Earth Color

2007/05/17(木)11:24

Kate Spade - ゆっくり成長するのもありなんだね

MBA留学(97)

アントレの最後のケースは、Kate Spade。「Realizing Value」というモジュールを締めくくるべく、結構考えさせられる内容でした。  Kate Spadeは、いわずと知れたニューヨークに拠点を置くファッション・ブランド。 Kate Spade設立の経緯は、同社のウェブサイトにわかりやすく書かれています。http://www.katespade.jp/about/index.html以下一部抜粋。 女性にぴったりの本格的なハンドバッグを探し続けていたある日、ケイト スペードは「自分で作ってしまうほうが簡単で絶対おもしろいはずよ」と考えました。そしてある夜遅く、プロヴィンスタウンで、ボーイフレンド(現在は夫)のアンディ・スペードと共に会社を作ったのです。社名は、彼女のファーストネームとアンディのラストネームから取った「kate spade」。ケイトは6年間のアクセサリーエディターとしての経験から、アクセサリー市場をよく理解していました。広告代理店TBWA/CHIAT/DAYのクリエイティブ・デザイナーのアンディは、すぐに彼女の感性を現実にしてくれました。ふたりは市場の空白部分を見つけ、互いの才能を合わせて冒険に挑戦しました。最初のデザインは、実用性・色・ファブリックを強調した、シンプルな形のバッグが6種類。これらのデザインは、いまでも「kate spade」の特徴を示すシグネチャー・スタイルとなっています。 (中略) 「kate spade」を設立してまもなく、ケイトとアンディはビジネス拡大のために手助けが必要になりました。1993年末、パメラ・ベルが、素材の調達やハンドバッグ製作でケイトをサポートするため「kate spade」に加わりました。次の年には、アリゾナ州の大学時代からのケイトとアンディの旧友、エリス・アーロンズが経営に参加して、セールスとPR担当になりました。そしてすぐに、それぞれが独自の経験と得意分野で助け合う、ケイト、アンディ、パメラ、エリスの協力関係ができあがったのです。 「kate spade」の最初の店舗は、1996年にニューヨーク、ソーホーのトンプソン・ストリート59番地にオープンしました。しかしすぐにスペースが足りなくなり、1997年秋にブルーム・ストリート454番地の角に移転。この店は、紙製品から旅行用品まで、様々な分野を扱う実験室となりました。支店は、1998年にボストン、2000年にシカゴ、サンフランシスコ、コネチカット州グリニッチ、ニューヨーク州マンハセット、2003年秋にワシントンDCのジョージタウンと、続々とオープンしていきました。2004年には、さらにたくさんのブティックがオープンしました――アトランタ、ヒューストン、シャーロット、ダラス、ボカ・レイトン、ラスベガス、パロ・アルト、ペンシルバニア州キング・オブ・プロシア。国外では、2004年4月8日に日本の青山にフラグシップ店をオープン。かつては私邸だった建物は洗練されていてモダンです。2階建て総面積2000平方フィートの店内では、kate spadeコレクション、素敵な子供服コレクション、jack spadeコレクションをご覧いただけます。青山フラグシップ店の他、国外の「kate spade」独立店舗は、日本に青山フラグシップ店を含めて路面店が5店舗、、香港に3店、フィリピンに1店、の店舗があります。 (中略) ファッション業界の中で一瞬で燃え尽きるものよりも、穏やかで創造的なデザインやマーケティングを選ぶ4人のパートナー。彼らはすばらしい仲間たちと共に、将来への展望と丁寧な仕事、そして創設以来の勤勉さに基づいた会社作りを続けているのです。 こんな家族的な雰囲気の会社。 ところが、会社が成長を続けるにしたがって、追加的な資金や、プロの経営手腕が必要になってきます。 1998年、そんな彼らのもとに、ちょうどよく魅力的な提携話が舞い込みました。 一つは、ファッション業界への投資経験のあるベンチャーキャピタルからの提携話。 40億円で40%の株を取得するという提案なので、会社全体のバリュエーションは100億円(40億円/40%)。 投資のあかつきには、業界経験のある優秀なCEOを送り込んでくれる。 それでどんどん会社を成長させて、ゆくゆくはIPOをしてがっぽり儲けましょう。 二つ目のオファーは、ニーマン・マーカスという高級デパートからの提携話。 彼らは36億円を出資して60%の株式を取得。つまり会社全体のバリュエーションは、60億円で、最初のオファーよりも大分低い。 しかも、60%の株式を握られるので、会社のコントロールは、ニーマン・マーカス側に取られてしまう。 そのかわり、高級デパートへの商品のdistribution channelができるし、デザインやブランドイメージのコントロールなんかはKate Spadeにまかせるといっている。 Kate Spadeを更に育てていくために、創業者たちは、どっちのオファーをとるべきか。 結構激しい議論になり、大半の学生たちは、バリュエーションが高くて、将来のIPOというアップサイドもあって、会社のコントロールもキープできるVCのオファーを取るべきだと主張をして、僕も普通に考えればまあそっちだろうね、と思ってました。 ところが、実際にはKate Spadeはニーマン・マーカスのオファーを取ったそうです。 理由は以下の通り: VCなどのFinancial Investorは、なるべく早い成長を求めてくる。 そうすると、当然Kate Spadeのバッグをなるべく多くのチャネルに流したい。 ただ、ブランド品なので、いろんなお店の棚に並べすぎると、すぐに飽きられるし、在庫処分でドンキホーテみたいな量販店に並んだ瞬間ブランドイメージはがた崩れ。 そして、一回崩れたブランドイメージを回復させるのは、まず不可能。 これまで、自分たちのイメージにあう販売チャネルを厳選して、穏やかに成長をしてきたブランドなので、そのペースを大事にしたい。 ニーマン・マーカスは、その辺のニュアンスをわかってくれた。 また、自分たちは、これまで家族経営的な暖かい雰囲気で仕事をしてきた。そういう雰囲気の中で穏やかなデザインを生み出してきたわけだし、これからもその雰囲気は崩したくない。 これには、目からうろこでした。 自分のビジネスの本質と、その本質に基づく適切な成長速度を把握した上で、その成長速度で進んでいくべく、あえて経済的にmake senseするオファーを断る。 なかなかできることじゃないと思います。 バンカー時代から、「会社って、投資家が求めるほど速いペースで成長する必要ってあるんだろうか?そして、その成長ってほんとうに会社の幸せにつながるんだろうか?」という疑問をもっていた僕にとっては、Kate Spadeの行動はある答えを提示してくれた気がします。 最後に、ビデオの中で創業者のアンディーが言っていた言葉。 「Strategy is to refine who you are and what you like, and then you will enjoy your work!」 ストラテジーのクラスでこんな発言をしたら、速攻「3」がつきそうですが、僕の心には結構強く響いたのでした。

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