剱岳 点の記
今日のブログのタイトルは新田次郎の小説の題名であり、来年公開予定の映画でもあります(別に広告するつもりはありませんが)。先月行った剱岳近辺の山小屋に映画のポスターが貼ってあったところから、帰った後さっそく興味をもって原作を読んだ。新田次郎と言えば「孤高の人」、「八甲田山 死の彷徨」などの山岳小説が有名で、いずれも読んだことがあるが、読後感はこの小説が個人的には一番であった。筋を語るとこれから読む人の楽しみの妨げになるのでほどほどにしたいが、映画のコピーは「日本地図完成のために命を賭けた男たちの記録」とされている。まさに重要なのが「日本地図完成のために」というところであり、組織の論理や周囲の様々な思惑の中で、単に剱岳初登頂の名誉ばかりを競うのではなく、自分の仕事の本分を貫いた人々の生き様を描いたところにこの小説の魅力があると思う。映画の方はどのような出来上がりになっているのかわからないが、かの「黒部の太陽」も今秋舞台になるそうで、来年はもしかすると剱岳ブームが起きるかもしれない。ただ、いかにブームといっても簡単に立ち入ることができるエリアではないし、地図作成にかけた先人たちの労苦と心意気はそれなりの難易度の山で十分感じられるのではないかと思う。話は横道にそれるが、6月から7月にかけてNHKで土曜日に放送していた「監査法人」というドラマをこの夏休みにまとめて観た。業界関係者から見れば無理のある設定も少なくはなかったと思われるが、印象に残ったのは第5話、主人公の公認会計士が粉飾に加担した罪を問われ収監されている前所属事務所の元理事長を訪ねるシーンである。詳細は省くが、「同じ生き方をしてきた人間に対し、あるときは善といい、あるときは悪という、そういう時代と戦っている」という前理事長の台詞があり、状況はさておき、思うところはあった。明治草創期のフロンティアに満ちた時代と現在を比較することには無理はあろうが、「ゴール」はやはり個々人の胸の内にあるものなのだろう。<一ノ越から見た槍ヶ岳、まさに北アルプスの天空の十字路>