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鎌倉橋残日録 ~井本省吾のOB記者日誌~

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ロシア

2016.12.14
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カテゴリ:ロシア
日ロ首脳会談が15日に安倍首相の地元である山口県長門市で開かれる。しかし、安倍首相とプーチン・ロシア大統領との話し合いで北方領土交渉が進展すると期待したが、どうやら日本の経済協力だけ「食い逃げ」して領土は返さない、という以前から懸念されていた「やらずぶったくり」になる危険が高まってきた。

やはり日本は外交下手、とりわけロシア相手ではいつも損する話にしかならない。「ロシアとは純商売ベースで当たれ、北方領土を話題にするな」とは日下公人氏の持論だが、ロシアを見限った知恵を感じさせる。

純商売ベースの意味はキャッシュオンデリバリー(代金引換払い)の徹底だ。
現金で代金を支払ったら商品を渡す。あるいはこっちが欲しいと思う商品をこちらの望む条件で運んできたら、その場で代金を支払う。これほど確かな商売はない。手形や小切手などで後で支払ってくれればいい、などとやったら、焦げ付いて大損することにもなる。ロシア相手ではその危険が大きい。

日本政府は「8項目の経済協力」などを出して前のめりになっているが、これこそ取られっぱなしになる危険大である。

日本経済新聞(10月1日付け)によると、ロシアへの経済協力プランはてんこ盛りのお土産ぶりだ。短命なロシア人の寿命を伸ばす先端医療の提供、日本郵便の持つ郵便システムのノウハウ供与、ウラジオストックやハバロフスクなど極東の港湾、空港の整備、植物・水産加工場など産業拠点の建設などを盛り込んでいる。国際協力銀行(JBIC)などの出融資、日本の予算など必要資金も提供する。日経は「1事業あたりの規模が6000億円に膨らむ事業も含み、2国間の経済協力としては異例の手厚さだ」と書くほどだ。

領土問題に気を使って、手の内をさらけだし前のめりの協力をしてしまうのが日本政府、とりわけ外務省や経産省の愚かさである。ロシアは長年の経験で日本のその姿勢をよく知っているから、北方領土を最大限に活用して、日本から資金や技術を引き出そうとする。

大体、外交的な名誉、メンツと元島民の心情を度外視して考えれば、日本にとって漁業を中心に北方領土の経済価値は知れている。もとよりロシアにとって広大な領土から見れば小さな北方領土なんて本当は大して価値はない。


しかし、プーチン大統領も自国民へのメンツのため、「北方4島は自国の領土」という公式見解を崩したくはない。プーチン氏は以前は「引き分け」と言っていた。だが、最近の態度の変化を見ると、日本が前のめりになるのなら、1956年の日ソ共同宣言に明記された「歯舞、色丹島の返還」により歯舞、色丹島だけを思いっきり高く売りつけようということなのだろう。


それなら「北方領土交渉はしない」に限る。すでに以前から主張している通り「北方領土は日本の領土だ。返還せよ」という態度を一切変えずに、改めて主張しないという姿勢を貫けばいい。

それは「北方領土と経済協力は政経不可分、北方領土を帰さないのなら、経済協力は一切しない」という外務省の姿勢でもあった。それでいいのである。それで日本は損しないからだ。


だが、ロシアは困るだろう。ウクライナ危機から、ロシアは欧米の経済制裁を受けている。そしてロシア最大、というか事実上唯一の輸出商品であるエネルギーの価格が低迷している。最近はOPECの減産が奏功し、エネルギー価格は上昇傾向だが、OPECの結束は弱いし、価格が上がれば米国でシェールガスなどが豊富に出回りだしてまた価格が下がる可能性は十分ある。

今や資源国の価格競争力は下がり、ロシアの優位性もなくなっている。プーチン大統領はイライラが募り、焦っている。日本としては大きく構えて、向こうが好条件を出すのを待っていればいい。こちらから積極的にロシアに経済協力する必要なんてないのだ。

しかし、商売を知らない外務省はそこから先の民間ベースの商売まで細らせたままにしておく悪癖があった。 

ロシアには「日本と付き合って損はない」ということをわかっていない保守派の政治家や官僚が多い。だが、極東ロシアは安定したロシア社会をつくって雇用の場をふやし、中国との国境警備を強化する必要がある。

その際、純商売ベースのきちんとした日本との取引が広がれば、ロシアにとっても必ず利益が出てくる。取引が増え、技術やノウハウがロシア企業に広まり、雇用が拡大して行く。

ロシア側はそれに気付いて、だんだん取引を増やそうとするはずだ。その結果、サハリンやウラジオストックだけでなく、「北方領土のビジネスでも日本が一緒にやってくれ」「日本が事業を買ってくれ」「投資してくれ」となる可能性は小さくない。結果として北方領土の経済は日本が主導する形に変わって行く。その際も、事業は徹底して商売ベースで行い、甘い態度で補助金などは出さない。これまで不当に日本の領土を占拠していたんだから、「弁償金を出せ」と主張するのが正しい。

