ325議席という結果で、その内訳は、自民党が290（公示前295）、公明党が35（公示前31）という内容だった。結局、低投票率の中で一番得をしたのは組織率が高い共産党で、21議席（公示前8）だったというわけだが、野党全体でも公示前の153とほぼ同じ150議席だったので、結果は野党内の勢力図が若干変更になったというだけのことだ。要するに、次世代や生活の政党支持者が、民主と共産に分かれて票を与えたというわけだ。これが700億円とも言われる国費を使用して行った選挙の結果だったのだ。議席増となった民主と共産には申し訳ないが、やはり必要があった選挙だったとは思われない。それにしても、今回の選挙は、前回の戦後最低の投票率59.32％を更に下回る52.66%だという。有権者の約半分しか投票していない中での「絶対安定多数の勝利」というのは、せいぜい有権者の4分の1程度の支持で国会の３分の2もの議席を占められる可能性があるということを意味している。こういう選挙制度こそファシズムに繋がる危険性があることに、我々は注意を払うべきではないだろうか。以前書いたことだが、ある一定の投票率や得票率が得られない選挙や候補者（例えば7割を切るような投票率や3割を切るような得票率）は、国民の信任を得られていないと見なして無効とするなどの制度改革が必要なのかも知れない。更にまた、今回もいわゆる「一票の格差」問題が議論になることは間違いなく、ますます選挙自体の有効性や正当性が問われることになるだろう。これらの問題に真摯に向き合えなければ、国会議員はまたしても自分達を選出する制度を変えられないままとなり、国民の政治不信は一層悪化することだろう。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.12.07

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  市場原理と共同体について

  市場原理と共同体についてもう既に多くの日本人は関心も向けていないだろうが、今月25日は、作家三島由紀夫（本名　平岡公威）が自衛隊の市ヶ谷駐屯地において自決してから44周忌に当たる日だ。三島由紀夫と言えば、ノーベル文学賞を受賞した川端康成と同様に、日本文化の固有性に拘ってその価値を追求してきた作家であったと言えるが、その価値追求の仕方があまりに性急で、民族主義的だったためか、その思想や文学性の行き詰まりの果てなのか、彼は自らが組織していた民兵組織「楯の会」と共に自衛隊の駐屯地に乱入し、クーデターを呼びかけた後に割腹自殺を遂げてしまった。当時、まだ小学生だった俺は、テレビに映し出された彼の最後の演説姿をおぼろげながら覚えていたような気もするが、その事件の意味はもちろん全く分からないままだった。その後、彼の思想的閉塞感や奇異性のようなものを知ったのは、大学生になってからだった。ジャーナリストの本多勝一氏の『殺される側の論理』（1982）に所収されてる批評が、三島の「自滅」を2年も前に予言していたことを、図書館で読んで驚いたのだ。今でもその時の驚きをよく覚えている。彼は三島の言動を、定向進化（orthogenesis）と名付けて批評した。定向進化とは、生物の進化があたかもある一定方向に向かって進化し、進化の結果が適応の度を越してしまっても、その種が絶滅するまで進化の方向を止められないという仮説によって、多くの絶滅種や不必要な表現型（マンモスなどに見られた食物獲得には不要としか思えない大きな牙など）を説明しようとした説だ。これは、現代生物学においては、新ラマルク説として殆ど否定的に扱われている説らしいが、本多は当時の三島の突出した言動を、「奇矯だ」としてそのように批評していた。実際、彼は三島の死後、この評論の追記にその死を「マンガ的だった」と評している。彼の死がマンガ的だったかどうかはともかく、俺が高校生の頃に流行したパンクロックのバンド、ストラングラーズの歌でも、死の象徴として彼のことを「ユック」と呼んで歌っていたぐらいだから、当時の文化人や知識人と呼ばれる人々に大きな衝撃を与えたのは事実であったのだろう。ただ、そのような最期は、彼自身が自覚していたようにまさに犬死であった。なぜなら、彼の行動や言動に触発されての運動や行動は当時の日本では何も起きなかったからだ。さて、前置きが長くなってしまったが、三島由紀夫は一体何をそれほどまでに生き急いだのだろう。彼の最後の演説は、自衛隊が違憲とされている日本国憲法を改憲するべくクーデターを起こすべきだとの呼びかけだったが、全体的な思想は、経済的繁栄の陰で滅んで行ってしまう（と彼が信じていた）「日本文化」を保守したいということだったのだろう（それも、相対主義的な価値規範ではなく、絶対的な価値基準だったようだ）。彼のインタビューがYoutubeなどにも出ているが、それを聞くと彼は、小泉信三（福沢諭吉の弟子だった小泉信吉の息子）などの経済学者を大逆臣だと口汚く罵っている。しかしながら、彼を始めとする多くの保守主義や右翼（そして、最近は左翼も）が敵視するのは、今日に至るまで何も変わっていないのではないかという気がする。彼等に共通するのは市場原理主義に対する憎悪という点だ。すなわち、市場原理主義こそが、所得の格差をもたらし、乱開発をもたらし、日本文化を破壊し、自分のことしか考えない利己主義者を生み、何もかもを混乱させてしまう元凶だという批判・非難だ。このような批判は、極めてよく聞く定型句的な批判なわけだが、実は市場原理と共同体論を混同した典型的な誤謬であると言ってよい。なぜなら、市場原理とは、社会に存在する資源や要素を可能な限り能率的に配分し、生産性を高めるためのメカニズムにほかならず、そこで生活している人や組織の生き方や振る舞い方、関係構築の在り方、つまり共同体の在り方を決定するものではないからだ。だが、市場原理は当然我々の生活と切り離したところで存在するものではないため、あたかも我々の共同体の在り方まで束縛し、文化的な価値を破壊するかのような錯覚を持つ場合があり得るのだと思われる。共同体の在り方や人々の行動は、市場原理に影響を与えることが一般的だからだ。だが、言ってみれば、市場原理とはゲゼルシャフト（機能体）であってゲマインシャフト（共同体）ではないのだ。両者は、無論お互いに影響し合うであろうが、共同体的な在り方、従って人々の規範、文化、慣習、振る舞い等々の総体は、市場原理を前提としながら、それとは独立して構築されることが可能だし、またそれが必要なのである。（各国が同じ市場原理を利用しながらも、全く異なる文化圏として成立するのは、市場原理と共同体は本来別のものだからなのだ。）だが、三島由紀夫を典型例とする保守主義や右翼（だけではなく、今日では左翼も）は、市場原理主義を批判する。上述のインタビューの通り、三島は小泉信三を逆臣として極めて強く敵視していた。なぜか？それは、明治期以降、圧倒的な農業国であった日本が急速に近代化を果たし、工業化・サービス化を達成する中で、人々の生活様式も大幅に変わってしまったからだ。だから、その変化をもたらした経済主義、市場原理主義が悪いというわけだ。特に三島や右翼は、（当時まだ元気だった左翼勢力や、彼らの主張する戦争責任論とも相まって）天皇を中心とする国家まで破壊されてしまうのではないかと危惧していたのだと思われる。彼等の理念から言えば、農業国から離脱して工業国として経済成長することは、農事の祭事王である天皇（それは五穀豊穣の祈祷王）の存在を不要にしてしまうだろうと論理必然的に感じたはずだからだ。だが、明治以降だけではなく、戦後70年近く経って高度経済成長を達成した後も、天皇制を廃止しようと思っている日本国民は多数ではないだろう（政党では共産党ぐらいなものだろうし）。すなわち、天皇はこれまでの歴史と同様に、あらゆる時代や社会において、日本社会の象徴として存続していくだろうと思われる。それだけではない。日本の伝統的な文化、例えば、寿司やおにぎり、各種お祭り、盆の墓参り、お正月や初詣、着物や浴衣、お茶や生け花等々はなくなるどころか、日本社会の中で当たり前のように定着しているではないか。それどころか、グローバル時代においては、日本ブランドとして新たな付加価値を生み出す可能性さえある。従って、これまでも今後も経済成長や市場原理によって、これらのものが無くなってしまうなどということはあり得ないだろう。すなわち、共同体的な在り方は、市場原理と相互に影響し合うだろうが、もともと別物なのだ。今の日本で問題となっているのは、少子高齢化で田舎の地域が人口減少で自治体を維持できなくなっているという問題であって、市場原理とは基本的に関係ない。それどころか、無理やり地方へのばら撒き財政によって赤字を垂れ流しながら地方を維持している現状ではないか。つまり、市場原理を無視した財政政策のほうこそが問題なのだ。経済成長に伴い、その変化に相応しい共同体をいかにして構築するかが、実は問題の本質であるのに、古い慣習のままの共同体を無理やり残すことこそがあたかも保守であったり、良きことであるという詭弁に問題がすり替えられているのだ。三島由紀夫や右翼の危機感とは異なり、日本の伝統や文化は、市場原理と共存しながら、各時代に相応しい形で変化し生き抜いていくものなのだ。各国の文化とは、思っている以上に頑強なものであるだろう（経済学的には比較優位の原理という古くから知られた原理で説明がつく）。よって必要なことは、新しい時代に合わせた共同体の在り方を、どのように我々が模索し構築していくかということのほうなのだ。共同体は、それ自身として再建されなければならない。なぜなら、市場原理そのものは、それを教えてはくれないからだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.11.09

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  Myanmar訪問

  Myanmar訪問10月7日から1週間ほど、ミャンマーのインレー湖（Inle lake）というところを訪れた。今回の訪問は、学生が行っている研究調査のお手伝いを兼ねて、地元の人達の実際の暮らしぶりを見てくることが目的であった。俺達の世代では、ミャンマーという国は、むしろビルマとして知られている。「ビルマの竪琴」は、映画ではなく竹山道雄の童話で読んでいた人がいただろうし、映画も中井貴一のほうのリメイク版（1985年版）ではなく、白黒映画のほう（1956年版）で見た者も多かったのではないか。俺も白黒版を見たのだが、既にその悲しい物語の内容は覚えていない^^；。現在のミャンマーは、人口5,141万人で、国土面積が日本の約1.8倍という広大な土地を持った国だ。主な産業は農業（米）で、宗教も約90%が仏教なので、日本人にも馴染みやすい気がする。歴史的には、1988年に軍政が敷かれ国名をビルマからミャンマーに変更した。当時の国民民主連盟（NLD)の党首アウン・サン・スー・チー女史などを長い間自宅軟禁するなど、政治的に非民主的な状況が続いたが、2010年以降、ス－・チー氏の軟禁解除、総選挙も行われ、現在はテイン・セイン大統領のもとで共和制をとっている。また、南北に長い国土からは、ルビーやサファイアなどの宝石が産出され、また石油、チーク材などの天然資源も豊富である。そのためもあり、日本をはじめ、中国、韓国などからも直接投資が急増しており、経済成長率も7%以上と高い。但し、その一人当たりGDPは約900ドルに過ぎず、貧困国に指定されている水準である。民族的には、ビルマ族が7割近くを占めるが、シャン族やカチン族などの少数民族が多い多民族国家である。今回訪れたインレー湖という場所は、ミャンマーの中央部の首都ネピドーから北東約100km程に位置する琵琶湖より小さ目の湖で、ミャンマーの中でも重要な観光地となっている所だ。地元民は漁業及び水耕栽培のトマトで収入を得ながら、他方で湖と湖畔にたたずむパゴダを訪れる国内外の観光客を相手に商売を営んでいるという様相だった。この辺は、民族的にはインダー族の人々が多く暮らしているが、首長族として知られるパダウン族も、機織り風景などを見せる観光名所となっていた。今回の調査の目的は、このインレー湖の水質調査に関するものだった。湖を観光資源として利用するようになってからなのか、この湖の水質は着実に悪化しているらしい。南北に長い湖の特に南側の水質汚染が激しいという。このことは、我々が訪れた地元シャン州（Shan State）ニヤンシェ区(Nyaung Shwe Township）にある環境保護・森林省及び自然野性保護部の役人達も問題視していた。彼等は、1998年以来、地元のタウンジー(Taunggyi）大学とも組んで、12から15ほどの定点で3ヶ月毎の水の流出入調査をしているようだった。彼等のミッションとしては、インレー湖を野性保護区（ASEAN遺産公園）として保全しながら、エコツーリズムにも活かしていくことである。また、インレー湖の水は水力発電用の資源としても利用されているらしく、その意味でも湖水は重要な水資源だ。彼等の説明では、インレー湖の周りには大きく5つの地域にインダー族をはじめ8つの民族が暮らしているらしく、その95%以上が仏教徒だ。インレー湖の水は、昔はそのまま飲み水としても利用できたようだが、比較的水質がきれいだとされる湖北のエリアでさえ今は水質は悪化しているとのことで、そのため、湖水ではなく地下水をタンクに一旦貯めてから浄化装置でそれを飲み水や料理に利用している。近年は、日本のNPOも含めて5つほどのグループが浄化水の供給に関する投資を行なっていたり、ヤンゴン大学が湖の総合的な分析を計画しているらしい。そういうわけで、インレー湖の水質をきれいに保つことは、彼等にとっても極めて重要な問題だ。今回我々が訪れた場所は中東部だったためもあってか、ボートで移動する途中の湖中央部の水は確かに綺麗に見えたが、パゴダのある観光地付近の水は赤土が溶けているように赤茶色だった。さて、我々は湖水に浮かぶこの地域の各家庭を訪れて、「インレー湖の水質を改善できるとしたら、あなた（あなたの家庭）は幾らぐらいまで支払えますか？」というヒアリングを行なってきた。しかも、その支払いが、政府の税金として支払う場合と、パゴダ等の寺院（monastery）に寄付で払う場合とで、どの程度の違いが出るのかということも見ようという狙いがあった。本格的なデータ収集と分析はこれからなので、今はまだ何とも言えないが、幾つかの家庭を回ってみての感覚は、支払額に各家庭で大きな差があるという感じだ。これは、この地区の人々に既に大きな所得格差が生じているためであると思われる。それにしても驚いたのは、彼等は非常によくパゴダや寺院を訪れて寄付行為を行なっており、その金額はなんと年間所得の2割ほどにもなるという。日本ではおよそ考えられないほど、僧侶や寺院に対しての信頼は厚い。その一つの理由は、寺院が集まった寄付金を低所得者層に再分配しているかららしい。本来、そのような所得再分配の仕事は政府及び公的機関の役回りのはずなのだが、ミャンマーでは（多くの途上国でも）寺院が公的機関の役割を担っているということなのだろう。環境保全を行ないながら経済発展を進めようとするインレー湖の人々。なんとか貧困から脱却することと、美しい自然景観を持続していくことと、彼等にとってはどちらも極めて焦眉の課題なのだと改めて実感した。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.10.26

