出会い2。

2004年5月4日(火曜日)

僕は女性に2回目に会う約束をすぐ取り付けた。
僕はただ会いたかった。
今度も横浜で遊ぶ事にした。
しかし今回は女性のアルバイトが23時からあったので会える時間は限られていた。
待ち合わせは夕方。
少ない時間でも二人でいる時間を有効に使いたかった。

2回目に会った時は最初に会った時と別の印象を受けた。
濃いワインレッドのチェックが前面にプリントされたメッシュキャップを被っていて裏原系のお洒落な格好だった。

僕はブラザーフッドの薄手の黒ジャケットとインナーに同じくブラザーフッドの絡み合う老人と娼婦のプリントが卑猥な白T-シャツ、そしてリーバイスのブルージーンズにエアフォース1のホワイト/ブラックパテント。
そして迷彩柄のバックと言うラフなコーディネートだった。

女性は「前と雰囲気が違う」と僕に言った。
前に会った時はニット帽子を被っていたし、バックパックを背負っていたからだろうか?
僕はその日帽子を被っていなかったし手持ちのバックだった。
別にそんな事はどうでもいいのだが。

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女性の方が横浜の地理やお店に詳しいので僕は案内してもらった。
落ち着いたお洒落なお店に通された、カウンターもあり座敷もある焼鳥屋だった。
二人でCDとDVDを交換で貸し借りする約束をしていたので交換した。

僕は「ケツノポリス2」
女性は「ガガガ、ゴイステのDVD」

を持ち帰る事になった。

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今回もカルピスサワーを飲んだ。
酒を飲む時は精神安定剤を飲んではイケないと表向きには言われている。
でもそんな事は関係なかった。

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二人で良い感じに飲んだ。
飲んだ後、女性はアルバイトまで時間があるからプリクラでも取って何処かに行こうと言いった。

プリクラを取った後。
また行くところもないのでカラオケに行こうと言うことになった。
カラオケBOXを目指し横浜の夜道を歩く。
カラオケの客引きが引っ切り無しに声を掛けてくる。
如何わしい店が軒を連ねる。
うらぶれていると言うほどではないにしろ怖かった…しかし何故か裏道に二人は入って行った。

カラオケ屋は万杯だった。
ゴールデンウィークだからだ。

しかたないから二件目に行く、その途中にラブホテルがあった。

2件目に入る寸前、僕は彼女をホテルに誘った。
そしてそこで告白をした。
女性を背負う格好で「お前の分も一緒に背負って生きていくよ」と柄にも無い事をやってのけた。

会って二回目なのに。
女性は驚いていた。
しかしおそらく告白された女性よりも告白した僕の方が驚いていただろう。

とりあえず落ち着いて話す為にホテルへ。
僕自身何もする気はなかった。
何より怖かった。

男子校育ちで自分に自信のない僕に…出来るのだろうか?
初体験だった。

庵野監督作品映画、原作村上龍。
「ラブアンドポップ」のままの造りのラブホテル。

僕はただ寄り添って女性の体を触ってキスをしているだけだった。
それ以上の行為は今までの人生で経験した事はない。
女性も最初は拒んでいた。
女性は僕の身体を優しく撫でてくれた。
僕の二の腕を流れるように這う手は初めての快感だった。
僕の震える指先は女性の中に割って入っていった。

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気が付くと家の前で買ってきた缶チューハイ3本を一気飲みしていた。
家に入る気分でもなく。
何処に行く気分でもなかった。

『いざと言う時、立たなかった』
『挿入行為が出来ず…風呂に一緒に入って終わりだった』
この事実が僕を責めたてた。

大学の男の友人に電話をした。
「好きならそのくらい気にするな」
「今日は俺も自分でするからお前もしてみろ、自身を持て」

僕の事を励ましてくれた。
しかし考えれば考えるほど自分はそう言うこと(性交渉)の出来ない体なのではないかとさえ思うようになっていった。

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帰宅してから文章を書き殴った。
苦しみを全部吐き出すつもりでキーボードを叩いた。
すぐに消したのだが「10年後の自分」と銘打って書き殴った。
苦労苦悩。
自分への疑問と情けなさを全部吐き出した。

「恋慕の情を僕は女性に抱いている、しかし女性は過去の恋愛を引きずっている」

こんな恋愛を繰り返してきた。
毎回そうだ。
でもそんな恋愛にしか自分を見出せなくなってしまっているのかもしれない。
悲劇のヒロイン(僕は男の子)をただ演じているだけかもしれない…

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2004年5月

苦しすぎる葛藤の中で僕は女性と連絡を取り続けた。
他愛のない話でホテルでの事を誤魔化し続けた。
一つ誤魔化す事によって一つ傷つけあう二人に気づきながら日々を過ごしていた。

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2004年5月12日(水曜日)

ある日、僕は身体検査のレントゲンの項目で引っ掛かったらしくて保健室に呼ばれた。

保健室には左手首に包帯を巻いている女の子が数人いた。
その中でも1人だけ存在感の大きな女の子がいた。
ゴスロリと言う目立つ格好をしていたので大学内では目立つ存在だった。
僕から見た事はあったのだが、女の子は僕の事を知らなかった。

僕はその彼女に一瞬にして惹かれるものを感じた。


その日から、僕の内なる思いと僕を取り巻く世界の空気は変わっていった。
それは放射状に広がり収集のつかない所にまで無意識下の中で手を伸ばしていった。

一旦合致して動き出した心と心の歯車を止めることは不可能だった。


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