2015/03/01(日)20:28
「あなたに見えたのは白×金のドレス?青×黒のドレス?」世界中を巻き込んだドレス騒動を科学的に検証する
このドレス、「白と金」に見える?それとも「青と黒」に見える?
君ならどう思う? みんなの反応アンケート※投票後に結果が表示されますQ : このドレス何色に見える?白と金黒と青それ以外
SNSや海外サイトでは「白×金」派と、「青×黒」派に分かれていた。
なぜ人によって見え方が違うのだろう?どちらも一歩も譲ることのないこの議論は、実は、純粋な生物学的な問題であり、人間の目と脳が日光に照らされた世界の色を認識するために辿った進化に起因しているのだ。
脳の視覚系のバイアスによるもの 光は水晶体を通して目に入ってくる。このとき、波長の違いが色の違いとなって現れる。光が眼球の後ろにある網膜に当たると、色素が神経連絡を視覚野まで発火させる。そして、脳のこの領域で到達した信号が処理され映像となる。
重要なのは、最初に入り込んだ光の一差しは、世界を照らす波長で構成されているが、それは今見ているものからの反射も含まれるということだ。心配しなくても、脳は目が見つめているものから跳ね返ってきた光の色を認識し、物体の”本当”の色からその色を差し引いてくれる。
「人間の視覚系は光源の情報を捨て去り、実際の反射率についての情報を抜き出すようにできています」と語るのは、米ワシントン大学の神経学者ジェイ・ネイツ教授だ。「人それぞれの色覚の違いを研究して30年になりますが、これは私が見た中では個人によって最も違って見えるものの1つと言えるでしょう。」
ドレス画像は近くの境界線に命中していた
ちなみに下の写真は、左のはホワイトバランスを調整して白と金に見せたもの。中央は元々の画像、右側はホワイトバランスで青と黒に調整したものだ。
通常、こうした視覚系は実に上手く機能している。しかし、この画像は知覚の境界に命中したものなのだ。その原因は人々の神経接続にあるのだろう。人間は日光を見るように進化してきたが、日光は色を変える。その色軸は夜明け時のピンクがかかった赤から、正午には青白色となり、赤みを帯びた夕暮れへと色調を落として行く。
「視覚系はこれを見つめながら、光軸の色のバイアスを差し引こうとします」と、米ウェルズリー大学で色と視覚を研究する神経学者ベビル・コンウェイ氏は説明する。「だから、青側を差し引く人なら白と金に見えて、金側を差し引く人は青と黒に見えるようになります。」
問題の画像にフォトショップでちょっと細工をして、実際のRGB構成を割り出したものがある。これによれば、一部の人が青と認識している部分には青が認められる。だが、これはおそらく実際の色以上に背景が関係しているのだろう。例えば、赤93、緑76、青50という数値から、何色に見えると思うだろうか?
正解は茶色っぽい色なのだが、背景が白い場合はそうは見えない。しかし、背景が純粋な黒の場合はきちんと茶色に見えるはずだ。フォトショップで解析を行うとドレスの色は水色と茶色ということになる。
ここでポイントとなるのが、脳は画像の色の文脈を補間してから、ドレスの色が何色か割り出すということだ。ネイツ教授には白と金色に見えるそうだが、おそらくは青であろうことは認めている。同教授が実際に画像を印刷して、それを小さく切り、色文脈が排除された状態で確認した結果は、その中間であった。ネイツ教授の脳は青を光源に由来すると見ているようだ。そう出ない人なら、ドレスに由来すると認識しているのだ。
また画像のホワイトバランスを変化させることでも、本当の色が確認できるだろう。そうしても実際に見えるのは青であり、白に見えていた色は青で、金に見えていた色は黒であることが解る。そして、その逆に最も暗いピクセルに合わせて調整すれば、ドレスからは青と黒が飛び出すはずだ。
人によって見方は変化する つまり文脈が変化すれば、視覚の認識も変化する。「大抵の人は白い背景にある青なら青に見えるでしょう。でも、黒い背景なら白に見える人もいるはずです」とコンウェイ氏。「白と金に見えるなら昼間にドレスを見たい人でしょう。夜型の人なら青と黒に見えるんじゃないかな」と冗談まじりに結んだ。
で実際のドレスは何色なのかだが、青と黒のドレスだった。
この大騒動に便乗して、このドレスを作っている会社は、実際に白と金に見えるドレスを制作するというのだから、いい商売になったようだ。