引越し後日談☆
私にとって引越しとは娯楽だった。少なくとも変化の無い日常をリセットするというか、新しい街での色々な出会いにウキウキで日常が活性化するという楽しみだった。私の性格を持ってすれば、当然「らくらくパック」を頼むので→引越しまで不用品を処分する→引越し後数日住みやすいように整える→終了。と全く負担にならない行事だった。今までは。。。。。今回は全然違った。リビングの天井は以前のマンションと同じくらい高かったが、他の洋室とキッチンが梁の関係で30cm近く低く、クローゼットに入れていた物が入らない。食器乾燥機が棚に引っかかって設置できない。洗面所の棚が使用不可能など、当日になって気づいたことがてんこ盛りでショックの連続。こんな基本的なミスをした自分に茫然自失状態だった。さらにこれが一番大きいことだが、引越し当日夫が自業自得の怪我をした。彼は赤いチャンチャンコを着終わったというのに、子どもみたいな好奇心を持っていて、しかもそれが非常に強い。大雨で目黒川が警戒水位を超えたと聞くと脱兎のごとく見に行くし、地下にもぐっている川がどうなって東京湾に流れ着くのかを知りたくなると1日中地図を持って歩き回っている。「ハア~ア、ご苦労様・・・」としか言いようの無いことに興味を持つ。一旦興味を持つと納得するまで突き詰める。今では勝手にすれば、と関わらないようにしている。そのお馬鹿が(ウプッス、失礼!)またまたやってくれた。引越し当日、もうすぐ荷運びが終わるという時にすごい雨が急に降ってきた。マンションの裏口に直で付けているので、びしょ濡れになるということはないが、シートやカバーを持ち出して引越し業者が慌しく雨予防をし始めた。それを見たいが為にバルコニーの裏側の通路を通って見に行ったらしい。その通路は避難用でめったに人が通らず、雑木林に面しているので日が当たらず、いつもじめじめしている。彼も何度か雑木林を見に行った時に滑りそうになって、充分気を付けなれければならないことは承知していた。それなのに・・・・・滑りやすいバルコニー用のサンダルでしかもかなり激しく降っている時に言ったものだから、案の定滑った。それも普通に滑ったのではなくて、足を前後に開脚して着地。左足に全体重が乗った。荷物が全て積み終わり、各部屋に掃除機をかけて、さあ出かけようと思って見渡すと夫が居ない。娘に聞いても知らないという。慌ててバルコニーから外を見渡すと、全身硬直させ、顔が青ざめて足を引きながら歩いてくる夫を見つけた。もう理由なんて聞かなくても一目瞭然だ。しかも水溜まりに転んだので、ズボンもシャツも泥だらけ。おまけに藪蚊まで何匹もたかっている。この役立たず、無能者、日常IQゼロ、足手まとい、腹立ちの種、面倒ばかりかけて、etc色んな言葉が頭をグルグル渦巻いてくる。投げつけたい言葉は山ほどあるけれど、とりあえずこの馬鹿者(再度、失礼!)どうしようかと思う。着替えは全てトラックの中。でも全身からドブの臭いが立ち上がっている奴をこのままにしておくわけにもいかず、管理人さんからゴミ袋をもらってタクシーのシートの上に引き、近くのメンズショップに行ってもらった。その場で事情を話し10分で裾上げしてもらい、その間にシャツを選び着替えさせた。奴は痛さに呻いているだけで何も出来ず。ア~ホ!急いで3人でランチを食べ、その後タクシーを捕まえて、行きつけのクリニックまで行かせた。私と娘はタクシーで新居へ向かった。時間が迫っていたので、思わず無理に横入りした車にムカつき、「まくってください」と暴言を吐いてしまい、全身が赤面し超~恥ずかしかった。タクシーの運転手さんは笑って流してくれたので有難かったが・・・・・そんなこんなで荷運びが始まったが、すべて私が指示しなければならないのでてんてこ舞い。荷物搬入の為ドアを外しているので、エアコンはかけられず、蒸し暑い中での作業で後半はバテバテで気が遠くなってきた。2時間後に帰ってきた夫は骨にも腱にも異常が無く、ただ筋肉の打撲だけだったので、ほっと一安心。痛みが取れるまで3週間は辛いといわれたようだが、自業自得でざまーみろ。夫は隙間を見つけては横になって寝ていた。鎮静剤を胸に抱きながら。荷解きが終わって完全に終了したのが8時30分頃。急いで近くのコンビニでご飯を買いに行った。そして晩御飯の用意が出来たので、夫を起こす。その時のセリフが私の激情に火をつけた。「鎮静剤を飲むとドクターが眠くなるといったので、我慢して飲まなかったんだ。だって引越しの最中に眠ると何もできないでしょう」警察に捕まらなければ、思いっきり首を締めていただろう。その後2週間、疲れが全く取れず、半病人状態だった。夫?奴もまだ打撲の痛みに呻きながら、日常生活を休み休みこなしている。元気で新生活を楽しんでいるのは娘だけ。もう引越しは私にとって娯楽にはなりえない。