2010/08/01(日)11:20
「がんを生きる」 佐々木常雄先生の本を読んで思うこと・・・
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スポンサーがあなたの代わりに募金するため、あなたは無料で募金できます。 クリックから世界が変わります ! 頂きましたよ~。 以前、ほんのちょっと紹介した本です。http://search.books.rakuten.co.jp/bksearch/nm?g=001&sitem=%A4%AC%A4%F3%A4%F2%C0%B8%A4%AD%A4%EB&x=79&y=15がん拠点病院(がん・感染症センター都立駒込病院)の院長先生が次のようにお書きになっています。「この本の願いは、治癒が困難で、短い命を宣告されて奈落に落とされた方にひとりでも多く、早くこの奈落から抜け出して頂くことです。」「この本が、たとえ死が近いことを告げられ、奈落に落とされても、一日でも早くその心が立ち直るのに、少しでも役立ってくれれば、私にとって望外の喜びです。」こうありました。恩師のお一人は、すい臓がんで亡くなられました。染色体研究の世界的j権威の先生だっただけにどのようにお考えだったか、偲ばれます。「この薬は、私も処方されようとしたので、とても興味があるから、是非ともin vivo(生体の中)でどのような変異原性があるのか、研究してくれないか。」このような趣旨のお話をして頂いた国立遺伝研のT先生でした。大切な自筆の研究ノートを奥様からも頂戴しました。その薬のことならばS先生を紹介しよう、と早速ご紹介を頂きました。 同じ遺伝研の教授で、遺伝学会賞を取られたS先生のご紹介で東大・分生研のA先生をご紹介頂きました。これまでの研究内容の簡単なまとめをご説明の後、その薬の生体内での基序を明らかにするには、生体内の標的組織内の細胞の核酸プールの測定が必要でしょう、岡山大学のW先生の所が、東京のA先生のの所より近いから良いだろうと、ご紹介頂きました。岡山大学のW先生にS先生の紹介状を持って伺いました。S先生のご紹介とマウスやショウジョウバエの生体内での核酸プールの測定による実証研究にもご興味をお持ち頂き、以来、ずーっとお世話になりました。 これらの先生方、関連する院生、学生の方々のご協力を頂いたお陰で、遺伝研のT先生のガン治療薬の遺伝毒性に関するご依頼も頂き、当初の目的を達成し、4年に一度の国際学会でも発表できました。ショッキングなのは、2000年以降も、ずっと抗がん剤の標準治療の薬として使われているらしいことです。 目的のガンは縮小したり、治癒したり、延命効果もありますが、結局は血液系のがんでお亡くなりになる方が多いようです。 1959年に画期的な薬として発明されて以来、日本では、ずっと使われ続けてきたようです。大腸がんを患われたT先生が標準治療法として薦められたのも担当医師として、当然のことだったのでしょう。でも、T先生は遺伝学研究の権威のお一人、その薬が in vitroの大腸菌などの試験系で変異原性を持つことを明らかにされたA先生とS先生が研究成果を遺伝学会等で発表され、主としてその功績で遺伝学会賞を取られたことも同僚として良くご存知のようでした。 これらの先生方とは独立に、研究を開始した我々は、その薬を 「DNAを直接標的としない、核酸プールの不均衡でも遺伝毒性を持ち、発ガンに繋がる可能性のある薬剤」 として選びました。この薬は切れ味も良く、開発者のHeidelbergerらが1959年当時としては、とても良く考えた薬だったのです。 この薬は、生体内でもDNAを直接的な標的とはしませんが、染色体組み換えを遺伝子突然変異の約7倍も誘発する実験結果が得られました。T先生のご心配のように、生体内でも遺伝毒性ばかりか、ガンを誘発する可能性があることを遺伝毒性研究の鋭敏な試験系の一つのショウジョウバエの試験系で、先ず明らかにしました。まるある薬剤を同時に与えると推測通りに緩和される実験結果も得られました。 残念なことに、がん細胞だけでなく、生体内で活発に細胞分裂をしている胎児の肝臓では、発ガンに大きく関与するらしい遺伝子も同時に活性化してしまうようでした。最近の山中先生のグループのiPS細胞の実験でも発ガン誘発の危険性のある遺伝子として安全なものに置き換えられたことが報告されていました。 その薬を投与されると、当初の治療目的の大腸がんなどは治癒しますが、骨髄系のがん、白血病等が後年、発病する要因の一つのようでした。骨髄幹細胞も盛んに増殖していますので、その薬剤が投与されてから数年後に発ガンして亡くなる。我々の実験結果も、それを強く示唆しているようでした。学会でお世話になった先生方 A先生、W先生との共同研究の形でオーストラリア・メルボルンで開催された国際学会で発表したのは、以前お話した通りです。そんなことも思い出しながらとても興味深く読み終えました。私たちも、ガンになる可能性が大いに有り得ます。その意味でもガン治療の専門の先生がどのうようにお書きになるか、興味も大いにありました。治療だけでなく、心の持ちようについても示唆頂ける良書の一つだと思います。薬による治療も重要ですが、精神的な安らぎを得ながら逝くことの大切さを宗教にも触れてお書きでした。