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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2014.06.03
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カテゴリ:憲法・法律
中国、北朝鮮の脅威が高まる中で集団的自衛権の必要性には理解を示す保守的な人でも、憲法9条の改正までは必要ないということが結構多い。
 
 理由は「戦後70年近くかけて築いた平和国家として信用を損なうから」だという。

日本は、米国やロシア、中国、英国、フランスなどと違って、あるいは北朝鮮など核武装などに注力している新興国、途上国と比べ戦後、武力紛争を起こしたことがない。その平和国家としての信用は「見えない資産」で、国際社会での評価は予想以上に大きい……ということのようだ。

 また、戦前、中国大陸や東南アジアに軍事侵略した悪いイメージが残っているだけに、9条を改正したら、またぞろあの「軍国主義国家」に戻ってしまうのか、というあらぬ疑いをかけられ、損失の方がはるかに多い、ともいう。
 
 それでなくとも集団的自衛権の行使を認めることにより、軍事的なイメージが増し、平和国家のイメージが落ちる危険が強まっている。集団的自衛権までは仕方ないとしても、9条改正でこれ以上、日本のマイナスイメージを増加させてはならない、というわけだ。

 どうだろうか。いわんとするところはわかるが、少し考えすぎではないか、というのが私の意見である。一人前の国家として、あるいは普通の国として成熟するのを拒んだモラトリアム人間の心理とも思える。

 自分は争わない、こちらからは手出ししないという平和国家の姿勢は確かに正しい。しかし、いざ相手が手を出したら、全力で反撃するという精神に欠けるように思う。

 一人前の国民なら、他人に助けてもらうことなく、自分(たち)の身は自分で守るのが当然だ。それを積極的に行わない人間は未成熟な半人前といわれても仕方がない。

 敵を殺傷する行為は、こちらに正義、理があったとしても、心に傷を残す。手は汚れる。その汚れた手を見ながら、心の痛手に耐えて生きて行くのが成熟した大人だろう。手を汚さず、米国に「おんぶにだっこ」し、「平和国家」に甘んじている日本人を、世界の人々は「カワイイ」と上から目線で見ても「信頼できる」とは思わない。一人前と見なさないだろう。

 日本が生産した商品やサービスは欠陥が少なく、日本製品を信頼していることは確かだ。が、そのことと平和国家に閉じこもるのとは別である。

 「日本国民は……平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という憲法の前文とともに、9条を素直に読めば、「自衛のためでも戦争はしない。各国の構成と信義を信頼する」としか読めない。

これは人間の本性に目をふさいだ欺瞞である。

 その欺瞞を打破し、国家と国民、家族のために時に敵を殺傷することも辞さない。それが普通の国であろう。やはり9条改正、憲法改正をすべきだろう。
そうしながら、平和維持に力を尽くす。安倍首相の「積極的平和主義」とはそのようなものではないだろうか。その考えに内実が伴ったとき、世界の日本への信用、信頼は高まるはずだ。

 





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Last updated  2014.06.04 08:23:49
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