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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2013.03.26
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カテゴリ:裁判
  最大2.43倍の「1票の格差」があった昨年12月の衆院選を巡る訴訟の判決で、広島高裁は25日、小選挙区の区割りを違憲と判断し、広島1、2区の選挙を無効とした。

  投票価値の不平等を理由に国政選挙のやり直しを命じたのは初めてだが、判決は「最高裁の違憲審査権が軽視されている」として、国会の不作為に強い警告を発した形だ。

  当然の判決である。「1票の格差」問題は久しい以前からあったのだから、むしろ遅きに失した判断だ。これまでが「司法の怠慢」だったと言われてしかるべきだろう。

  国民の投票が平等であることは憲法の定めであり、小中学校でもそう教えている。子どもに説明できないような違憲状態を放置しておくのは、法治国家の名に恥じる、由々しき問題だった。
 
 これまでの「1票の格差」訴訟では、裁判所は違憲、違憲状態と指摘しながら、選挙無効となった場合、社会的混乱が生じるという「事情」をくんで選挙そのものは無効とせずに訴えを退けるやり方だった。「違憲状態は国会で早く是正してほしい」と付言しての、いわゆる「事情判決」である。

その背景には、政治(家)と対立して、政治(家)から圧力をかけられたくないという司法側の思惑、保身意識があったという声が、法学者などからささやかれていた。
だが、長年の「事情判決」の蓄積が国民の司法への不信感を広げた。日本は法治国家なのかという、法と国家への不信が司法への無言の圧力となって、今日の無効判決をもたらしたと言えよう。

  国会はこれまで「司法は違憲と言っても選挙そのものまでは無効とはしないだろう」という甘えと居直りから、格差是正には消極的だった。今回の判決は「国会よ、いい加減にしろ」という司法の怒りと焦りの産物ともいえる。

  投票県の不平等は、政治のゆがみを生み、今日までの財政悪化の大きな背景となっている。農業関係者をはじめとする圧力団体が「1表の格差」をテコに、本来なら持てない権力を握り、不当な国家予算を確保、行政の保護にも守られて、市場競争を阻害してきた。今回のTPP(環太平洋経済連携協定)にからんでも農地維持に交付金をばらまくなどの不透明な動きが出ている。


  日本は高齢社会となっており、経済効率を今まで以上に高めなければ繁栄と安定を維持できない。人々の要求、権利を平等に反映した政策が不可欠で、規制緩和と、不当な行政の保護の打破が求められている。

  それには「1表の格差」の是正が欠かせない。今回の判決をその一歩として歓迎したい。






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Last updated  2013.03.26 13:50:28
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