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遠方からの手紙

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カテゴリ:文学その他

 会話の途中で、ふっとお互いが口を閉ざし、意図せぬ沈黙が訪れることをフランスのことわざで、「Un ange a passe 天使が通る」 という。

  天使

ひとつの沈黙がうまれるのは
われわれの頭上で
天使が「時」をさえぎるからだ
二十時三十分青森発 北斗三等寝台車
せまいベッドで眼をひらいている沈黙は
どんな天使がおれの「時」をさえぎったのか

窓の外 石狩平野から
関東平野につづく闇のなかの
あの孤独な何千万の灯をあつめてみても
おれには
おれの天使の顔を見ることができない


 鮎川信夫ら、多くの詩人を輩出した戦後詩の原点の1つとも言うべき 「荒地」 の同人であり、10年前に亡くなった田村隆一の詩集 『言葉のない世界』(1962)に収められた詩の1つである。

 かつては、九州から上京するさいには 「あさかぜ」 などの寝台列車を利用するのが常套であったのだが、その 「あさかぜ」 もすでに廃止されて三年が経つ。深夜、眠れぬままに寝台に横たわっていると、がたごという列車の規則正しい音が間遠になるとともに、列車はやがて速度を落として、どこかの人気のない駅に停車する。

 向かいや下の寝台に眠る人らの邪魔をせぬよう、音を立てずに体を起こし、ブラインドの隙間からのぞいた駅の暗くひっそりとした光景。ひと皆寝静まる夜の間も、暗い夜空に絶えず真っ赤な炎を吹き上げていた瀬戸内の工場群。

 夜明けとともに窓から陽の光が射しはじめ、やがてまだ眠り足りない顔をした乗客らが通路に一人、二人と姿を現し、ある者は大きく伸びをし、ある者は窓の外に広がるどこかの山やあるいは海の景色に無言でじっと見入っている。

 途中の駅に停車するたびに、少しずつ乗客は入れ替わっていき、微妙に違うアクセントで、どこか耳慣れぬ言葉をしゃべる人が増えてくる。最終目的駅が近づくと、列車の中はにわかに活気であふれだし、人々はいっせいに棚から荷を下ろし身支度をして、降車に備え始める。そういう旅というのも、今は昔となってしまったのだろうか。

 ちなみに、田村は生涯に多くの女性との結婚と離婚を繰り返したそうだが、そのうちの一人は田村のもとを離れ、彼の10代の頃からの親友であり、田村と同じ詩人である北村太郎(キャロルの 『不思議の国のアリス』 の訳者でもある)と一緒になり、彼の最期を看取ったそうだ(参照)

 古くは与謝野晶子と鉄幹や谷崎潤一郎と佐藤春夫の例もあるが、詩人とか作家など、芸術家というものはつくずくと難儀な人たちである。もっとも、彼らだけが特別というわけでもないだろうが。






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Last updated  2008.10.25 17:25:42
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