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  日本左翼の致命的弱点

  日本左翼の致命的弱点朝日新聞の従軍慰安婦誤報問題で、少しずつ世論が騒がしくなっているようだ（産経、読売）。この問題に長い間コミットしてきた日本のいわゆる左翼陣営、共産党、社民党、多くの市民運動団体は、責任ある説明をするべきだ。日本左翼の決定的に駄目な点は、今や虚偽とデマと誤魔化しと開き直りによってしか運動を支えられなくなってしまっていると思われる点だろう。これは、殆ど反社会的でさえあると言われるほどの問題だと当事者達は気付くべきだ。そんな犯罪にも似た行為までして、専従運動員達の給与を確保しなければならないのか？一般国民は、左翼陣営の言説など、もはや誰も聞かないのではないか？自分たちの「商品価値」が、とっくに無くなっていることに気付いてない（ふりをしている？）のは痛々しい。もう少し、市場原理を素直に認めたほうがいい。（何度もここに書いてきたように、マイノリティや弱者の存在を本当に守るのは、左翼政党や政権などではなく、おそらく市場原理のほうなのだ。）従軍慰安婦に関する左翼政党の問題を少し具体的に見てみると、共産党の紙智子氏と社民党の辻元清美氏が一昨年、昨年と国会で具体的に質問をしている。また、共産党は志位委員長による長ーい報告まで行っている。共産党によれば、各国の元「慰安婦」は、日本政府に謝罪と賠償を求めてこれまで10件の裁判を過去に行なっており、この全てで敗訴している（損害賠償請求は認られなかった）とのこと。ただ、１０件の裁判のうち８件の裁判で、元「慰安婦」たちの被害の実態を詳しく事実認定したそうだ。だが、この志位報告では、それがどのような被害の実態であったのかは具体的に述べられていない。結局、具体的に指摘しているように思われる「強制連行」の証拠というのは、事実上次の2点しかない。（1）インドネシアでのオランダ人監禁事件（スマラン事件）（2）中国桂林での兵士による売淫行為の強要このどちらもが、東京裁判で裁かれた事件だが、（1）のスマラン事件は、白馬事件としても知られた事件で、当事者の兵士達が軍規違反、有罪として東京裁判で裁かれている。歴史家の秦郁彦氏によれば、この事件の概略はこうだ。1944年当時、戦時下のインドネシアでは、戦況の悪化から日本の陸軍省が「軍抑留者取扱規定」（1943）に基づき捕虜収容所に併設された軍抑留所に敵国人全員を移すよう指示した。抑留所を管理していた第16軍軍政監部は、強制しないこと、自由意思で応募したことを示す本人のサイン付き同意書を取るよう指示していたが、それに違反した出先部隊がスマラン慰安所事件（白馬事件）という強制売春事件を起こした。第16軍司令部からは、当時すぐにスマラン慰安所の閉鎖命令が出されており、2か月程度の営業であったらしい。この事件は、女性達の告発により東京裁判の戦後BC級法廷で1948年に裁かれ（65人を強制売春の犠牲者と判定）、死刑を含む10数人の有罪者を出した。要するに、この事件は、軍規違反をした兵士を含む10数人が起こした事件であり、実際裁判でも有罪とされた事件だったのだ（但し、死刑となった岡田慶治少佐の獄中手記には、告訴した慰安婦達の嘘による冤罪だという趣旨の記録がある）。この事件をもって、日本軍の組織ぐるみの慰安婦強制連行だという主張にはやはり無理があるのではないだろうか。なぜなら、当時の軍はむしろ強制しないことを指示しており、裁かれた兵達は軍規違反の可能性が高かったからだ。次の（2）の中国桂林の事例については、共産党は次のように言う。「東京裁判の裁判文書の中には、中国、インドネシア、ベトナムという３カ国での強制連行を示す証拠文書が含まれています。とりわけ桂林については、判決そのものにつぎのような記述があります。　『桂林を占領している間、日本軍はゴーカンと掠奪のようなあらゆる種類の残虐行為を犯した。工場を設立するという口実で、彼らは女工を募集した。こうして募集された婦女子に、日本軍隊のために醜業を強制した』。」だが、具体的にどのように軍隊が彼女達を強制したのかの記述は無い。誰が募集し、どのように強制したのかも不明のままだ。日本軍なのかも知れないが、軍規違反の個別の兵士なのかも知れない。あるいは、仲介業者や慰安所の経営者なのかも知れない。共産党が言うこの記述だけをもって、日本軍が強制したと断定するのはやはり難しいと考えるのが自然だろう。また、ベトナムについては具体的な指摘はなされていないし、インドネシアというのは、上記（1）のスマラン事件を指すと思われる。この中国の桂林の事件というのは、どんな事件なのかよく分からないが、強制連行の資料として主張している関東学院大学の林博史氏がアップしたものにはこうある。「【資料７】（PD２２２０/EX３５３）中国桂林軍事委員会行政院戦犯罪証拠調査小隊「桂林市民控訴　其の一」一九四六年五月二七日　敵軍の我が桂林を侵略せしは一年間にして其の間姦淫、捕虜、略奪等為ささる処無く長縄大尉なる日本福岡県人は敵復興支部長の職を担当し、人と為り陰険悪毒にして桂林市に有る偽新聞社並びに文化機関をして自己の支配下に置き其等を我が民衆の懐柔並びに奴隷化の中心機関とし且又偽組織人員を利用し工場の設立を宣伝し四方より女工を招致し、麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した。長縄の秘書即ち鈴木華□（日本女性）は彼の行為を幇助し、更に甚しきは此の敵が楽群路に在った李子園に憲兵隊を設立し、（以下略）」これが共産党の主張する事例なのだとしたら、この事件は、ここで指摘されている長縄大尉とその秘書鈴木らによる個別犯罪としてしか読めないだろう。これも軍の組織的な強制連行の証拠とはとても主張できないのではないだろうか？以上のように、共産党や社民党が主張する「軍の慰安婦強制連行」の主張というのは、随分と無理のある（ほとんど無茶苦茶な）主張だと思われれる。彼等が出してくる論点が噛み合っていない原因は、・軍ないし国の組織的な連行や拉致・監禁があったかどうかが争点なのに、・個別の兵士達による連行や拉致・監禁があったかどうかに論点がすり替えられているからなのだ。しかも、実際には上記の通り軍規違反で慰安所の閉鎖命令が出されていたり、既に裁判で罰せられている。また、事実の問題として、・当時から拉致、ゴーカンは犯罪として認識されており、日本軍もそれが戦地で起きることを問題にしていたこと、・管理の行き届かない慰安所やゴーカン等による性病の蔓延も、同様に軍が問題にしていたことである。もともと、軍の管理で戦地に慰安所を開設しようとしていたのは、このような背景があったからなのだ。従って、そこでは拉致や強制連行のようなことをして、問題を起こす原理的な誘因が存在しない。にもかかわらず、左翼陣営がいまだに強制連行の証拠はあったと主張したり、「強制性が存在した」などという一部学者（中央大学吉見義明氏や関東学院大学林博史氏など）のレトリックによる論点逸らしなどは、悪質な嘘、デマ、誤魔化し、開き直りの類にしか映らない。もっとも最近では、お騒がせの嘘は、朝日新聞や政治家・運動家達に限った話ではなく、どこかの自称作曲家や、学位の疑わしい女性研究者など、一般国民？のレベルまで浸透してきているようだから困ったものだ。こうして、確実に日本社会の劣化が進行しているということに我々は危機意識を持つ必要があると（周回遅れの元マルクスボーイだった俺は^^;）思う。※上記「ゴーカン」という言葉は、漢字にすると、このサイトでは公序良俗に反する言葉としてアップ禁止となっているようなのでカタカナにしました。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.09.02

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  もう一つの許すまじ

  もう一つの許すまじ～朝日新聞は謝罪の上、解散せよ！？～朝日新聞が従軍慰安婦の問題について誤報を認めた。驚くべきことに、裏も取れないいい加減な取材で大報道を行ない、日韓の二国間関係を混乱させ、20年以上にもわたってその誤報を認めてこなかったわけだ。このような大罪を犯しておいて、何ら社会的な制裁を受けないで許されるとは到底思えない。（早稲田大学の学位審査問題と同様、俺ひとりでも怒りの抗議を断じてしておきたい！^^;）真実のみを報道し、権力の暴走を食い止め、一般人や弱者の立場を守るはずの（建前としては）報道機関が、虚偽に基づく報道を延々と続け、虚偽であることが分かってもなお長年にわたって訂正も謝罪もせずに、むしろ真実を隠ぺいするかのようにも思える態度に終始していたのは、戦前の戦争賛美一辺倒だった態度と全く同じではないのか？朝日新聞は、一刻も早く報道機関としての看板を下ろし解散すべきだ。（最近この手の主張が多いな^^;）いわゆる従軍慰安婦を巡る問題は、「国による従軍慰安婦の強制連行などという事実は無かった」これがこの問題の真実であり、既に20年以上も前から知られた話だった。漫画家の小林よしのり氏の貢献も大きい。そして、慰安婦（という名の売春婦）が当時いたことや、国が慰安所の管理に関与していたことや、騙しや人身売買の手口で慰安婦を取引していた一般人や民間業者がいたということは、当初から分かり切っていたことだったのだ。（言うまでもなく、民間人の罪は国の賠償問題とは別だ。）この問題を巡る幾つかの単純な事実をまとめておけば以下の通りだ。・当時、日本での売春は合法だった（1900年発布の娼妓取締規則）。・当時、韓国は日本に併合されていた（1910年韓国併合条約）。・性病等の蔓延を防ぐために、日本軍は慰安所の設置を管理していた。・当時の慰安婦は公募されており、また、給料は平均的労働者の水準の10倍以上だった。・戦後、1965年締結の「日韓基本条約」および「日韓請求権並びに経済協力協定」で日韓の戦時中の補償問題は解決済みとなった。ここで言う「日韓請求権並びに経済協力協定」とは、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」（1965）のことで、1965年の日韓基本条約締結時の付随協約だ。この協定に基づき、日本は、韓国と正式な国交を開始すると同時に、韓国に対して合計5億ドル（無償3億ドル、有償2億ドル）及び民間融資3億ドルの経済協力支援を行った（当時の韓国の国家予算は3.5億ドル程度だったという）。従って、現在慰安婦を巡る問題で、国を挙げてまで議論するような争点はなくなっている。にもかかわらず、慰安婦の問題を何度も蒸し返し、あたかも日本がとんでもない犯罪を犯してきたかのように朝日新聞は報道を続けてきた。また、80年代の朝日の誤報以来、そして、93年の河野談話による日本政府の「謝罪」以来、たびたび公的発言として韓国自身も従軍慰安婦問題を口にするようになって今日に至っている。（しかも、95年の村山内閣では、アジア女性基金なるものを設立して、慰安婦への「償い金」まで支払うという事態にまでなった。）このようにこじれた日韓関係の責任の一端（というか主要部分？）を、朝日新聞は間違いなく担っている。朝日新聞は、まともな報道機関たろうとするなら、しっかりとこの不正義の責任を取るべきだ。また、「働く女性の人権」を主張するなら、現在風俗産業で働いている女性達の労働環境についてもっと取材して報道しないのは何故なのか？現代でも、日本ではソープ嬢やデリヘル嬢などの職業？（個室浴場業、リラクゼーション業）があるが、彼女達も労働者である以上、本来労働基準をしっかりと満たす必要があるのは当たり前のことだ。しかも彼女たちは「肉体労働」であるのだから、健康管理、けがや事故に十分注意を払うよう、雇用主側は（自営の場合は自分が）監督する責任がある。実際、彼女達は定期的に健康診断等を行ない、妙な風評が立たないよう「品質管理」には細心の注意を払っているはずなのだ。この種の業種は相当に激戦の競争的商売であるからだ。実際のところ、売春も含めた行為を行なう特殊な女性労働（時には男性労働も？）は本来公的に管理し、公務員扱いとして定期健診を行って性病等に対処すべきなのかも知れないとさえ思う。なぜなら、性風俗関連の商売は禁止したとしても、地下に潜伏化してしまうだけであり、一旦地下に潜れば万が一事故や病気が起きても、その発見や対処が大幅に遅れるということが起こり得るからである。日本の場合、多くの風俗店は保健所等が衛生管理の届け出を義務付けているはずだが、デリヘルのように決まった店舗もなく、連絡方法が携帯電話の番号だけで、しかもそれもいつでも変更されてしまうような状態の営業では、労働する側も利用する側も実は危険な状況に晒されていると思われる。働く女性の人権を守りたいと言うのなら、彼女達の労働環境をこそ取材し報道すべきなのだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.08.09

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  【ひとり怒りの緊急声明！？】早稲田大学は大学の看板を下ろして解体すべきだ！

  【ひとり怒りの緊急声明！？】早稲田大学は大学の看板を下ろして解体すべきだ！～学問研究の存在を脅かしているのは一体誰なのか！？～理研の小保方氏の博士論文の内容と、彼女の博士号授与の正当性に関する調査報告書が、殆ど匿名の調査委員によるという異例の？形で公表されている。そこでは、「仮に本研究科の博士論文の審査体制及び博士学位授与の審査体制に重大な欠陥・不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかったといえる。」と断じている。つまり、いい加減な審査体制でいい加減な審査をやったため、本来不合格な水準のものを合格にしてしまったと言っているわけだ。もしこれが事実なら、指導教員達は教育者としてその責任を取らなければいけない。そして、「本件博士論文には、著作権侵害行為、創作者誤認惹起行為、意味不明な記載、論旨が不明瞭な記載、（中略）、及び論文の形式上の不備と多くの問題箇所が認められた。そして、本来であれば、これらの問題箇所を含む本件博士論文が博士論文審査において合格に値しないこと、本件博士論文の作成者である小保方氏が博士学位を授与されるべき人物に値しない」とも言っている。つまり、小保方氏は犯罪的行為を含むやり方で論文を作っているので、博士の学位など与えるべきではないというわけだ。もしこれが事実なら、授与された博士は当然取り消されるべきだ。。。。と普通は思うだろう（まともな感性なら）。ところが、この調査報告書は、本件は学位取り消しには当たらないという。なんと！なぜなら、（上記の一連の問題行為は）「小保方氏の過失によって不正行為がなされたものであり、「不正の『方法』」に該当しない。また、（中略）、小保方氏が、これらの不正行為の事実を認容してなした行為であり、「不正の方法」には該当するものの、そのいずれもが、学位授与に重大な影響を与えたとはいえず、これらの問題箇所と学位授与との間に因果関係があったとはいえない」かららしい。なんじゃ、そりゃ？この文章は意味が分からないし、まともな日本語の説明になっていないではないか。不正の方法には該当しないが不正の方法に該当するって、アホか！おまいらどっちなんでしょう？しかも、不正な方法に該当するにもかかわらず、学位授与には影響を与えたとは言えないって、馬鹿じゃねーか！おまいらどういうこと？？不正な方法によっても学位授与に影響を与えたとは言えないなら、いかなる方法によっても影響を与えないということになるではないか。もし仮に、全てが彼女の不注意によって起きたことだから、彼女に責任はないと言うのなら、それを見抜けず正せなかった早稲田の博士審査委員全員の責任が問われるべきだ。そして、その上で、そのようないい加減な行為と審査体制で与えられた博士号は、やはり取り消されるべきではないのか？もちろん、一旦与えた博士号を取り消すという行為は、大学としての権威に関わることなので慎重に行われるべきなのは、言うまでもない。だが、調査報告書は、こんな説明をしている。「学位を取り消すことは、学位授与を前提として形成された、これらの生活及び社会的関係の多くを基礎から破壊することになり、学位を授与された者及びその者と関わり合いをもった多くの者に対し、不利益を中心とする多大な影響を与えることになる。」なんかズレてないか？生活に多大な不利益を被るから学位を取り消せないって、話が本末転倒しているぞ。不正な行為・方法と、いい加減な審査体制によって、本来与えるべきではない人に誤って学位を与えたというのが報告書の結論なのであれば、学位を取り消すのが当然の帰結である。そして、それこそが、博士の学位に学問的な権威と価値をかろうじて保つことができる唯一の方法ではないか。そんなこともできない早稲田大学は、もはや「大学」ではないだろう。学位の剥奪によって生活に影響が出ることは当然ではないか。そもそも不正な方法によって学位と今の地位を得た以上、そこで得た利益を全て返上して償うぐらいの罪があることを自覚すべきなのだ。（今のところ）何もそこまで要求されているわけではなく、現在の社会的地位を失うぐらいのことなのだろうから、それは不正行為を働いた者が背負うべき最低限の報いと考えて引き受けるべきだ。世の中には、かなり真面目に努力して頑張っても最終的に学位を取れなかった者達がごまんといるし、まともに学位審査を行なっている大学院もたくさんある（はずだと思う^^;）。何故に、不正を働いて学位を得た者の生活や権利だけが守られなければならないのか。大学や大学院というのは、極端に言えば、どんな研究をやってきたのかということだけをしっかり審査すればいいだけの機関なのだ。それができないのなら、とっとと大学なんて止めてしまったほうがいい。日頃の授業や学内行政などの作業量があまりに肥大化して、研究どころではなくなっているが実情だというのは、俺の在籍する大学でも同じだが、それでも、大学の存在意義がどこにあるのかという本質を踏み外してしまうのならば、もはや大学である必要などない。早稲田大学は、日本の研究系大学の一つとしてRU11というのにも選ばれているが、もはやその資格はない。他の多くの日本の大学と同じで、まともな学位審査ができないレベルならば、大学の看板を下ろして、専門学校にでもカルチャー・スクールにでも解体・再編されるべきだ。学問研究及び学位の権威や価値を、最低限度に守る見識と節度も失っている「大学」はもう必要ないだろう。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.07.23

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  集団的自衛権問題について

  集団的自衛権問題について安倍内閣が、集団的自衛権の行使を認めるため憲法解釈の変更を決定したということで、集団的自衛権の問題について、マスコミ等が割と熱心に報道している。そこでは、今回の決定で日本が戦争に巻き込まれる危険が高まるという主張が盛んにされていて、明日にでも戦争が起きるかのような報道ぶりだが、俺個人としては全くヒステリックでナンセンスだと感じている。（というか、この種の左翼的主張は、俺が学生運動をかじっていた30年以上前から何も進歩していないように映る。）日本が戦争に巻き込まれるかどうかは、日本側の法律事情とは全く関係なく、領土問題、資源問題、体制問題という外的要因によって、いつでも否応なく起こり得るのであって、その際、日本がどう対応できるかを、しっかりと事前に法整備しておくということ以外にはない。なぜなら、そうしないと有事の際に防衛体制がパニックになる危険があるからだ。「どうぞ戦争をしかけないでね」とお願いして戦争が起きないのなら、それが一番いいに決まっているが、そんな幼稚な理屈で世界政治が動いていないことは小学生でも分かる理屈だ。まず、論理的問題として、以下の質問を考えてほしい。（1）「あなたは日本が国連憲章を尊重することに賛成ですか？」（2）「あなたは日本が日米安保条約を結ぶことに賛成ですか？」（3）「あなたは日本が自衛隊を持つことに賛成ですか？」もし、（1）の質問にイエスなら、国連憲章第51条により、集団的自衛権を国連加盟国の一員として認めなければならないということになる。ノーなら、国連に加盟する意義は無く、個別的自衛権のみによって自主防衛する他はないだろう。世界及び地域の平和と安定をもたらすために、国連が集団的に行なう活動に日本も協力するというなら、集団的自衛権の問題は当たり前のこととして承認するしかないし、また日本もその行使による恩恵を受理できることになる。もし、（2）の問題にイエスなら、その前文にあるように、集団的自衛権を承認するのは（条約締結時から）自明なのであって、日米安保を結びながら、集団的自衛権は行使できないとしてきたこと（戦後の歴代内閣の解釈）は、むしろ詭弁である。答えがノーなら、日米安保を保持する意義は無く、やはり個別的自衛権のみによって自主防衛する他はないだろう。もし、（3）の問題にイエスなら、自衛隊の存在は明らかに憲法9条第2項の「戦力不保持」と矛盾するということにならないか。この問題を当たり前に解決する道は、自衛隊を解散するか、憲法を変えるかの二つに一つしかないが、自衛隊に賛成ならば、憲法を変える以外に問題解決はできない。改憲は、憲法96条の関係で極めて難しい状況であるため、これまで解釈改憲で逃げてきたわけだが、きちんと国民的に議論すべきであることは言うまでもない。答えがノーなら、無論自衛隊を解散させるべきだということになるが、では、有事の際一体どうやって日本国民の生命と財産を守るのか、その代案を出す責任がある。以上のことから、集団的自衛権の問題は、戦後の国連的枠組みや日米安保の枠組みから言えば、ほぼ当然の帰結のはずなのであって、今さら騒ぐような問題ではない。また、それに反対だと言うならば、どのような個別的自衛権と自主防衛の体制で日本国民を有事の際に守るのか、責任ある提案を行なうべきだということになる。次に、実際的な問題として、（1）「なぜ今なのか？」（2）「アメリカの有事の際に、日本が戦争に巻き込まれるのではないか？」などがあるが、（1）の「なぜ今なのか」は、現実問題として、中国による東シナ海での覇権的行動が顕著になってきていること、また北朝鮮の政治体制の行方について不安定性があることなどのため、法的整備を行なって自衛権についてしっかりと確認しておくという至極当然のことだと言える。東アジアで有事が起きた場合、台湾及び朝鮮半島が戦渦に巻き込まれる可能性が最も高く、近隣国の日本は必要に応じて防衛措置を取らなければならくなるだろう。その際、自国の個別的自衛権だけではなく、日米安保による集団的自衛権の行使によって防衛するというのは合理的な対応である。それだけではなく、既に模索されているようなオーストラリアとの環太平洋の集団的安全保障や、可能であればインドなど南アジアとの集団的安全保障などを展開し、文字通り、集団的に平和が維持できる枠組みを構築するべきなのだ。一旦有事になった場合、集団的自衛権がどうなっているのかだの、憲法解釈がどうだったのかだの、そんなことを悠長に議論している暇はないのであり、事前に周到に準備を整えておくことや法的矛盾を解消しておくことは、現実的な緊張が高まりつつある今の時期にしかできない。次に（2）の問題だが、集団的自衛権の行使問題は、有事となった当事国からの要請がない限り発動できない上に、万が一要請があったとしても個別的に判断できる内容となっているので、日本及び日本国民の安全と無関係なところでは起こりえない。また、これまでの海外での機雷掃討活動等も、個別的自衛権の範囲内で自衛隊は対応してきているはずであるから、これまでと何も変わらない。従って、「日本から遠く離れたところでの戦争に巻き込まれる可能性が高まった」などの理屈は、国民の危機意識を煽るためのプロパガンダにしか聞こえない。以上のことから、今回の集団的自衛権問題は、大騒ぎするような性質のものではなく、これまで本来きちんと片づけておくべき問題だったのだと思われる。それが、今回マスコミを中心になぜ騒ぎになっているかと言えば、政治的には、現在の連立政権を支えている公明党の有力支持母体である創価学会が、これまでずっと一国平和主義的主張をしてきたからだろう。公明党が集団的自衛権に賛成するということは、創価学会と露骨に対立してしまう。創価学会の公式サイトには集団的自衛権の問題は何も取り上げられていないようだが、おそらく、公明党と創価学会は、水面下で相当な激論を行なっていたに違いない。ともあれ、上述の通り、集団的自衛権の問題は、本質的なものではない。問題の本質は、東アジアの情勢が中国や北朝鮮、時には韓国によって、急激に不安定になりつつあるという点であり、日本はそこにどのように対応していくべきなのかということのほうだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.07.13

