2014.10.29

安倍首相に求められる「法の支配」を貫く外交

カテゴリ:外交
 国際政治学者、大礒正美氏のコラム「よむ地球きる世界」(10月28日付け)は「自覚があるか安倍首相の三大矛盾」と題し、安倍首相の政治外交の不作為を批判している。

 安倍首相は外交に熱心で約50ヵ国も歴訪したが、東南アジアやインド、トルコなどでは好意的でも、オバマ米大統領はじめ米欧の首脳たちの対応はかなり儀礼的であり、米英独などのメディアは理不尽なほど辛口の批判が目立つというのである。 

 大磯氏は「その理由は、安倍首相が矛盾したことを平気で言い続けている」点にあるという。「法の支配」を外交の基本に据えながら、具体的行動はまったく逆であると。

 <たとえば島根県の竹島に2年前、李明博・韓国大統領が初めて上陸して見せたとき、日本政府はとうとう国際司法裁判所に提訴する準備を始めると表明した。過去2回、同じような意思表示をしたが、いつの間にか消えている。3度目にようやく提訴が実現するかと思われたが、安倍政権になって全く動きがない。……総理が止めているとしか思えない>

 <また昨年初めに、日本が引き渡しを求めた中国人犯罪容疑者を、韓国は中国に送り返してしまった。日韓二国間の「犯罪人引渡し条約」違反であることを、どうして放置ているのか>

 <同じように、韓国は対馬の寺から韓国人が盗み出した仏像を、事件と関係なく、なぜ日本に渡ったのかを解明しないうちは返還しないと決定した。これは盗難美術品の返還義務を定めたユネスコの「文化財不法輸出入等禁止条約」違反であるが、日本政府は抗議を拒否されるとあとは何もしていない>

 <もっと重要なのは、ソウルの日本大使館前に据えられた「慰安婦少女」の像と、日頃繰り返される抗議集会に関してである。これらの嫌がらせ行為を放置することは、「外交関係に関するウィーン条約」の違反になる>


  <安倍首相は「前提条件なしに首脳会談を」と呼びかけているが、こうした幾つもの「法の支配」違反に目をつぶっているのはどういうわけか。オバマ大統領以下の米首脳陣は法律家ばかりだから、とても理解できないと感じているだろう。つまり、日本側に弱みがあるから前提条件をつけないのだろう、と思われても仕方がない>

 ここまで読んで「なるほど」と納得する点が多い。だが、疑問がある。米国政府はそれほど、日本の対韓外交をつぶさに見ているわけではないだろう。いわんやオバマ大統領においてをや、である。

 米国の真意は「中国や北朝鮮の脅威が増す中で、とにかく韓国との関係を良くしてくれ。多少相手の言い分におかしなことがあっても、日本の方が大国なんだからガマンして、良好な日韓関係を築いてくれ」ということではないのか。

 日本の外務官僚は特に米国のニーズに敏感で、「事を荒立てない方がいい」と歴代政権に言い続けてきた。その路線の中で「法の支配」を重視するはずの安倍首相も口では「法の支配」と言いながら、実際は外務官僚の口説きにしたがい、行動を起こさなかったということだろう。安倍氏はその点を批判されても仕方がない。

 米国はじめ欧州各国には「過去の歴史で日本側が植民地・韓国にひどいことをしたようだ。だから謝罪は当然だし、韓国の求める賠償もすべきだ」という役人やメディアが多い。原因は韓国が歴史捏造や歪曲、誇張を続け、それを多大なロビー活動によって米国をはじめ各国の政府やメディアに宣伝し、彼らに「日本が悪い」と信じ込ませた点にある。

 それ以上に、日本がその誤報や歪曲を正す外交努力を怠ってきた点に原因がある。この点を積極的に正さない安倍政権の消極姿勢にも大いに問題がある。

 それは安倍氏の唱える「法の支配」を無力化しつつある。

 <(日本は)朝鮮総連本部ビルの強制売却手続きを、執行寸前に最高裁判所が差し止めた。これは時期的に拉致問題再調査合意と一致しているため、国内でも安倍政権の意向ではないかとささやかれている>

 三権分立を危うくする措置があったのかどうか。あったとすれば中国漁船の領海侵犯、巡視船体当たり事件のとき、検察をウラ指揮して船長を釈放させた菅直人政権時代と変わらないではないか。


 <韓国人の国連事務総長が、韓国で、韓国語で、日本批判を行った際も、日本政府は決して「国連憲章違反」と言わず、「遺憾」で収めた。どこに「法の支配」の実態があるのか、国内外への広報の努力がどこにも見えない>

 大磯氏の言う通りである。「法の支配」に照らして必要なことは、韓国政府や国連事務総長に対して厳しく追及しなくてはならない。

 米国は当初は「日韓関係を悪化させることはするな」と圧力をかけてくるだろう。しかし、米国はフェアプレーを重んじる国でもある。日本は「法治」の精神に立って、正しく実行しているだけだといえば、次第に理解してくれるはずである。欧州諸国も同じだろう。

 つまり「米国の圧力」と対する考慮を除けば、私は大磯氏の論理に基本的に賛成である。

 慰安婦問題についても、細部を除けば大磯氏の主張に同感である。安倍首相に求められるのは「法の支配」を口で唱えるだけでなく、実行することである。

歴史の真実を訴えることも粘り強く進めて行かねばならない。

 特に、今、韓国の検察は朴槿恵大統領の名誉毀損の容疑で産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を起訴している。報道の自由、言論の自由を踏みにじる「あるまじき行為」に対し、欧米でも非難の声が広がっている。

 この事態は産経新聞には気の毒だが、言論の自由を重んじる「法の支配」を世界に訴え、韓国の不当性を浮き彫りにする好機とも言える。

 日本はこの機をとらえ、産経問題以外の様々な不当行為も含め韓国批判を国際社会に展開して行かねばならない。





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Last updated  2014.10.29 16:16:48
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