1092806 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

鎌倉橋残日録 ~井本省吾のOB記者日誌~

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

kmrkan

kmrkan

Calendar

Rakuten Card

Favorite Blog

文春新書『英語学習… Izumi Yukioさん

Comments

与那嶺@ Re:「日米開戦 陸軍の勝算」を読む(10/26) すばらしい。目が覚めました。軍トップは…
名無し@ Re[1]:ロシアとは純商売ベースで当たれ(12/14) 山路 敬介さん >最近更新がありませんが…
山路 敬介@ Re:ロシアとは純商売ベースで当たれ(12/14) 最近更新がありませんが、お体でも悪くさ…
par@ Re:「断固排除」--領海侵犯に一歩踏み込んだ発言の重要性(08/20) 尖閣についてはあらゆる事態を想定し、い…

Freepage List

Headline News

2014.04.24
XML
カテゴリ:日本・日本人
 WiLL5月号に掲載された荒木和博氏の論文「拉致被害者を救わない国」は、胸にずしりと響いた。荒木氏は北朝鮮による日本人拉致被害者の救出活動を続けている特定失踪者問題調査会代表だ。拓殖大学教授でもある。

 論文は、日本が何十年にもわたって拉致被疑者の救出を本気で考えて来ず、最も拉致問題解決に努力しているはずの安倍政権になっても、その姿勢は基本的に変わっていない点を浮き彫りにしている。

 3月3日の参議院予算委員会で井上義行議員(みんなの党)の質問に答えて、安倍総理は拉致問題の解決について答弁している。井上議員は安倍総理の元秘書。拉致問題とそれに対する安倍総理の考え方に精通している。

 井上議員が「北朝鮮で内乱が起こった時、自衛隊が拉致被害者を救出できるように法整備すべきだ」と求めたのに対し、安倍首相のつぎのように答弁した。

 「自衛隊による在外邦人の輸送は派遣先国の同意を得ることが前提なので、その方法での救出は困難だ。憲法9条の制約からも難しい。米国の協力を求めたい」

 今議論となっている集団的自衛権との関係についても、「日本は何もできないのだから、米国が拉致被害者の救出に動いた時、集団的自衛権によって米軍に協力をする(後方支援する――井本注)必要がある」という見解なのだと、荒木氏は指摘する。

 「自国は後方支援に回り、物資の補給はしますから、米軍は前線に出て日本人拉致被害者を助けてください」などというのは虫のいい考え方が通用するか。果たして米国は日本のために自国青年の血を流してまで軍事行動に出るだろうか、と荒木氏は疑問を投げかける。

 自分ではやらない。ひたすら米国の協力、あるいは北朝鮮の善意に期待して拉致被害者を還してもらう。この姿勢は拉致が表面化して以来、否、表面化する以前から、ずっと日本政府の基本方針だった。

 実は我々、国民もそれをうすうす知っていた。現に、拉致問題が表面化して以来、何十年たっても、横田めぐみさんはじめ拉致被害者の多くは還ってこない。日本が強い態度に出ない(出られない)からだ。
  
 でも、強い態度に出るとは、力による奪還、究極的には戦争を覚悟して取り戻すことを意味する。たとえ北朝鮮で内乱が起こって混乱したとしても、その機に乗じて、自衛隊が拉致被害者奪還に動けば、北朝鮮軍は猛烈に反撃することが予想される。

 日本への爆撃も予想され、多くの国民の犠牲を伴う危険がある。韓国も歴史的経緯から、自衛隊の朝鮮半島上陸には過敏に反応する。場合によっては韓国軍も自衛隊の上陸阻止に動くかも知れない。

 中国軍が自衛隊の朝鮮半島上陸に反発して半島に進撃する恐れもある。それを心配して米国も強く自衛隊の動きを牽制するだろう。

 以上、事態悪化の恐れは強く、そこまでして拉致被害者の奪還に動くことは得策ではない。だから、経済制裁で圧力をかけつつ、対話によって拉致問題の解決する――。これが安倍政権の一貫した方針であり、国民の過半も漠然と「そうするしかない。やむをえない」という考えで来た。

 でも、それで少しも拉致問題は進展しない。被害者家族のことを考えれば、それでいいのか。と言われると、多くの国民は黙って下を向いてしまう。

 私もその一人で、荒木氏の論文が胸に重く響いたのもそのためだ。
 
 そのせいもあってか、政府は過去、北朝鮮による拉致の実態や工作員の活動を国民に知らせないようにしてきた。荒木氏はそうした警察や政府の姿勢を次のように記述する。

 <通常なら北朝鮮工作員についても情報提供や警戒を呼びかけて良いはずだが、おそらくそれを目にした人はほとんどいないだろう。……警察は拉致問題や北朝鮮の工作活動について表に出せない理由があるのだろう。それは現場レベルの不作為といったものではない。……政府全体の意思ということでもある>
 

 北朝鮮や韓国、中国につながる政治家の意思が働いているのか、日本人の間に北朝鮮に対するナショナリスティックな反発、戦闘意識が高まるのを恐れているのか。その点はわからない。荒木氏もそれ以上具体的には追及していない。

 だが、いずれにせよ自衛隊が行動せず、イザというときの救出活動を米軍に任せるとは、一体、日本という国は自立した国家なのか。

 <自分たちが国家の尊厳にかかわる問題に無感覚でいることの恥ずかしさも、多少は持って良いのではないか>

 <「自分の代で拉致問題を解決する」と語り、保守層の支持を得ている総理が「米国に頼むしかない」と国会で答弁せざるを得ず、それどころか政府が国民に拉致問題や北朝鮮による工作活動の実態を隠し続けている現実は、他国にも先人にも、そしてこれから生まれてくる新しい世代に対しても恥じるべきだ>

 <拉致問題にハッピーエンドはない。私たちの覚悟が試されていることを一人でも多くの国民に理解してもらいたいと、切に希望する>

 そう荒木氏は読者に呼びかける。時に自らが血を流す覚悟を持たなければ、拉致被害者の救出だけでなく、国民の安全も国益も確保できないと言っているのである。重い問いかけである。自分の問題として考えることが求められている。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2014.04.24 20:12:28
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.