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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2012.12.23
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カテゴリ:韓国
 韓国の日本大使館前に「従軍慰安婦の少女像」がある。こうした像の設置を認めているのはマナー違反であり、韓国にとって国家的な恥辱ではないか。だが、韓国政府はそう考えていない。しかも韓国の憲法裁判所は昨年8月、「従軍慰安婦問題で日本と交渉しない韓国政府の姿勢は元従軍慰安婦の人権を侵害しており、違憲」と決定を下した。

 「従軍慰安婦など存在しなかった」という歴史的な事実を突き詰めれば、こんな憲法解釈はありえない。なぜ韓国の裁判所はそんな決定を軽々しく行なったのだろう。

 昨日のブログで朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領は自著で「(韓国社会は)姑息、怠惰、安逸、日和見主義に示される小児病的な封建社会」と指摘して嘆いたと書いた。

 韓国には事大主義の考えがあり、相手が強いと見れば、その国に甘え、相手が弱いと見ればそこにつけ込む姿勢が歴史的に根強い。今の韓国もそうした歴史的に負の側面に毒されていると思われる。
 

 だが、一方で韓国には朴大統領のような開明的な政治家、知識人の伝統がある。朴正煕大統領の娘として朴正煕氏の薫陶を受けてきた朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領も、その衣鉢を継ぐ最右翼の開明的な政治家である。

 昨日、紹介した福田恆存氏の「孤独の人、朴正煕」(文芸春秋昭和55年1月号)の中でこう書いている。

 <(朴大統領は)かうも言つた。「萬一、北(朝鮮)が攻めて来たら、私はソウルを一歩も退かない。先頭に立って死にます」と。>
 <私は令嬢朴槿恵さんの言葉を想い出す、「父を日夜、見るごとに、その肩にどれほどの重荷を背負って苦しんでゐるか、それを想うとたまらなくなります>


 テレビで見る朴槿恵氏の微笑の奥には、両親を凶弾で失った深い悲しみと、父の遺志を継ごうとする強靭な意志が宿っている。 
 
 朴正煕大統領が歴史問題などにとらわれず、日本との関係を重視していたことは明らかだ。コマゴマとした歴史問題で難癖をつけるよりも、日本とともに安全保障力を高め、経済を成長させる方が数段、重要だと考えていた。
 
 朴槿恵・次期大統領も、父の政治哲学の延長上に日韓関係を「未来志向」でとらえ、過去の歴史問題にとらわれていないと思われる。

 だが、今の韓国にはうじうじした反日ナショナリズムが幅広く浸透している。韓国世論に竹島問題や旧日本軍の従軍慰安婦問題の譲歩を許す雰囲気はない。。朴槿恵氏も政権を奪取したとはいえ、対北朝鮮融和策と対日歴史問題追及を訴えた野党候補との得票差はわずかで、今後もつねに「50%弱の批判票」を気にしながら政権運営を進めねばならない。

 朴氏が当選翌日の記者会見で、日本との和解に関しては「正しい歴史認識を土台に」とクギを刺しているのは、その表れだ。

 こうした中で、安倍晋三・自民党新政権のとるべき道はどうあるべきか。安倍氏はこれまで「竹島の日」(2月22日)式典を政府主催で行うと表明してきたが、21日にこれを見送る考えを示した。賢明だろう。

 安倍氏は。従軍慰安婦問題に関しては、これを認めた河野(洋平)談話を見直すとしてきた。しかし当面は行わない様子で、私はこれも賢明だと思う。

 北朝鮮、中国との関係がきな臭くなる中で、今、韓国との歴史問題をこじらせるのは日本の国益に沿わないと考えられるからだ。

 だが、野党になる民主党はじめ各野党は、今後の国会質疑において、この問題で揺さぶりをかけてくると思われる。

 例えば「安倍さん、あなたは選挙前、河野談話を見直すと言っていたが、どうするんですか」と。これに対する望ましい回答はこうだ。

 <歴史は複雑な要素がからまっています。今後さらに調査し、考えを固めていきたいと思っています>

 河野談話を否定も肯定もせずに「先延ばし」するのである。首相の任期中、ずっと先延ばしする。そのうち、話題が下火になる。その間、実質的に日韓関係の改善策を進めて行く。朴新政権もそれに依存はないはずだ。

 ただし、水面下で朴政権と詰めておくことがある。第1に今後、大統領が竹島に上陸することは絶対にしないと約束させること。第2に、従軍慰安婦問題で日本に賠償要求などをしないこと。そもそも外交的な議題にしないこと。第3に、天皇への謝罪要求など非礼な発言はしないこと。

 朴政権にとって、第1、第3の点については譲歩できるだろう。問題は従軍慰安婦問題だ。韓国の裁判所が「この問題で日本に交渉しないのは違憲」と言っているからだ。

 そこで、交渉はするが、日本は応じないという姿勢で外交を進めるしかない。
双方とも交渉している「そぶり」を示し続けるのだ。これまた一種の先延ばしである。

 その道は平坦ではなく、いつでも関係悪化の契機があるが、粘り強く「そぶり」を続けるしかない。それが日韓関係の発展にとって望ましいからだ。我々にとって幸運なのは安倍・新首相も朴・新大統領もそのことを熟知しているということである。
 
 最後に、福田恆存氏の「孤独の人、朴正煕」の結びの文章を紹介したい。

 <(朴大統領と会談し)最後に別れる時、……大統領は私の腰を左手で抱え、廊下を一緒に歩いて来た。一間ばかりして私は立止まり、「もう結構です、また来月、お目に懸るのを楽しみにしてをります」と挨拶し、もう一度握手した。その「来月」、私がソウルに著いて三日目の夜、大統領は斃れたのである。……朴正煕氏の人柄を心から敬愛してゐた私は、その死後、ソウルのホテルで一人になると、どうしても涙が抑えられなかった。(朴大統領の)陸英修夫人が凶弾に斃れた後、子息や令嬢に向って人前では決して涙を見せてはならぬと命じた大統領が家族だけになつた時、机に顔を伏せ、大聲挙げて男泣きに泣いたといふ話を想起しながら>

 私もこのくだりを30数年ぶりに再読して目頭が熱くなった。文芸春秋に発表された当時、日本語の読める朴大統領と同世代の韓国人の多くが福田氏の文章に涙したと、当時、何かで読んだか、韓国通のだれかに聞いたことを想い出す。





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Last updated  2012.12.23 11:56:30
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