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  アベノミクスという幻想

  アベノミクスという幻想前回の記事から半年、日銀黒田総裁が異次元金融緩和というのを行なってから1年以上が経った。アベノミクスなどという耳目を集めそうなキャッチフレーズを掲げて派手に旗を振ってきた安倍内閣の経済政策だが、マスコミや株の予想屋などが騒いでいる割には、実際に起きていることはかなりしょぼい。結局、アメリカの株高に引きずられて日本の株が若干上向いたものの、アメリカほどには株価は上がっていない。アメリカのほうは、オバマの人気の陰りが指摘されているが、昨年末の史上最高値をこの6月に入ってからも更新しているのだ。この図は日米の平均株価の月次成長率だが、4ヶ月ともアメリカのほうが成長率が高い。また、長期のトレンドを見ると、日本は昨年4月からの1ヶ月間だけ日銀の金融緩和の影響で急激に上昇したが、その後大きく反転下げとなり、それからアメリカの株と同様の動きで推移し、今年の2月以降徐々にアメリカの上昇トレンドから引き離されているような展開に見える。日銀の大幅金融緩和は、要するに期待された株価の上昇さえ既に支えられなくなっているのではないか。（2007年リーマンショック以降、最安値（2009年3月）の7千円台からは脱したものの、ショック以前の1万6千円の水準にまで戻っていない。異次元緩和発表時（2013年4月）の1万2千円台よりはましになったという水準でしかない。）他方、円の価値を棄損させる異次元緩和政策は、輸入物価、とりわけエネルギー価格の上昇に加え、この数か月は生鮮食料品等の物価も上昇することとなった。この4月のCPI上昇は3.4％であるが、統計を見る限り、物価上昇が目立つ品目は、電気代、水光熱費などのエネルギー関連の他に、生鮮食料品、耐久財、身の回り用品などだ。これは、景気の上昇による物価上昇ではなく、エネルギー財や輸入品財などが上昇した影響ではないかと考えられる。実際輸入物価指数は、5月に若干落ち着いたものの、ずっと上昇してきたことが別統計で確認できる。更に、賃金の動きを見ると、これらの物価上昇は賃金上昇を上回っているため、実質賃金は低下していることが分かる。毎月勤労統計によれば、4月のCPI上昇3％程度の賃金上昇をしているのは、建設、不動産、飲食、医療などに限られていて、製造業や小売では、マイナスないしは横這いの状況だ。つまり、円の大量供給→円安→輸入物価上昇→一般物価の上昇という状況下で、実質賃金の水準を維持できている業種は、建設、不動産、飲食、医療などだ。これらの産業の賃金上昇は、おそらく震災の復興需要の影響だろうと思われるが、消費税導入前の駆け込み需要等の別要因があるのかも知れない。さて、4月より消費税が8％となったことに加え、上記のような一般物価の上昇は、どの程度の影響となるのか。政府やマスコミが待望していたデフレ脱却が、そんなにいいものならば、景気はどんどん回復に向かわなければならないだろう。今、産業連関表（2005年190部門）によって、今回の消費税アップと物価上昇が、どの品目の費用をどの程度押し上げるのか、簡単にシミュレーションすると次の表のようになる。計算は、全ての品目が消費増税分3％のコスト増になったこと、但し、エネルギー関連財と生鮮食料品等の財は、上記の消費者物価指数の4月分の上昇分だけ増加したと想定して行なった。結果表は、8％以上の費用増となる（従って物価上昇する可能性のある）部門を取り出して掲げた。グレーの網掛けがエネルギー関連財であるが、電力をはじめとして、これらの商品は軒並み高い上昇となっている。それ以外には、漁業、家具、野菜など消費者物価が高い上昇を示した部門が高くなり、また輸送及び自動車関連の産業、化学や鉄鋼等の素材関連産業の高上昇が予測されている。これらの予想費用上昇が日本経済にどのように効いてくるのか、コスト増加をしのぐ経済成長がもたらされるのか、この秋までにかけてよりハッキリするだろう。俺個人の見通しは、無論かなり悪い。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.06.15

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  お上による管理主義の発想

  お上による管理主義の発想報道では、総務省が和製スティーブ・ジョブズを生み出すために、支援事業を開始するらしい（しかもたった2週間の公募期間で選抜なんだと（笑））。総務省の資料はここにある。なんだ、そりゃ？って感じだ。相変わらず、日本の高級官僚や政治家はセンスが悪過ぎと言うべきか。殆ど漫画だな。だいたい、ベンチャービジネスを国が管理して育成できると思っている発想が、既に前時代的というか、社会主義的というか。。。。資本主義においては、自由な競争による結果としての適者生存のメカニズムと、失敗してもすぐ次にチャレンジできる流動性の高さの保証こそ、次代の新産業が誕生する基礎原理ではないか。圧倒的多くのチャレンジャーがいて、成功するのはその一握り。しかし、失敗しても直ぐにまた別のところにチャレンジできる仕組み、あるいは、既に成功している企業にイノベーションを武器に再チャレンジできる仕組み。それこそが、資本主義が生き残ってきた本質的な特徴だろう。そこを、国がしゃしゃり出てきて年間300万円あげるから、なんかベンチャーをやってみろって、その程度のことでスティーブ・ジョブズが出てくるなら、日本中ジョブズだらけになって一体誰が本物なのか分からなくなるって（謎）。同じ「支援」をするなら、くだらない小口の金のバラマキではなく、参入障壁や規制を取っ払う本格的な法整備や法改革にこそ尽力すべきだし、それがそもそも公的部門の役割のはずだ。医療、教育、農業、電力、金融、通信、そして雇用慣行等々、いわゆる岩盤規制と言われている分野はまだまだたくさんあるではないか。彼等も、当然そのことは十分自覚しているのだ。自分達の既得権益は守られるような体制を温存しておいて、300万円やるから独創的な人出てこいだなんて、虫が良すぎる上に、ただの税金の無駄遣いだろう。官僚と政治家は、まず90兆円まで膨らんだ自分達の国家予算の肥大化を何とかすべきだし、議員数や官僚数などの削減と再配置を検討すべきだ。それが駄目だった場合には、責任を取って全員総入れ替えをやるぐらいの痛みを伴う改革をやらなければ、国の政治制度は良くならないだろう。すなわち、官僚や政治家は、自分達こそがベンチャー改革？を断行すべきなのだ。お上が褒賞を与えて何でも管理してやるという設計主義的発想は、20世紀の歴史で失敗だったと検証済みだし、とっとと廃棄すべきだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.05.27

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  5万人突破！

  5万人突破！本ホームページを開設して6年、旧ホームページの開設からはなんと11年！本日、来訪者5万人を突破しました！皆様の地道なご訪問に厚く御礼申し上げます！これまで毎月平均して400人近い方々が、10年以上も本ホームページを訪れてくれている計算になります（そのほとんどは、たぶん狭い身内の関係者の面々だとは思いますが（笑））。これまでコツコツと愚にもつかない話をブログとして書き続けてまいりましたが、皆様の繰り返しの訪問によって支えられていると感じております。どうぞこれからもご愛顧のほどをよろしくお願い致します！新緑まぶしい、いい季節となってまいりました。皆様の一層のご発展とご多幸をお祈り申し上げます。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.05.01

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  小保方という研究者について

  小保方という研究者について周知の通り、STAP幹細胞という万能細胞を発見したかのように大騒ぎになっていた理研の小保方晴子氏は、その後、データの改竄や論文の剽窃などが指摘されて、一転、ただの詐欺師のような扱いを受けることとなった。俺も、同じ研究者の端くれとして、彼女に一種の「悪意」を感じている。彼女は、相当したたかな女なんじゃないかという気さえする。今まで誰一人再現できないものを、記者会見で200回以上も見ただの、コツがあるだの、人前で何の証明もできないでいる態度は、もはや科学者でも何でもない、ただの夢見る少女レベルだ。メディアやネットでは、理研の権威主義オヤジ達によるリケジョいじめみたいな評論もあるようだが、全くの筋違いだ。だいたい、理研の中で研究している連中の中に、権威主義のオヤジがいるのは当たり前のことだ（どんな分野であれ、そういう連中は多かれ少なかれ存在している）。また、それを承知で、あるいは覚悟して、彼女はその職に身を投じているはずだ。ここは論点を逸らしてはいけない。理研の体質がかなり権威主義だったり、研究体制がいい加減だったりするという問題は、（仮にあるとしても）この際関係ないのだ。（しかも、閉鎖的な大学や研究所など腐るほどある。それと闘うことと、科学研究を誤魔化すこととは、言うまでもなく全く別問題だ。）今は、小保方という女性が、科学者として、きちんと自分が研究していることを真摯に科学的に誰もが納得できるように証明しようとしているかどうかだけが問題なのだ。昨日の記者会見を見る限り、全くと言っていいほど合理的な説明を彼女はしていない。これまで誰一人再現できないものについて、彼女が言うコツとやらも解説できず、200回以上も見たというものが一体何なのかも説明せず、成功させた人もいると彼女が言う第三者が一体誰なのかも公開できず、およそ科学的で合理的な説明を何一つ行なうことができないで、一体何の科学研究なのか？呪術の類、宗教的信念の類の吐露を聴くために、彼女に研究ポストを与えているのではあるまい。証明や再現の厳密さを誇るはずの自然科学研究が聞いて呆れる。厳しいようだが、それが競争的研究環境の中に身を置いている者達の共通する感覚ではないだろうか。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.04.10

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  ウィーンとブダペスト訪問

  ウィーンとブダペスト訪問3月中旬に、俺の大学の新しいPhDコースのプロモーションとヨーロッパからの元気な学生を獲得するために、オーストリアとハンガリーを訪問した。実は当初は、ウクライナとハンガリーを訪問のはずだったのだが、今年に入ってウクライナが例のように政変に見舞われ、うちの大学院のプロモーションに行くにはあまり適切な時期ではなさそうだったので（しかも安全でもなさそうだっし）、急きょ行先をオーストリアとハンガリーに変更したのだった。オーストリアとハンガリーと言えば、かのハプスブルク家が13世紀から20世紀初頭まで、なんと600年間にわたって君臨し続けたオーストリア・ハンガリー帝国の歴史を有するヨーロッパの国ではないか。20世紀に入ってからはオーストリアが第一次世界大戦の敗戦国になったり、ハンガリーが社会主義国になったりと、お互いに必ずしも幸運に恵まれたわけではないものの、EUによる経済統合が進捗すると、それぞれ堅実に経済成長を遂げてきているとの印象がある。また、今回訪問したウィーンとブダペストは、チェコのプラハと併せて、ヨーロッパを代表する美しい3都としても有名だ。行ってみて気付いたのだが、ウィーンとブダペストは300キロ弱しか離れておらず、車で2~3時間もあれば行き来できるほど近いところにある。この二つの都市は、まさに歴史的にも共に歩んできたに違いない。更に、ウィーンと言えば音楽の都としてモーツァルトやヨハン・シュトラウウス2世などが活躍したことで知られているが、実は学問の都としても有名だ。例えば、経済学的にはメンガーやシュンペーターからハイエクに至るまでのウィーン学派という有力な流れを形成しているし、精神学者フロイト、物理学者マッハ、経営学者ドラッカーなどもウィーン出身だ。そして、ブダペストもまた天才を多く輩出していることで有名だ。フォン・ノイマン、カール・ポランニーやマイケル・ポランニーの兄弟、アーサー・ケストラーなどは皆ブダペスト出身だ。また、あのルービック・キューブを発明したルビク・エルネーもハンガリー出身らしい。そして、社会主義時代にあっても、ハンガリーはかなり実験的に自由な市場原理を取り込もうとしていた野心的な国であったことを、周回遅れのマルクス・ボーイだった学生の俺は記憶していたものだ。今回この二つの都を訪れてみて、多くの天才が輩出された理由がなんとなく皮膚感覚で分かったような気がした。一言で言えば「品が良い」のだ（笑）。優雅な建築物と空間を広々と使った都市設計。特に、ドナウ川を上手く利用したブダペストの街造りなどは、風水的にも気持ちがいい。こんな街で、モーツァルトやシュトラウスを聴きながら好きな研究に没頭し、気が滅入ったら宮殿やドナウ川を散策し、ウィンナー・コーヒーなどを飲みながら思索に耽る。。。。などということが、決して大袈裟ではなく、普通にできる都市空間なのだ。この品の良さは、もちろんハプスブルク家が多くの財産を投じて築き上げた結果なのであろうが、ちょっとやそっとの努力では真似できない代物だと感じた。例えば、俺達がウィーンのラクセンブルグという南西地区に訪れたIIASA (International Institute for Applied Systems Analysis 国際応用システム分析研究所)本部は、ハプスブルク家の離宮であったブラウアー・ホーフという宮殿を利用していた。これはその研究所長室のベランダから中庭を望んだ風景だが、その美しさにぶったまげた。また、この宮殿には広大な裏庭があると言うので、少し散策してみたら草原だけではなく、こんな池や古城などもあり、優に半日ほどの時間を過ごせるようなゆったりしたところだった。ブダペストに行けば、例えばこれがブダペスト工科経済大学の建物だが、18世紀の終わりに設立されているだけあって、もう立派な歴史的建造物だ。このビル自体はおそらく19世紀初頭のものだろう。しかも、同大学はドナウ川の川沿い、ゲッレールトの丘の麓にあり、その景観がまた美しい。授業の雰囲気はこんな感じだった。これは日本の大学と同様か。大学の直ぐ向かいには、ドナウ川にかかる自由橋がある。夜になると、こんな感じでライトアップされていて綺麗だった。昼の自由橋は、若いカップルなどが橋の鉄骨に腰掛けあまーい雰囲気になっていた。（これはあまり勉学に向いていない環境であるとも言えるかもしれない（笑）。）橋から眺めたドナウ川はこんな感じだった（水はちょっと濁っていて、あまり美しくなき青くもないドナウだったのは少々残念だった^^;）。オーストリアもハンガリーも、決して派手な経済成長を達成しているわけではない。オーストリアは、人口約850万人（ウィーンは175万人）、経済成長率は約1%であるが、一人当たり名目所得は47,700ドルでなんと日本とほぼ同じ水準だ。主要産業は、機械・輸送用機器、金属加工、観光などだ。おそらく、同じドイツ語圏としてドイツの自動車産業へ部品等を多く供給しているだろうと思う。ハンガリーは、人口約990万人（ブダペストは174万人）、経済成長率は1.2%となっていて、一人当たり名目所得は12,400ドルで、オーストリアの約4分の1ほどだが、所得では表われない歴史的遺産による真の豊かさがそこにあるような気がした。主要産業は、機械工業（通信機器、電気機械含む）、化学・製薬工業、農業、畜産業などだ。オーストリアは1995年に、ハンガリーは2004年にそれぞれEU加盟を果たしているので、広域経済圏として安定して成長を果たしていくだろうと思われる。6年ほど前にプラハを訪れたのだが、その時も街の美しさに目を見張ったが、今回のウィーンとブダペスト訪問も、期待を遥かに超える美しさと荘厳さで驚いた。しかも、そのような歴史的な建造物を普通に日常の中で使用しながら暮らしている彼の国の人々は、それだけで確かに豊かであるということを実感した旅だった。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.03.30

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  スリランカ訪問

  スリランカ訪問仕事で、南アジアの小さな国スリランカを訪れた。スリランカは、人口約2,000万人、国土面積が北海道の約0.8倍、九州の約1.6倍ほどのインド洋に浮かぶ島国だ。世界銀行のデータによれば、スリランカの一人当たりGDPは約2,900ドルであり、低位中所得国（Lower Midle Country）と言える水準となっている。（実際、俺がこれまで訪れたアジアの途上国の中では、インドネシア、スリランカ、ベトナム、ラオス、ネパール、バングラデシュ、ミャンマーが、ほぼこの順番で一人当たり所得の水準が並んでいる。）経済成長も年率6％以上を維持しており、高成長を実現している。主要産業は、お茶（セイロン・ティー）やゴム、ココナッツなどの農業と繊維業だ。経済の順調な発展には、それまで続いてたシンハラ族とタミール族の内戦が2009年に終結し、安定的な政治状況が続いていることが大きく影響している。また、スリランカは、ミャンマーやタイと同じ仏教国であり、この点は日本人の俺にも馴染みやすいかも知れない。さて、今回の俺の仕事内容は二つあって、一つは、我々の大学院に入学を希望しているスリランカの官僚に面接を行い、より優秀な候補者を選抜すること。あと一つは、既に卒業した元学生達と連絡を取り、どのような仕事ぶりなのかをヒアリングしてくることだった。俺がコロンボを訪問した日は2月の第一週だったが、4日はちょうどスリランカの独立記念日であり、役所をはじめ、あらゆる公共施設が休みであったため、卒業生達とのミーティングは、ホテルのロビーで行わなければならなかった。それがこの写真。その後、コロンボから、卒業生の一人の故郷である南の町ゴール（Galle、ガルと書いている地図もあるが、正しい発音はゴール）まで案内してもらい、17世紀のオランダ占領当時の城塞都市の遺跡（世界遺産）やインターナショナル・スタジアムがある海岸などを観てきた。ゴールは、古くから交易上重要な地域として認識され、17世紀中ごろまでポルトガルに支配され、その後17－18世紀にオランダが支配し、最も発展したと言われている。19世紀にイギリスに支配権が代わったが、1948年2月4日にセイロン国として独立した（スリランカ共和国に名前が改称されたのは1972年。78年にはスリランカ民主社会主義共和国となったらしい）。コロンボに戻ってきて、最終日に空港に行くまでの間、近くの寺（パゴタ）を訪れた。仏陀の大きな像は、仏教国ならではだが、仏像は日本のそれとは違ってカラフルであり、その点ではミャンマーやタイの寺院と同じであった。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.02.11