こうした事を理解していないのは外務省や経産省を中心に商売を知らない日本政府で(安倍首相も怪しい)、もっと民間企業の商売を前面に押し出し、ロシアを取り込んでゆく。その姿勢が長い目で見て、北方領土問題の解決につながって行くと考えた方がいい。

だから、安倍首相は今回の交渉が頓挫しても、悠然と構えるべきで、間違っても外交的な成果を挙げようなどとは考えないことが大切だ。チャンスはこれからも来ると。

安倍・プーチンの関係が良好だったことから、「今回の交渉を逃したら今後100年、日ロ平和条約なで実現しない」などといった声が保守派にも多く見られる。だが、それこそロシアの思うツボにはまる、と心得たい。






Last updated  2016.12.14 19:10:32
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2014.07.12
カテゴリ:ロシア
前回取り上げた小手川大助氏のブログはウクライナ問題について連載している。歴史、経済、政治と多方面にわたった具体的な記述は問題の深さと幅の広さを示して勉強になる。

 記述は客観的だが、全体のトーンはロシアに対して好意的だ。小手川氏は元大蔵省(財務省)の官僚で米国の牙城であるIMFの元日本代表理事。経歴から言って米国寄りのスタンスになるのが普通なのに、ロシア寄りになるのは明確な確信があるからだろう。その分、注目する価値があるとも言える。

 ロシアのプーチン大統領はクリミアの編入後は強硬姿勢を緩め、ウクライナの現政権と東部南部の親ロシア派住民との対話を求めている。欧米、それに日本のメディアの論調は「プーチンが西側の経済制裁の脅しにひるんだ」との見方を示しているが、小手川氏は「これは全くの誤りだ」と否定する。

 「制裁がロシア経済に一定の影響があるのは確かだが、大したことはない。本当に経済制裁を強化したら、困るのはむしろ西欧だ」という見方だ。なぜか。

 <ロシアは国内産業を保護しておらず、その市場は極めて開放的だ。……ホテル業界を見ても、モスクワの主要ホテルは、リッツ・カールトン、ケンピンスキー、シェラトン、ハイアット、ロッテと西側のホテルチェーンが目白押しである(ちなみにハイアットはオバマ政権の商務長官が社長を務める系列である)。VISAはロシア国内で毎年10億ドルの利益を出している。ブリティッシュ・ペトロリアムはロシア国内で2つの大きなジョイントベンチャーを維持し、ロシアの石油産業の重要な一角を形成している。このほか、米国、ドイツの企業を中心に西側の企業による対ロシア直接投資は莫大な額に上っており、ロシアが経済封鎖をした場合の西側企業に対する影響は極めて大きなものとなろう>

 <ロシアの富豪は海外投資をしており、プレミアリーグの所有者となったロシアのオリガルヒなどが有名だ。また、ロンドンの金融機関及び不動産業界はロシア富豪の投資で成り立っている面が大きい。仮に経済制裁がこれらの富豪に対して発動された場合……彼らは資産をロシアへ戻さざるを得なくなり、ロンドンの金融機関や不動産業界は相当な影響を被る一方、ロシア経済にはプラスの効果となりプーチン氏に有利に働くこととなる>

 <さらに、ロシアはイランや中東の産油国と異なり、石油や天然ガスの輸出だけで食っているのではない。……ニッケルやチタンといった鉱物を大量に輸出している。(前回の本ブログで取り上げたように)チタンの主要輸出先はボーイング社だ。ボ社はロシアに1991年に事業を立ち上げてから70億ドル投資してきており、チタンを180億ドル購入する計画だ。輸入停止となった場合、同社の航空機製造にも大きな影響が及ぶ>

 だから、ロシアが経済制裁に対して自信を持っているのに対し、欧州はロシアへの経済制裁には及び腰なのだ。同様の気持ちの米国企業も多い。

 プーチン大統領はこうした西側との幅広い経済交流を背景に、ホンネではロシアとコトを構えたくない西欧諸国を味方につけようとして、対話路線に動いたというわけだ。米国のオバマ政権に対しては、相当な不信感を持っているが。

 こうした中で、日本も愚直に米国に追従するばかりの外交はやめて、経済交流の道を残すしたたかさが必要だ、というのが小手川氏の主張である。

 それにしても小手川氏がブログで解説しているウクライナ経済は相当に悲惨な状況である。国内の内戦が治まらない原因の1つもそこにある。経済復活はイバラの道であり、米、欧、ロシアとも火中の栗を拾いたくないというのがホンネだろう。

 






Last updated  2014.07.12 23:33:32
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