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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2016.09.20
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カテゴリ:マスコミ
日本経済新聞の9月19日付けに、相も変らぬ軽薄なグローバルオピニオンが載った。題して「移民・難民、経済の活力に」。

イタリア下院議長のラウラ・ボルドリーニ女史(55歳)の談話である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)広報官を経て2013年イタリア下院初当選した。左派環境自由党に所属。日本の民進党議員にも似た、典型的なリベラル左翼の経歴と思想は、読まずとも何を言いたいかがわかる。

<「移民や難民が社会の治安を悪化させている」。こんな移民・難民の排斥を訴える右派政党が欧州で勢力を急速に伸ばしつつある。移民・難民を安易に治安問題に結びつけ、憎悪をあおるのは国際化時代に逆行する考え方だ>

あおっているわけではない。移民や難民による社会的混乱や雇用不安が深刻化しているのだ。「移民・難民の排斥を訴える右派政党が欧州で勢力を急速に伸ばしつつある」のは、その証左ではないか。なぜそこを突き詰めて考えないのか。

「国際化時代に逆行する」というが、「国際化時代」は過去10数年のEU(欧州連合)礼賛論者のキーワードである。それが間違っていたのではないか。そうした反発が英国の欧州連合(EU)離脱を生んでいる。

<今年6月に英国がEUからの離脱を決めた。移民・難民問題がその引き金になったという分析は間違っている。移民が多い大都市部の住民ほどEU残留派が優勢だったのがなによりの証拠だ。残留を支持していた都市部住民や若者が投票に行かなかったことが大きな誤算を招いてしまった>
EU離脱は国民投票という危なっかしい直接民主主義が招いたものだ、というマイナス面は本ブログでも指摘した。しかし、EU離脱を選ぶ英国民にそれなりの厳しい現実判断があったことも間違いない。

「残留を支持していた都市部住民や若者が投票に行かなかったことが大きな誤算」というが、若者はそれほどEU離脱を深刻には考えていなかったということだし、投票に赴いた離脱者の欲求はそれだけ強かったとも言える。

<民衆の恐怖心をあおるポピュリスト政党の増勢には危機感を覚える。移民・難民を治安問題に結びつけるべきではない。第2次世界大戦への反省から国家を超えた和解、協力、平和を追求したEU創設(者)らの理念を後退させてはならない>

第2次大戦の反省とは戦前の欧州の植民地主義の反省にほかならない。あまりにも人種差別と経済的収奪をやりすぎた、という反省であり、それは良い。

だが、「国家を超える理念」をそれほど大事にする必要があるのだろうか。「グローバリズム」という自分たちの手前勝手な誇り高い、美しい思い込みにひたり、国民の移民・難民への不安を無視しているのではないか。「民衆の恐怖心を無視するグローバリスト政治家の鈍感さに危機感を覚える」と言いたい。

<少子高齢化が急ピッチで進む先進国では、移民・難民を受け入れずに安定的な経済成長を達成することはできないだろう。イタリアが約6000万人の人口規模を維持するためには一定数の移民・難民の受け入れが不可欠。そうでないと2055年までにイタリアの人口は4500万人に減ってしまうという試算さえある>

ボルドリーニ女史が心配しているのは結局、人口減少とそれに伴う経済減退なのであり、移民の大量流入による国民の生活不安、社会的不安に配慮していない。

「国境を閉ざし、国家同士の連合体を壊すのは間違った処方箋」というボルドリーニ氏の指摘は間違っていない。今の世の中でグローバリズムを欠かすことはできない。

ただまずはカネの融通、モノの貿易を円滑に進めることであり、テロ対策、気候変動など地球規模の難題の解決について国境を超えて協力することだ。

これに対してヒトの往来、引越しには配慮が必要だ。一定程度にとどめないと社会的混乱を大きくする。現在のEUの混乱がそれを示している。

本欄にはインタビューした(と思われる)小林明編集委員の解説が載っている。

<地中海に突き出したイタリアはギリシャと並ぶ欧州への移民・難民流入の玄関口。今年6月のイタリア地方選では反EU・反移民を掲げる新興政党「五つ星運動」がローマなど主要都市の市長選を制して世論の右傾化を印象付けた。シリア難民問題、テロ事件、英国のEU離脱……。「この難局に急いで正しく対処しないと欧州の家は瓦解しかねない」。EU創設の理念死守を懸命に訴える左派リーダーの焦りに、欧州全体が直面する「分裂の危機」の切実さが凝縮しているように思えた>

冷静で適切な解説である。だが、それならボルドリーニ女史に反EU・反移民を掲げる新興政党がなぜそれほど急伸するのか。移民問題に「異」を唱える有権者の心をどう思い、それをどう解決するのか、と鋭く切り込んだ質問を投げかけるべきではなかったか。

そうすれば記事の内実は深まり、現在のEU問題の本質に迫れたはずだ。聞き飽きた「きれい事の訴え」の載せるだけでは、読者を満足させることはできない。





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Last updated  2016.09.20 10:17:24
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