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  民主主義と経済発展の問題

  民主主義と経済発展の問題新年明けましておめでとうございます。今年もまた、月刊「夕張北高ブログ」をなんとか細々と続けていきたいと思っていますので、どうぞひとつよろしくお願いします(笑)。先日、たまたまスピルバーグの映画「リンカーン」を観た（今頃？って感じですが）。映画自体は、第16代合衆国大統領リンカーンが、長引く南北戦争をなんとか終結に持込み、奴隷解放を行ないたいと悪戦苦闘しながら活躍するものの、二期目の就任直後に暗殺されてしまうまでの期間を描いている内容で、エンターテイメントとしてはそれなりに面白く出来ていると感じた。ただ、登場人物についての知識や当時のアメリカの歴史についてあまり知らないまま観たためか、若干消化不足ではあった。だが、この映画は民主主義と経済発展について、再度考えさせてくれるモノだったと思っている。リンカーンの功績はもちろん奴隷解放を行なったということになるのだが、経済史的に見ると、黒人の人権問題もさることながら、当時共和党のリンカーンを支持していたアメリカ北部では、既に都市経済が発達しており、自由に雇用できる労働者が必要であったことが奴隷制廃止の強いモチベーションであったと考えられる。逆に、南部は未だ広大な農業生産地であったために、耕作補助として利用できる奴隷が必要なことから奴隷制は手放したくなかったはずである。つまり、奴隷を土地に縛り付けて農業従事者として利用するのに都合が良かった南部と、農業以外の経済活動に雇用したほうが有利だった北部との戦争が、南北戦争であったとも考えられる。リンカーンはこの時、長引く内戦による国力の疲弊よりも、経済発展によって安定した国力を備えることを優先すべきという観点から奴隷解放が必要だと考えたと思われる。そして、それがまた「社会正義」とも合致したわけだが、これは決して黒人の人権尊重だとか人種差別の廃止とかではなかった可能性が高い。その証拠に、アメリカは民主主義の国でありながら、政治的な意思決定には長い間黒人を排除し続けてきたではないか。南北戦争後も、表向きはともかく、実質的には黒人への公民権付与を制限し、政治的な平等から排除し続けており、やっとまともな政治的平等を実現するようになったのは、あのマーチン・ルーサー・キング牧師らが公民権運動を率いた1960年代（つまり南北戦争からおよそ100年後）であった。その時でさえ、かのキング牧師は暗殺されたのだ。アメリカで黒人への実質的な政治的平等が浸透したのは、おそらく1980年代以降ではないだろうか。（そういや、南アフリカでアパルトヘイトが撤廃されたのは、ネルソン・マンデラが大統領となった1994年だから、つい20年前のことなので、そう大差はないだろう。）こう見ると、バラク・オバマが2009年にアメリカ初の黒人大統領となった（しかも民主党から！）ことは象徴的ではあるが、かなり長い時間をかけて、ようやっとアメリカはまともな「民主主義国」になったとも言えるであろう。肝心なことは、民主主義という体制は、決して社会正義の実現を保証するものではないということだ。南北戦争当時、民主主義に基づいていたからこそ、アメリカ南部の政治家達は圧倒的に奴隷制度を支持していた状況を簡単には覆せなかったため、結局内戦にまで突入したのだ。既得権益にしがみつく層が、民主主義を盾に多くの改革や新たなビジネスの芽を摘むということは決して珍しいことではない。なぜなら、既得権益層が失う利得はハッキリしているのに対し、利益を得る層の利得は相対的に曖昧であるからだ。そのため、改革に反対する人々は必死になるのに対し、賛成する人々は穏やかで呑気である傾向がある。だが、歴史が証明するように、改革の事態を暴力的に革命やクーデターによって転覆しても何の解決にもならない。解決にならないどころか、一層問題をこじらせ解決を長引かせることとなってしまうだろう（無論、そうは言っても、今後も暴力的に社会を転覆させようとする勢力は出てくるだろう）。他方、民主主義の優れている点は、意見の分布がどのように広がっているかを把握できる点にある。民主主義以上に優れた意見集約システムを、未だ我々は知らない。だとすれば、この民主主義に基づきながら、世間の意見分布が劇的に変化するような言論活動を行なうことが、政治家やマスコミや社会科学者や、多くの社会問題に携わる人々のなすべきことということになるのだろう。そして、もう一つ肝心な問題は、政府や政治家がどのような行動をとり、いかなる政策を実行するのかというのは、民主主義とは別問題だということだ。極めて残念なことに、日本の政治家やマスコミ（そして、社会科学者も？）の状況を見るにつけ、既得権益保護や財政の浪費を強調するばかりでまともな改革には程遠いように思われるが、これも民主主義国が行い得る状況の（悪い？）一例であるとということだ。さて、2014年に世界と日本はどこに向かっていくのだろう？ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2014.01.04

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  アベノミクスの検証

  アベノミクスの検証今年も早くも大晦日となった。30日、今年最後の東京証券取引所の取引では、112円37銭高の1万6,291円31銭という株価の結果となり、今年最高値で取引が終わった。これは、もちろん日銀の黒田総裁が異次元緩和策を打ち出した今年4月以来の最高値でもある。但し、これがアベノミクスの成果だと言うのはちょっと気が早い。実は、アメリカは今年の後半になって何度も史上最高の株価を更新し続けており、現在1万6,500ドルを超えた高値になっているのである。これがアメリカでの株バブルなのかどうかはともかく、この株高に引っ張られる形で日本でも株価が上がっているだけなのかも知れない。では、結局アベノミクスは効果があったのか？マスコミや一部政治家などは景気回復だと騒いでいるが、俺個人は全く疑わしいというのが結論だ。実体経済が上向いているとは言えない上に、彼等が標榜していた「デフレ脱却」などもほど遠いと言えるからだ。まず、デフレ脱却だが、通常の物価水準と株価の推移を見てみるとこの図のようになる。このデータは、今年4月から直近の10月までの推移を見たものだが、物価指数はエネルギー価格を含めたコアCPIというもの（赤線）で見ると、上昇しているように思われるが、エネルギーを除いたコアコアCPIというデータ（青線）を見れば、ほぼ横ばいで、指数自体も100を下回っている。これが意味することは、要するにエネルギー価格だけが上昇しており、それに影響を受けて消費者物価指数が上昇したということだ。つまり、エネルギー以外の物価水準については、依然安定しているということだ。4月にあれだけ日銀がぶち上げて円を大量供給すると言って、無理やり円安にしたわけだから、主要な輸入品であるエネルギーなどの価格が上昇するのは当たり前であり、それによって消費者物価が上がっただけではないのか。言うまでもなく、これは景気が良くなって物価が上昇しているわけではないということだ。他方、株価は今年4月を起点として推移を見たもの（右縦軸）だが、日本株価（紫の線）は黒田総裁が異次元緩和を発表した4月直後から乱高下して、結果として今年の最高値となっている。これは、上で述べた通り、アメリカの株価に引っ張られる結果だったとも見れるが、異次元緩和がもたらした円安が外国人投資家に歓迎されて日本株の買いにつながったという見方もできる。すなわち、このアベノミクスとやらは、通常言う所のデフレを脱したのではなく、株価低迷という資産デフレを脱却させ、資産価格を吊り上げることに成功したのだと見れば、成功と言えなくもない。（これは、中央銀行の通貨供給が株価に影響し、物価にはほとんど効かないという先行研究の結果とも符合する。本田・黒木・橘(2010)）そう考えれば、アベノミクスは株主達にとっては「成功」であったのだ。（だが、中央銀行を使っての株価操作だったのではないかという見方もできるのかも知れない。）次に、生産指標だが、それはこの図のようになっている。鉱工業生産指数（赤線）は若干上向きに見えるが、サービス関連では金融（水色）と情報通信（紫）が100以上であるものの、そのトレンドとして若干低下傾向ないし横這いだ。卸小売などの商業（青線）も、水準自体が2010年水準に回復していない上に、トレンドも横這いである。すなわち、実体経済が上向いているとはまだまだ言えない状況ではないだろうか。要するに、殆ど常軌を逸した金融緩和（アベノミクス第一の矢）だとか、ただでさえ深刻な財政赤字を更に促進させる大規模な財政政策（第二の矢）だとか、ネットでの薬の販売も大幅に認めれない成長？戦略（第三の矢（にもなっていないが））だとかの経済政策は、明らかに頓珍漢な方向を向いているように思われる。結局、しっかりとした規制緩和による構造改革によって、新たな投資誘因を作り出さない限り、堅実な経済回復は来年も期待できないだろう。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.12.31

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  お笑い改正労働契約法

  お笑い改正労働契約法今年の4月から施行されている改正労働契約法だが、既に多くの報道等で伝えられている通り、かなりお笑い草的な現象が起きている。これは相当に珍奇な悪法だ。その典型例が、早稲田大学に見る非常勤講師の5年雇い止めだ。これ以外にも、高校の非常勤講師が雇い止めを勤務校から告げられたというニュースを見た。今回の労働契約法によってこういうことになるのは、余りにも明らかで、始めから分かり切っていることだったはずだ。なぜなら、非常勤講師を長年使い続けているのは、それが大学や高校にとって都合がいいからであり、最初から常勤講師では雇えないから、長年非常勤で使い回してきたはずなのだ。5年雇い続けた後に本人の希望があれば、無期雇用にしなければならないというのなら、大学側がその前に解雇しようとするのは明らかだ。すなわち、今回の労働契約法の「改正」というのは、不安定な非常勤講師（非正規職員）の人達を、ますます不安定な立場に追い込んでしまうという法改悪なのだ。（今までの雇用形態で、労使双方が相互に都合が良かったはずなのに、全く余計なことをしてくれてものだ！という実感のはずだ。）現在の日本の大学のように、研究している教授も何もしていない教授も、ほぼ同じ水準の高賃金をもらっていたり、大した変わり映えのしない授業をしている私立系教授が、多くの負担を受け持つ国立系教授の約1.5倍もの給与をもらっていたり、全くでたらめで理不尽だとしか思えない給与支給により、どの大学も収入の約5割を人件費に充てている状況で、且つ、高給を受けている教授連中を、容易に減給にしたり配置換えにしたり降格させたり転職斡旋したりできない状況では、非常勤講師を常勤講師にできるはずがないのだ。（大学自治などという名のもとに、未だに採算度外視の身分保証がまかり通っているというわけだ。）この労働契約法だが、自分が「無期雇用にしてくれ」って申し出て契約を転換できるぐらいなら、誰がわざわざ始めから有期雇用を選ぶ必要があるだろうか。扶養家族等の税金対策と、短期的には正社員以上に給料を受け取れるかも知れないという観測や憶測ぐらいしか、有期雇用を選ぶインセンティブがない。お願いして無期雇用になるのなら、皆無期雇用を選ぶに決まっているではないか。無期雇用であったとしても、辞めたくなったら辞めればいいのだから、始めから有期契約にする必要などないし、次の転職のタイミングが契約が切れる時にちょうど来るとは限らないのだから、有期契約を選ぶインセンティブなどない。こんな子供でも分かるような馬鹿な法律改正が、この労働契約法だと言わざるを得ない。この法改正は全く逆なのだ。日本の労働市場、とりわけ大学教員の労働市場に必要なことは、無期雇用の拡大ではなく、有期雇用の拡大のはずなのだ。研究している教授もしていない教授も、多くの教育負担をしている教授もしていない教授も、等しく身分を保証するのではなく、一律全員を有期雇用とし、更改期限毎に業績評価を行って、次の有期契約を結ぶかどうかを決めるべきだ。このようなやり方を、今の文科省や大学は、若手の研究者にだけ適用して競争を押し付け、自分達は安全なところから見下ろして他の研究者を裁断するという、極めて理不尽で狂った制度を運用している。グローバル競争を本気で生き抜こうとするならば、大学教員全員が一律有期雇用に切り替え、シビアだが客観的でフェアな競争環境をこそ実現すべきなのは、余りにも明らかだ。それができない原因は、身分保証を既得権益と勘違いしている保身以外の何物でもない。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.11.10

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  札幌行

  札幌行おそらく7，8年ぶりぐらいになると思うのだが、もう思い出せないぐらいぶりに、北海道を訪れた。10月末の札幌は、例年であればおそらくもっと寒いのではないかと思ったが、俺が訪れた日はそれほど寒くはないように感じた。それでも、夜になると強風が吹いて９℃ぐらいまでになっていて、かなり冷え込んできていた。俺の子供の頃の記憶では、10月にはたいてい初雪が既に降っていたはずなので、寒くなるのも当然のことだ。学会会場近くの羊ケ丘は、紅葉がいい色合いになっていた。ガキの頃には何とも思っていなかった紅葉の風景だが、今回多くの木々がとても綺麗だと感じたのは、俺ももう既に初老になったせいなのか（笑）、それともあまりに久しぶりに札幌を訪れたせいなのか。札幌の大通公園付近は昔とそう大きく変わっていないように感じたが、よく見てみると、いろんな建物がリニューアルされていたり、無くなっていたりした。ただ、驚いたのは、大通公園から出ていた夕張行きの夕鉄バスのバス停が、まだ昔のままに存在していたことだ。但し、昔と変わっていたのは行先で、もう大夕張や若菜バスターミナルではなくなっていた。現在は、一日わずか4本ほどの夕鉄バスが南幌町（長沼町の手前の町）までしか行っていないようだ。昔はもっとあったと思っていたバスの便数は、俺がそう勘違いしてただけで、ひょっとしたら当時から一日５、６便ほどしかなかったのかも知れない。ともかく、この昔ながらのバス停を見て、小中学校の頃、夏休みや冬休みのたびに札幌の祖父母の家にまで遊びに来ていたことが急に蘇ってきて、とても懐かしい気持ちになった。いつの日かまた札幌を訪れた時にバスで夕張を訪れてみたいものだと思っていたのだが、今はもうそれもできないのか。そう思うと少し寂しい。せめて、この夕鉄バスのバス停はあり続けて欲しいと思う反面、今や１日４本ほどのバスで利用者が減ってしまっているのではないかと思われるこのバス停が、札幌市のど真ん中の一番いい場所にあり続けているのは、ちょっと勿体ないような気もした。（バス停の土地代ってのは、札幌市に払う必要はないのだろうか。）そう言えば、千歳空港には、夕張のご当地キャラ「メロン熊」の特設市場があったわ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.10.29

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  ナポリ行

  ナポリ行今月中旬に、学会参加で初めてイタリアのナポリを訪れた。俺にとってイタリアのイメージと言えば、映画で見た『自転車泥棒』や『ニューシネマパラダイス』、あるいは『ゴッドファーザー』で出てきたシチリー島ぐらいのものだったが、これらの映画に共通する点は「なんだか皆貧しい」ということだ。行く前に、人から聞いたり調べたりすると、どうもあんまり治安が良くなく、スリなども結構いるということだったので、少々物騒なのかなと心配していたのだが、行ってみると何のことはない、普通に気を付けてさえいれば、基本的に問題のない街だった。但し、実際、イタリア南部は北部に比べて貧困が深刻だとされており、少々前の統計でナポリの失業率は約30％にもなると言われてる（若年失業率はその倍らしい）ので、かなり経済的には厳しい状況のはずだ。また、ナポリの人口は約96万人で、日本で言えば千葉市と同じぐらいの都市サイズだが、「ナポリを見て死ね」という諺があるぐらい風光明媚な街だと言われている。そして、実際行ってみて驚いた。千葉市には悪いが、到底ナポリの魅力にはかなわないだろう。ヨーロッパの都市共通の特徴として、伝統的な石造りの建物と道路をずっと利用しているので、一つひとつは結構汚れている。だが、そのデザインや全体的な雰囲気は美しく見えるから不思議だ。込み入った路地裏通りの洗濯風景でさえそうだった。それと行ってから思い出したのだが、中高生の時に音楽で習った「サンタ・ルチア」もナポリにある海岸のことだったのだ。港近くの海岸にはサンタ・ルチア通りという通りも存在していた。これはサンタ・ルチアの海岸からヴェスヴィオ火山を望んでいるもの。チェコのプラハも、ブラジルのリオデジャネイロも美しかったが、このイタリアのナポリも全然負けていない。世界には、「ただそこにいるだけで楽しい気分になる」という街が実在するのだと改めて感じた。ナポリの人々も、実際には経済状況は厳しいのかも知れないが、この美しい土地にいると、あんまりウジウジしててもしょうがないという気にさせるのではないか。そういう雰囲気が確かにあった。学会企画のツアーでは、ナポリのやや南西にある世界遺産ポンペイとアマルフィ海岸も訪れた。恥ずかしながら、行く前まで、アマルフィ海岸の存在も知らず、従ってそれが世界遺産に登録されていることも知らないでいた。ポンペイは、周知の通り、AD79年にヴェスヴィオ火山が爆発して、街全体が火砕流に飲み込まれて消滅してしまったという伝説の街だ。行ってみると、かなり大きな石造りの集落だったことが分かり、道路も水道もしっかり整備され、また闘技場も大小二つ存在していて、2000年近く前に既にこれほどまでに発達した文明を築いていたことに驚かされる。また、アマルフィ海岸は、文字通りコバルトブルーの極めて美しい海を見下ろせるかなり急峻な岸壁のスポットだった。くねくねと曲がりくねった峠道から、はるか下の海岸を見下ろすと、いたるところで狭いビーチで海水浴を楽しんでいる観光客やらヨットやらがあった。アマルフィ海岸は、間違いなく美しい海岸であると思うが、ナポリから２～3時間かけてのあの峠と断崖絶壁の道路は、あまり何度も行きたくないというのが正直な感想だった（笑）。おまけ。これは宿泊したホテルから見えた卵城という古城。この城もまた素晴らしかった。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.09.28

