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カテゴリ:歴史
今、鈴木敏明さんという人の著書「逆境に生きた日本人」(展転社)を読書中である。「日本民族の資質は極端に権力に弱いこと、権力者に徹底的に媚びる」ということを、史実を駆使して「これでもか、これでもか」と追及している。
読んでいて、ガックリとくる本だ。痛いところを突かれて反論が難しいからだ。詳しい感想は読了後に書きたいが、その前に1つ、第2次大戦時、ソ連が日本人をはじめいかに多くの民族を捕虜にし、死亡させたか、という史実を、本書の中から抜粋して置きたい。 ソ連軍は終戦直前の1945年8月9日、日ソ中立条約を破って満州に攻め入り戦争に参戦してきた。満州各地には民間人150万人がいたが、その1割強の17万6000人がソ連兵の暴行、略奪、殺人により帰国を果たせずに死亡した。 軍人(一部の民間人を含む)約60万人の日本人が強制連行され、収容所で重労働を課され、約6万人が帰国を果たせず、落命した。 この「60万人強制連行、6万人死亡」の話は知られているが、ソ連はドイツ兵も捕虜にしていた。ドイツは日本とは逆に、独ソ不可侵条約を破ってソ連領に侵入、大規模な戦闘の結果、破れて捕虜になった。だから、捕虜がいるのは当然だが、その数の多さに驚く。実に315万人、しかもその3分の1に当たる109万人が捕虜の間に死んでいる。ドイツ兵捕虜の悲惨さは日本以上だったのだ。 ソ連に抑留されたのはドイツ兵だけではない。イタリアはソ連遠征軍22万人のうち約4万6000人が抑留され、3万5000人が死亡した。ハンガリー人も捕虜になり、35万人が消息を絶ったという。 そのほか、フランス、オーストリア、ブルガリア、チェコ、ポーランドなど多数の国々の捕虜が抑留されていた。ソ連はその人々を道路、橋など国のインフラ整備のために使役し、死亡に追いやったのである。それだけ、ソ連は労働者が不足していたとも言えるし、残酷な民族とも言えるし、共産主義という専制独裁国家の恐ろしさと見ることもできる。 より一般的に戦争は人を残酷にする、ともいえる。しかし、その徹底性において、欧米人は日本人よりもはるかに残酷なのではないか。例えば米国。東京をはじめ各都市の無辜の民への無差別爆撃や広島、長崎への原爆投下のことだけを指しているのではない。 米国では南北戦争で南北両軍を合わせて62万人が死亡、負傷者を合わせると100万人を超えた。第一次大戦、第2次大戦でアメリカが被った死傷者数よりも多いのだ。当時のアメリカの人口が3100万人ということを考えると、犠牲者数の多さに驚く。捕虜も虫けらのように扱った。 同じアメリカ人の白人、キリスト教徒同士で、それだけ残酷なことができる民族なのだ。日本の内戦と言われる戊辰戦争では死傷者数は3万人にすぎなかった。 捕虜の話に戻そう。戦争の結果だから仕方がないと思うかも知れないし、過去より未来を語るのが外交でもあるが、捕虜の数の多さによって残るうらみもまた異なり、戦後の外交交渉も複雑に、陰影を含んだものになっているだろう。 条約を不当に破られ、多くの捕虜死者を出した日本人の心はどうか。今は一般的な歴史書でも多くを記述せず、水面下に押し込められ、捕虜、抑留の事実すら知らない若者も多いようだ。 その心に海外の権力に弱く、卑屈に媚を売るという「日本人の資質」が大きく影を落としていないか。鈴木氏の「逆境に生きた日本人」を読むと、そう感じてしまう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.11.02 11:07:37
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