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   船橋子どもの家

船橋子どもの家

法人化・子ども安心基金への道

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こどものあした(全国無保協ニュース NO.195 2011年9月29日より)

法人化・子ども安心基金への道

千葉・共同保育所子どもの家 理事 S氏

 共同保育所「子どもの家」は、高度成長の真っ只中の1971年、
第二次ベビーブームの中で、産休明け保育という社会のニーズに対応できない
行政に代わり、親たち自らが保育を行う「共同保育所」として設立されました。
船橋市の子育てを支え続け、今年で創立40周年を迎えました。
 現在の園舎は船橋駅から徒歩3分という大変便利な場所に位置していますが、
築60年とも70年とも言われる木造平屋建ての民家を改造したもので、
この一角だけ昭和の香りを色濃く残す「レトロ」な雰囲気が漂っています。
これが当園のポリシーである「手作り保育」と妙にマッチしていて、
意図せずに「売り」のひとつになっています。

施設の老朽化
 そんな「子どもの家」ですが、実際にそこで働く保育士や
預けられる子どもたちにとっては、様々な「危険」が潜んでいます。
何せ築60年ですから、当然のことながら安全面や衛生面で多くの問題を抱えています。それらを保育士、保護者、OBが毎年のように補修や改善を行って
何とか乗り切ってきたというのが実情です。
「レトロ」を維持するのは大変なのです。

中長期委員会の立ち上げ
 さて、そんなある日、お父さんたちによる「ペンキ塗り大会」を開催し、
いつものように補修に汗を流していた時、参加していた一級建築士の保護者の方から
「この建物じゃ大きな地震がきたら完全につぶれますよ」と言われ、
一同ゾッとしたことがありました。
(先の大震災では関係者みんなが肝を冷やしましたが奇跡的に無事でした…)
これがきっかけとなり「これはいよいよ根本的な対応をしなくてはまずいのでは…」
との認識が保護者や理事、OBに広まり建て直しや移転について真剣に考え始めました。

 また、「子どもの家」にはもうひとつ大きな問題がありました。
見なし法人という曖昧な経営体制ゆえに公的な補助や社会的信用が得られず、
保護者に高い保育料を強いる一方で、保育士には最低賃金をかろうじて維持する程度の
待遇しかできず、その中で毎年ギリギリな経営をしている…という経営問題です。
誰もがこのままでは良くないと思いながら、なかなか手をつけられずにいた経営改革、
即ち法人格取得と認可園化対策に正面から取り組まざるをえなくなっていたのです。

 さて、移転や経営改革を検討するにあたり、真っ先に行ったことが
「子どもの家としての理念」の確認でした。
「理想の保育」とは何か、「子どもの家」は今後どうあるべきか、等の
将来のビジョンを議論することから始める事としました。
 これらの問題を議論し、理事やOB、保護者に提言するため、三年前に
中長期課題を検討する、保護者・OB有志による「中長期委員会」を立ち上げました。
みんなとても忙しいため、開催は不定期でしたが、平日の夜に園舎や居酒屋などで
議論を重ね、やがてメンバーも少しずつ増えていったのでした。

活動はしてみたけれど…
最優先課題はやはり園舎の建て替えまたは移転です。
当初は理想の保育環境を目指し「平屋で園庭も建てられる土地」を探すことから
スタートしました。
駅からの徒歩圏内を条件に探してみましたが、
よくよく考えればそんな好条件の土地などなかなかあるはずがありません。
そもそも運よく見つかったとしても、その土地を借りて園舎を新築する
「資金」の問題が立ちはだかります。
毎年自転車操業で運営してきた当園にはそんな大金などあるはずもなく、
頼みの綱は当園唯一の財産であるOBの暖かい志=寄付のみ。
一向に具体的なプランはまとまりませんでした。

 しかし、とにかくまずは行動しようと、資金集めを始めることとし、
昨年夏に行われた当園40周年式典の場を借りて、中長期委員会の活動内容を報告をし
建て替え・移転と法人化を目指してゆくと宣言。
その実現のため「大募金活動」への支援を訴えました。

まさかの展開で一気に具体化!
 「案ずるより産むが易し」とはよく言ったもので、
偶然その場に居合わせたOBの方から、現在地のすぐ近くに新築ビルを建てる予定で
貸して頂けるとのお話をいただきました。
詳しく聞くと、最優先課題である安全性が得られ、利便性も維持でき、
2フロアを借りれば現在と同等以上で国の設置基準をクリアできるスペースを
確保できる可能性があるとわかり、協議の結果、当初の計画(理想)とは
ずいぶん異なるものの、これは千載一遇のチャンスだと捉え、
具体的に検討を進めることとしました。
 そして最大の難関だった資金問題についても吉報がもたらされました。
少子化対策として政府が予算化した「安心こども基金」が
来年度も継続するというニュースです。
設置基準を満たした法人であれば、無認可施設でも
工事費と家賃の3/4が補助されるとはまさに当園にとって天の助け!
 早速、市の保育課に乗り込み、相談をしました。
保育課は、これまで市として無認可施設に補助を出した事が一度も無いため、
初めてのケースと言うことで戸惑いながらも積極的に
アドバイスと応援をしてくれました。
これも市がこれまでの「子どもの家」の活動を評価し、
信頼してくれていたからこそだと感じています。

 こうして様々なタイミングが偶然重なり、実現に向かって進むこととなったのです。

 その後は、「子どもの家」OB人脈が大活躍。募金も順調に集まり、
移転計画・法人化計画の方も一級建築士、司法書士、会計士、NPO役員など
多彩なOBの方々に協力を頂き準備を進め、
先頃「一般社団法人 船橋子どもの家」として生まれ変わりました。
 移転の方も手続きがほぼ整い、本年10月の新規開園に向けて最終的な詰めを行っています。

理念の継承と発展
 「理想の保育」を語ることから始まった中長期委員会でしたが、
法人格取得にあわせてその役割を新組織執行部に譲りました。
 新代表理事の下で、早速4つのプロジェクトを立ち上げ、40年間培ってきた「子どもの家」の理念を継承・発展させていくべく活動していきます。


・共育プロジェクト
「子どもの家」の理念を憲章という形に集約、明文化し、
それを保護者・保育士・執行部が共に学び、育っていけるような
共育プログラムを立案・推進する。

・事業プロジェクト
 新園舎、人材、これまで培ってきたブランド力と保育ノウハウを活かし、
新しい事業活動を展開し、健全な財務体質を築く。

・職場改善プロジェクト
 質の高い保育を実践している保育しに対して充分な待遇を提供すると共に
スキルアップのための研修や学習機会を提供する。

・地域運動プロジェクト
 地域の子育てセンターとして様々な活動を行い、地域に貢献する。


 今後、保育を巡る環境は国の施策とともに大きく変わろうとしています。
当園にとっても激動の時代がやってくると思います。
 しかし、環境や時代がどう変わろうが、「子どもの家」らしさを変えることなく、
更に時代の要請に応えられるように成長し、子育て支援と地域貢献ができる存在で
あり続けたいという強い決心のもと、頑張ってまいります。



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