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  原爆許すまじ　Hiroshima2013

  原爆許すまじ　Hiroshima2013本日、広島は68回目目となる原爆忌を迎えた。今年は、映画監督のオリバー・ストーンなども広島を訪問しており、既に原爆資料館などで原爆についての意味を学んだという。朝日新聞などによれば、彼はこう言ったらしい。「敗者のナチスが原爆を落としていれば、批判を受け続けただろう。しかし勝者の米国の場合は（悪に）制裁を加えたと例外扱いされる」また、中国新聞では、彼は取材に応じてこう答えたという。「『原爆が終戦を早め、それ以上の犠牲者を防いだ』とする米国内の論調について、『米国が創り上げた神話。全くのうそだ』と強調した。」その通りだ。アメリカの原爆投下は、一般市民をも無差別に狙った大量虐殺（genocide）行為であり、明らかな戦争犯罪（war crime）なのだ。これはナチスが行なったホロコースト（the Holocaust）にも匹敵する重大な犯罪だ。この真実について、世界の人々、とりわけアメリカ人はもっと目を向けるべきだ。この原爆により約15万人が直接的に亡くなり、3日後に投下された長崎への原爆の死者15万人と併せて、およそ30万人が殺されたのだ。更に、投下後の後遺症などによって亡くなった人も併せれば、相当な数の人々が亡くなっている。既に敗戦が事実上決まっていた当時の日本に対して、「戦争終結」を目的に、これほどの数の一般市民を虐殺する行為が正当化できるはずがない。（ニュルンベルク裁判における国際軍事裁判所条例第6条の戦争犯罪の定義は、「占領地内の一般人民の殺害、虐待、奴隷労働（中略）人質の殺害、公私の財産の略奪、都市町村の恣意的な破壊または軍事的必要により正当化されない荒廃化」となっている。）原爆の投下は、先般問題にされていた橋下大阪市長の「従軍慰安婦」問題とは比べ物にならないれっきとした犯罪行為なのだ。（なお、従軍慰安婦問題について言えば、これは「強制連行された」などという直接証拠が今日まで何ら提出もされておらず、存在してもいなかった「性奴隷」(sex slave）などどいう用語を用いて、戦前の日本軍を不当に貶めようとしているプロパガンダであると言ってよい。これは南京虐殺問題とも共通する同種の構造だ。）今回原爆投下について明記しておくべき点は、アメリカの公文書が、イギリスも当時事前にこの原爆投下に同意していたということを明らかにしたことだ。イギリスのこの同意は、戦後殆ど明らかにされてこなかったが、原爆による大量虐殺に手を貸したという点で、アメリカと同罪だろう。ドイツや日本は敗戦国として、戦犯をはじめ既にいろんな裁きを受けてきている一方、アメリカやイギリスが犯した戦争犯罪については、誰も裁かれてはいない。この歴史的な不条理は、決して忘れられることはないだろうし、また忘れてはいけない。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.08.06

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  政治氷河期の日本

  政治氷河期の日本マスコミなどが盛り上げようと躍起だったのとは裏腹に（いや、そうだったからこそ？）、第23回の参議院選挙は最初からどっちらけの様相であり、結果についても、実際予想通り自民党の圧勝で終わった。このような結果になるだろうことは、戦前から既に予想されていたことであるから、みすみす自民党に楽勝を与えた責任はむしろ野党にあると言っていいと俺は思う。とりわけ、民主党をはじめ、小さな政府を主張する弱小政党の維新の会やみんなの党でさえ、互いに選挙協力できないならば、始めから勝てるわけなどないではないかと、誰が見ても思うだろう。自分達の言いたいことだけ言えば選挙に勝てるとでも思い上がっているとしたら、それはまるでお子ちゃまレベルだと言わざるを得ない。今回の自民圧勝で、また日本は既得権益層を「保守する」だけの、旧態依然とした変われない政治に逆戻りするだろうと俺は思う。自民党は、「衆参で多数を得たことで思い切った改革ができる」旨のことを言っていたが、これまでの自民党の歴史から言って、それは極めて疑わしい。ともあれ、こうして結果的にみすみす自公政権に好き勝手させる条件を与えたのは、勇ましいことや綺麗事だけ言って大同団結できない野党側であり、改革を更に遠のかせることになった責任は重い。日本の政治は氷河期に逆戻りし、一層の政治不信を定着させることになるだろう。日本の構造改革は、相当抜本的なものではなければならないのだが、それが根本的なものであればあるほど、政治的戦略と戦術の緻密さ、そして、長期的な計画が必要になる。その上、政治家自身が自分達の選出されてきた制度そのものを大幅に変更しなければならないという「自己犠牲」を含むものでなければならないため、一層の実行困難が予想される。但し、行なうべき内容は比較的明快なはずだ。例えば、（1）参議院の解散、一院制への移行。それに伴い、国会議員の大幅定員削減。（2）道州制の導入。それに伴い、県組織と市町村自治体の大幅再編、地方議員の削減。（3）年金制度の抜本改革。支給額の削減か税金の増額の選択。（4）農協の解散、郵便局の完全民営化、医療・福祉、通信、教育分野への競争導入、雇用流動化、移民受入等々の規制緩和。これらは、どれも根本的な改革となるだろうがハッキリした内容ばかりのはずだ。だが、既存の高齢者後援会、業界団体等からの圧力によって、自民党による既得権益層温存の変われない政治が再び続き、おそらく、経済も含め更に落ち込んで行くだろう。世界はおろか、アジアの中でさえも、中国や韓国に押されてその存在感の凋落は一層明確になるのではないだろうか。日本が自らの手で変われないのだとすれば、それはどんなに悲惨な浪費や犠牲を伴ったとしても、落ちるところまで落ちるしかないのかも知れない。90年初頭のバブル経済の崩壊以降、細川政権による初の政権交代とそのあっけない挫折、その後の自社政権という歪んだ政治構造、そして今回の民主党による政権交代と3年間の迷走。。。。失われた20年は、経済の問題だけにとどまらず、日本の民主主義にとっても大きな試練となっている。民主党政権の時期は、リーマンショックや東北大震災などの不幸な出来事が重なってしまったので、その政権運営には不運な面もあったのは事実だが、最初に登場した鳩山、菅の両首相の登場が決定的だったように思われる。両者の最大の貢献は、民主党がいかに思い付きだけで動いている素人集団のような政党であったかを白日のもとに晒したことであるだろう。こういうプロセスは、日本の民主主義にとって必要なものであったと思うので、それ自体は良かったのだと思うが、その払った時間的、人的コストは計り知れない。そしてなお、まともな政治実践に至るには、今しばらく時間がかかりそうだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.07.22

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  Winnyという事件

  Winnyという事件Winnyの開発者、金子勇氏が急性心筋梗塞のために42歳の若さで先日突然亡くなったということを、池田信夫氏のコラムで知った。2002年のWinnyの出現は、IT業界においては画期的な「事件」であったと俺は思う。金子氏が開発したのは、ネット上で繋がっているパソコン同士でファイルを共有できるP2Pソフトであり、それまでのサーバーを経由する方法を不要とする点で、まさに画期的であったと言ってよい。だが、このWinnyは著作権法違反になるということで当局から徹底的にマークされ、事実上弾圧・放逐された。裁判では金子氏は無罪となったにもかかわらず、Winnyは「違法なソフトだ」という評価が定着してしまった。だが、彼が開発したものは、ネット上のパソコンで行なえる技術的な可能性を画期的に広げたソフトウエアであり、ユーザーの使い方にまで責任を持つものではないことは当たり前のことだ。ナイフも銃も自動車も、誤った使い方をする奴が出て来た時に、その発明者にまで責任が及ばないのと同じことだ。彼が逮捕されて、長い裁判闘争を行なわなければならなかったことは、極めて深刻な日本の悲劇であった。この事件の重大な教訓は二つあると俺は思っている。一つは、真に画期的なもの、クリエイティブなものは、旧来の常識に照らして、常に価値破壊的であるということだ。だが、シュムペーターを引くまでも無く、イノベーションというのは破壊的な創造過程である面は否めないし、また産業社会は、それによってここまで前進してきているのだ。その進化の過程は今後も変わらないだろう。二つ目の教訓は、上記と関連するが、旧来の常識の側に立つ既得権益層や、それを守る国家権力は、この価値創造物を組織的・暴力的に弾圧するということだ。今回の例で言えば、著作権保護を主張する団体・個人や国側が、過剰にWinnyに反応し、血迷うようにその開発者まで逮捕してしまった。だが、真に問われるべきは、多くの情報がデジタル化され、無限に複製が可能となってしまった状況下において、著作権保護の在り方が旧来通りでいいのかどうかということのほうだ。（過剰な著作権保護を意図したコピープロテクトCDの失敗や、ソニーのコピー防止の過剰機能がMP3やiPodに駆逐された例など、多くの事例がある。）過剰な保護を主張する団体の圧力が強いかどうかで、政治家は政策を振り回すべきではない。社会や時代の変わり目の中で、社会を一層前に進めることを進化と考えるなら、本来社会的に戦う価値のある闘いは、上記の如き不条理にこそあるだろう。非常に優れた才能が、ある特定の組織の短期的な利益保護の目的で翻弄され、押し潰されてしまうことは、長期的な社会的損失であることに、我々はもっと自覚的であるべきだ。金子勇氏の冥福を祈る。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.07.11

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  日銀によるミニバブルの崩壊

  日銀によるミニバブルの崩壊日銀の黒田総裁がデフレから脱却するために行なった今後2年間での約270兆円もの「異次元の金融緩和」は、ただのバブル政策ではないかと以前このブログでも指摘したが、やはりそのような兆候がこの2ヶ月間でハッキリしたように見受けられる。図のように、黒田総裁が異次元緩和を発表した4月4日以降、日本の株価（日経平均）は上昇を続けたが、5月22日の1万5,627円をピークに急落し、先週木曜（6月13日）には、遂に4月4日時の水準である1万2,634円をも下回るところまで落ち込んでしまった。翌金曜日には若干回復したものの、今後どうなるかは全く分からない状況になっている。数日前に安倍首相が発表した「成長戦略」第３弾？なるものの中身が、かなりしょぼかったことから、今回の下げ基調につながっているとすれば、今後の日本経済の構造改革や規制改革は進まないと見なされて、更に落ち込む可能性があるだろう。「インフレ期待」に働きかけてバブルを起こそうとした金融政策は、開始からわずか2カ月余りで弾けて振り出しに戻ってしまった。日銀が４月以来行なってきたことは、大量の円で市場をかく乱しただけだということになる。これは、もともと日本経済の規制改革を長いこと怠ってきたことの現れであり、ゼロ金利のもとで金融政策を無理に行なっても、実体経済には殆ど効果が無いということを示している重要な証拠ではないだろうか。おまけに、円を安売りしてデフレを無理やり止めても、実体経済が改善して所得が増加するようなことが無ければ何の意味も無い（というか、スタグフレーションになる危険がある）。もっとも、いわゆるアベノミクスを支持している人々は、効果が現れるのは半年から2年だと言っているので、まだ様子を見続ける必要があるのかも知れないが、株価だけではなく、国債価格が暴落するなどという最悪の事態がその間に来なければいいと思う。図に示されているように、日本の株価は、世界の株価指数、とりわけアメリカの株価（ダウ・ジョーンズ平均）に引きずられて変動しているというのが常識的な見方だと思うが、注目しなければならないのは、この間アメリカの株価は、日本ほど落ち込んではいないということだ。リーマンショックの時もそうであったが、今回も世界経済でより落ち込みの激しい先進国は日本となっている。これもまた、日本の実体経済でなんら目新しい改革が進んでいないことの結果が反映しているからではないかと感じる。すなわち、多くの先進国では、危機に直面した時には何らかの改革を行ない、キッチリと痛みを伴う作業を行ない、それがマーケットに評価されて株価が戻って来るということを繰り返している。独り日本だけが、90年代の初頭にバブルが崩壊して以降、大量の不良債権を抱え込んだ日本の金融機関の改革を怠り、あるいは遅らせ、97年から98年に日本の金融機関が続々と破綻する中でも、結局しっかりとした実体経済の改革を行ない得なかったのではないか（その典型例が、92年に顕在化したいわゆる住専の破綻処理を先送りして不良債権を肥大化させ、96年に公的資金を6,850億円投入して国民に負担を押し付け、民間金融機関にも負担を分担させて、結果として農協自体（信用農業協同組合連合会：信連）を救済したことだろう）。既得権益層をどこまでも守ろうとする日本の体質は、その後今日に至るまでなんら変わっていないのではないだろうか。そのような構造的沈滞がグローバル競争の中で見透かされれば、当然日本経済及び政治への国際的評価は下がらざるを得ないだろう。日本が行なうべき経済政策は、既にいろんな人がいろんなところで言っている通り、抜本的な規制改革、構造改革以外には無い。具体的には、農地分野、雇用規制、社会保障改革に始まり、電力・エネルギー、金融、通信・放送、医療・福祉、教育などサービス関連分野を中心に数多く存在している。その改革に伴って、税体系や公務員制度の改革、議員定数の削減なども不可欠になるだろう。政府は、余計な「成長戦略」などを行なわず、既得権益層となっている分野の規制改革と肥大化した公的部門の縮減だけを行なえばいいのだ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.06.16

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  パラダイムの話

  パラダイムの話脳梗塞を患ってから何とか復活し、精力的に執筆活動を続けていた経済人類学者栗本慎一郎氏の著作『栗本慎一郎の全世界史』を読んだ。実は俺は長年栗本氏のファンで、80年代に衝撃を与えた『パンツをはいたサル』以来、そのほとんどの著作を読んできた。比較的最近のものでは『シリウスの都　飛鳥』という日本古代史の通説に挑戦した著作などもある。本書は、まさに栗本人類学の総まとめとも言えるもので、本人も言うとおり、経済人類学用の？世界史教科書として編まれたもの（そして最後の著作？）ということで、それほど大部なものにはなっていない。彼が提起する世界史解釈についての仮説は、正直に言えば、往年の勢いはなく記述がラフな面は否めないが、それでも十分エキサイティングだと俺は思う。人類が農耕を始めてから、南シベリア（と言ってもセミレチエというカスピ海北部から興安嶺山脈の北満州までのかなり広大なエリアということになる）における遊牧民族による国家が、人類にとって文明の発祥となり、それがシュメール人によってメソポタミアに巨大建築物などの形で持ち込まれただけではなく、西にゲルマン民族の大移動をもたらしてヨーロッパ文明を築かせ、東には扶桑国の蘇我氏として日本に伝来し日本文明の基礎を築いたという壮大な仮説だ。（蘇我氏は、周知のごとく、大化の改新というクーデターで蘇我入鹿が中大兄皇子らに殺害されて以降衰退していくことになるが、蘇我氏がもたらした文化は山人の暮らしの形で日本に根付いた。）そして、経済発展の原理としては、内部に異質なもの・対立物を取り込むことによる二重性が重要で、ヨーロッパのキリスト教史の正統と異端や、日本の平地稲作民と山岳焼畑民との併存が、その原動力だという。蘇我氏渡来説や、シュメール文明と日本文明との類似性などは、学会の通説としては俗説として否定されているため、栗本氏の主張もしばしば「トンでも」扱いされているようだが、彼が学者として一貫して挑戦し続けていることは、パラダイムの転換ということなのだろう。考えてみれば、彼が師と仰ぐ経済人類学の祖カール・ポランニーもまた、それ以前のマルクス主義的発展段階説のような通説経済史の世界観に挑戦し、見事に経済人類学という分野を開拓したわけであり、栗本氏の挑戦も、閉鎖的な歴史学界の断裂した人類史解釈に対する彼なりの闘いであると解釈できる。また、氏が尊敬していたアーサー・ケストラーは、「層の理論」などよってニューアカデミズムという科学論ブームを引き起こした。加えて、東欧に多いアシュケナージ・ユダヤ人はカザール帝国の末裔であって、古代ユダヤ人とは異なるという衝撃の著作まで著した（ケストラーはこの著作が原因で抹殺されたという説まである）。ともかく、既に70歳を超えてなお、これまで自分自身が追い求めてきた世界解釈を統合していこうとする栗本氏の意欲は、彼の言説の真偽とは別に、立派な学問的態度であると俺は思う。経済学なり歴史学なり、現代の社会科学が多くの点でいろんな問題や矛盾を抱えている以上、我々にできるささやかな挑戦は、どこまでもパラダイムの転換なのではないかという気がする。それこそが、学者という職業に残されているロマンなのではないだろうか。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.05.03

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  政治家諸氏に告ぐ

  政治家諸氏に告ぐ先日、ある選挙における候補者の演説の一部をテレビで見ていたところ、その候補者が次のように演説をしていた。「この選挙で勝って、この地域に何ができるのか、国に何ができるのか、それを皆さんと共に考えていきたいと思っています！」考えてみれば、こんな感じの演説しかできない政治家が多過ぎないか？もしそうだとしたら、もはや自らのセンスが相当にずれてしまっていることすら気付かないほどに感覚が麻痺しているということなのだろう。改めて言うまでも無く、「何ができるか」を考えることこそが、政治家を目指す候補者のそもそもの仕事ではないのか？それが政策ということであり、マニフェストなのではないのか。有権者のほうは、各候補者の政策の中から、自分が良いと思う候補者に投票するというのが、選挙での建前だ。それを、有権者と一緒になって考えますなどと言っているということは、「当選してから考えます」＝「今は何も考えていません！」と公言していることと同じだ。これほど有権者を愚弄している態度はないのだ。ところが、こんな候補者でも、党公認の後援会組織が強かったり、地盤看板があったりして、当選してしまうことが珍しくない。また一見したところ、「皆と一緒に考える」という姿勢が民主的で謙虚な態度だと受け取られてしまう「日本的な風土」も作用して、誤解されてしまうのかも知れない。あまりに無内容な選挙運動が横行しているように見える日本の政治は、このように堕落した候補者によって、一層不信感を煽られているのだということをもう少し自覚したほうが良い。自らの政治的政策も持たず、不勉強なままの政治家は本来立候補する資質すらないだろう。あるいは、自分で考えた政策を持って政治家になったとしても、今の政治制度の中では、それを実現することなどできないという、ある種諦めと開き直りのなれの果てなのだろうか。そういう面があることは俺も否定はしない。だが、もしそうならば、政治制度や議員制度そのものを、その根源から具体的に変革するという政策を掲げて挑戦する以外には無いではないか。どこまで行っても、政策を示さずに政治家を目指すなどという狂った話にはならないはずだ。心ある政治家諸氏は目を覚ますべきだ！ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.04.14

