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カテゴリ:小説・本・雑誌など
TSUTAYAで古本を購入。315円也。金正日が2001年に「シベリア横断超特別列車」で訪露した際の取材記である。宮嶋の文章は大変おもしろいが、取材対象の金正日はアジアの最貧国の世襲独裁者らしく、読んでいても不愉快極まりない豚野郎だ。
まだ、全部読んだわけではないが、私がおもしろかったは第3章ババア記念日だ。 オムスクでの取材時に撮影場所を借りたアパートの婆さんはタフな婆さんだったようだ。宮嶋が書くようにKGBの元女スパイかも。以下に元女スパイ?に関する文章を引用しておきます。プーシキン図書館から出てくる金正日のズル禿頭を撮るために14階建てアパートの最上階に住む婆さんの部屋に宮嶋と読売新聞モスクワ支局の花田記者が潜んでいる時の話である。婆さんは金正日を撮れる方向の窓を思い切り開いて見物していたので、ミリツィア(民警)に見つかったのである。その後の話が以下の展開となる。 <引用開始> ババアはヨロヨロと窓際の椅子から立ち上がった。 「ドドドン!ドドン!」 再び一段と激しくノック! 「早く開けるビッチ!、ミリツィアですノフ!」 その瞬間、私は生まれて初めて、オノレの心臓が一瞬だけ止まったのを自覚した。まさか?絶対に見つかっていないハズである。少なくともカメラと私自身は・・・。 「ヘ? クト(誰)?」 ババアはやっぱり耳が遠いのか、聞き返した。そうでないとしたら大した度胸である。もはや、これまでである。ここに入るときに見つかっていたのか、それともあの10センチの隙間か。私と花田記者は互いの目を不安げに見つめあった。ヨタヨタとスリッパを引きずりながら、ワンピースの衣擦れの音とともに、ババアは平然と玄関に向かった。 「待っとくれノフ! 何だい。いったい? 今開けるスカヤ・・・」 その言葉を発しながら、ババアは信じられない行動に出た。我々二人分の男物の靴を下駄箱の中に隠したのである。このババア・・・、耳は遠いし、半分ボケとる様子なのに、とてつもないタヌキである。こうでもないと、あの社会主義政権下を生き残ってこれなかったのであろうか。いや、もしかしたら、モスクワで失脚してシベリアに流されてきた筋金入りの元政治犯ではあるまいか。 「ハイハイ! 何かね?」 ガチャリと開錠する音がし、ドアが数十センチ開いたのが、次のミリツィアの声でわかった。 「バブーシカ! お一人ですか?」 このまま踏み込まれたら・・・、もはや誤魔化しようがない。こんな年金生活者の部屋に東洋人が二人。しかも3脚と超望遠レンズが居間の真ん中でジャケットにくるまれてはいるが、デーンと居座っているのである。 「当たり前じゃないかい? いったい何だね?」 「先ほど窓を開けて外を覗いておられましたね?」 部屋の隅で私はただ震えるだけであった。チビリそうである。口から心臓が飛び出しそうである。なんちゅう因果な仕事や・・・。 「当たり前じゃないかね。外は大騒ぎじゃないか? いったい何の騒ぎだね?」 「本当にお一人ですか?」 「何だね? 中に入りたいのかい?」 「・・・・・・」 顔から玉の冷や汗が流れ落ちる。 「いいえ! 間もなく終わりますので、しばらく窓に近づかないでいただきたい」 「何だね! 偉そうに! 私はこれでも大祖国戦争(対ドイツ戦)を経験しているだよ! なんて口の利き方だよ!」 (ババア、いやお婆様、もうそれ以上絡まんで・・・) 「ダスビダーニャ(失礼しました)」 再び、厚いドアが閉じられたのが、廊下を渡ってきた風の流れでわかった。 ガチャリという施錠の金属音で全身の力が抜けた。大したもんである。年の功なんて生易しいもんではない。このババア、絶対に只者ではない。若い頃、相当な修羅場を踏んできたのであろう。ひょっとしたら、KGBの女スパイだったのかもしれん。 「ほんとに近頃の若者ときたら・・・」 ババアは何事も起こらなかったように居間に戻ってきた。 「ニェットプロブレム(大丈夫だから)」 おそらく顔面蒼白だった私をあやすように言った。スゴい・・・。重ね重ねスゴい・・・。あんなこと、この百戦錬磨の不肖・宮嶋ですらビビるっちゅうのに、もう大丈夫ときた。 <引用終わり> 不肖・宮嶋氏が撮った金正日のガニ股歩き↓ 朝鮮労働党の幹部バッジを胸につけた喜び組の女達の画像はこちらで見られます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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abilitgrunaviさん
>宮嶋という人は面白い変な本ばかり出しますね。 彼の本は何冊か読みましたが、「変な本」だと思ったことはありません。新刊を定価で買う気にはなりませんが、古本で数百円なら買いですね。 (2006/05/07 12:17:33 AM) |
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