2009/11/02(月)01:30
女流阿房列車 酒井順子著
鉄道紀行文の嚆矢と言っていいでしょう。
内田百けん(けん…門構えに「月」)く著「阿房列車」シリーズ。
第一阿房列車
一般人=用事があるから鉄道に乗る
内田百けん=用事がないけど鉄道に乗る
というより「鉄道に乗ること自体が旅(用事)」とした百けん。
当時は変わった目で見られたのではないでしょうかね…?
しかし、百けん先生の努力(?)による現代では
鉄道を利用して旅をする鉄道ファン=乗り鉄
と呼ばれるまで社会に認知される存在となりました(言い過ぎか?・笑)
「特段用事は無いけど、他人の言うとおりに『乗り鉄』をする」ことを
実践したのが酒井順子さん。
酒井さんは、「穏やかな乗り鉄」でしょうか?
ただ鉄道に乗っているのが好きな方のようで
『ここは見逃せない風景』と言った場所でも寝ていたりする(笑)
そんな酒井さんが新潮社のTさんが作成した『基本』プラン通りに
鉄道に乗ってきた紀行文集です。
まずタイトルからしてクスリと笑ってしまいます。
メトロな女
鈍行列車の女
秘境駅の女
膝栗毛な女
トロッコ列車の女
9 to 5の女
廃線跡の女
こだま号の女
スイッチバックの女
旧国名駅の女
(おまけ)鉄と油の二泊三日
タイトルだけで想像できる旅もありますが(読むと想像を超えるとは思います)
タイトルだけでは分からない旅もありますね。
全部にサブタイトルが付いているのですが
膝栗毛の女 東海道五十三乗りつぎ
9 to 5の女 根室本線 宮脇俊三さんに捧げる寝ずの旅
「膝栗毛」は、東京・日本橋から京都まで「53回乗り継いで」行った旅。
「9 to 5」は、根室本線起点の滝川駅)9:38発)から釧路駅(17:38着)まで
各駅停車に乗って旅をします。普段は車内で寝てしまう酒井さん。
尊敬する宮脇俊三さんが好きだった根室本線に敬意を表して
「寝ない」ことを課して旅をしています。
全編、ほんわかとした感じにしてくれる紀行文です。
鉄道好きは、もちろん、旅が好きな男女ともに楽しく読める本だと思います。
鉄道紀行文の第一人者だった宮脇俊三さん。
私の知っている作家さんの中では、酒井順子さんが一番引き継いでいる気がします。
今後の作品にも期待したいです