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  アベノミクスは人為的なバブル経済政策ではないのか？

  アベノミクスは人為的なバブル経済政策ではないのか？黒田日銀総裁が、2年間でこれまでの約2倍の290兆円規模の金融緩和（「異次元の金融政策」）を発表した途端、東証では株価が続伸し、円安が起きているというニュースは、周知のとおりだ。だがこの政策は、要するに、日銀が民間金融機関に大量にカネを渡して「運用してくれ」と言っていることと同じだから、適当な設備投資への融資に向かわなければ、株などの証券資産に向かわざるを得ず、実際そうなっている結果、株価が上昇しているということではないかと思われる。つまり、円を使って株でギャンブルをやってくれと、日銀が金融機関に依頼しているようなものではないだろうか。もしもそうだとしたら、これは企業の実態や景気の実態が良くなっての株価上昇ではないわけで、人為的に作り出されたバブル経済に過ぎない。なお、理屈上は、他の資産（例えば、土地や金などの動産不動産）での運用も考えられるが、今のところそれらの価格は落ち着いているようだ。ただ、20数年前のバブル経済と同じで、バブル経済であったとしても資産価格が上昇することによる利得効果が発生することは事実だから、それらのキャピタルゲインが一定の消費支出増加に向かうことはあり得ることだ。実際、上記のニュースは富裕層で高級品への支出が伸びていると伝えている。結局、日銀がやっているこの金融緩和は、一方で円安をもたらして輸出企業の増益を実現しながら、他方で資産バブルをもたらしてキャピタルゲイン効果によって消費支出を増やそうという（いつか来た道の）「経済政策」だということになるだろう。俺個人は、経済学者の端くれとして、このようなバブル経済は、何かをきっかけにした国債価格の下落、金利の上昇、ハイパーインフレーション（通貨価値の暴落）によって一挙に崩壊し、スタグフレーション的な状況、ないしは、一種の恐慌的状況が出現するのではないかという危惧を抱いている。しかも、GDPの2倍にも相当する借金残高を持つ日本の財政状況では、その可能性は十分にある。従って、日銀が行なっている行為は、まさにギャンブルであり、ハイリスクの賭博なのではないか。そう指摘しているエコノミストも少なくない。だが、90年までのバブルの時と同様に、目先の利益に惑わされるのが人や世の常であるから、アベノミクスだの日銀の異次元金融政策だのも、評価される声が無くなることはないだろう（それが失敗だと分かるまで）。いずれにせよ、この実践は経済学の中で長い間論争されてきた問題に決着を付ける良い材料であることは間違いない。これが失敗だと分かった時には、取り返しのつかないことになってるかも知れないが。＜追記＞日銀が2年間でばら撒くとした上記の290兆円もの資金だが、無条件でそんな大金を金融機関に渡すぐらいなら、直接各家庭から資産を買い取ったほうが早いだろう。例えば、2010年現在の日本の総世帯数は統計では5,184万戸だというから、単純に計算すると各世帯に2年間合計で560万円ずつの支給となる！この中には単身世帯もあれば、扶養家族世帯、親との同居世帯もあるだろうから、実態に合わせて、例えば子供や老人がいる世帯（約3,621万戸）には、2年間で700万円（1年間350万円ずつ）、残りの単身世帯（約1,564万戸）には、2年間で200万円（1年間100万円ずつ）、日銀が各世帯から等価値の資産を買い取ってお金を支給するとしたほうが手っ取り早いのではないか（それでも290兆円にはならないし）。これは、各家庭に約10万円から30万円ボーナスが2年間毎月支給される！ことと同等だ。これぐらいのあぶく銭が各家庭に突然転がりこめば、国内消費をきっと押し上げるだろう。そして、そのほうが国民に熱烈に歓迎されるに違いない。こっちのほうがずっといいではないか！今回の日銀の政策は、それぐらい馬鹿げたものであるように思われる。（各家庭に同価値の資産が無い場合（そして圧倒的多くの国民は現金以外のそんな資産など持っていない）には、国が「現金引換券」として債券を発行して各家庭に支給し、それを日銀に引き取ってもらう形となるから、債券暴落リスクはもっと高まるが。）ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.04.06

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  大原孫三郎

  大原孫三郎（1880-1943）俺がまだ若かった多感な時期に、その生きざまに最も感動を覚えた近代日本の偉人である。俺が大原孫三郎を知ったのは、大学の学部ゼミで経済学を勉強していた時であった。ゼミの指導教官が岡山出身の先生で、四年生になった俺達が卒業ゼミ旅行を企画していた頃、倉敷行きを提案してきたのだが、その時「大原孫三郎という人を知っているか？」とはじめてその名を教えてもらった。卒業ゼミ旅行は倉敷となり、倉敷紡績の工場跡地を利用したホテル倉敷アイビースクエアや、大原美術館などを訪れた。当時、俺が学んでいた学部の経済学の教員は全員がマルクス経済学の先生であったのだが（80年代の地方大学では決して珍しいことではなかった）、俺自身も熱心な？マルクス学徒だったため、大内兵衛だの久留間鮫造だの宇野弘蔵だの、有名なマルクス経済学達がこぞって集まっていた社会科学の研究所である、大原社会問題研究所という名前は聞いたことがあった。それが大原孫三郎によって設立された研究所だったのだということを、その時初めて知った。また、著名な統計学者として知られていた高野岩三郎（日本統計学会初代会長）が大原社研の初代所長だったことも、その時初めて聞かされたと記憶している。大原孫三郎は、倉敷出身の大地主で大金持ち、そして資本家でもあったので、そんな人がマルクス主義の研究所を作るなんて、なんと心の大きな？太っ腹の財界人なんだと、単純な学生の俺はとても感動したことを覚えている。だが、この小著にもあるが、大原自身はマルクス経済学者であった河上肇から影響は受けてはいたものの、マルクス主義者のために研究所を作ったのではなく、当時どのような労務管理が、働く者にとっても会社にとっても有益であるのか、単純な党派的な階級闘争史観ではなく、科学的な見地に立脚した貧困問題や衛生問題の解決に尽力したかったのであり、大原社研がマルクス主義者の巣窟みたいになることを望んではいなかっただろうと思われる。但し、大原は社研の運営や研究内容には一切口出ししなかったと伝えられている。結果的に、1928年の3・15事件によって大量に共産党員が検挙されることで、大原社研のメンバーも関与していたことが明らかになって、研究所は1937年に東京に移転することとなってしまった。（現在、大原社研は法政大学の下に置かれている。）なお、広島大学の初代学長であった森戸辰夫もこの大原社研の一員であった。彼は、無政府主義者クロポトキンに関する研究論文を発表したことで、危険思想家として逮捕され東大経済学部を追われたが、出所後（1920）この大原社研に来ている。（なお、クロポトキンの無政府主義の思想は、一般に考えられているほど危険でも過激でもないと俺は思う。クロポトキンの核心は、共同体による社会の再構成であり、理想主義的な連邦国家論に近い。「無政府主義」という名前が、あらゆる権力を否定し、国家の解体をイメージさせることから、権力者によって真っ先に弾圧の対象とされたことは、日本での大杉栄の虐殺に見られるように、大変不幸なことであった。）ともあれ、大原が社研と同時期に設立したもう一つの研究所、労働科学研究所と同様に、彼は社会の中の悲惨な状態や貧困の克服を実業家としてだけではなく、学術研究的にも行ないたかったのであろうことは確実である。すなわち、単なる経営者・実業家という範疇を超えたスケールの大きさを感じさせる人物であった。彼が手がけたものは、紡績業に始まり、金融、電力会社、新聞社、病院、研究所、美術館、孤児院などなどであり、そのほとんどが名称を変えながらも今日まで存続している。大原孫三郎は、岩崎弥太郎や渋沢栄一などの実業家ほど有名ではないかも知れないが、明らかに偉大な功績を残した日本の重要な実業家であった。ルソーやヴィクトル・ユゴーのような偉大な魂が、近代日本にも存在し、人知れず大きな影響を与えていたことは、大変な誇りであると俺は思う。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.03.04

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  いわゆるアベノミクスについて

  いわゆるアベノミクスについて1月にインドネシア、2月にはラオスに留学生の面接選抜をしに行って来たのだが、その間に、日本ではアベノミクスやらで急激に円安が進行し、株価が上昇するということになっている。いわゆるリフレ政策によって、円安が進行し、物価を上昇させようという政策が功を奏してきたのか？だがこの問題、少し落ち着いて考えれば、ほどんと酷い政策だと分かるのではないか。安倍政権は日銀に圧力をかけて、国債引き受けなどをさせて円を大量に市場に出回らせ、円安及び物価上昇をもたらそう（デフレ脱却）としているわけだ。まず、円安によって、輸出産業を活性化させようという狙いがあるわけだが、確かに中小零細も含め、輸出産業は円安によって益を得る可能性が高いが、既に大手製造業は多くのラインを海外に移転して、円高状況を織り込み済みにしているのではないか。その上、製造業の雇用吸収能力は、今はもうない。平成24年12月現在の統計によれば、製造業の雇用者は全ての産業を合計しても1,000万人を切って996万人となっており、就業者人口6,256万人のうち15.9％に過ぎない。ちなみに、TPP反対などで守れと叫んでいる日本の農林水産業の就業者は212万人に過ぎず、全体の3.4％になっており、製造業と合わせてみても20％を切る割合でしかない。つまり、日本経済はその8割がサービス関連産業によって支えられているのである。従って、今更円安を人為的に無理やりもたらしたからと言って、恩恵を受ける産業がそう多くあるとは考えられない。逆に、多くの輸入産業（石油・天然ガス関連、外食産業、輸入雑貨など）は大きな打撃を受けるであろうし、そのコスト増加を早晩値上げによって消費者に転嫁せざるを得ないであろう。こうしてもたらされる物価上昇は、消費者にとっては殆ど何のメリットも無い。では、アベノミクスが描く、デフレ脱却によって景気回復をもたらすとは、一体何なのか。インフレがもたらされることで得をするのは、実質賃金が減少して労働投入コストが減少する企業である。（他方、原材料分はインフレによって増加するだろうが、実質コストは変わらない可能性がある。）その結果、売上量が同じなら、企業は目減りした人件費の分だけ利益増がもたらされる可能性があるし、その利益を新たな設備投資に回せば、更に景気の拡大につながるというわけである。すなわち、労働者の賃金が同じままなら、実質的に労働者と企業との所得格差は拡大することになる。つまり、円安もインフレも、多くの一般国民にとっては実害しかないということなのだ。また、2008年12月以来、実質ゼロ金利が既に5年目に突入しているが、設備投資がにわかに増加しているという状況でもないので、企業は利益が上がっても貯蓄に回すだけの可能性が高い。その貯蓄は、金融機関によって融資には回らず、結局国債等の購入に再び回るという現状が更新されるだけになる。他方、最近の株高は、円安によって海外投資家にとって値ごろ感が出て購入されているものかも知れないし、デフレ脱却アナウンスメントでインフレ期待が出て来た投資家の願望によって上昇している結果なのかも知れない。日本の企業価値は、平均株価が1万円を割るほどの値打ちしかないとは思えないので、個人的にはもっと株価が高くてもいいのではないかと感じる。例えば、世界銀行のデータを使って労働生産性を比較すれば、日本は2010年現在においてもアメリカやドイツを凌駕しており、中国はまだ遠く及ばない状況を維持している。日本の生産性の高さは、マクロ経済全体でみた場合、まだ悪くはない。このような実態は、もっと株価に反映されてもいいのではないかと思う。だが、株価と為替の変動は、投資家達の「見通し」「気分」「雰囲気」という群集心理で決まっている部分が大きいと言えるから、問題は、この投資家心理に日本の企業パフォーマンスと価値を正当に伝える環境をもっと作るべきなのであって、円の価値を毀損させることで名目上の価格を上昇させることではないはずだ。それからあと一つは、証券取引等によって資産運用を行なうというやり方を、一般の国民にもっと定着させる努力をすべきだということだ。その種のビジネスはまだまだ少ない上に、「株に手を出すのは危ない」という単純な一般論によって、気分的に排除されているのが実態だ。どこまで行っても郵便局一本やりの金融社会主義の体制では、財政投融資によって無用な資金の浪費が行なわれ続けるだけであり、実は「郵便局に金を預けていても危ない」という状況だと言っていい。金融資産の運用の問題は、典型的なリスクを覚悟した選択の問題であり、絶対に安全な資産の保全ということはあり得ないということを、正当に判断できるよう環境をきちんと整えていくべきではないのか。つまり、そのような地道な構造改革を堅実に行なうことこそが、日本の企業価値を正当に評価させ、そこに多くの資金を呼び込める確実な道ではないのか。だが、アベノミクスは、日銀に圧力をかけて円の価値を毀損させるよう仕向けている一方、他方で旧来型の財政バラマキによる公共土木工事で一層の借金を作り出すだけの結果に終わる「いつか来た道」に過ぎないように見受けられる。ここ最近の円安と日本の株価上昇は、世界経済の変動によって決まっているのであって、アベノミクスとは関係ないように思われる。但し、世界経済のトレンドを見て、それを利用する形で政策ステートメントを発表すれば、あたかもその政策が効いたかのように演出することは可能であるかも知れない。まさか、政府がそんな「演技」をしているとは思えないが、官僚が知恵を付けている可能性は否定できない。いずれにせよ、現在世界の経済で起きていることは、経済論争に対して事実によって解答を与えるだろうから、大変興味深い歴史的瞬間だと言っていい。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.02.10

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  茶道について

  茶道について2013年、明けましておめでとうございます。今年も、これまで同様、好き勝手に社会及び経済のことを語ってまいりますので、どうぞよろしくお願いします。さて、古典を読んでいると、時々本当に凄いと思える本に出会えることがある。今から100年以上前の1906年に出版された岡倉天心の『茶の本』は、まさにそう言うに相応しい本だと思う。本と言っても、かなり薄いパンフレットのような感じの読み物だが、これは日本文化の神髄を極めて端的に指摘している重要な文献だ。これを読むと、日本の茶の湯文化は、その思想的背景が極めて深いということを思い知らされるだろう。こんな凄い本が、明治維新後の、日露戦争直後に、しかも英語で出版されていたというのは驚愕だ。当時の文化人や知識人達が、いかに真剣に国際舞台で欧米列強と格闘していたかという緊張感や集中力が伝わって来る。同時代では新渡戸稲造の『武士道』があり、今日ではとてもポピュラーになったが、それに劣らない程に内容の濃いものだと言えるだろう。（そう言えば、『武士道』においても茶の湯については触れられている(第6章）。そこでは、一つの芸術までに高められた精神修養の実践例として茶の湯が挙げられている。）どちらかと言えば、『武士道』のほうは、日本人の秩序性や倫理観が、儒教をベースにして仏教、神道との混成物であると説明している点で、その視点が官吏側・統治側にあると言っていい。以前述べたように、日本では、特に江戸時代において、儒教研究（儒学）が盛んになり、官学としての朱子学や、陽明学、古学など、支配する側の学問または武士という階級の秩序性が研究されてきた（かの政治学者丸山眞男は、その頂点を古学の荻生徂徠に見ていたはずだ）。これに対抗する形で、本居宣長などの国学、石田梅岩の心学、安藤昌益の農本主義なども興っている。儒教、仏教、神道の三つを否定的に超越しようとした富永仲基の「誠の道」などもあった。だがしかし、これらの儒学に対抗してきた日本思想は、学問的な価値はともかくとして、日本社会の多数派にはなり得ていないように感じる。大ざっぱに言って、これらの儒学研究的蓄積が、日本の身分社会を強固に支え、イエやムラの論理を構築していったため、明治維新以降、第二次大戦での敗北を経験してもなお、こういう鎖国的関係性社会や身分的社会制度を結局変革しきれず、今でも親方日の丸的な「風習」を採用し続けているのではないか、というのが俺個人の直感だ。（要するに、強固な幕藩体制・武家支配が、強固な中央集権体制・官僚支配に置き換わっただけではないのか。）この文脈で、新渡戸の『武士道』を見ると、確かに日本人の多くに今も武士道的精神、宿命的な死への覚悟、滅びへの美学などの感覚が（無論俺自身の中にも）存在していることが分かる。だが、あまりに忠義に拘る精神が同時に、現代日本の大きな閉塞感の遠因にもなっているのではないだろうか。日本社会や経済を改革するということは、このような思想的・文化的な精神の変革でもあるのだが、孔孟思想以来の伝統を持つ儒教がイエやムラをがんじがらめにしている状況は、相当程度手ごわいと思っていい。（しかも、そのような風土を根底で支える日本官僚は間違いなく日本のエリート層であり、優秀であることに違いはない。）しかし、岡倉天心の『茶の本』は、全く異なる文脈から、儒教的閉鎖性に対抗する思想や文化が脈々と日本で受け継がれていたということを気付かせてくれる。茶の湯の思想的バックボーンは、老荘思想であり、それが道教的蓄積から禅宗に引き継がれて日本に入ってきているという歴史からも、お茶は儒学のような官学とは異なる庶民の文化であり、芸術であったのだ。そして、茶の湯が教える調和の心、自由で豊かな鑑賞精神、質素や謙譲の美徳も、武士道と同様に今も多くの日本人に共通する特質であると言える。（このような草の根的な日本文化の強靭性の指摘は、柳田國男にも通じるものである。）ここに日本社会を変えていくヒントが転がっているように俺には思える。今なお我々の生活習慣にすんなりと入ってしっかりと根付いている茶道的精神は、武士道以上に柔軟で強靭かも知れない。問題は、これらが西洋合理主義と出会った時に、その自由で柔軟な精神を委縮させてしまわないかどうかということだ。岡倉自身は、どちらかと言えば新渡戸同様、その強固な精神性には懐疑的だったように思う。だが、この問題は、グローバル化が不可避となった今日に生きる我々に残された本質的な課題なのではないかと俺は思う。経済がどんどん発達し、社会がどんなに変化しても、不断の変化の中で逞しく生き残り続け、受け継がれていくべき日本や人間社会の固有性のヒントが、この本では与えられている気がする。日本社会における「不動点」は、あれこれの外形的装いや既得層を固持することなどでは決してないということがよく分かるだろう。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2013.01.01

