ハゲタカ
25日、ヨーロッパ最大のドラッグストアチェーンのアライアンス・ブーツ(英)が、アメリカの買収ファンド「コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)」とブーツ社の副会長のTOBを経営陣が受け入れ、約111億ポンド(2兆6000億円)で買収される事になった。KKRといえば今年2月、同じ買収ファンドのTPG等と共に、アメリカの電力大手TXUを450億ドル(5兆5000億円)で買収すると発表した事は記憶に新しい。 KKRを始めとする買収ファンドやインベストメントバンク、そして彼らより遥かに卓越した構想と技術を併せ持つ我々ヘッジファンドに対し、日本のマスコミや企業は我々への畏れと嫌悪感が複雑に入り混じった表現で、「ハゲタカ」という名で呼んでいる。しかし果てしない野心に満ち溢れた我々にとって、どうせ例えてくれるならハゲタカよりもっと貪欲で、かつてあらゆる生態系の頂点に位置した肉食恐竜になぞらえて欲しかった。 米のトムソン・ファイナンシャル社によると、2004年に世界全体のM&A実績は2兆2000億ドル(約260兆円)だったのが、わずか2年後の2006年には4兆2000億ドル(約500兆円)へと倍増したらしい。もちろん2007年には更なる増加は必至であろう。こうした背景には世界的な金余りで、運用先を求める大量のマネーがファンドに流れている状況に加え、熾烈な競争を勝ち抜く為に生産性や効率を高める上で世界的な再編は不可避で、また株主資本主義の台頭により、株主価値を極限まで高める事を企業に求める動きがあるからに他ならない。 しかしながら、昔も今もこうしたM&Aやディーリングが、マクロやミクロを問わず経済全体や社会に及ぼす多大な効果について語られる事は少なく、ネガティブなイメージや報道ばかりが先行しているのが現状であろう(特に日本)。ハゲタカは全てグリーンメーラー(買い占めた株式を高値で被買収企業に買い戻させる手段をグリーンメールと言い、高値で買いもどさせる行為、あるいは最初からそれを狙ってTOBを仕掛ける投機家)で、かつて小糸製作所を買収しようとした際のピケンズ氏(彼は実際グリーンメーラーだったが)の様な存在であると・・・・。先だってのサッポロに対するスティール・パートナーズのTOBの時など、まさにその典型でマスコミや政財界も非難の大合唱だった。 だからと言って我々が許すはずもなく、それが為替や株式の様なマーケットであれ、個別の企業が対象であれ、不合理な状態が是正されず放置されていれば、どこからとも無く我々は現れ、市場や企業に対し無慈悲な程の正しい(該当市場や企業の関係者からしたら法外に見えるだろうが)要求を突きつけるであろう。それこそが我々の哲学でもあり、存在意義でもあるのだから・・・。