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カテゴリ:書評
「ウツになりたいという病」 植木理恵著 ウツになりたいという病 (アマゾンの内容紹介) 今や国民病になってしまった感のあるウツ病。 ウツ病自体は投薬や治療が必要な病気だが、最近、薬も治療も効果をあげないウツ症状に悩む人が臨床の場で増加している。 この新しいタイプの症状の多くは従来のウツ病ではなく、本人のアイデンティティに根ざした問題や、過度のポジティブ・シンキング信仰、また人格障害に起因する“ウツもどき”が多いという。 本書はこの新しい症状を従来のウツ病との比較の上で、三つの類型にわけ、臨床例をまじえながら分析。そして、 この「ウツになりたいという病」への処方箋をわかりやすく提示する。 リアル書店で並んでいた作品でタイトルに何となく惹かれて読んでみました。 まず、ウツ病の定義(アメリカ精神医学会作成のDSM-IV-TR)ですが、 ウツ病とは「空虚で毎日悲しい」という抑ウツ気分と、「集中力・思考力・決断力が止まる」という認知障害が、二週間以上続く病気、 と定義されています。 臨床心理士で心理学者である著者はこのような定義には満たないが、関連した症状に悩む人が現代社会で急増していることを指摘し、その詳細を掘り下げておられます。 挙げられているいくつかの原因の中で、個人的に最も共鳴できたのは、「過度のポジティブシンキング信仰」です。 ポジティブシンキングは確かに重要ですが、それが度を過ぎると心のバネが効かなくなり、バネが伸びきって元に戻らない状態になる、つまり、精神への雑音が入ってきてもそれを吸収したり和らげることができなくなる、と述べています。 天気などの自然というのは、絶えず変化するものです。人の心も自然と同じです。明るくなったり、暗くなったり、笑ったり、泣いたり、怒ったり、絶えず変化するものです。その変化を自然と受け入れることが、心にとってはもっとも負荷がかからないのです。しかし、ポジティブシンキングが強いと、心のプラスの面だけを受け入れてマイナスの面は否定したり排除しようとするという不自然な動きになってしまいます。その不自然さは心が辛いときや悲しい状態にある時には大きな負担となります。そんな時に無理にポジティブシンキングをしようとすると、かえって苦しくなってウツ気分に陥ったり、ウツ病やウツもどきにかかっている時にはいっそう深いウツ症状を招いたりするのです。 すなわち、 ・ポジティブシンキングは心を強くするのではなく、心を折れやすくする。そうこうことも時にはある。 ・ポジティブシンキングもネガティブシンキングもほどほどに持っていると心のバランスがとれる。 、ということです。 それを実践するための一つの方法として、 「仕事も勉強もすべて遊びの感覚の中でやると上手くいく。」 という処方箋には文句なく納得です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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