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  日本白票党はどうよ？

  日本白票党はどうよ？先般行われた第46回衆議院選挙は、予想された通り自民党の大勝であった。だが、朝日新聞によれば、投票率自体は、59.32％で戦後最低だったという。最初から勝負の見えた？選挙と、騒ぐだけ騒いで何らまともな勢力を結集できずに小党分立に終わった新興政党に、多くの国民はしらけてしまった結果だと考えるのが自然であろう。また、白票等の無効票は204万票にも上り、それは投票者数の3.31％に当たるという。この無効票率も、それまでの過去最高の2.99%を上回るものであった。204万票もあれば、比例代表なら5議席程度は確保できたかも知れない数字だ。今回投票を棄権した31%と、白票を投じた上記3.3％を併せた35%弱ほどの有権者の行動は、ただの「無責任な行動だ」と言って片付けられる問題なのだろうか。選挙に行かない、いわゆる投票棄権者について、時々「選挙に行かないことは国民として問題だ」と非難されることがある。だが、これは経済学で言うところのフリーライダー問題とは少し違う。なぜなら、投票権を放棄することで発生するかも知れない不利益を、彼等は引き受けざるを得ないからだ。現在の公職選挙法第68条によれば、候補者の名前を記入していないものは無効票として処理される。一般に、無効票を投じたり、投票を棄権してしまえば、支部活動等の盛んな組織政党に有利になることが知られている。日本の場合は、自民党、公明党、共産党などの組織票が強固な政党に有利になるわけだ。その選挙の結果、自分にとって不本意な政策が取られてたとしても、彼等は、反対政党を支持していた有権者達と同様に、その政策を受け入れざるを得ないわけだから、投票を棄権したことを持って一方的に無責任であると非難される筋合いはない。無効票や棄権によって得るかも知れない彼等の不利益は、いわば「自業自得」なわけだから、フリーライダーでも何でもなく、普通にリスクを賭けた行動でしかないということだ。それよりもむしろ、このような無効票や棄権行動は、強い政治批判という意味合いを持っているかも知れないということのほうが、もっと重要な問題である。とりわけ、投票所まで行ったにもかかわらず、わざわざ無記入のまま投票するという白票行動は、極めて強い政治的なメッセージがあると解釈できる。これは「適切な候補者が見当たらない」「相応しい候補者はいない」というストレートなメッセージなわけだから、それ自体が極めて積極的な政治行動・投票行動なのだ。このような有権者のいわば能動的な政治的行動は、何らかの形で選挙に活かすべきではないだろうか。例えば、その一つに、「日本白票党」の結成！というアイディアがある。これは、何か特定の政策を掲げるという政党ではないが、現行の政治家達の掲げる政策や実践が、あまりに酷く、無内容で無責任である場合、選挙である一定の支持率を得た場合には、選挙の無効とやり直しを求めるという「政党」だ。こうすれば死票が無くなり、政治家達の政策とその実践への責任にも、相当な緊張感が出て来るのではないか。少なくとも、「相応しい候補者がいない」「入れる政党が無い」という問題が無くなり、選挙は俄然面白くなるだろう。それだけではない。時事通信によれば、小選挙区による「死票」は全300小選挙区の合計で約3730万票にも上ったという。小選挙区候補の全得票に占める「死票率」は56.0％で、前回の46.3％より9.7ポイントも増えたらしい。この死票の問題を克服するには、ネットでの投票も許可する完全比例代表制及び全国区にして、得票数の多い順から議席を割り当てるという抜本的な改革が最も有効であるはずだが、自分達の議席に直結する現役議員達が、自らの既得権益を手放すような選挙改革や定数削減をするとは到底思えない。その辺りの政治家達の姑息な計算も、多くの国民はとっくに見抜いているのではないか。戦後長く続いてきた地盤・看板・鞄という不透明な三バン構造も脱却すべき対象である。よって、上記のことと組み合わせれば、日本の選挙を盛り上げる方法は以下のようなことだ。・日本白票党を結成する・ネット上での投票を可能にした全国区の完全比例代表制の選挙とする・候補者達の選挙政策等は全てネットによって公開する（文書、画像、動画の全てを許可）・白票党が一定の支持率を得た場合には、当該選挙を無効とし、再選挙とする選挙による死票が可能な限り無くなり、選挙運動にできるだけ資金をかけず、ほぼ正確に民意が反映される選挙制度とするにはこれしかないのではないだろうか。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.12.24

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  一般国民は政治家にきれい事を求めてはいない

  一般国民は政治家にきれい事を求めてはいない今度の選挙は、政治家達のいろんな欲望？が剥き出しになって、完全に混戦模様だ。通常、人が利己的に行動してしまうことは誰にも止めようがないが、あまりに政治家の「公約｣が酷いように感じるのは俺だけではないだろう。（しかもそれが、俺を含めた無党派層という多数派の感覚ではないかと思う。）幾つかの例を上げるだけでも以下のものがある。政治家達は、何故こんな単純な事実をきちんと示して、国民に政策を問わないのか。(1)エネルギー問題｢原発ゼロ」だの｢脱原発｣だの｢卒原発」だの、そんなスローガンはどうでもいい。実際、原発を止めて同じようにエネルギーを確保するなら、どんなにコストがかかっても、火力発電の比率を上げて、原油やガスの価格上昇の影響で電気料金が上がっても仕方が無いということのなのか。その結果、生活やビジネスが圧迫されても我慢しろということなのか。また、それによって二酸化炭素排出を増やし、気候変動に悪影響が出ても仕方が無いということなのか。未完に終わった核燃料サイクルで積み残された大量のプルトニウムの処理(バックエンドの問題）をどうするのか。これらの問題に対する解答や対案を持たず、一次エネルギー供給の1％程度(電力の電源別供給で10％程度）でしかない再生エネルギーで賄えるかのような夢物語を主張することのほうがよっぽど危険ではないか。エネルギーは、今ある原発を利用し続けて安定的に安い電力を供給し、時間をかけて償却していくほうが現実的なはずなのに(そして、おそらく多くの人々がそう思っているはずなのに）どの政治家、政党もそういう成熟した議論を主張できていない。（10年から30年もかけて｢脱原発」とか言っているぐらいなら、その間稼働させて電力供給させろっての！）(2)景気問題日銀による無制限の量的緩和は景気対策などにはなり得ないのに、多くの政治家が、自らの景気対策の怠慢の責任を日銀に押し付けているように見える。日銀が量的緩和をしても、その分だけ、民間銀行が市場から資金を回収し、日銀に預け直すだけだから、本質的には何の意味も無い。国債の乱発で政府の借金を増やして、必要も無い公共事業を行なっても景気が良くならないことは、この20年間でほぼ実証されている。世界最悪の借金大国のままい続けていいということなのか？紙幣を大量に発行しても、それは円の価値を毀損させるだけで、その結果ハイパーインフレーションが起これば、それこそジンバブエ経済のように、完全に経済は破壊されるだろう。もっと政治家達は、専門家を交えてまじめに経済政策を練るべきだ。(3)雇用対策最低賃金制度というのは、もはや労働の流動化・多様化にとっての害悪でしかないのに、その廃止に反対しているのは、労組と左翼系政党という｢奇妙な」現象となっている。労働者の味方を標榜するべきはずの組織が、実は一部の労働者の権益だけを守ることになっているのだ。自分達の雇用だけを守って、若者や非正規労働者の雇用機会を奪っているのが、最低賃金制度ではないのか。高い賃金で硬直化させてしまえば、企業は雇用を減らすしかないだろう。また、新規ビジネスも参入しづらくなる。逆に、賃金を弾力的にすれば、従来よりも給与水準が下がっても雇用全体が増えるだけでなく、安い給料でも働きたいと考える者達を集めて新しいビジネスが生まれる可能性もあるだろう。労働者の流動化が、一つの有効な経済政策なのだということを、殆どの政治家は言っていないように思われる。(4)社会保障と税の問題今や国家予算の30％にも相当する約30兆円の現行社会保障費を維持するには、税金を上げる他は無い。税を上げないのであれば、社会保障を減額するしかない。また、約20兆円もある地方交付税交付金などを廃止して財源を地域に移譲することや、中央・地方を含め公務員や議員などを大幅に削減するなどの改革を断行するしかないはずだ。政治家達は、自らの大幅定数削減も含めて、一層落選しやすくなり、不安定な身分になることを恐れて歯切れが悪い。(5)国防問題「米軍基地はいらない」｢オスプレイは危険だ」ということならば、日米安保条約を廃棄して、日本は国防を自らの手で行なうのか。一層高度な戦闘機、艦船などを用意するのか。中国、北朝鮮という核保有国に隣接している状態で、日本はどのような安全保障の戦略を持つのか。核武装を行なうのか。国防問題は、｢県民感情」と同列で語れる問題ではないはずなのに、評判と批判を恐れている政治家はきれい事を言うだけで、堅実な安全保障論を語っているようには見えない。以上のことは、全て国の基本に関わる大きな問題ばかりのはずだ。これらの問題を正面から誠実に国民に問わない政治家は、それだけで政治家としての資質を欠くと言っても過言ではないと俺は思う。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.12.01

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  デフレ対策などより徹底した投資機会を作れ

  デフレ対策などより徹底した投資機会を作れ日銀に量的緩和をさせて、いわゆるデフレ対策なるものを取らせようという議論は、経済政策的には全くナンセンスだと俺は思う。既に何度も書いてきたが、デフレは様々な経済活動の合成的結果であり、不況の原因ではないからだ。小幡 績氏が指摘するように、不況下において日銀が量的緩和をすると、更に景気を悪化させる可能性が高い。不況下で量的緩和すれば、実物投資への融資機会が少ないと考える金融機関は、証券投資に資金を回すため金融商品の価格が上昇し、それを見た他の投資家がキャピタルゲインを求めて更に金融商品を購入する。不況下では、民間証券（すなわち株式など）よりも、国債が確実に手っ取り早く利回りを得るのにいいということになる。これは一種の債券バブル的状況だが、既に日本の国債価格は高止まりで推移（低利の利回り）が続いている。だが、実物投資が増えていないため、どこかの時点でこの状況は崩壊し、国債価格も急落する可能性が高い。結局、日銀の量的緩和は、この状況を促進するだけのことで、景気対策としては全く有効ではない。更に、デフレが問題になるのは、一般の物価が下がっているのに、過去の借金などの額が減らない（実質的に上昇する）時だとされるが、これも一概には正しいとは言えない。デフレは一般に実質賃金も上昇させるから、過去の借金に対して賃金が一定のままか上昇すれば、デフレ的状況は問題にはならない。よって、問題はデフレなどではなく、むしろ実質賃金がどうなっているかのほうだ。日本のデータを見れば、97年頃から実質賃金は低下傾向にあり、リーマンショック以降、更にその状況が悪化しているように見える。このことは、デフレの進行以上に名目賃金が低下していることを意味しており、こちらのほうがよっぽど大きな問題なのである。この名目賃金の低下は、もちろん主要には不況下における業績の悪化や投資の縮小による雇用の停滞などが原因だろうが、他方では国際競争の中で、より安価で同質かそれ以上の質の商品が市場に入るため、賃金も含めた生産要素の価格が低下していることも原因しているだろう（要素価格の均等化作用）。要するに、一層国際競争が激化しているにもかかわらず、相変わらず国内の民間投資需要が冷え込んでいるということが不況の原因なのだ。通貨の量が足りないからなどということではない（上記の通り、むしろ金融は過剰だ）。ケインズが指摘したごとく、一般に民間需要が不足している時は、政府がその代わりに有効需要を作り出せばいいではないかということになるのだが、日本ではこれは既に限界に達している。政府の債務残高は、2010年現在で1,000兆円を超えており、対GDP比は215％にも達していて（2012年SNA制度部門別勘定ストック編）、堂々の？世界ワースト1だ。これは、政府の一般会計（95兆円）だけではなく特別会計（345兆円）も含めた全ての歳入額およそ44０兆円との比で考えても同様の比率になる。これ以上の借金を重ねて、政府が何かの公共事業で一時の雇用を生み出すという余裕はもはやない。しかも、政府支出の大半は社会保障などの福祉関連支出や公務員への人件費などであり、これらを大幅に削減でもしない限り、新たに借金をして支出を増やすというのは、とうの昔に（おそらく90年代かそれ以前から）限界に達しているのだ。社会保障や公務員の数を維持するならば税金を上げざるを得ず、税金を上げられないなら社会保障や公務員を削減しなければならないことは、あまりに明らかなのだが、選挙での再選しか考えていない政治家は、この単純な事実をきちんと国民に伝えてるようには見えない。おまけに、日本は次の図で見るように、公的支出が民間投資の合計水準をずっと上回っているのだ。（その下の図は、公的支出と民間投資との比を取ったグラフ。）経済危機の時に一時公的支出が民間投資を上回るのは自然なことだが、実際の公的支出の多さは既に慢性化している。こう考えて来ると、景気を引き上げる経済政策としては、民間投資がどんどん参入し、多くのビジネスがチャレンジできるような環境を作ること以外無いではないか。しかもそれが、本来最もまっとうな経済政策なのである。公的部門が行なうべきは、既得権益を握っている一部の独占的な業界団体を保護することではなく、多くの産業規制を緩和し、法人税を引き下げ、容易に資本が参入してくる状況を作ることだけであり、政府が音頭を取ってあれこれと民業圧迫や一部団体保護のような事業を行うことではない。国際間の金利差を考えると、円高傾向はもはや持続的なものと考えたほうがよく（金利平価説）、輸出産業にとっては今後も厳しい状況が続くだろうから、製造業は基本的に海外に展開し、生き残りをかけるしかない構造となっている。しかも、今や製造業の雇用吸収能力はそれほど大きくはなく、生産性の高さはもはや極限的でさえある。日本の中で新たなビジネスチャンスと雇用吸収が残されているように見える分野は、多くの人達が指摘しているように、農林水産及びサービス関連産業である。すなわち、農漁業、医療・福祉、教育、通信・放送、金融、エネルギー、商業、サービス業等々だ。だが、農林水産業における農協や漁協のような団体、医療・福祉産業における医師会などの団体、通信・放送業界における巨大マスコミやテレビ局、金融業界における郵便局や公的金融機関、教育における大学設置審議会や助成金、エネルギー業界における独占的電力会社などなど、多くの既得権益団体がロビー活動を行なって政治家や官僚に圧力をかけているようには見えないだろうか。これ以外にも、建設業界におけるゼネコンの存在などが長年指摘されていたはずだ。これらのサービス関連分野の規制を緩和し、法人減税などによって資本を呼び込み、徹底した競争原理を導入することだけが、新たなビジネスやイノベーション、そして雇用を生み出すための残された真っ当な道である。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.11.17

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  上杉隆氏は物書きとしての筆を折れ

  上杉隆氏は物書きとしての筆を折れこの間、3.11直後の各国の避難勧告に関する読売新聞の記事から一覧表をコピペった上に（しかも1年以上も前に）、「著者調べ」として自らの著書に盗用したとネット上で厳しく指摘されてきた、自称ジャーナリスト（元ジャーナリストらしい）上杉隆氏は、テレビやネット上での虚言、妄言、ごまかしを止めて、潔く罪を認めて謝罪し、また物書きとしての筆を折るべきだ。彼自身の問題行動については、以下のブログにまとめられているので参照してほしい。福島　信夫山ネコの憂うつ彼のこれまでの弁明を見聞きする限り、何らまともに盗用疑惑を晴らす説明はできていない。それどころか、完全に開き直って論点をそらし、逆に評論家の江川紹子氏や池田信夫氏を中傷しているだけにしか見えない。（他にも、メディアで名指しの有無を含めて中傷されている方々がおられるようだが、本気で名誉棄損等の法的措置を考えたほうがいい。彼自身がそれらの虚言で有料雑誌販売の商売を行っている以上、その行為は看過できないように思われる。）上杉氏本人がエラソーにこれまで展開してきたように、日本の言論空間や報道状況において、嘘やごまかし、隠蔽や排除などは最も罪深き行為であり、また盗用はそもそも著作権法違反という違法行為だ。こんな人物が、日本のジャーナリズムに対してあれこれを説教を垂れるなどもってのほかであるばかりでなく、彼をありがたがって使っているマスコミ（テレビ、出版社、報道機関等々）も、同じ程度に罪は重いと自覚する必要がある。彼のこれまでの著作や有料雑誌、メルマガ等によって、感化された人々が、更にネット等を媒介してその嘘を拡張させ、歪曲させて、結果的に被災地であるなしに関わらず、多くの人々に大きな混乱と風評被害を与える可能性は重視されるべき事柄だと俺は思う。彼がひどい開き直りと他人の誹謗中傷を行った番組を垂れ流した東京MXテレビ「5時に夢中」には、先日以下の抗議文を送付しておいた。ここから---------------------------------------------------抗議文1)上杉隆は盗用疑惑への反論としてＭＸテレビで「江川さんと池田さんがツイートを削除した」と批難しましたが、該当のツイートは上杉への中傷ではないし盗用疑惑とも無関係。2)「削除した」と批難する意味が不明。3)しかも実際は削除されていない。放送法　第九条 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。御社の誠実な対応を要求します。ここまで---------------------------------------------------俺自身が、上記権利侵害の関係者ではないので、もちろん抗議文は無視され、放送の訂正等も行われたとは聞いていない（今週金曜日にやるのかな？）。彼が日本記者クラブの閉鎖的体質を批判してジャーナリスト・デビュー？していた時は俺も応援したものだが、彼自身が「正義」を騙る詐欺師まがいの人物だったというのは極めて残念だ。批判されている盗用疑惑が真実ならば、彼は潔くその罪を認め、自ら認めているようにジャーナリストや物書きとして生計を立てることを辞めるべきだ。批判が真実ではないというならば、合理的で説得的な説明をすべきだ。状況は、上杉氏本人にとって極めて不都合であると思われる。それにしても、「正義の味方」を演じる者ほどインチキであるという経験則は、相変わらず真理であるようだ。残念だが時に真理は冷酷だ。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.11.01

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  イエとムラによる支配原理：日本社会論再論に関するメモ

  イエとムラによる支配原理：日本社会論再論に関するメモ前回の国家論の続きを少し（極めてマニアックな内容です（笑））。日本社会の固有性は何か。そしてまた、それは一体どこから来るのか。日本社会の固有性は、良かれ悪しかれ、その非流動性にあると言っていい。人もモノも、地縁や血縁に縛り付けられている状態を永遠に維持しようとしているようにさえ見える。つまり、最も封建社会・身分社会制度に向いている社会なのかも知れない。その典型的な社会装置が、イエとムラではないか。現代においても、日本人は、出自や家柄に拘ることが好きである。どんな家柄か、どの地域の出身かによってその人柄までを推し量るかのようだ。そして、経験的には、それが結構当たっている面があるように思われる。また、日本の歴史学や政治学における基本的視点は「人脈」重視であると言っていい。これは、その人物が、いかなるイエやムラの出身であるか、どんな地縁や血縁に強固に結び付けられているによってかなりの程度説明ができるが故に、その人脈を見ればどのような思想・信条や行動原理を持ち合わせているのかを推量できるということからなのかも知れない。このイエとムラという地縁体制の強固性は、前回述べたように、その儒教的思想（人治主義）から来ていると考えて間違いない。（その証拠に、儒教は家族主義を極めて重視し、それを基盤としていることが加地伸行（1998）等に指摘されている。）時代的には、江戸時代初期からの朱子学、陽明学など、また古学、心学も含めた、儒教思想の研究とその普及・定着が極めて熱心だった時代からだと思われるが、もっと起源は古いのかも知れない。それはともかく、このような支配原理は、明治維新や第二次大戦という動乱を経てもなお変わっていないのではないかと思われる。また、それは今日の日本における不透明な裁量行政の原因であるのではないだろうか。（現代もなお、永田町というイエの論理や、原子力ムラが批判されるのは流行りのようだ。）もしそうだとしたら、これは相当頑強な日本人の行動原理であるかも知れないということだ。均質性を「空気」として強要するかのような風土も、このことが原因であるように思われる。かの島崎藤村が葛藤した破戒の対象たるイエは、まだ脈々と日本に根付いているということだろうか。但し、イエやムラのような集団主義は、一種のコミュニティとして作用する面があるから、それが共同体組織としてだけ存在する場合には、互助の精神を涵養する上で重要な役割を果たすであろう。義理人情、滅私奉公という精神に、一種の美学を感じる日本人は今でも少なくないはずだ。私利私欲をなげうって公のために奉仕するという精神はボランティアの行動そのものであり、そのような行動原理を、新渡戸稲造（1899）は武士道として世界に知らしめたのだった。すなわち、このような集団主義の原理は、負の側面ばかりではなく、日本人の生活風習に根差しながら、積極的に文化を支えてきた面があることも事実だろう。問題は、時代の転換期に、このようないわば内向きの裁量原理が、いわゆる社会の既得権益層の保身行動として（あたかも正当な保守化のように）正当化され、温存されてしまうことである。このような日本の特殊性を問題にしてきた経済学者や政治学者は割といる。一番有名なのは、スタンフォード大学の青木昌彦による比較制度分析かも知れない（一時期は、ノーベル経済学賞に最も近い日本人経済学者の一人と目されていたが、最近はどうなのだろうか。そう言えば、今年のノーベル経済学賞は10月15日に発表される予定だ）。最近の彼の研究（2012）では、地縁関係（ムラやイエ）に縛られる日本・韓国と疑似血縁関係（宗族）による機能集団の中国とでは、同じ儒教圏でも質がかなり異なると指摘しているらしい。また、他には池田信夫による丸山眞男（1983）の再評価だ。丸山や池田によれば、共同体的基礎集団が機能集団に組み込まれているのが日本の特徴だという。類似の指摘は、「空気」の研究で知られる評論家山本七平（1977）などにも見られる。だが、この点は、例えば作家の堺屋太一（1993）が既に指摘していることでもあるが、要するに、日本の閉塞状況の原因は、機能体組織（ゲゼルシャフト）の共同体組織化（ゲマインシャフト化）による弊害だと解釈できる。（なお、ゲゼルシャフトとゲマインシャフトというのは社会学者テンニースの概念。）（この点については、拙稿（2000）参照）。実は、イエ制度の指摘については、経済学者村上泰亮（1979-80）によって既に行なわれていた点でもある。村上によれば、イエ制度の発生は、日本の荘園時代（平安期）以降の土地の分配とその防衛が起源であることが指摘されている。この指摘は興味深い。但し、和辻哲郎（1935）や梅棹忠夫（1967）等の指摘を考慮すれば、日本の独自性は、地縁に縛り付けられてもそこそこ農漁業生産性が上げられた、適度に豊かな自然条件にあったのではないかと俺自身は考えている。（だが、和辻の気候区分は、ケッペンのそれに従っておらず主観的だという批判がある。）そして、中国の独自性は、客家や封に代表される非定常型（狩猟採集型）疑似的血縁集団による行動原理にあるのではなかろうか。同じ儒教圏の国であっても、農耕定住型と狩猟採集型の2類型があったように思われる。そう考えて来ると、日本のムラ社会・イエ制度的行動様式は、長い歴史（平安・鎌倉荘園制度以来？）、儒教による人治支配の徹底（忠君思想、家紋の継承・防衛、義理人情・滅私奉公等）、地縁への固定という封建制・身分制の確立、適度に豊かな自然条件等の複合的合成結果である可能性が高いと考えられる。それ自体が伝統的であるが故に（またこれまでの歴史で何度も破壊されそうになりながら堅持したが故に、あるいは、何人もの反抗者が鎮圧されてしまった歴史があるが故に）、この行動様式は極めて頑強、粘着的であると言えるだろう。この結果、機能体組織の共同体化・家族主義化・家父長主義化が強化され、「空気」の均質化が起こり、身分固定の保守化が起こり、自滅への道を進んでいくかも知れない危険がある。そして、考慮すべきは、おそらくそのような「滅びの美学」を日本人は案外あっさりと受け入れてしまうかも知れないということである。（日本の儒教思想は、腹切り（ハラキリ）による死生観をも尊しとして、死者を丁重に葬るという風習まで制度化している（招魂儀礼）。そして、戦中の日本における「一億総玉砕」や「生きて虜囚の辱めを受けず」などの戦陣訓も、多くの日本人は自然な感覚で受け入れていたであろうことが容易に想像される。）従って、日本及び現代社会の課題は、機能集団と共同体組織・コミュニティを分離し、両者による多様なネットワーク（モザイク型ネットワーク）を如何に構築するかということではないだろうか。そしてそれが、法の支配・市場のルール（透明性の高い手続き）を徹底させ、人治主義や徳治主義を峻別し、家父長主義や身びいきの裁量を制限することになるように思われる。それはまた、機能的組織と共同体組織との上手な役割分担を再構成させるための第一歩であるように思われる。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.10.07

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  ルールか裁量か：アジアの場合、法治国家か人治国家か

  ルールか裁量か：アジアの場合、法治国家か人治国家か（長文注意）今から5、6年ほど前に、いわゆる「貸金業法」が改正（2006年）となり、その結果、多くの消費者金融（いわゆるノンバンクまたはサラ金）が倒産ないしは廃業に追い込まれることになった。元大蔵官僚で衆議院議員だった増原義剛氏によれば、この法改正によって、2007年に１万5000社あったノンバンクが撤退を余儀なくされ、2000社強にまで激減してしまったという。なぜなら、要するに、これでは商売ができなくなってしまったからだ。（このことは同時に、闇金融が一層アンダーグラウンドで拡がったことを意味する。）この法改正の問題は、グレーゾーン金利で貸し付けていた金の金利分が、「過払い金」として過去に遡及して免除されるとした最高裁判決を受けて、事実上免除となり、そのような環境の下では消費者金融というビジネス自体が成り立たなくなったのだ。グレーゾーン金利とは、利息制限法で定められた上限金利（元本が10万円未満の場合は年20％）を超えているものの、出資法（出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律）による上限金利（年29.2％）を超えてはいない金利のことで、通常、質屋などが長年商売をするのに利用してきた金利帯だ。この貸金業法は、2010年6月から完全施行され、出資法の上限金利が20％に引き下げられて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。この最高裁判決の問題は、実はもっと深刻だと俺は思う。なぜなら、消費者金融の業者は違法行為を行って商売をしたわけではない（つまり、アングラビジネスではない）。金利の支払いも含めて、利用者は契約に合意して金を借り、また貸す側も契約に基づいて貸していたのだ。にもかかわらず、「多重債務者救済」の名の下に、それまで返済した金利を過払い金として弁済せよと、ある日突然、お上が言い出したわけだ。法のルールに従って商売をしていただけなのに、突然そのルールは無効だと言い出したようなものだ。このような行為は、当然ルールの破壊でしかない。更に、この法改正によって消費者金融ビジネスを無理やり追い込んだ原因と思われるものが「総量規制」だ。（そう言えば、バブル経済を無理やり崩壊させたのも、土地取引に関する「総量規制」だったな。）この総量規制によって、年収等の3分の1を超える貸付けが原則として禁止されてしまったため、例えば、年収547.5万円なら182.5万円以上の金を借りられないということになった（ひょっとしたら、ちょっとした自動車ローンも組めない？）。ところが、従来の消費者金融の利用者の約5割もの人々が、年収の3分の1を超える貸し付けの対象だということが指摘されているのだ。つまり、このような法施行では、返済の見通しがある健全な利用者まで資金を借りられなくなるということを意味していたのだ（そして実際、延滞情報登録者の数が急増しているとのことなので、現にそうなっているのではないか）。つまり、貸金業法の法改正は、多重債務者を救うどころか、返済能力のある者にまで資金の流れを無理やり止め、消費者金融というビジネスを破壊し、返済延滞者の数だけを増やしたのだ。このような悪法や法改悪は、早急に見直されるべきだ。この貸金業法の改正問題は、典型的な規制の失敗、政府の失敗の例だが、日本においては、このような例が極めて多いのではないだろうか。他の典型例としては、原発の稼働停止を、超法規的に行っていることだ。これは以前も書いたが、電力事業法に違反する行為だ。電気事業者は正当な理由が無い限り電力供給を行なわなければならないのだから、定期点検を終えて、技術的に何ら問題のない原発の再稼働をするのはむしろ当然なのだ。それを、最悪の事故後でさえ、放射線でただの一人も死者が出ていない原発を、政府がその時の「雰囲気」や「世論」で法律違反までして止めていいのなら、それはもはや法治国家ではない。しかも、その法律違反による原発停止によって、火力のためのLNGの輸入コストが増大して電気代が上がったり、電力会社が赤字になっても、倒産を食い止めるために公的資金を注入したりすれば、結局それらは全て国民（俺達の子孫も含めて）が払わなければならないのだ。（LNG価格の推移は下記の通り。これに伴う原料費増加は数兆円分と言われている。）このようなルールの無視や破壊、法律違反を政治家に許してしまっている日本という国は、もはや民主主義国家でさえないのではないか。共産党一党支配の中国も民主主義とは言えないが、日本も大差がないのかも知れない。だが、このことは、もっと深い問題を投げかけていて、実は多くの日本人は、それでもいいと思っているのではないかということだ。中国、朝鮮、日本のような儒教圏国家は、もともと徳治政治なり人治政治が主流で、国家の支配者や官僚が、民草を人為的に（つまり独裁的に）統治してきたという伝統があるから、そもそも西欧型の民主主義などは馴染まないのではないかという理屈が成立しうるのだ。今や世界に5つしかなくなった社会主義国のうち、キューバ以外の4つの国が全てアジアに集中しているというのも、偶然ではないのかも知れない。なぜなら、社会主義体制というのは、共産党や労働党のような一党に全ての権限を集中するという一党独裁型の国家（いわば党治国家）だからだ。日本においては、その長い歴史や伝統のせいもあって、政治を行うのは貴族や武家といった特権階級・上層階級だという意識（または無意識）が、現代においてもまだ広く国民に息づいているのかも知れない。現代日本も、形式は社会主義ではないが、上層に支配の多くを委ねてしまう点で共通している。そして、今日、実質的に日本を支配しているのは、霞が関を頂点とする官僚体制（という一部の階層）であることは周知の事実ではないか。政治家は、本来立法過程において社会問題をキッチリとあぶりだして、法治国家に相応しい優れた法を制定しなければいけないはずなのに、上記のごとく、人治政治の失敗例のような悪質な裁量を行うばかりで、立法自体をも官僚に丸投げしている可能性が高い。（つまり、三権が分立していない！）その結果、市場のルールは無視または破壊され、法の支配は骨抜きとされる。このような人治国家の悪弊を打破する社会変革は、このアジアの国では極めて困難な作業であるのかも知れない。しかも深刻なのは、そのような問題が、実は日々我々の目の前で突き付けられているにも関わらず、その存在にさえ全く気付いていないかも知れないということのほうだ。かと言って、若者ならいざ知らず、中堅以上のすべての日本人には、もはや逃げ場はないだろう。このまま泥舟のごとく沈みゆくか、根源的な変革を自らの手で成し遂げるか。事態はかなり深刻なところまで来ているのではないか。能のある若者は、老後の見通しも立たない国を捨てて、海外で身を立てるほうが理にかなっているという時代が、既に到来しているとも言えるだろう。昨今、マスコミが例によって煽っている自民党及び民主党の総裁選も、誰が勝つかということに多くの国民は白けているのではないだろうか？（実際どうだっていい。）なぜなら、今問うべきは、日本の政党は、本当に政党としての態をなしているのかということであり、本当に立法制定を目指す集団に相応しい政策があるかどうかだと感づいているからだ。そういう観点から見れば、自民党も民主党も（たぶん他の多くの政党も）、殆ど政策集団とは言い難い。そのことがまた、日本維新の会へのほぼ盲目的な熱狂を生み出している原因ともなっていることは間違いない。だが、このような熱狂は、おそらく更なる政治的失望として跳ね返ってくるのではないだろうか。なぜなら、日本維新の会に国民が求めているものが、個別の具体的な政策というよりも、単なる閉塞感の打破のようなルサンチマンの代行として終わる可能性が高いように思われるからだ。（彼等の「維新八策」を本気で短期で実現しようとするならば、現行憲法を破棄するぐらいの社会的騒乱が無い限り、地道な組織活動も行っていない日本維新の会には無理だと言ってよい。）それほどまでに、日本の国の社会システムを変えていくというのは粘着質な性質の仕事のはずである。今我々に問いかけられている本質的な問いは、法の支配や市場のルールによって為政者による主観的な裁量をできるだけ排除した国家運営で行くのか、伝統的に続く人治国家という為政者による裁量政治を主流とした国家運営で行くのか、ということなのだ。後者のことを「保守」だなどと勘違いしているとすれば、笑止千万であると俺は言わざるを得ない。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.09.18

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  今月はフィリピン

  今月はフィリピン今年の8月は原爆の日も終戦記念日も、ゆっくりとしている暇はなく、いつになくバタバタしていた。俺の所属する大学院では、毎年夏に環境問題についての集中講座を開講しており、今年は「災害リスクのマネジメント」というテーマでフィリピンのマニラでそれが開催された。俺も、企画側の一人ということで参加してきた。場所は、フィリピン大学の都市地域計画研究科（School of Urban and Regional Planning, the University of the Philippines Diliman (UP-SURP) ）という所。なぜマニラだったのかと言うと、この8月の時期フィリピンは雨季であり、たびたび洪水等の水害が発生したりすることがあるため、過去に災害が起きたサイトなどへも実際に訪問して、見聞を深めようという狙いがあっての選定だった。これがなんと裏目に出た。俺達がマニラ入りした日から、ずっと雨が降っていたので、何となく嫌な予感がしたのだが、やはり水害が発生してしまった。死者も出るほどの酷い豪雨となってしまい、その模様が世界中に配信されていた。予定されていた災害サイトへの訪問も、もちろん中止・延期され、結局終日ホテルで過ごさないといけないという事態になった。（TIME誌より。http://world.time.com/2012/08/07/manila-floods-displacing-tens-of-thousands/#phil_flood_03）だが、見学が中止となった日の夕方、晩飯を喰いにどこかに行こうかということになり、5人ほどで大学の外にジプニーという乗り合いバスに乗って出かけたのが間違いだった。（これがジプニーね。）15分ほども乗って近くの大きなショッピングモールに辿り着いたまではよかったのだが、結局豪雨のために、モール内のショップは多くが早々と閉店していて、開いている店もピザ・ハットぐらいしかなかったので、そこで晩飯を取った。さて、帰ろうかなと思って、バス停に行ってみると、まだ夜の7時半頃だったというのに、なんと豪雨だからというので、最終のジプニーはもう出てしまったというのだ！タクシーも、多くが既に出払っていてつかまりそうもない上に、こういう日にタクシーに乗れば、間違いなく相当な高額を吹っかけられる可能が高い。他のバス停で待っている人々に尋ねると、フィリピン大学に行くのなら、ピクワーだかピコワーだかという所まで行って、そこで乗り換えればいいと言うので、そのジプニーに乗って終点まで行ってみた。すると、なんと道路が既に洪水状態。バスの乗り換えどころの騒ぎではない。トライサイクルというサイドカー付きバイクタクシーなどは、もう何台も道路の洪水に押し流されそうになっててワヤクチャではないか！（トライサイクルってのは、こんな感じ。）仕方が無いので、雨宿りを兼ねて近くのコンビニに立ち寄ると、店の中にいた店員や買い物客のオバちゃん達が、どこから来たのかと言うので、フィリピン大学からだと伝えると、そこまでは1.5kmほどだと言う。歩いて行けるか聞いてみると、この雨だから無理だろう、タクシーのほうが安全だと言うので、タクシーはつかまると思うかと聞けば、それは分からないと、親切なんだかどうか分からないような返答だった。それでも最後に、むこうのコンビニまで行けば、きっとタクシーが止まっていると教えてくれたので、俺達は、最悪の場合は土砂降りと洪水の中を歩いて帰る覚悟で、そのコンビニを後にした。もう一軒のほうのコンビニの近くまで来ると、そこには臨時便らしきジプニーが止まっていて、聞けばフィリピン大学まで行くと言う。おお！助かったぁ！俺達は飛び乗って、無事に大学まで戻って来れたのであった。帰る道すがら、ジプニーの運転手が言っていた言葉がカッコいい。「これは（仕事なんかじゃなく）危急の求めに応じたのさ！(This is call of duty!)」フィリピンは災害の多い国でも知られている。一般の人々の意識は、いつでも何かあれば愛国のために出動する用意ができているぞ、ということなのかも知れない。図らずも、災害リスクのマネジメントとはどのような気構えで臨むべきなのかと、直に学んだ気がしたのであった。ご賛同頂けるならクリックをお願いします。

  2012.08.15

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